西川善司のグラフィックスMANIAC
ウルトラワイド非対応ゲームを裏技で動作可能にする方法。「ウルトラワイドゲーミング」のススメ(3)
2023年6月20日 06:05
16:9アスペクト比よりも広画角な21:9や32:9のウルトラワイドアスペクトでPCゲームをプレイする「ウルトラワイドゲーミング」の世界。筆者が今、一番ハマっているこの新しいPCゲーミング・スタイルを布教する目的で始めたこのシリーズもついに最終回だ。
第1回では、「ウルトラワイドゲーミング」の基礎知識や魅力を紹介し、第2回では、ウルトラワイドゲーミングの世界を楽しむために必要な、ウルトラワイドモニターの選び方を指南した。また、最安級の32:9のウルトラワイドモニターのミニレビューも行なった。
この第3回では、このウルトラワイドゲーミング世界のさらなるディープな話題をお届けしたい。また、本稿末尾には中堅クラスの32:9のウルトラワイドモニターのミニレビューも行なっているので、そちらもご覧いただきたい。
ウルトラワイドゲーミングは結構昔のタイトルでも楽しめる
もしかしたら、本稿のシリーズを読んだことがきっかけでウルトラワイドモニターを購入し、すでに楽しいウルトラワイドゲーミングライフを送り始めた人もいるかもしれない。
その新参ウルトラワイドゲーマーの方々は、最近のゲームのウルトラワイド対応率の高さに驚いているかもしれない。
大作系(いわゆるAAAクラス)の3Dグラフィックスゲームはほぼウルトラワイドに対応しており、21:9なり、32:9のウルトラワイドモニターのネイティブ解像度に設定すれば、そのまま違和感のない広画角ゲームプレイが楽しめたことだろう。
ここから一歩踏み出して、「あの頃、楽しんだあのゲームを、今改めてウルトラワイドで楽しめないのかな」と思いついた人もいるかもしれない。
実際のところ、ウルトラワイドモニターが一般化する現在よりも、遙か前に発売された過去作も、結構な高確率でウルトラワイドでプレイできてしまう。
たとえば、筆者は、2018年に初めてウルトラワイドゲーミングの世界に足を踏み入れたが、それよりもだいぶ前に発売された「積んどくゲー」となっていたPC版の「MAX PAYNE3」(2012年)、「DEADSPACE 3」(2013年)、「【リブート版】トゥームレイダー」(2013年)などを立て続けにプレイした。
かなりの数のゲームをウルトラワイド環境で試した筆者だが、一定割合で存在する「ウルトラワイドに対応していないPCゲーム」に関して「ある傾向」が存在することに気が付いた。もちろん、それは「プレイの公平性を狙って意図的に16:9に固定した、競技性の高い作品」を除いての話。
その傾向とは、家庭用ゲーム機向けにがっつりと開発されたタイトルのPC移植版や、家庭用ゲーム機メーカーのファーストパーティやセカンドパーティが開発したゲームのPC移植版にアスペクト比16:9固定の作品が多いことだ。
語弊覚悟で言ってしまえば、PCゲーム市場に対してそれほど重きをおいておらず、「ベタ移植」傾向の強いタイトル群はアスペクト比16:9固定のものが多いようである。
まあ、今のところ、ウルトラワイドゲーミングのユーザー数は、16:9の画面でプレイしている一般プレイヤーと比較すれば少数派であることは間違いないので、非対応に対してなかなか強く文句も言えないのだが、「対応してほしい」という声を上げること自体は悪くはないと思う。
筆者も、理由の分からないウルトラワイド非対応作品に対しては、ときどきSNSで「対応して~」と呟いたりしているので、ぜひとも新参ウルトラワイドゲーマーの人も追従していただきたい(笑)。
冗談はさておき、相対的にウルトラワイドゲーマーが多い海外では、そんな「ウルトラワイド非対応ゲーム」に対して、“裏技”的なアプローチで強制的にウルトラワイドに対応してしまおうとする動きがある。
ウルトラワイド野郎のたまり場「WSGF」へようこそ
「ウルトラワイドにちゃんと対応しているのか」といった基本情報から、「プレイするためにはこんな工夫が必要」といった裏技のようなものをまとめた、ウルトラワイドゲーミングの総合データベースサイトが海外に存在する。それが「Wide Screen Gaming Forum」だ。
内容としては、運営者がパワーユーザー達からの情報を精査してまとめている情報サイトで、基本的にユーザー有志によって作成されているサイトなので、掲載情報の取り扱いや活用については各自の責任に基づいて実践していただきたい。
また、表記言語は英語のみだが、取り扱われている情報は、中学英語くらいの知識で十分に読める内容なので恐れることなかれ。
このWSGFサイトの基本的な使い方を紹介しよう。
筆者がここを訪れるのはやや古めのゲームを引っ張り出してきてウルトラワイドゲーミングで遊ぼうと考えたとき。「そういや、このタイトルって、ウルトラワイドに対応しているのかな」と思ったときによく訪れている。
WSGFのトップページからサイトメニューの「Games DB」(データベース)のページに飛んで、探したいゲームタイトルを「Game Title」欄に入力して検索し、ヒットすれば、そのページを参照する……という感じで使っている。
最近は、ほとんどのPCゲームが、最初からウルトラワイドに対応している関係からなのか、2022年の夏くらいからWSGFの更新頻度は減っているようだ。なので、WSGFは最近作のウルトラワイド対応状況を調べるよりも、過去作の対応を調べるのに向いている……と言えるかもしれない。
実際の使い方の一例として「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」を検索してみるとする。まず、Games DBの検索窓に「sekiro」と入力して検索を実行すると以下のような結果が出る。
入力単語はゲームタイトルの一部でもよいが、その場合はかなりたくさんの候補がヒットしてしまうかもしれない。そうした場合は、発売年で絞れる「Year」欄の検索オプションなどを組み合わせると目的のタイトルが見つけやすくなる。
また、検索処理に柔軟性がないようで、たとえば「スターウォーズ」シリーズのゲームを検索したい場合「starwars」とstarとwarsを一語つながりで検索してしまうとヒットしない。正式タイトルの「star wars」と検索しないとだめなのだ。ちょっとこのあたりは有志サイトということで使い勝手は荒っぽい。
お目当てのタイトルに到達できた場合は、そのタイトル部分をクリックすることで、当該タイトルのウルトラワイド対応に関する情報を閲覧できる。
「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」の場合は以下のような結果となる
画面右側は、ただのゲームの基本情報なので特に気にする必要はなし。チェックすべきは左側の「Support Summary」だ。
「Widescreen」「Ultra/Super-Wide」「Multi-Monitor」「4K UltraHD」の項目は、そのゲームで表示可能な画面(アスペクト比)の種類を表しており、登場順に意訳すると以下のようになる。
項目 | 説明 |
---|---|
Widescreen | 16:9 |
Ultra/Super-Wide | 21:9や32:9のウルトラワイド |
Multi-Monitor | 複数画面(マルチモニター) |
4K UltraHD | 4K(3,840×2,160ドット) |
今や対応が当たり前の「Widescreen(16:9)」の項目までを設けているのは、このサイトがアスペクト比4:3が標準とされていた90年代から2000年代初頭のレトロな3Dグラフィックスゲームに関しても網羅しているため。
今回の事例として取り上げている「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」では「4k UltraHD」は空欄となっているが、近年の作品は4K対応が当たり前となっているためなのか、ほかのタイトルでもここが空欄となっていることが多い。
本項の趣旨では、21:9や32:9のウルトラワイドモニターとの組み合わせでのゲームプレイに主眼を置いているので「Ultra/Super-Wide(21:9や32:9)」のところだけをチェックすればよいことになる。
表の横軸を見ると「Support」「Method」「HUD」がある。これらも順番に意訳すると「Support」はウルトラワイドへの画角の設定手法についてを表している。
「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」では「Hor+」となっているが、これはHorizontal Plusの意で「水平方向に画角を広げた画角設定となる」ことを表す。結論から言うと、ウルトラワイドゲーミングにおいてはこの「Hor+」が理想となる。
逆にここが残念なパターンもある。それが「Ver-」(Vertical Minus)だ。これは、レンダリング用のカメラ画角がゲーム側で基準アスペクト比(多くの場合は16:9)に固定されていて、21:9や32:9などのアスペクトモードが採択されたときには、基準アスペクト比の画角から上下方向を切り取って描画するモードになる。
言うなれば「事実上のトリミング」のような映像になるので、ウルトラワイドでプレイする意味はほとんどない。
「Method」は、ウルトラワイドの実現方法のことを意味しており、「Native」はゲーム側で完全対応がなされていることを意味する。
「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」においては、16:9は当然のごとく完全対応なわけだが、ウルトラワイドやマルチ画面については「Hack」となっていることに気がつく。この「Hack」とは、外部アプリケーションを用いたり、あるいはバイナリの書き換えによって対応しなければならないことを意味している。
WSGF上のページでは「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」のウルトラワイド化については、バイナリ書き換えの手法しか記載されておらず、一般的なPCゲーミングファンはここであきらめた方がよい。
もう少し、深みに“はまりたい人”は、ここであきらめず、Googleなどで「sekiro ultrawide mod」などと検索すると、海外のModコミュニティサイトの「NEXUSMODS」などが引っかかることだろう。興味がある人は「その筋」の世界に足を踏み入れてもいいかもしれない。
ゲーム本体のバイナリを書き換えるよりは、MODを使った方がゲームそのものを破壊する可能性は低いが、悪意あるプログラムが紛れ込んでいる可能性も否定はできないので、PC初心者は「最新作ゲームに対するできたてのMOD」に手を出すのはやめておいた方がいいだろう。多数の人柱の方々からの情報が集まった頃合いで慎重に活用するようにしたい。
なお、MODについては、各ゲームタイトルごとに特化した話題になっていくので、本項ではこれ以上、詳細には触れないが「WSGFの使い方の流れ」としては大体こんな感じだ。
「HUD」は、ゲーム画面にオーバーレイ表示される体力ゲージなどの補助2Dグラフィックスが正しく表示されるか、を表す項目だ。「Proper」は「オリジナル状態に相当」くらいの意味になる。「Optimized」は、画面のアスペクト比が変わっても、そのアスペクト比に応じて自動的に最適な状態に調整される…の意。表示がおかしくなる場合は、ここが「Hindrance」と記載される。
このほか、WSGFの各ゲームタイトルごとの情報ページには、「Rendered Cut-Scene」「FMV Cut-Scene」といった項目があるが、これらは、イベントシーン(ムービーシーン)におけるウルトラワイド対応度を表している。それぞれ次のような意味になる。
- Rendered Cut-Scene … リアルタイムムービーシーン
- FMV Cut-Scene … プリレンダームービーシーン
「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」の場合は、リアルタイムムービーシーンは理想的なウルトラワイド対応である「Hor+」対応だが、プリレンダームービーシーンはゲーム画面とは無関係に固定アスペクト比(つまりゲーム画面のデフォルトアスペクト比の16:9)となる「Static Aspect」となっている。
ウルトラワイドゲーマーは「Flawless Widescreen」も要チェック!
NEXUSMODSから、ゲームタイトルごとにウルトラワイド化のMODを手に入れてくるのは大変だなと思った人も少なくないと思う。
そんなことを思った人はあなただけではないようで、多様なPCゲームのウルトラワイド化MODを集約したアプリ「Flawless Widescreen」が開発され、ドネーションウェアとして公開されている。
ドネーションウェアとは、基本的にはフリーソフトのように無料で使えるが「気に入ったら幾ばくか寄付してくださいね」というタイプのアプリのこと。
インストールは簡単。公式サイトの「Flawless Widescreen」にアクセスし、「Download」メニューの先にあるリンクからダウンロードしたインストーラーを実行すればOK。
「Flawless Widescreen」は、2014年以来更新が止まっており、対応ゲームタイトルの一覧も少ないように見える。確かにアプリ本体はその通りなのだが、「Flawless Widescreen」自体は、ウルトラワイド化MODをプラグイン方式に追加できるような構造になっており、有志のウルトラワイドゲーミングファン達の間で新しいプラグインが今も開発されている。
前述したように、近年のゲームタイトルの多くが最初からウルトラワイドへの対応が行なわれているものの、ごくまれに16:9固定のタイトルがリリースされることがある。
そんなタイトルへの対応プラグインの提供が比較的早く行なわれているので、前出のWSGFでウルトラワイド化への対応度が「Hack」となっていた場合は、ダメ元で「Flawless Widescreen」を試してみるといいかもしれない。
使い方は簡単。ウルトラワイド化したいゲームをそのPCにインストールしたあとで、「Flawless Widescreen」を起動し、画面左下の「Check for Updates」ボタンをクリック。すると「Available Plugins」のリストが更新されるので、お目当てのゲームタイトルがこのリスト中にあるかを検索しよう。
もし見つかれば、リスト中の当該タイトル名をクリックすることで、プラグインをインストールできる。
プラグインのインストール後、「Flawless Widescreen」画面の左から、ウルトラワイド化したい当該タイトルの項目を開いて「Fix Enabled」をチェックすれば、基本的にはそのゲームのウルトラワイド化が実践される。
うまくいかない場合は、ゲーム起動後に改めて「Fix Enabled」をチェックしよう。後述する事例のように、別の理由でウルトラワイド化が実践されない場合もあるので、「あれ?」と思ったら各プラグインの画面の解説文を熟読しよう。有効化の手順が書かれているはずである。
筆者が直近で「Flawless Widescreen」にお世話になったのは昨年発売されたビッグタイトル「Elden Ring」のウルトラワイド化のとき。
「Elden Ring」は「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」と同じフロム・ソフトウェア開発のゲームで、同社は徹底してウルトラワイドへの対応はしない方針のようで(笑)、「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」と同様、「Elden Ring」もウルトラワイドモニターへの対応が行なわれていない。
筆者の場合、前出のWSGFには「Elden Ring」の情報が見つからなかったことから、ネイティブ対応しているのかと思ったら対応していなかったので、ダメ元で「Flawless Widescreen」にあたる……という流れであった。久々の起動だったので、結構な対応タイトル数がリストに追加されたのだが、その中に、なんと「Elden Ring」があった。ラッキー!
「Elden Ring」は、ゲーム本体の実行前に、外部プログラムからの介入を防止するEAC(Easy-Anitcheat)が起動されるため、これが「Flawless Widescreen」の動作を阻害してしまう。そう、ただ単に「Fix Enabled」をチェックしてもウルトラワイド化が行なわれないのだ。
なので、ゲームの起動の際には、上の画面の下に書いてある英文にあるようにSteamの画面から起動するのではなく、「eldenring.exe」の実行ファイルを“直”起動する必要がある。
あるいは「start_protected_game.exe」を適当なフォルダに移動させてしまい、「eldenring.exe」を「start_protected_game.exe」にリネームしてしまえばSteamから起動ができる。いずれにせよ、EACを無効化して起動した場合、オンライン要素はプレイできなくなる点に留意したい。
また、筆者には別の事情で「Flawless Widescreen」を使ったケースもあった。それは、2022年に発売されたPC版の「God of War」を32:9のウルトラワイドゲーミングを楽しもうとしたときのこと。
「God of War」は、ウルトラワイドにネイティブ対応していたのだが、なぜか21:9までの対応だったのだ。しかし、調べて見ると「Flawless Widescreen」を使うとこの「ウルトラワイドは21:9まで」の制約を取り払えることを知る。
ウルトラワイドには対応しているが、希望するアスペクト比にできない……といった場合にも「Flawless Widescreen」が役に立つかもしれない。
【ミニレビュー】LGの32:9モニター「49WL95C-WE」をつかってみた!
今回も、筆者が注目したウルトラワイドモニターを1つ紹介したい。それはLGの「49WL95C-WE」だ。
2023年5月時点での実勢価格は17万円~18万円。筆者はこの製品がずっと気になっていたこともあって、昨年から価格の変遷をチェックしていたのだが、昨年は13万円前後で販売されていたことを確認していた。
しかし、為替レートの関係だろうか、今年になって18万円前後にまで価格が上がってしまった。発売は2020年なので最新製品ではないのだが、スペック的に優秀なことから、今でも注目度の高い製品である。
前回と同様、今回も、LGから49WL95C-WEの実機をお借りして、さまざまなPCゲームを32:9で楽しませてもらった。
その様子は筆者のYouTubeチャンネルで紹介しているので、動いている様子などは下の動画を参照してほしい。HDRで配信しているので、HDR対応機器で視聴していただけると雰囲気がさらに良く伝わると思う。
さて、49WL95C-WEの画面サイズは49型。アスペクト比は前述したように32:9である。前回紹介した43型のアイリスオーヤマのILD-AUW43FHDS-Bよりもふたまわりほど大きい。
解像度は、5,120×1,440ドットで、これまたILD-AUW43FHDS-Bの3,840×1,080ドットよりも高くなっている。
イメージ的には27型のWQHD(2,560×1,440ドット)解像度の画面を2つ横に並べた画面構成に等しということになる。
映像パネルは、メーカーがLGということもあって自ずとIPS型液晶パネルを採用。画面加工は非光沢タイプとなっている。
最大リフレッシュレートは61Hzとなっており、いわゆるハイリフレッシュレートには対応していない。そう、本機はゲーミング向けではなく、一般用途向けのモニター製品なのである。
湾曲率は3,800Rで、半径3.8mの円弧に相当する。湾曲率は、かなり緩やかだと言える。「あまり曲がっているのは使いにくそう」と考えるユーザーにはおすすめだ。逆に「画面に取り囲まれた感を味わいたい」という人は、湾曲率1,800R以下を採用する別製品を選んだ方がいいかもしれない(湾曲率は数値が小さいほど強いカーブとなる)。
スタンドを含む大きさは1,215×307×434~544mm、スタンド込みの重さは15.2kgだ。見かけ通りの大きさと重さである。
今回の評価では、筆者1人で2階に上げての組み付け、設置を行なったが、横に長い製品なので安全を期するのであれば運搬や設置はできれば2人以上で行ないたい。
スタンドは左右±15度のスイベル機構、上15度、下5度のチルト調整に対応するほか、約11cmの高さ調整にも対応する。
スタンドが専有する面積は実測で幅720×奥行307mmだった。スタンドが横に広いので奥行きはともかく、幅広な設置台が必須となる。なお、この横幅ギリギリの台に本機を設置した場合は、画面が左右に約25cmずつはみ出ることになる。
入力端子はHDMI 2.0が2系統、DisplayPort1.4が1系統実装されている。USB Type-C入力端子もあり、こちらはDisplayPort Alternate Modeに対応しているほか、85WのUSB PDに対応している。
筆者が「大画面☆マニア」でのテスト用に借りしているGIGABYTEのノートPC「AERO 14 OLED BMF-72JPBB4SP」にUSB Type-Cで接続してテストしてみたところ、リフレッシュレート60Hzの5,120×1,440ドット解像度にて映し出すことができた。
また、HDRモードでも表示が行なえたので、DisplayPortと同等の使い方ができそうだ。変換アダプタなどでDisplayPortに変換して利用することもできることだろう。
USB Type-Aの4分配に対応したUSB 3.0ハブ機能も搭載。なお、USBハブ機能は前出のUSB Type-C端子を活用したときにのみ機能する。一般的なモニター製品にある、USBハブ機能用のアップストリーム端子(USB Type-B端子)を本機は装備していない。
ウルトラワイドモニターでは、2画面入力機能を搭載したものが多いが、49WL95C-WEもご多分に漏れず、ユニークな2画面機能を有している。
49WL95C-WEでも、大画面に小さい画面をはめ込んで表示させる「PIP」(Picture in Picture)モードと、2画面を横並びに表示させる「PBP」(Picture by Picture)モードの両方に対応しているが、その表示バリエーションはなんと8つも用意されている。
しかも、PBPモードには、驚きの3画面モードを搭載しているのだ。3画面モード時は中央に2,560×1,440ドット画面、左右に1,280×1,440ドット画面を表示可能となっている。
PCの場合は、このモードに限り、1,280×1,440ドットのデスクトップ画面を出力できるようになるのでアスペクト比が狂った表示にならない。
なお、2画面モード時は、普通に2,560×1,440ドット画面を左右に並べた表示に加えて、なんとアスペクト比21:9の3,440×1,440ドット画面と、アスペクト比11:9の1,680×1,440ドット画面の「非対称2画面」モードも選択できる。
今回も、入力遅延を実測したところ、画面解像度によらず、リフレッシュレート60Hz時は1.8msであった。フレームレート換算で、60Hz時は約0.1フレーム遅延となるため、リアルタイム性の高いゲームプレイにおいてもなんの不満はないはずだ。
念のために2画面(あるいは3画面)モード時の入力遅延を実測したところ、リフレッシュレート60Hz時に27.0ms、フレームレート換算にして60Hz時は約1.6フレームであった。この程度であれば、リアルタイム性の低いゲームであればプレイできそうだ。
サウンド機能として、ヘッドフォン端子のほか、なんと出力10W+10Wのステレオスピーカーをも内蔵する。音質は一般的なPCスピーカー並みか、あるいは一般的なTV並み……といったところ。
低音増強の「Rich Bass」機能も搭載されているため、音量を上げるとそれなりに迫力を増した出音となる。失礼ながら想像していたよりはだいぶ高音質だったので驚いた(笑)。カジュアルに動画やゲームを楽しむ用途には十分に使えると思う。
バックライトはエッジ型が採用されている。標準輝度は公称値350cd/平方m。HDR表示に対応するが、VESA DisplayHDR認証は受けていない。
実際に、映像評価ソフト「The Spears & Munsil UHD HDRベンチマーク」を使ってHDR表現テストを実行してみたが、エリア駆動には対応していないことを確認した。
また、HDR映像に対するトーンマッピング性能も同ベンチマークソフトにてチェックしたが、白は1,000cd/平方mまで、赤は200cd/平方m、緑は450cd/平方m、青は480cd/平方mあたりまでの階調表現ができることを確認した。最大1,000cd/平方mくらいまでのHDRコンテンツであれば違和感なく視聴することができると思う。これ以上の高輝度表現を含むとやや高階調が飽和気味となる。
今回の評価では、HDR表現に対応した「ホグワーツ・レガシー」「Dead Space(リメイク版)」「BIOHAZARD RE:4」などを49WL95C-WEでウルトラワイド&HDRプレイしてみたのだが、発色も良好で、色鮮やかなゲーム映像が楽しめた。
特に太陽や暗闇の中のたいまつなと、自発光で輝く高輝度表現は、液晶らしい強い高階調表現でリアルに描き出されていた。
画面中央から見ていると、画面両端方向はかなりの「斜め見」となるが、さすがはIPS型液晶パネル、色変移はほとんどない。ただし、暗部の階調はやや見えにくくなり「黒つぶれ」気味となることを確認した。
このあたりは、本機が、もう少し湾曲していれば改善できるはずなので、ちょっと惜しい気がする。次期モデルは湾曲率を上げたモデルも設定してほしい。
さて、実写映像のHDR映像としては、大画面☆マニアで定点観測的に見ている映画「マリアンヌ」(UHD BD)でチェックしてみたが、自発光表現のHDR感(≒ハイコントラスト感)は及第点といった印象だった。エリア駆動を行なっていないこと、そしてネイティブコントラスト性能がそれほど高くないIPS型液晶ということもあって、若干の黒浮きを感じた。
よって暗部階調の締まりでコントラストが稼げない画質特性となるため、明部階調の明るさ方向の引き伸ばしでHDR感を演出している画調チューニングが行なわれている。
この映画では、終始暗いシーンで展開する「暗がりのアパート屋上で展開される偽装ロマンスシーン」がある。ここはIPS型液晶機にとっては苦手な場面のはずなのだが、暗がりの中の2人の主役、ブラッド・ピットとマリオン・コティヤールの肌色は優秀だった。
暗いシーンなので、液晶機だと肌色が灰色に落ち込んでしまうこともよくあるのだが、49WL95C-WEでは、非常に暗いながらも肌に赤味が残っており、さらには主役2人の「地の肌の色」の違いまでが判別できた。このほかのシーンも見てみたが、カラーボリュームの作り込みは、結構優秀だと思う。
もし、VESA DisplayHDR認証を通していたとしたら「VESA DisplayHDR 400」あたりはとれていたのではないだろうか。
そうそう、今回の「マリアンヌ」は16:9フレームの中央に21:9映像を入れ込み、上下に黒帯ができた状態で収録されていたのだが、こうした映画コンテンツを視聴する際、32:9の49WL95C-WEでは、どのように表示がなされるのか、気になる人もいることだろう。
通常のアスペクト比モードでは、32:9画面の中央領域に16:9フレームが表示されるだけになる。つまり、この16:9フレームに21:9収録された映画はかなり小さく表示されてしまう。
そこで本機に搭載されている特別なアスペクト比モード「シネマ1」「シネマ2」を用いれば、この状況を解決してくれるのではないか……と思って試してみたのだが、残念。16:9フレーム中の中央の映画コンテンツ部分だけをトリミングしてくれるところまではいいのだが、これを32:9の画面全体に横方向に引き伸ばして表示してしまうのだ。そう、アスペクト比が狂うのだ。画面中央の21:9の範囲に表示してくれるモードがなぜか、ないのである。
21:9の3,440×1,440ドット表示が行なえる「2画面機能」を使ったらどうなる?……と思って調べて見たのだが、2画面モード機能時はシネマ系アスペクト比モードが選択できないので、結局こちらでも、2,560×1,440ドットの16:9領域に映像が表示されるだけで、あまり美味しいことにはならないのであった。
また、この実験で気が付いたのだが、本機では、2画面モード時はHDR表示が行なえなくなる。普段からHDR表示を常用している人は要注意だ。
まとめると、筆者は本機に対して次のような印象を持った。参考にしてほしい。
- 32:9ウルトラワイドゲーミング用途にも使える
- 湾曲率が弱いので平面に近い画面がお好みの人向き
- IPS型液晶パネル採用で発色性能は優秀
- バックライトがエッジ型でエリア駆動未対応なので黒浮きはある
- HDR表示性能は及第点。認証未取得機だが、筆者推測でDisplayHDR 400程度か
- サウンド機能は結構優秀
ちなみに、この原稿執筆中に、LGが、32:9のウルトラワイドモニターの新作として「49GR85DC」を発売するというアナウンスを行なった。
新モデルは、湾曲率も1,000Rとなるそうで、画面は強い曲がりになっていそうだ。HDR表示性能もVESA DisplayHDR 1000の認証を取得したそうなので、49WL95C-WEから相応にパワーアップしているように思える。
日本では競合サムスンの「Odyssey G9」シリーズが販売されていないので、そこのニーズを突くことができるかもしれない。
なる早の登場を期待したい。今から楽しみである。