トピック

ゲームからWebinarまで。マウスのDAIVとATEM Miniで構築するハイエンド配信環境

~ワンマンオペレーションでもTV番組のようなコンテンツを配信可能

 コロナ禍の影響で、ビジネスシーンでは、社員向けの説明会や、顧客向けのプレゼン、そしてセミナーといったイベントや業務をオンライン化する流れが加速している。YouTubeライブでの配信や、もっと手軽にZoomでの会議形式でのWebinarを考えているけれど、どんな機材、ソフトを揃えればいいのか……と戸惑っている人も少なくないだろう。

 そうした中、マウスコンピューターが、Webinar、ネット配信に最適なシステムの販売を始めている。パワフルながら軽量なクリエイター向けPCである「DAIV 5N」シリーズ注文時に、Blackmagic Designの配信機材である「ATEM Mini」を同時購入可能となった。このセットを使えば、非常にコンパクトで強力な配信環境を構築できる。もちろんビジネス用途に限らず、ゲーム実況など含めた個人ユースにも好適なシステム。実際どんなシステムなのか紹介してみよう。


GeForce RTX 3060を搭載するクリエイター向け15.6型ノートDAIV 5N(32GBモデル)

 実は以前からマウスコンピューターでは、デスクトップDAIVシリーズのBTOオプションとしてATEM Miniを同時に購入することができるのだが、5月からそれがDAIVのノートにも展開された。同時に購入することができるのもメリットだが、何よりきちんと動作検証されている点が特に企業ユーザーにとっては大きな安心材料となる。

 今回、試用したのは、15.6型ノートである「DAIV 5N(32GBモデル)」とATEM Miniの組み合わせ。このセットを使ったハイエンドパーソナル動画スタジオシステムは、本格的な配信環境を整えたいけれど、できるだけコンパクトにまとめたいというニーズにピッタリなもの。そして、コンパクトでありながら、プロの配信業者が使用しているシステムに匹敵するものである。

マウスコンピューター「DAIV 5N」、Blackmagic Design「ATEM Mini」、同「Pocket Cinema Camera」

 まずはPC本体であるDAIV 5Nについて簡単に紹介しよう。本製品は、スリムな15.6型ノートPCでありながら、第10世代のCore i7-10870H(8コア16スレッド)を搭載するとともに、グラフィック機能としてGeForce RTX 3060を搭載しているという点で、非常にパワフルなクリエイター向けのマシンだ。クリエイター向けではあるが、性能的にはもちろんゲームもストレスなく動く。マグネシウム合金に覆われた筐体はスタイリッシュであると同時に、頑丈ながら軽量に抑えられているポイントにもなっている。

 主な仕様は以下の通り。

DAIV5N(32GBモデル)主な仕様
OSWindows 10 Home
CPUインテル® Core™ i7-10870H プロセッサー
グラフィックスGeForce RTX 3060 Laptop GPU
メモリ容量32GB(16GB×2/デュアルチャネル)
M.2 SSD1TB(NVMe対応)
チップセットIntel HM 470
光学ドライブ
パネル15.6型2,560×1,440ドット(WQHD)非光沢
インターフェイスUSB 3.1×2(内1基はType-Cで画面出力対応)、USB 3.0×2、HDMI、2.5Gb Ethernet、microSDカードスロット、Windows Hello対応100万画素Webカメラ、Wi-Fi 6、Bluetooth 5
バッテリ駆動時間約7.5時間
サイズ(幅×奥行き×高さ、突起部含まず)355.5×236.7×20.6mm
本体重量約1.73kg
価格219,780円
DAIV 5N
液晶は、sRGB比 100%の色域に対応した15.6型WQHD
天板にDAIVのロゴ。全体的に高級感あるデザインだ
右側面
インターフェイスは、USB 3.0×2とmicroSDカードスロット
左側面
インターフェイスは、USB 3.1と音声入出力
背面
インターフェイスは、USB 3.1 Type-C(画面出力対応)、HDMI、2.5G Ethernet、電源端子
テンキー付きフルキーボード
LEDバックライトを内蔵
Core i7-10870HとGeForce RTX 3060 Laptop GPUを搭載
THX Technologyにも準拠


破格の価格で4系統HDMI入力をそなえ、USBカメラとしても使えるATEM Mini

ATEM Mini

 もう一方の主役であるATEM Miniとはどんな機材なのだろうか? これはBlackmagic Designのネット配信システムであり、プロからアマチュアまで多くの人がネット配信で使っている、いま大人気の機材だ。

 Blackmagic Designはオーストラリアに本社がある映像機器の老舗メーカー。映像や放送におけるプロ向け製品を提供し、世界中で大きな実績を持つ業務用機器を開発、販売している。そのBlackmagic Designが2019年11月、まさにパンデミックになる直前のタイミングで、放送品質を持ちながら、手軽で、コンパクトで、非常に低価格なATEM Miniをリリースしたことで、大ヒットし、入手困難な状況がずっと続いていた製品でもある。

 もう少し具体的に言うと、これはスイッチャーと呼ばれるジャンルの機材で、HDMI 4系統の入力を持ち、そこに接続したカメラやPCなどの映像を切り替えたり、合成することができる。TV番組では、複数のカメラを別のアングルから構えながら、それを自然に切り替えながら進行しているが、それと同様のことができるプロ仕様の機材なのだ。そして単体価格は3万5,000円前後と、機能から考えると破格と言っていい。

4系統のHDMI入力と1系統の出力を装備

 もちろん、単純にブチブチと入力を切り替えるHDMI切替器とは、まったく性格が異なるもの。切り替える際にゆっくりと滑らかに移行していったり、右から左へと画面が切り替わっていくエフェクト効果を出したり、ピクチャーインピクチャー(PinP)といって画面の隅に別のアングルの画面を差し込んだりといった演出を可能にする切替器なのだ。

ATEM Miniにつないだカメラ映像をOBS Studioに表示させたところ
こちらはATEM MiniにつないだPCでPowerPointを表示させたところ
このようにATEM MiniでPinP表示させることができる

 そして、そのようにして用意した映像を、USB経由でPCに入力できるというのが最大のポイント。PCからATEM Miniは、USBカメラとして認識されるので、ZoomやTeams、Google Meets、Skypeといったオンライン会議システムでカメラ入力をATEM Miniに指定すれば、そのまま利用することができるし、OBS Studioのようなネット配信ソフトを利用すれば、YouTubeライブなど、各種配信サービスで1080pの高画質配信ができるのだ。

ATEM Miniは、PCからはUSBカメラとして認識される
ZoomのようなWeb会議ソフトからもATEM Miniをカメラとして選択できる

 ここではOBS Studioの詳細については割愛するが、これは無料で入手できるフリーウェアでありながら、数々の配信現場で使われている強力なソフトであり、ATEM MiniとOBS Studioがあれば、どんな配信でもできるといっても過言ではないだろう。


ATEM Miniの基本的な使い方

 ただ、ATEM Miniのコンパクトな筐体に数多くのボタンが並んでいるので、これを見ると、ホントに自分で使えるのだろうか……と不安に感じる人もいるかもしれない。でも、触ってみれば実に簡単であることが分かるはずだ。ここから基本的な使い方を解説しよう。

 基本的には1、2、3、4と並んだボタンを押してHDMIの入力を切り替えていくだけ。この際、EFFECTというところに並んでいる、フェードやプッシュなど6種類の画面切り替え(トランジション)設定を変更できる。クロマキー機能もあるので、ATEM Miniのみで背景の削除や合成も可能。また、1~4のボタンの上にある小さなボタンで入力音声を調整できるようになっている。触ってみれば初めての人でもすぐに理解できる。

1、2、3、4と書かれた大きなボタンを押すだけで、入力を切り替えできる

 このように、その画像・音声をZoomなどのオンライン会議システムのソフトや、OBS Studioに入力すれば、ATEM Miniのハードウェア上のボタン操作だけで、すぐにWebinarなどを実現させることができる。例えば、引きの映像用と手元用の映像用とでカメラ2台、プレゼンテーション資料を出すPC1台の3入力あれば、十分過ぎるクオリティーでの配信ができる。

カメラの制御までできるATEM Software Controlソフト

 ATEM Miniがすごいのはそれに留まらない。実はこのボタンで操作しているのは表面上の一部の機能だけであり、DAIV 5Nに「ATEM Software Control」というソフトをBlackmagic Designサイトから無料で入手し、起動することで、フル機能にアクセスすることが可能になる。

ATEM Software Controlの画面

 簡単に紹介すると、このソフトはスイッチャー、メディア、オーディオ、カメラコントロールの4つの画面から構成されている。スイッチャーはATEM Miniのハードウェアとしてのボタンを画面に展開したものだが、ATEM Mini本体よりさらに細かく設定できるようになっており、たとえばスイッチャー設定の調整、ライブ切り替え、キーの調整、トランジションの適用、グラフィックのオーバーレイといったことが可能だ。

ATEM Software Controlを使うと、スイッチャー設定の調整、ライブ切り替え、キーの調整、トランジションの適用、グラフィックのオーバーレイなど、ATEM Miniの本体にない機能も利用できる

 メディアは、グラフィックファイルを20個までアップロード可能にするもの。カメラ画像にオーバーレイすることもできるから、たとえばタイトルやテロップなどを仕込んでおくことで、配信中にリアルタイムでそれらを流し込み、より分かりやすいプレゼンテーションが可能になる。

メディアにグラフィックファイルをアップロードしておけば、タイトルやテロップなどをリアルタイムで合成できる

 オーディオは、まさに業務用のミキシングコンソール。分からなければ、触らなくてもいいのだが、4つあるHDMIのオーディオ入力に加え、ATEM Miniにはアナログのマイク入力が2系統あるので、これらをミックスすることが可能。しかも、それぞれのチャンネルのEQ(イコライザー)を細かく調整しり、コンプレッサ/リミッターも独立して搭載されているので、マイクに近づいても音が割れないようにしたり、遠ざかっても小さくならないようにするといった設定もできてしまう。

業務用レベルのミキシングコンソールも搭載
チャンネルごとのEQやコンプレッサ/リミッターも搭載

 カメラコントロールは、Blackmagic Designの「Pocket Cinema Camera」というミラーレスカメラをリモートコントロールできる機能。Pocket Cinema Cameraまで導入するとなると、かなり高価にはなってしまうが、カメラ本体を触らなくても、HDMI経由でソフトウェアからカメラのコントラストや色温度などの調整を細かくできてしまう。加えて、ズームやフォーカスの調整までもがカメラに直接触れることなくできてしまう。

 つまり、配信オペレーターは1人で、複数台のカメラの切り替えから、プレゼン資料の表示、カメラのズーム制御など、通常は2~3人で行なうTVスタジオさながらの作業が手元だけで完結できることになる。

Blackmagic DesignのPocket Cinema Camera 4K
4,096×2,160ドットのRAW撮影にまで対応する
カメラコントロール画面
これを利用することで、HDMI経由でソフトウェアからカメラのコントラストや色温度などの調整や、ズームやフォーカスの調整までもができる

 さらに、このカメラはいわゆるタリー機能にも対応してるので、ATEM Miniのボタンでカメラを切り替える際、出演者はどれがオンエア中になっているかをカメラを見て確認できるというのも便利なところだ。

HDMI 1につないだPocket Cinema CameraをATEM Miniで選択すると、カメラ右上のLEDが赤く点灯
別の入力を選ぶと消灯。これにより、出演者がどれがオンエア中になっているかを確認できる

 あまりにも豊富な機能を持っているので、すべての機能を理解する必要はないし、興味のある機能だけを試す程度でも十分だろう。そもそも、このATEM Software ControlはATEM Miniのために開発されたソフトではなく、Blackmagic Designの業務用機器の制御用に以前から存在しているソフトであり、そこにATEM Miniが対応したというのが実際のところ。だからこのソフトの中にはグレイアウトされて使えない機能もいろいろあるのだ。逆にいえば、ATEM Miniとはまさに業務用映像機器をコンパクトに切り出したプロ機材のミニ版であるわけだ。


ATEM Miniとの動作検証が取れているマウスコンピューターのDAIVシリーズ

ワンマンオペレーションのイメージ

 そんなATEM Miniではあるが、実はBlackmagic Designは、ATEM Miniに対応できるPCスペックについて発表を行なっていない。だからシステム導入する際、どのPCで使うか不安に感じる人も少なくないようだが、今回紹介したマウスコンピューターのDAIV 5Nは、メーカーが動作保証する組み合わせなので、安心して使うことができる。

 また、DAIV 5NはGeForceによるハードウェアエンコード機能を搭載しているため、配信において大きな負荷となるエンコードも安定して稼働させることが可能だ。加えてメモリも余裕の32GBを搭載し、ストレージについても高速なNVMe対応のものを1TB搭載しているので、容量が大きくなる動画についても、外部ストレージに頼ることなく保存できる。

 ノートPCというフォームファクタについても、配信場所のレイアウトなどをちょっと変えたいといった場合に、DAIV 5Nと小型のATEM Miniなら手早く設置でき、場所を選ばない点も魅力となる。

 Webinarなどを行なうとなると、どうしても多くのスタッフを配置する必要があり、運用コストがかなり高くなることが指摘されているが、DAIV 5NとATEM Miniの組み合わせであれば、コントロールを集約できるため、スタッフを減らすことができ、コストを大きく抑えることができるのも重要なメリット。今後、ネット配信をビジネスで活用していきたいという場合、ぜひ検討していただきたい。