レビュー

機能満載のZ97マザー「ASUS Z97-DELUXE (NFC & WLC)」レビュー

Z97-DELUXE
発売中

価格:オープンプライス

 ASUSから、機能を多く搭載したハイエンドなIntel Z97 Expressマザーボード「Z97-DELUXE (NFC & WLC)」が発売された。価格はオープンプライスで、実売価格は48,000円前後だ。発売から結構時間が経ってしまったが、全体を写真で紹介するとともに、9シリーズで加わった新機能などを見ていこう。

ベースはZ97-DELUXE

 本製品は、同社の一般向けマザーボードでは最上位となる「Z97-DELUXE」をベースに、Thunderbolt拡張カード、NFCリーダ、Qi対応無接点充電器をセットにしたモデルである。Z97-DELUXE自体は3万円代半ばなわけだが、それに3種類の付加価値が付いた製品となる。位置付けとしては、「Z97-DELUXE/QUAD」の後継に当たる。

 そのためパッケージはそれなりに大きめで、内部は3段構成となっている。最上段にはマザーボード、2段目にはNFCリーダとQi対応無接点充電器、Thunderboltカード、3段目にはケーブル各種やマニュアル、ドライバDVDなどを収納。そのマニュアルとDVDも、NFCとThunderboltカードが別となっているなど、かなりの数の付属品となる。

 まずはZ97-DELUXE本体を見ていこう。高級感のあるつや消し基板をベースに、黒や灰色のスロットとコンデンサを配し、金色がアクセントのVRMヒートシンク、チップセットヒートシンクを採用。その金色は従来の8シリーズから随分と落ち着いたものとなり、つや消し基板とあわせてかなり高級感がある。

 またチップセットのヒートシンクも円形という、ユニークなものとなった。表面も同心円状のヘアライン加工がされており、同社のUltrabook「ZENBOOK」シリーズの天板を彷彿とさせるものとなっている。機能することはもちろん重要だが、デザインも自作PCにおいて重要な要素だ。その点ASUSは同社の高級ノートのデザインを持って来られるあたり、評価したいところだ。

 CPUソケットと、オーディオ回路回りには斜線のシルクパターンによるデザインも入っており、見た目の高級感を高めている。つまるところ、Z97-DELUXEはかなり見た目にこだわっているということだ。本製品を用いて自作PCを組む際は、是非ともアクリル側面パネルによって内部が見えるケースを採用したいところだ。

 対応CPUはLGA1150のHaswell/Haswell Refresh/Broadwellとなっている。メモリスロットは4基。拡張スロットは、PCI Express x16形状が3基(最大x8+x8+x4構成)、PCI Express x1が4基と標準的だ。

Z97-DELUXE (NFC & WLC)のパッケージ
“超”と付くぐらい多い付属品。無線LANアンテナやThunderboltEX II/DUAL用ケーブル、USBケーブルなど、とにかくケーブル類が多い
Z97-DELUXE本体
基板底面
同心円状のヘアライン加工がされたチップセットのヒートシンク
VRMのヒートシンク形状もなかなか凝っている
CPUソケット周囲には、シルクパターンによるデザインが入っている

 一方でストレージインターフェイスは、SATA 6Gbps×6、SATA Express×2、M.2×1とかなり豊富である。豊富なストレージインターフェイスは、チップセット内蔵の6ポートに加えて、2ポートを提供するASMedia製コントローラ「ASM1061」と、「ASM106SE」によるもの。

 以前検証したプロトタイプ「Z87-DELUXE/SATAEXPRESS」での知識をそのまま適用するとすれば、ASM1061はSATA 6Gbpsポート、ASM106SEはSATA Express用だ。もう1つのSATA Expressは、Z97チップセットによる提供である。そしてこのポートはM.2スロットと排他利用となる。

 USB 3.0回りでは、4ポートのUSB 3.0 Hubコントローラとなる「ASM1074」や、2ポートのUSB 3.0ホストコントローラ「ASM1042AE」を装備。これにより合計10ポートのUSB 3.0を備える。

 有線ネットワークは、チップセット内蔵の論理層(MAC)を利用したIntelの「I218-V」と、物理層/論理層を内包したIntelの「I211-AT」のGigabit Ethernetデュアル構成。ASUSはIntelを採用する理由としてTCPやUDPの性能や低いCPU使用率などを挙げている。

 無線LANとBluetoothは、AzureWaveの「AW-CE123H」をベースとした独自のモジュールを採用。採用されているチップはBroadcomの「BCM4352」となっており、867MbpsのIEEE 802.11acとBluetooth 4.0に対応するハイエンド製品となっている。バスはPCI Expressだ。

 多くのコントローラと拡張スロットで、チップセット内蔵のPCI Express x8レーンだけでは不足気味だが、Z97-DELUXEでは1レーンから7レーンに分岐するPCI Expressスイッチ「ASM1187e」を用いることで解決している。共有する帯域が多くなるため、必然的に性能をフルに発揮できないことも考えられるが、こればかりはミドルレンジ向けプラットフォームの宿命なので致し方ない。

SATA 6Gbpsポートを6基搭載するほか、SATA Expressも2基搭載。SATA Expressは4ポートのSATA 6Gbpsとしても利用できる
M.2スロットを搭載
M.2およびSATA Express用に、ASMediaの「ASM106SE」を装備する
チップセットのヒートシンクを取り払ったところ。SATA 6Gbpsコントローラ「ASM1061」が隠れている。その上に配置されている大きいチップは、USB 3.0 Hubコントローラ「ASM1074」
背面のUSB 3.0ポートの近くには、USB 3.0ホストコントローラ「ASM1042AE」を装備
Z97の不足するPCI Expressレーンに対し、ASMediaの1レーンから7レーンに分岐するPCI Expressスイッチ「ASM1187e」を採用
Gigabit Ethernetコントローラは、Intelの「I211-AT」(左)と「I218-V」(右)を搭載する
無線LANとBluetoothモジュールは、AzureWaveの「AW-CE123H」をベースとした独自のモジュールを採用
Super I/OにはnovoTonの「NCT6791D」を採用

 ディスプレイ出力は、HDMI、DisplayPort、Mini Display Portの3系統だ。アナログ出力はないが、3系統同時に出力できるとしており、最大解像度とリフレッシュレートは、DisplayPort系が3,840×2,160ドット@60Hzまたは4,096×2,160ドット@24Hz、HDMIが2,560×1,600ドット@60Hzまたは4,096×2,160ドット@24Hzとなっている。

 オーディオのアナログ回路は、ほかのデジタル信号線と分離するデザインを採用。6シリーズ時代の「MAXIMUS V GENE」で初めて投入された機能であったが、他社も採用を始め、ASUSの9世代ではついにメインストリームにも導入された。コンデンサはニチコンの「Fine Gold」シリーズで、この辺りはこだわりが見えるが、オペアンプやディスクリートのDACなどは搭載されておらず、出力や音質を向上するというよりも、ノイズを低減する意味合いが強い。

 CPU電源は16フェーズで、独自の「DIGI+ Power Control」を採用する。特にオーバークロック向けとは謳われていない製品だが、一般向けと言えども最上位だけあって十分な装備となっている。

背面のインターフェイス。USBが充実しているほか、3系統デジタルでディスプレイ出力できる構成も魅力的だ
CPUの電源は16フェーズで十分な性能だ
本来ノースブリッジが来る位置には、PCI Expressマルチプレクサーチップが隠されていた
メモリスロットは4基で、2フェーズ電源を備える
VRMのヒートシンクは2ピース構成。きっちり密着されている
コンデンサはおそらくパナソニックの導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサ「FP」シリーズの特注品である
アナログとデジタルが分離したサウンド回路「Crystal Sound 2」を採用
サウンド部のみ、コンデンサはニチコンの「FineGold」シリーズを採用する

独自機能と新しくなったBIOS

 ハードウェアの独自機能としては、オンボードの電源ボタン/リセットボタン/CMOSクリアボタン、POSTコード表示7セグメントLEDに加え、CPUとメモリがなくてもUSBメモリからBIOS更新ができる「USB BIOS Flashback」機能を搭載。BIOS更新失敗時や、初期BIOS非対応のCPUとセットで購入した時などには心強い。独自の省電力プロセッサ「EPU」と、オーバークロックプロセッサ「TPU」も備えており、スイッチでオン/オフを明示的に切り替えられるのも特徴だ。

 メモリ周りでは、メモリの相性問題を1ボタンで解決する「MemOK!」ボタンを装備。SPDの自動設定によって起動しない場合でも、独自のタイミング設定によって解決できる。また、初期設定時からXMPプロファイルを読み込む「EZ XMP」スイッチも付き、UEFI BIOSに入らずとも確実にXMPプロファイルを適用できるのが特徴だ。今回試しにリンクスインターナショナルより提供されたCorsairの「Dominator Platinum 2,666MHz/4GB×2」を装着してみたが、難なく2,666MHzで安定動作した。

 オーバークロック向けの機能はある程度備えているとは言え、R.O.G.シリーズのようにオーバークロックには特化していないため、電圧計測のポイントや、同社製ビデオカードと接続するVGA Hotwireなどは備えていないが、一般的なオーバークロックや、オーバークロックの初心者向け機能としては十分だと言えるだろう。

下部に装備されたオンボードの電源ボタン、リセットボタン、POSTコード表示7セグメントLED、CMOSクリアボタン、USB BIOS Flashbackボタン、そしてThunderboltEX II/DUAL用のヘッダ
TPUやEPUのオン/オフはハードウェアスイッチで確実に行なえる
メモリスロット付近には、MemOK!機能ボタンや、EZ XMP切り替えスイッチなどを備える

 Z97-DELUXE (NFC & WLC)独自の付属品の「ThunderboltEX II/DUAL」は、2ポートのThunderbolt 2を提供するものだ。利用するためには、本製品を一番下のPCI Express x16スロットに装着した上で、バックパネルI/OにあるDisplayPortとMini DisplayPortを付属のケーブルでThunderboltEX II/DUALに接続。さらにマザーボード上の「TB_HEADER」から、付属の9ピン→5ピン変換ケーブルを用いながらケーブルで接続する。

 ThunderboltEX II/DUALを利用すると背面のケーブルがかなり煩雑になるので、正直なところThunderboltを最初から利用するつもりならば、ほかのマザーボードを選んだほうが賢明である。とは言え、現時点ではThunderboltを搭載したZ97マザーボードは存在しないので、ThunderboltEX II/DUALはあくまでもZ97シリーズでThunderbolt 2に対応させるためにASUSが施した「応急処置」だと言えるだろう。

ThunderboltEX II/DUALのカード
カバーを取り払ったところ
コントローラには、Intel最新の「DSL5520」を採用。4つのThunderboltチャネルを備えており、つまりは20Gbps転送のThunderbolt 2をサポートする
DisplayPortをマザーボード本体のDisplayPort/Mini DisplayPortと接続する必要があるため、やや煩雑になる

 一方NFCリーダは、NFCのタグに起動するアプリやWindowsログイン機能を割り当てることが可能だ。付属するNFCタグは1個のみだが、安価のため、多くの機能を割り当てたいのであれば適当に追加購入すれば良い。また、Androidビーム機能を使い、スマートフォンで見ていたホームページをPCで見る、画像や動画をスマートフォンに転送するといった使い方が可能だ。

 残念ながら筆者は「iPhone 5s」しか利用していないため、この機能について試せなかった。日本におけるNFCの利用もまだまだこれからと言った印象が強く、本製品はそれを先取りしたというイメージだ。とは言え本製品は2ポートのUSB 3.0 Hubとしても使えるため、繋いでおいて損はないだろう。

付属するNFCリーダ「NFC Express」。現在単体でも実売3,980円で販売中だ
2ポートのUSB 3.0 Hubとしても機能する
NFC Expressのユーティリティ。タグをかざすことでWindowsの自動ログインやアプリケーションの起動が行なえる
Qi対応の非接触充電パッド。USB接続とは言えWindowsで機能するようなものではないため、オマケ的な位置づけだ

 最後にQiに対応した非接触充電パッドだが、これは完全にオマケだと言っていいだろう。ACアダプタが付属しているため、当然Z97-DELUXEに繋げる必要すらない。Z97-DELUXEとの価格差(約1万円)を考えると、まあ、付属していて損はないと言ったところか。

 BIOSだが、8シリーズから一新されたものとなった。まず画面デザインは、これまでブルーを基調としたものから、ブラックをベースにイエローをアクセントにしたものとなった。元々のデザインは6シリーズから3世代に渡って使われたもので、元々は6シリーズのブルーのイメージに合わせたものであったが、8シリーズではチグハグとなってしまった。これが9シリーズで再び統一されたことになる。

 初心者向けの「EZ Mode」では、これまで時刻/システム情報/温度/ファン回転速度表示機能と、システム性能の最適化、そしてブートの順番を選ぶ程度の機能しかなかったが、9シリーズでは時刻の変更やXMPプロファイルの適用、Rapid Storage Technologyのオン/オフ、CPUファン速度の調節など、設定範囲を広げた。また、折れ線グラフなども取り入れ、よりユーザーフレンドリーな操作画面となった。

 さらに初心者向けの機能としては、オーバークロックとRAIDの設定をウィザード式で質問に答えていくだけで設定できる「EZ Tuning Wizard」を搭載しているのも特徴だ。ただ率直に言えば、PC自作初心者がいきなりこのクラスに手を出すにはやや(価格の)ハードルが高いように思う。オマケの機能だと捉えたほうが良いだろう。

 一方で上級者向けの「Advanced Mode」では、レイアウトを一新するとともに、ファンコントロール「Q-fan」が強化され、折れ線グラフのポイント指定で温度に合わせて回転数を制御できるようになった。LinuxなどOSを問わずファンコントロールが可能になるため、メリットは大きい。

 ASUSはUEFI BIOSをかなり以前から開発しており、その完成度は随一だと言えるだろう。

初回起動時に表示されるEZ Mode。表示項目が多くなり、調節可能な項目も増えた
初心者にはとっつきやすいウィザード形式のオーバークロック設定
質問に答えていくだけでオーバークロックを設定してくれる
試用モデルではまだ英語であったが、BIOSの更新で順次日本語のローカライズが進むという
こちらはAdvanced Mode。レイアウトが一新された
オーバークロックに関する「Ai Tweaker」のタブ
設定できる項目はオーバークロック向け製品と遜色ない
従来と同様、CPU電圧をAdaptiveモードやオフセットで指定できる
メモリやチップセット関連の電圧設定も充実している
そのほか見慣れない項目もあり、ヘルプメッセージもまだ英語のままだ
詳細設定のタブ
ストレージ関連の設定
温度やファンの速度のモニタリングも。標準で温度センサーを4つ搭載していることが分かる
起動設定
オーバークロックなどの設定をプロファイルとして保存して呼び出せる
お気に入り登録も、ツリーマップから選択してできるようになり、一覧性が向上した
BIOS上でファンをグラフで設定できるQ-Fan機能
Windows上の綜合ユーティリティ「AI Suite 3」。キャプチャは、5つの機能を備えた「Dual Intelligent Processors 5」を設定しているところ
新たに加わった「Turbo App」。指定したアプリが起動すると、そのプロファイルに応じてオーバークロック設定を適用するものだ
USB充電速度を3倍に高める「Ai Charger+」の設定
オーバークロック設定画面もグラフィカルで分かりやすい
こちらはOS上のファンコントロール機能。ファンの回転速度を検出し、温度に応じて指定した回転数を設定できる

M.2の性能を試す

 最後に、これまでPC WatchではテストしてこなかったM.2の性能について検証してみたい。今回アユートの協力により、PlextorブランドのSSD「PX-G128M6e」(容量128GB)をお借りできたので、これをM.2スロットに装着して検証を行なった。

 PX-G128M6eは、SSDコントローラとしてMarvellの「88SS9183」が使われている。Marvellの製品情報にはないが、PCI Express Gen2のx2モードで動作する高性能なSSDコントローラである。

 検証環境は、Core i7-4770K(3.5GHz、ビデオ機能内蔵)、メモリ8GB(Corsair Dominator Platinum 2,666MHz、4GB×2)、128GB SSD、Windows 8.1 Update(64bit)、1,200W電源といったものである。ベンチマークテストはCrystalDiskMarkとATTO Disk Benchmarkの2種類である。

CrystalDiskMarkのブロックサイズ100MBの結果
CrystalDiskMarkのブロックサイズ1,000MBの結果
ATTO Disk Benchmarkの結果

 結果は上々で、CrystalDiskMarkのテストサイズ1,000MBでは、シーケンシャルリード701.6MB/sec、同ライトで332.3MB/secを達成。ATTO Disk Benchmarkでもリード734MB/sec、ライト334MB/secが最大であった。公称値の770MB/secまでは届かなかったが、以前SATA Expressのプロトタイプで検証した「RAIDR」の結果よりは高速であり、88SS9183の性能が活かされていることが分かる。

 現時点でM.2のPCI Expressを利用したSSDは、このM6eシリーズか、Samsungの「XP941」シリーズしか存在しないが、いずれもSATA 6GbpsのSSDより高速であり、この辺りは性能を重視するユーザーにとって、新たにPCを組む際の指標となりそうだ。

どんどん磨きがかかる自作PCのマザーボード

 ASUSに限らず、Intelの9シリーズチップセットを搭載したマザーボードを俯瞰すると、全体的に旧世代よりも細部がブラッシュアップし、特にUEFI BIOSの改良や、ハードウェアのデザイン性の向上など、初心者でも取っ付きやすくなったような印象を受ける。PC自作市場がシュリンクし、ノートPCへの移行が進んでいると言われる中で、Intelが再度デスクトップPCに注力する戦略を打ち立てた影響によるものとも言える。

 これまでPC自作に興味がなかったが、PCを使ってるというユーザーにも振り向いてもらえるよう、PCパーツの市場の裾野を広げていかなければならない時代である。そのためにウィザード方式のUEFI BIOSを実装したのだろう。一方で、これまでの性能に満足したユーザーがPC自作を離れていかないよう、どんどん新しい機能やデザイン、そして付加価値も取り入れていかなければならない。それをASUSはより高級感のあるヒートシンクデザインや、ファンコントロール機能、NFCとして実装した。

 つまり、新世代マザーボードの理想を最も具現化したのが、Z97-DELUXE (NFC & WLC)だと言えるだろう。やや値は張るものの、製品価値は十分であり、予算に余裕があるのであればぜひとも手にとって貰いたい1枚である。