レビュー
わずか3万円の格安ノートパソコンで仕事も遊びもできるッ! サードウェーブの意欲作「VF-AD4」を使い倒す
~M.2 SSDを増設可能! 実用性がグンとアップ
2020年10月31日 06:55
お金をかければかけるほど、パソコンは高い性能を手に入れることができる。でも、湯水のようにお金を使える人なんてそうそういない。だいたいは使い道とそれに最低限必要な性能を考えて、そのなかで「できるだけ安く、できるだけ高性能なもの」を追い求めることだろう。要するに「コストパフォーマンスが高いもの」を選びたいわけだ。
そういう意味で、ドスパラやGALLERIAで知られるサードウェーブが自社名をブランドに据えた「THIRDWAVE VF-AD4」というノートパソコンは、ちょっとおもしろい存在だ。
税別29,980円という3万円を切る低価格は、これまでの感覚だと「Webブラウジング専用」と割り切って扱われるレベルの製品だったかもしれない。しかし、VF-AD4の中身はどうやら違う。じっくり使っていくと「ただ安いだけのノートパソコンじゃないな」と思わせてくれるのだ。
一体VF-AD4のどこが「ただ安いだけじゃない」のだろうか。いろいろといじり倒して見えてくる、脅威のコストパフォーマンスの高さをみなさんにご覧に入れたい。とりあえず3万円と、できればあと5千円くらいを握りしめながら、いつでも購入ボタンを押せるように準備しつつ読み進めていただければ幸いだ。
3万円とは思えない至れり尽くせりな1台
簡単に説明すると、THIRDWAVEブランドの「VF-AD4」は14型のノートパソコン。CPUに最大2.6GHzのデュアルコアCeleron N4000を、ストレージに64GBのeMMCをそれぞれ採用している。メモリ容量は4GBと少なめで、このあたりのハードウェアスペックは「3万円」の価格相応かな、と思える部分だろう。
ただ、14型の非光沢液晶ディスプレイはフルHD(1,920×1,080ドット)で精細度は高い。14型のおかげかキーボードのピッチにも余裕があり、タイプした印象は15.6型クラスのノートパソコンのようだ。それでいて、筐体は14mm(ゴム脚を除く)と薄く、約1.28kgと十分に軽量。バッテリも約8.6時間もつというから、あちこち持ち運ぶことを考えたときのモバイル性能もなかなか高い。ファンレス設計で静かなのも特徴だ。
インターフェイス類も充実している。USB 3.0の充電兼用Type-CポートとType-Aポートを1つずつ、USB 2.0ポートを1つ備え、Micro HDMIの映像出力端子とマイク・ヘッドフォン端子もある。有線LANはないものの、Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)まで対応する無線LANがあり、microSDXCカードスロットと、HD画質(最大1,280×720ドット)のWebカメラを内蔵している。
おまけにWindows Hello対応の指紋認証センサーを搭載し、標準OSがWindows 10 Proということもあって、セキュリティにシビアでActive Directoryなどへの対応が必要となるビジネス用途にも対応可能。国内メーカー製品という安心感もあるから、わりと至れり尽くせりな1台なのだ。
M.2 SSDの増設でストレージ大容量化、高速化が可能
以上のスペックだけ見てもかなりお得感が漂う構成に思えるのだが、VF-AD4のいいところがさらにもう1つある。それはSATA接続のM.2 SSDスロット(Type 2280用)が用意されていることだ。
正直なところ、内蔵の64GBのストレージだけでは、OSとちょっとした実務アプリケーションをインストールしただけでわりともうキツキツである。格安ノートパソコンが「Webブラウジング専用」と見られがちだったのは、このあたりのストレージ不足によるところが大きかったのではないだろうか。
が、VF-AD4であればM.2 SSDで大容量・高速化が可能だ。用途は大きく広がることになるので、何はなくとも、とりあえずSSDは増設しておきたい。ものにもよるが、現状250GBのSATA M.2 SSDなら実売価格は5千円前後。筆者が手元で確認したところでは250GBのSSDはもちろん、500GBのSSDもきちんと認識してくれた。
SSDのスロットには底面のフタを開けるだけでアクセスできる。精密ドライバー1本で済むので作業自体は難しくないが、注意しておきたいポイントもある。とくに気をつけたいのは差し込むときに表裏を間違えやすいところだ。写真にあるように、SSDの端子の左右に分かれている部分のうち、接点数の多いほうが手前(パソコン正面)側に来る、ということを覚えておこう。
なお、ユーザーがSSDの増設を行なうと、サードウェーブによるメーカー保証の対象外となることだけ注意しよう。慎重に作業すれば壊してしまうことはないと思うが、あくまでも自己責任ということを覚えておきたい。
SSD化で速度はどうなる? 増設したSSDの有効利用の方法とは?
SSDにすることで、元々のeMMCの内蔵ストレージよりデータ転送が高速化されることが期待できる。では、実際にどれくらい速くなるのか、ベンチマークを実行して確かめてみた。
結果は以下の画像のとおりで、リード/ライトのいずれもおおよそ2~5倍の速度に。ここまで変わるとファイルのアクセスやコピーなど、実用時の体感速度もずいぶん変わってくる。5千円以上を追加投資する価値はおおいにあるだろう。
できればSSDのほうをメインの起動ドライブとして使いたいなあ……と思ってしまうのだが、残念ながら起動ドライブを変更する設定項目はBIOS上で見つけられなかった。なので、最初からあるeMMCのストレージはシステム用とし、それ以外のアプリケーション、データ類をできるだけSSDで運用するのが良さそうだ。
新たなアプリケーションは必ずSSDにインストールする、という部分は手動になってしまうが、それ以外のデータ類の保管先についてはWindows 10側の設定を変更しておくと便利だ。
たとえばユーザーフォルダ内の「ドキュメント」、「ピクチャ」、「ビデオ」、「ダウンロード」といった、デフォルトでシステムドライブを保管先にしているものは、個別にほかのドライブ(とパス)に変えることができる。
以下では例として「ドキュメント」フォルダの保管先の変更手順を紹介しているが、ほかのフォルダも同じ手順だ。
クラウドストレージのOneDriveと同期するローカルフォルダについてもSSDに移動しておきたい。そうすれば、知らないうちに共有データでストレージを圧迫されるような状況も回避できるはずだ。こちらはドキュメントフォルダなどとは手順が異なるので、以下を参考にしてほしい。
テレワーク、出先で活用。モバイルバッテリでも高速充電可能なUSB PD対応
SSDを増設して大容量かつ高速になったVF-AD4は、どんな場面で活躍させられるだろうか。まずおすすめしたいのは、今時らしいテレワークなシーンだ。
充電はUSB Type-Cポートが兼ねていると最初のほうで説明したのだが、このポート、じつはUSB PDに対応している。付属のACアダプタももちろんUSB PD対応で、最大出力は45W。そこそこ出力が大きいわりにコンパクトなサイズで、同様に付属しているUSBケーブルと一緒に持ち運ぶのも苦ではない。
電源を確保しにくい場所、たとえばサテライトオフィスの共有スペースやカフェなんかでは、モバイルバッテリと組み合わせるのもアリだ。最近ではUSB PDに対応する大容量モバイルバッテリが数千円程度で手に入るので、モバイルシーンでも安価に高速充電環境を整えられるだろう。
すでに説明したように、内蔵バッテリで約8.6時間動作するとされているので、おおよそ1日の仕事を充電なしで乗り切れるスタミナはある。それでも重い処理でフルパワーを出してしまうと電池切れの不安はある。USB PD対応のモバイルバッテリで高速充電できるのは、いざというときのことも考えると心強い。
Type-Cケーブル1本でマルチディスプレイ環境。トリプルディスプレイも
さらにもう1つ、VF-AD4のUSB Type-Cポートの注目すべきポイントが、DisplayPort Alt Modeに対応していること。つまり、同じく対応する外部ディスプレイと組み合わせることで、USBケーブル1本で外部ディスプレイに映像出力でき、しかも同時にVF-AD4に給電までしてくれるのだ。
筆者が試したところでは、WQHD(2,560×1,440ドット)の外部ディスプレイとUSB Type-Cケーブルで接続するだけで、本体画面も外部ディスプレイも両方最高解像度で表示できた。もちろん給電も問題なし。作業スペースが広くない在宅勤務でも、オフィスでも、ケーブル1本ですっきり、すばやくセッティングできるのはありがたい。
USB Type-Cポートの隣にはMicro HDMIポートも用意されているので、USB Type-Cを利用できない外部ディスプレイの場合はこちらを使う。USB Type-C接続のディスプレイと合わせればトリプルディスプレイ化もでき、さらなる業務効率アップを目指せるに違いない。
なお、付属のUSB Type-Cケーブルは充電専用のためか、映像出力には利用できないようだ。別途DisplayPort Alt Modeの映像出力に対応したケーブルを用意しよう。
5Gbpsの速度を活かした外部SSD、microSDでさらなる大容量を
SSDを増設できるとは言え、M.2のスロットは1つだけ。もっと大容量のストレージがたくさんほしい、という人もいるかもしれない。そういうときには2つあるUSB 3.0ポートや、microSDカードスロットを活用しよう。
USB 3.0ポートでは最大5Gbpsのデータ転送速度を実現できる。手元にあった外部SSDで試してみると、以下のベンチマーク結果にあるようにeMMCの1.5~2倍近いリード/ライト速度を叩き出した。ほかのパソコンと共用する大容量データなんかは外部SSDに保管しておいて、内蔵ストレージを圧迫させないようにする、という使い方も良さそうだ。
読み書き速度の面では大きく劣ってしまうが、microSDカードを臨時のデータ保管先にするアイデアもある。挿入時は完全に筐体内に収まり出っ張らないので、装着したまま持ち運びしても破損する心配はない。M.2 SSDにUSB、さらにはmicroSDという拡張インターフェイスを最大限に活用することで、ストレージの問題は完全に解決できるだろう。
Officeアプリケーションは軽快に動作
VF-AD4には、Office互換アプリケーションとして「WPS Office」がプリインストールされている。ただ、業務用途だとMicrosoftのOfficeアプリケーションを利用したい場合が多いはずだ。スペック的には非力な感が否めないVF-AD4ではあるけれど、Officeアプリケーションは快適に使えるのだろうか。
と思ってMicrosoft 365のExcel、Word、PowerPointをインストールしてひととおり使ってみたところ、なんと思った以上に軽快に動作してくれた。アプリケーション側の動作の軽量化の努力も大きいのだろうとは思うが、起動に待たされることはほとんどなく、大量の数値からなる3次元グラフの表示、編集も、Word文書の編集も、あるいはPowerPointのスライド表示もじつに軽快だ。
内蔵Webカメラ&マイクでフツーにビデオ会議できる
テレワークと言えばビデオ会議。今や多くの人がZoomなどのビデオ会議ツールでオンラインミーティングをこなしていることと思う。動画や音声を扱うので、パソコンにある程度高い処理能力を求められそうだけれど、VF-AD4でも何の問題もなく利用可能だ。内蔵のWebカメラはHD解像度(1,280×720ドット)ということで、高精細・高画質、というほどのものではないけれど、多くの場合HD画質程度にとどまるビデオ会議では必要十分な性能だろう。
筆者がいつもビデオ会議に使っているアクションカムの映像と並べてみると、精細さはやや劣るものの、コントラストが若干強調される感じに調整されているようで、くっきりはっきりした見た目でむしろ好印象。実際のビデオ会議中のストリーミング映像でも、拡大すれば粗が目立つことがあるとは言え許容範囲内。
視野角も狭すぎず「フツーに使える」画質。内蔵マイクによる音質も余計なノイズが混じったりすることはなく、ビデオ会議した相手によれば「全然フツー」とのことで、良好のようだ。
ただ、残念ながらというか、当然ながらというか、Zoomのバーチャル背景をグリーンバックなしに利用することは不可能だった。単純にCPUスペックが不足しているからだ。フツーにビデオ会議するならフツーに使えるが、ちょっと凝った背景にしたいなら素直にグリーンバックを吊り下げよう。
シンクライアントとして使えばサクサク操作で高速処理もOK
近頃はサーバー側で処理するクラウドサービスを利用することが増え、一般的なデスクワークでは、ローカル上で重い処理をする頻度は多少減っては来ている。しかしそれでも、写真や動画の編集などを完全にクラウドに移行することは難しく、ローカルの処理速度に頼らざるを得ない場面もまだまだある。
かと言ってVF-AD4で写真や動画の編集をガンガンやれるかというと、もちろん厳しい。そこで検討したいのがVF-AD4のシンクライアント的な活用方法。リモートからより性能の高いデスクトップパソコンにアクセスし、そのパソコン上で作業できるようにする、いわゆる「リモートデスクトップ」機能を使うのだ。現在、NTT東日本などが実証実験中の「シン・テレワークシステム」がもっとも利用しやすいだろう。
「シン・テレワークシステム」では、サーバー側となる接続先パソコンと、クライアント側となるVF-AD4、それぞれで専用のソフトウェアをインストールし、簡単な初期設定をするだけで、LAN内や遠く離れたところにあるパソコンのデスクトップにアクセスできる。接続先は自宅のデスクトップパソコンでもいいし、会社側の許可が得られればオフィス内の自分のパソコンでもいい。
このときVF-AD4側では、リモートのデスクトップの情報やイメージをデータ転送するネットワーク処理が中心となる。なので、そのための最低限の性能があればいいわけだ。ある程度高速なインターネット回線の帯域と、十分な性能を持ったリモートパソコンであれば、重い処理でもサクサクこなせるはず。VF-AD4のモバイル性能を活かして好きな場所でリラックスしつつ、デスクトップパソコンの高速処理性能を利用して仕事する、なんてことも可能になる。
フルHD画質の動画を滑らかに再生。3Dゲームは……
ビジネス用途ばかりでVF-AD4を使うのはもったいない。プライベートでも楽しく使いたいではないか! ということで、NetflixやYouTubeなどの高画質の動画配信サービスと、3Dゲームも試してみた。
結論から言えば、動画については何の問題もなし。フルHDの映像を再生するときにローディングに時間がかかったり、コマ落ちしたりすることもなく、スムーズに再生してくれる。ちょっとイレギュラーだが、同時にビデオ会議しながら映画を再生しても普通に見ることができたし、ビデオ会議の会話にも不都合はなく、マルチタスクな使い方にも耐えられた(会議中に映画を見ることの是非は置いといて)。
ゲームのほうはどうかというと、さすがに3D CGバリバリのゲームは厳しい。というか、VF-AD4のCPUに統合されたGPU(Intel UHD Graphics 600)には荷が重いのか、いくつかのゲームはエラーで起動すらしないこともあった。
ただ、2Dグラフィックス主体のゲームや、そこまで負荷の高くない3Dゲームであれば、快適とは言えないまでも、遊ぶことはできる。でもまあ、ゲームを思いっきり楽しみたいのであれば、やはりゲーミングパソコンなどに任せたほうがよさそう。
ライブ配信用パソコンとしても健闘してくれる
動画にゲームとくれば、ライブ配信である。YouTubeやFacebook、Twitchなど、いろいろなプラットフォームで誰でも簡単にライブ配信できるようになり、すでに趣味のアクティビティやゲームプレーの様子を披露している人もいるはず。仮にゲーム配信するとして、VF-AD4を配信用のサブパソコンとして使えれば、メインのゲーム用パソコンの負荷を下げることができ、その性能をゲームのためだけにフルに発揮できるだろう。
VF-AD4はWebカメラを内蔵していることもあるので、単純に自分の姿を映して配信するだけなら簡単だ。また、ゲーム画面の隅に小窓(ワイプ)でカメラ映像も表示させるような見せ方をしたいときは、ほかのパソコンで表示させているゲーム画面を別途用意したキャプチャデバイスで取り込み、配信ソフトの「OBS Studio」などで2つの映像を合成することが考えられる。
試しにゲーム画面とカメラ映像を取り込み、HD画質で配信した場合、CPUはつねに40~50%ほどを占有し、フレームレートは30~35fpsあたりだった。高いフレームレートで滑らかに見せたいゲーム映像を配信するときは力不足を感じるところがありそうだが、細かい動きを見せる必要のない配信内容であればVF-AD4で十分にまかなうことができそうだ。
テレワークでも活躍するが、「使い倒す」用のパソコンとして遊ぶのもいい
VF-AD4はハイスペックと言えるような機種ではない。だから、「最新のデスクトップパソコンと同じようなことができる!」とはさすがに言えないのだが、M.2 SSDを増設できるのは大きな魅力だ。それだけで用途が一気に広がり、使いこなしがいがあるノートパソコンに変貌する。
性能だけでなくデザイン面でも「3万円パソコン」とは思えない品質がある。VF-AD4のシルバーのアルミ筐体は、余計な装飾の一切ないシンプルなデザイン。少しおしゃれな雰囲気で、チープな感じは見当たらない。見た目上、ビジネスシーンで違和感なく使えるのもメリットだろう。
ただ個人的には、メインパソコンとして活躍させるより、今回紹介したように別のメインパソコンと組み合わせたり、テレワーク専用にしたり、あるいはプライベートの隙間用途でとことん楽しんだりするような「遊び倒す」用のサブパソコンとして導入するのがおもしろいのではないかと思う。ぜひ、みなさんも3万円+αで思いっきり遊んでみてほしい。
最後におまけとして「3万円パソコン」の中身はどうなっているのか、分解してみたのでご覧いただきたい。