レビュー

ステータス表示LCD付きの「Colorful iGame GeForce RTX 3090 Vulcan OC」を試す

GeForce RTX 3090 Vulcan OC

 Colorfulの「iGame GeForce RTX 3090 Vulcan OC」は、同社が多数用意しているビデオカードのなかでもフラグシップに位置づけられるモデルだ。国内ではリンクスインターナショナルが取り扱う予定だが、発売日と価格は未定だ。今回、投入に先立ってサンプルを入手したのでご紹介したい。

独自機能てんこ盛りのVulcanシリーズ

 Colorfulは中国国内ではシェアNo.1のGeForceビデオカードブランドであり、同じチップでも複数のラインナップを用意し、付加価値の違いで価格も若干異なる。たとえば、同社の海外向けGeForce RTX 3080だけを挙げても

  • GeForce RTX 3080 NB 10G-V
  • iGame GeForce RTX 3080 Ultra OC 10G-V
  • iGame GeForce RTX 3080 Ultra W OC 10G-V
  • iGame GeForce RTX 3080 Advanced 10G-V
  • iGame GeForce RTX 3080 Advanced OC 10G-V
  • iGame GeForce RTX 3080 Vulcan OC 10G-V

の6モデルが用意されている。このうち一番廉価なのはNBシリーズで、シンプルなトリプルファンモデル。Ultraシリーズはクーラーカバーのデザインがやや特別だ。Advancedは金属クーラーカバーを採用で、デザインもちょっとこだわっている。そしてVulcanは、側面にステータス表示のLCD「iGame Status Monitor 3.0」を搭載するなど、付加価値がもっとも多いモデルだ。

 3090ではUltraシリーズの用意はないが、そのほかのモデルはあり、そういった意味でも今回テストする機種は、現時点ではすべてのラインナップのなかで、機能面でも性能面でも最上位となる。ちなみに「現時点では」と加えているのは、同社は過去に「Kudan(九段)」と呼ばれるコスト度外視の水冷対応モデルを投入しており、3090でも投入されることが予測できるからだ。また、Kudan以外にも水冷Neptuneシリーズの登場が予定されている。

 さてiGame GeForce RTX 3090 Vulcan OCだが、まさに旗艦にふさわしい構成である。パッケージには説明書のほかに滑り止めつきの手袋や、重いカードを支えるためのマグネットつきスタンド、先端が変えられるドライバーが付属するほか、マザーボードのARGBライティングと同期するためのケーブルや、LCDに画像を転送するためのUSBケーブル、LCDを拭くためのクリーナーまでも付属し、至れり尽せりの内容だ。

製品パッケージ
付属品はてんこ盛りだ

 そしてカード本体も旗艦モデルらしい風貌。3スロットを堂々と占有する超大型のヒートシンク、ステータス表示LCD「iGame Status Monitor 3.0」の装備は“もちろん”のこと、金属でエッジが効いた印象のクーラーカバー、カードのたわみを防止する金属製バックプレート、そのバックプレートに彫られ、RGBに光るLEDイルミネーションなど、考えうるデザインはすべて盛り込まれている。

 iGame Status Monitor 3.0がユニークなのは、480×128ドットとウルトラワイドで、2つの情報を同時に表示できる点。つまりGPU温度/クロックと、CPU温度/クロックを同時表示できたりするわけだ(表示する内容はカスタマイズ可能)。また、LCD自体も90度に回転するため、ビデオカードを縦置きしたさいも、LCDを側面に向けられるのがポイントだ。

 さらに実際に手にしてびっくりしたのはファンの中心のロゴ。一般的なビデオカードのファンは、このロゴの部分がブレードと一体となっているため回転するのだが、iGame GeForce RTX 3090 Vulcan OCのロゴは回転しないのである。しかも、このロゴの向きは回して自由に変更できるのだ。おそらく同心円軸が2本あり、うち1本はロゴを支えているのであろうが、こんな細部までこだわって作り込んでいるのには感心した。

本体正面。大きいGPUクーラーが目立つ
iGame Status Monitor 3.0はチルト可能
背面は大型バックプレートで補強されている
ディスプレイインターフェイスはDisplayPort×3とHDMI。上のスイッチは「OC Key」で、プッシュするとオーバークロックモードで起動する
iGame GeForce RTX 3090 Vulcan OCのファン

大型クーラーで冷却性は優秀

 さて、本製品でもっともこだわってるGPUクーラーだが、同社ではこれを「SWORIZER 3.0」と呼んでいる。3つのカスタムブレードファンを備えた3スロット占有タイプで、クーラーを含めた本体重量はじつに2.1kgに達する。ちゃんとケースにネジ止めをするのはもちろんのこと、可能であればPCI Expressスロットが強化されたタイプのマザーボードを用いたうえで、付属のスタンドを使いたい。

 ちなみに付属のスタンドは、留め具を本体に手回しネジで留めておき、スタンドつきポールを留め具の輪を通し、レバーで固定する仕組み。ただこのレバーはマザーボード側にあり、ケースの構造によってはかなりアクセスしづらくなるので、かならずしも使えるとは限らない。ただ、近年の強化型PCI Expressスロットと、しっかりブラケット部を固定できるケースであれば、さほど問題はなさそうではある。

 ヒートシンクに話を戻そう。ヒートシンクのベースはベイパーチャンバーと直径8mmのヒートパイプが6本使われているほか、13枚のブレードを備えた90mm角ファンを3基搭載し、冷却性を高めている。標準では、GPU温度が56℃以下の場合はファンが回転しない仕様となっている。

付属のスタンドを固定するためのネジ穴
実質3スロット占有する大型GPUクーラーを採用
直径8mmのヒートパイプが6本使われている
ファンのブレードも工夫された形状になっている
背面にもARGBイルミネーションを搭載している

 3DMark Time Spy実行中、温度は標準時で67℃程度、OC Keyを用いてオーバークロックした場合でも70℃で落ち着いていた。騒音もかなり抑えられていて、CPUやケースファンのほうがうるさく感じるほどだった。今回計測したシステム全体では、消費電力は標準時が510W前後、OC Key動作時が530W程度であり、これはGeForce RTX 3090 Founders Edition(FE)と大差のない結果だ。

 ただ、動作クロックそのものはやや低めで、時は標準で約1,755MHz、OC Key動作時で約1,830MHz。一方、GeForce RTX 3090 FEでは1,870MHzに達していて、明らかにスコアも高かった。これはPC Watchが入手した3090 FEが優秀な個体だったことも関係していると思われる(NVIDIAが提示しているBoostクロックは1,700MHz)。スコアでは見劣りするかもしれないが、型番を覆すほどの大きなフレームレート差にはならないだろう。

設定は「iGameCenter」を利用。画像の転送のみUSBケーブルで

 同社製品の制御用ユーティリティとしては、「iGameCenter」が用意されており、ホームページからダウンロード可能。このユーティリティは、システムの簡易監視と概要、コンポーネントごとの設定、ライティングの設定、状況監視という4つのタブで構成されている。

 おそらく同社のマザーボードを使えば、ライティングの設定をまとめて行なえたのだが、今回利用したマザーボードは他社製のため行なえなかった。それでも、G.SKILL製のRGB LED搭載メモリ「Trident Z RGB」のライティングは制御でき、ビデオカードのライティングと同期させることができた。

起動するとまずはステータス表示画面が表示される
デバイスの選択画面。この画面のみ、なぜかダブルクリックで選択する
iGameCenterではTrident Z RGBのイルミネーションの設定も可能だった
GeForce RTX 3090を選択すると、クロックやファン調節の画面になる

 iGame Status Monitor 3.0では、CPUとGPUのクロック/温度/使用率などが表示可能なほか、システム時間なども表示しておけるのが便利。こうした情報は、ユーティリティを使えばゲーム中でもオンスクリーン表示できるのだが、「オーバーレイで常時参照しておくほどのものでもないけど、気にはなる」ユーザーには便利だと言える。

iGame Status Monitor 3.0の表示

 また、好みの画像も転送して表示できるが、この画像転送時のみ付属のUSB 2.0ピンヘッダ(マザーボード側)→USB Type-C(ビデオカード側)をつないでおく必要がある。ただ、一旦転送しておけば外しても大丈夫だ。解像度はSingle Screen Displayで480×128ドット、Dual Screen Display時で240×128ドットと高くないので、使い道としては、eスポーツのチームがチームのロゴを表示させておく……といったあたりだろう。

Single Screen Displayモードでは1項目を順繰りに表示する
Single Screen Displayモードのみ、数値の推移を折れ線グラフで表示できる。ただ、2項目以上ある場合、切り替えたさいに内容がすべてクリアされてしまう
Dual Screen Displayモードでは、2つの項目を同時に順繰り表示できる
ライティングの設定は対応デバイス同士で同期できる

 機能面よりも、このユーティリティの一連のUIがややとっつきにくいのが気になった。たとえば画面によってはダブルクリックで選択であったり、画面から抜けるのに、「Back」ではなく同じボタンを2度押ししなければならないといった具合だ。

 このあたり、ユーティリティの機能を増やしすぎたゆえにツメが甘かったのかもしれない。もっとも、このクセは覚えてしまえば大したことはないし、よほどのマニアでもなければ毎日使うものというわけではないだろう。iGameCenterとiGame Status Monitor 3.0は登場して間もないので、今後アップデートで改善されていくことに期待したい。

フラグシップらしい性能を発揮

 最後に簡単なベンチマークテストを行なって終わりとしたい。テスト環境は下記のとおり。標準の状態に加えて、OC Keyをオンにした状態と、そこからさらに手動でコアクロックを+50MHz設定した状態でテストしてみた。

【表】テスト環境
CPUCore i9-10900K
メモリTrident Z RGB DDR4-3200 8GB×4(32GB)
マザーボードSuperO C9Z490-PGW
ストレージNVMe SSD 512GB
ビデオカードiGame GeForce RTX 3090 Vulcan OC
ドライバGeForce Game Ready Driver 457.09
OSWindows 10 10H2(ビルド19042.572)
電源ASUS ROG-THOR-1200P(1,200W 80PLUS Platinum)

 すでにPC WatchではGeForce RTX 3090のベンチマークを掲載しているので、ゲーム性能などについてはそちらの結果もあわせて参照されたいが、iGame GeForce RTX 3090 Vulcan OCは期待を裏切らない高性能を発揮した。

【グラフ1】3DMark 重量級テスト
【グラフ2】3DMark 軽量級テスト
【グラフ3】3DMark Feature Test

 今回、スケジュールの関係でGeForce RTX 3090 Founders Edition(FE)と詳しく比較できなかったが、先述のとおりPC Watchが入手したFEは定格より高いクロックで動作するサンプルであったため、Vulcan OCはOC Keyがオンの状態で+50MHzを設定してもわずかにFEのクロックやスコアに届かなかった。Vulcan OCのほうに+100MHz程度のオーバークロックを施せばFEを超えられるだろうが、消費電力と温度が増加する割に実ゲームで得られる効果は薄いので、あまりおすすめはしない。

3DMark Time Spy実行中のクロック/温度推移

性能のみならず機能や見た目でも満足したいユーザーに

 iGame GeForce RTX 3090 Vulcan OCの発売日と価格は未定ではあるのだが、下位の3080ではVulcan OC版が投入されており、そちらの価格は11万8,800円だ。これとLCD非搭載の「Advanced OC」との差額は約+1万円程度である。すでに発売されている「iGame GeForce RTX 3090 Advanced OC」が22万7,100円であることから逆算すると、実売24万円前後が妥当だ。

 GeForce RTX 3090の廉価なモデルは20万円半ばから購入できるので、+3万5,000円の価値を見いだせるかどうかが本製品を選択する上での1つのポイントとなりそうだが、付属品とiGame Status Monitor 3.0を抜きにしても、GPUクーラーの高い工作精度やファンのこだわりを見るだけでもなかなか楽しい。せっかく最上位の3090を購入するなら、Vulcan OCのようなフラグシップは、一考する価値はある。