レビュー

リテール版「GPD WIN Max」で、ES品比で最大27%の性能と60%の駆動時間向上を確認

GPD WIN Max(リテール版)

 深センGPDは7月1日、8型ゲーミングUMPC「WIN Max」のクラウドファンディングによる出資応募を終了した。最終的に3億1,077万9,661円の出資を集められ、プロジェクトは順調に進んでいる。

 7月にもIndiegogoの出資者向けに製品が出荷開始されるが、今回、代理店である株式会社天空より、中国向けのリテール版モデルが送られてきたので、以前GPDより送られたエンジニアリングサンプル(ES)品と比較していきたい。

 すでにこれまで掲載しているレビューにおいて、ES品であることはお断りしているが、筆者のもとに6月初旬に到着したES品は、リテール版と下記のような違いが存在していた。

・天板やキーボードフレームが若干茶色味を帯びていた
・一部キーやボタンの印字が異なる
・底面の吸気口が大きく開けられているため、EMI対策が不十分
・BIOSの設定項目が明らかに多かった
・CPUパッケージ電力を落とすCステートをオフにしないと不安定のため、消費電力が高め

 一方、今回送られてきたリテール版では、外観から内部まで刷新され、完璧なものに仕上がった。

天板。ES品(右)はやや茶色味を帯びていたが、リテール版はグレーとなった
キーボードのフレームについても同様に、ES(右)から茶色味が抜けた
USBといった刻印が消え、Thunderbolt 3のみとなった
ES品(右)との比較。キーボードではファン静音モード(Fn+F)のマークが付くなど、刻印が追加。タッチも完璧となった
底面の給気口は無数の小さなパンチ穴が開いた板が入った。これはEMI対策だろう。ファン周囲はくり抜かれている

 外観に関する部分に関しては上の写真をご覧いただいて比較していきたいが、再度ベンチマークを走らせてみたところ、BIOSのチューニングにより、性能とバッテリ駆動時間の向上が確認できた。

 具体的に言うと、「PCMark 10」と「3DMark」といった、CPUやGPUに高い負荷がかかるベンチマークでは差異が確認できなかったものの、「ドラゴンクエストX」のような負荷が比較的少ない3Dベンチマークで、スコアにして約18%~27%もの増加が確認できた。

【表】ベンチマーク比較
モデルリテール版ES品
設定PL1=25W
PL2=30W
PCMark 10
PCMark 104,0234,135
Essentials8,4748,915
App Start-up Score11,16711,856
Video Conferencing Score6,8507,498
Web Browsing Score7,9727,956
Productivity5.3755,579
Spreadsheets Score4,7974,788
Writing Score6,0236,501
Digital Content Creation3,8813,859
Photo Editing Score5,1514,906
Rendering and Visualization Score2,7102,719
Video Editing Score4,1894,311
3DMark
Fire Strike2,6292,665
Graphics score2,7992,851
Physics score10,85710,906
Combined score1,0151,017
Night Raid9,8919,875
Graphics score10,98611,047
CPU score6,3236,168
Sky Diver9,1089,298
Graphics score9,2789,417
Physics score8,7588,773
Combined score8,4579,256
ドラゴンクエストX ベンチマーク
最高品質14,36712,030
標準品質15,40612,129

 これはどういうことなのか詰めていくと、ES品ではベンチマーク時のCPU/GPU負荷に応じるかたちでCPUとGPUのクロックが乱高下していたが、リテール版ではほぼ同じクロックで遷移した。とくにGPUは最大クロックである1.05GHzに張り付きっぱなしとなっており、ES品と大きく異なる。ドラゴンクエストXではGPU負荷が100%にならないので、高クロックの余裕ある処理がスコア向上に結びついたと思われる。

 そもそもリテール版はES品よりCPUのアイドル時のコア電圧が0.1Vほど低く、発熱が抑えられていた。これにはCステートが関係しているのかもしれないが、電圧を-0.05Vほどオフセットしても大差がなかったので、それ以外のところのチューニングである可能性が高い。

ドラゴンクエストXベンチマーク実行中のCPUクロック遷移。ES品より高いクロックを維持した
ドラゴンクエストXベンチマーク実行中のGPUクロック遷移。こちらもES品より高いクロックを維持した

 バッテリ駆動時間については、キーボードバックライトオン、液晶輝度50%、電源プラン:バランスの設定で、PCMark 10で計測したところ、Modern Officeで残り19%まで8時間31分、Gamingで残り21%まで1時間34分駆動した。

 ES品で計測したときは残り6%までそれぞれ6時間10分と1時間25分だったので、かなり伸びている。仮にリテール版が順当に6%まで消費した場合を計算すると、Modern Officeは約9時間53分、Gamingは約1時間52分となる。さすがに長時間のハイエンド3Dゲームをプレイというわけにはいかないが、片道40分程度の電車通勤なら余裕でプレイ可能だろう。一方で通常利用においては、UMPCとしては破格のバッテリ駆動時間だ。

PCMark10 Modern Officeのバッテリ駆動テスト。残り19%まで8時間31分稼働した
こちらはGamingにおけるバッテリ駆動テスト。こちらも21%まで1時間34分稼働した。いずれもES品を上回る結果だ

 いずれにしても、購入者が実際に手にするWIN Maxは、Core i5-1035G7の性能をフルに発揮させたものであることに偽りはなく、バッテリ駆動時間に関しても十分満足するものになるはずだ。すでに出資や予約をした人にとってこれ以上の楽しみはないだろうし、以前弊誌で掲載したスコアに疑念を抱いていて購入を迷っていた人も、再検討に値するのではないだろうか。

 なお、先述のとおりIndiegogoでの出資募集は終了しているが、そのまま予約が可能であるほか、国内で手厚いサポートが受けられる天空が代理する分に関しても、引き続き予約を受け付けている。

【9時15分】記事初出時、出荷時期を8月としておりましたが、これは現在Indiegogoでの販売分で、出資者向けは7月に出荷される予定です。お詫びして訂正します。