レビュー
EIZO初のカラマネ対応27型4K液晶「ColorEdge CS2740」をプロカメラマンと検証
~製造工程からも見えてきたEIZOディスプレイが高品位な理由
2019年10月25日 11:00
EIZOから、クリエイター向けディスプレイ「ColorEdge」シリーズ新モデルとなる「ColorEdge CS2740」が登場した。ColorEdgeシリーズは、プロをターゲットとした「CGシリーズ」と、プロだけでなくハイアマチュアもターゲットとする「CSシリーズ」をラインアップするが、今回登場したのは型番からもわかるようにCSシリーズの新モデルとなる。
CS2740では、CSシリーズとして初となる4K(3,840×2,160ドット)表示対応の27型パネルを採用。もちろん、ハードウェアキャリブレーションに対応するとともに、Adobe RGBカバー率99%の広色域表示に対応するなど、ColorEdgeシリーズとしての魅力をしっかり受け継いでいる。
そのうえで、税別直販価格が20万円を切る181,000円と、憧れのColorEdgeシリーズの製品としては、手の届きやすい価格を実現している点も大きな特徴となっている。
今回、このCS2740をいち早く試す機会を得たので、その魅力をチェックする。あわせて、石川県白山市のEIZO・本社工場を見学してきたので、高画質を追求するうえでのEIZOの製品作りのこだわりなども紹介したい。
4K表示対応の27型IPSパネルを採用
CS2740が採用している液晶パネルは、冒頭でも紹介しているように、4K(3,840×2,160ドット)表示に対応する27型パネルとなる。27型4K液晶の採用は、ColorEdgeシリーズとして初となる。画素密度は164ppiに達しており、高精細な表示が可能となっている。
パネルの種類はIPSで、表面はノングレア処理となっている。視野角は上下左右ともに178度と広く、大きく視点を移動させても色合いや明るさの変化は全くといっていいほど感じない。
輝度は最大350cd/平方m、コントラスト比は1,000:1、応答速度は10ms(GTG)。表示色域はCSシリーズらしくAdobe RGBカバー率99%という広色域を実現している。
EIZO製品の品質が高いのは多くのユーザーが知るところだが、同社では、工場で全製品1台ずつRGB各色0~255階調を1段階ずつ変更して色の検査を行なっている。そのうえで、理想のガンマ値が得られるように、もっとも適した値を16bit LUT(ルックアップテーブル)を使って選択し、256段階で再割り当てを行なっているのだ。これによって、個体差が少なく、滑らかな階調表現を実現している。
ちなみに16bitとさらっと言ったが、これは色数にすると約278兆色という途方もない数になる。このなかから、10bit、すなわち約10億7千万色に割り当てて表示を行なっているのだ。このLUTの広さ、そして10bitへの変換の部分にこそ、EIZOのノウハウが詰まっており、その高画質を実現する重要な要素の1つなのだ。
本体サイズは638×265×404.1~559.1mm(幅×奥行き×高さ)となっている。近年主流の狭額縁仕様ではないものの、27型ディスプレイとして、標準的なサイズと言える。
ディスプレイサイズが27型であれば、A4はもちろん、A4見開き、つまりA3を実サイズで余裕を持って表示できる。実際にDOS/V POWER REPORT誌の見開き原稿をPhotoshopで開いてみたが、実サイズで表示してもツール類を問題なく表示できるだけのスペースが確保できている。
写真編集を行なう場合、4K解像度により、写真を1枚1枚拡大せずとも細部のピントの合い具合を確認でき、OKカットの選別で時間を短縮できる。また、ドットバイドットでも4Kなら、かなりの広範囲が表示できるため、縮小して全体像を確認して、また拡大して細部を修正といった手間が減らせるので、作業効率を高められることになる。
写真だけでなく映像編集用途でも4Kの高解像度表示が作業効率を高めてくれる。そのうえで大きすぎず、デスクに設置しやすいという点も含めて、27型4Kディスプレイは、クリエイターにとってかなり理想的な仕様と言える。
ColorEdgeシリーズらしい充実の仕様
外観デザインは、従来のColorEdgeシリーズとほぼ同等だ。
スタンドは、可動範囲が広く使いやすい、高機能なものを採用。155mmの範囲での高さ調節、下5度、上35度の範囲でのチルト角度調節、左右172度/合計344度の範囲での水平角度を調節できるスイベル機構、また右に90度ディスプレイを回転できるピボット機構を備えている。100×100mmのVESAマウントにも対応しているが、この高機能スタンドがあれば、利用環境に合わせて常に最適な位置を調節して利用できるだろう。
映像入力端子は、HDMI×1、DisplayPort×1、USB Type-Cの3系統を用意しており、いずれも10bitカラー入力をサポートする。今回、GeForce RTX 2080 Ti搭載ビデオカードを装着したデスクトップPCを用意して確認したところ、HDMI、DisplayPort、USB Type-Cともに10bitでの入力が可能だった。
また、USB Type-CはUSB PD(Power Delivery)に対応し、最大60Wの電力供給が可能となっている。USB PD対応のノートPCを接続する場合には、USB Type-Cケーブル1本でCS2740と接続するだけで映像信号・USB信号の入力とノートPCへの電力供給が可能となるため、配線もすっきりとして利用できる。
基本的には、Type-C接続はノートPC向けだが、デスクトップ用のGeForce RTXシリーズのType-Cと本ディスプレイを接続すると、映像信号とUSB信号の両方を伝送できる。これにより、ColorNavigator 7でキャリブレーションを行なうさいにも1本のケーブルで済ますことができる。
このほか、USB 3.0アップストリームポートに加えて、底面に2ポート(USB 2.0)、左側面に2ポート(USB 3.0)、合計4ポートのUSBダウンストリームポートも用意し、USB Hub機能も提供。このUSB Hub機能は、PCとUSB Type-Cで接続した場合にも機能する。これにより、CS2740側にマウスやキーボードなどを接続することで、ノートPCのドッキングステーション的な利用も可能となる。
ノートを持ち出す機会が多く、かつ自宅や会社ではディスプレイにつないで作業する人にとって、ディスプレイにキーボード、マウスなど周辺機器を繋いでおけば、ノートPCはType-Cケーブル1本でディスプレイとつなぐだけで、充電しつつ、作業効率を高める周辺機器を利用できるのは便利なことこの上ない。
オプションのアクセサリとしては、マグネットで簡単に装着できる遮光フード「CH2700」と、ColorEdgeシリーズに最適化されているキャリブレーションセンサー「EX4」を用意する。キャリブレーションセンサーとしては、市販のものももちろん利用可能だが、専用機として最適化されていることからも、EX4の利用がお勧めだ。
プロカメラマンも納得の高品質表示
CSシリーズの品質が高いことはすでに定評があるが、CS2740の表示性能を確認するには、やはりプロの目による検証が必要だ。そこで今回は、プロカメラマンの若林直樹氏に立ち会っていただき、色合いや階調表現、8bit映像入力と10bit映像入力の違いなどCS2740の表示性能をチェックしていただいた。
まずはじめに、レッド、グリーン、ブルー、グレーの10bit階調のグラデーション画像を用意して、8bit映像信号での入力時と10bit映像信号での入力時それぞれで階調表現をチェックしてもらった。すると、10bitのほうが階調が細かく表示されていて、ひじょうに滑らかになっているとのことだった。
ただ、8bit入力時の階調表現もひじょうに細かく、その差はかなり少ないとのこと。CS2740では、内部の独自制御チップを利用して、8bit入力の映像信号を16bit LUTを使って最適な値を割り出して256段階に再割り当てして表示することによって、8bitでもひじょうに滑らかな階調表現を実現しているが、その効果が如実に表れたものと言っていいだろう。
10bit階調は、人物や風景などでは大きな差は出にくい。この細かな差が目に見えてわかるとすると、3D CGなど、微妙な階調表現が顕著なコンテンツになってくるだろう。
次に輝度ムラをほかの製品と比較しつつ調べた。下記の写真は、画面を白1色にしてカメラで撮影し、ガンマカーブを調整して濃淡差つけ、グレースケールに変換したものだ。輝度ムラが発生しやすくなる大型のパネルサイズであっても、CS2740では周辺部に至るまで輝度ムラがひじょうに少ないのがわかる。この写真は、やや誇張したものなので、じっさいには肉眼ではほとんどムラは識別できない。このあたりも、ColorEdgeシリーズの製品だと感じさせる部分だ。
続いて、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックで左右の割合を2%だけ変えてある評価用画像を使って検証。ディスプレイによっては、このわずかな違いを認識できないものもあるが、CS2740では明らかに違いが判断できると若林氏は指摘する。これは、プロではない筆者の目にも明らかだった。その画像を下記に掲載するので、お手持ちのディスプレイでも確認してみてほしい。
このほかにも、グレーの階調を見る評価用画像でも、優れた階調が得られていることを確認。さらに、実際に若林氏が撮影した写真を表示させてチェックしてみたのだが、10bit入力時は当然ながら、8bit入力時でも階調がしっかり表現されているところに驚かされたと、若林氏。とくに、人の肌の立体感や、頬のグラデーションがひじょうに綺麗に表示できているところがさすがだとの回答。さすがのEIZOクオリティだと高い評価が下された。
カメラマンにとって、写真をチェックするときに、ぱっと見で気がつきにくい部分も色が正確に表示されるというのはひじょうに心強いという。また、4Kの高解像度表示についても、レタッチで等倍表示を行なった場合に表示領域が多くなるので、作業がやりやすいのが嬉しいとのこと。今回、CS2740を評価したことで、EIZOディスプレイの優れたクオリティを再認識できた。
ところで、CS2740はハードウェアキャリブレーションに対応しており、オプションのキャリブレーションセンサー「EX4」と、専用ソフトウェア「ColorNavigator 7」を利用することで、従来製品よりかなり高速にキャリブレーションが行なえるようになっているという。
そこで、実際にどの程度の時間でキャリブレーションが行なえるか試してみたところ、約58秒で終了した(Core i9-9900K、メモリ16GB、GeForce RTX 2080 Ti搭載マシン、CS2740、EX4センサーを利用)。従来モデルの「EX3」を使った場合は5分ほどかかるとのことなので、じつに5倍の高速化が図られている。ハードウェアキャリブレーションは頻繁に行なうものではないが、正確な色を表示したいのであれば、定期的に行なうべき作業で、それが短時間に行なえるという点も大きな魅力となるだろう。
EIZO製品は全て国内で製造。ColorEdgeシリーズは全個体をエージングし、熟練スタッフが目で確認して出荷される
国内で販売されるEIZOのディスプレイは、すべて国内の工場で製造されている。その工場は石川県白山市に位置しており、EIZO本社に併設されている。EIZO本社では、製品の開発から製造、世界各国への出荷まで行なっている。
工場棟は2棟あり、ColorEdgeシリーズは、そのうちのC棟と呼ばれる建物で製造されている。C棟は2016年に完成した新しい工場棟で、2本の製造ラインが用意され、ColorEdgeシリーズを日々製造している。
製造の工程としては、まずはじめに製品の組み立てが行なわれ、その後エージングを行ない、細かな画質などの調整や検査を経て梱包され、出荷される。組立の工程には、カメラやロボットを活用した最新の技術を採用しており、省力化が進められている。組み立てられた製品は、全個体でエージングや調整が行なわれるが、それらはすべて自動化されている。エージングには数時間をかけ、調整はAIやディープラーニングといった最新技術を駆使して複数回行なっている。
自動化されたエージングと調整の後、EIZOが定めたクオリティに達しているかを、最終的に人間の目で検査する。この最終の検査工程では、色味やグラデーションのチェック、ムラなどがないかを確認するのはもちろん、機能面のチェックも行なわれる。これらの検査をパスしたもののみが出荷される。
この最終検査を行なうのは、社内で定められたスキル規定をクリアしたスタッフのみとなっている。この検査工程もEIZOのノウハウが詰まっている部分で、機械化が進む製造ラインでも、ここは人間の目で行なうことが重要なのだという。これこそがEIZOクオリティを支える要となっているのだろう。
直販サイトなら遮光フードとキャリブレーションセンサーとのセット購入がおトク
このようにCS2740は、ColorEdgeシリーズとして納得の表示性能を備えており、ハイアマチュアからプロまで、映像処理に携わっている人に最適な製品に仕上がっていることがわかった。
価格は20万円を切っている。ColorEdgeシリーズとしては安価な部類ながら、単純に27型4Kディスプレイとして考えると高価なのは事実だ。しかし、その表示クオリティを体験すると、その価格にも納得してしまう。今回の試用では、同じ27型のゲーミングディスプレイを横に並べて比べてみた。そちらも価格は10万円弱程度の製品なのだが、CS2740と比べるとクラデーションが荒く、ムラも多く見られ、大きな品質の差を突きつけられた。比べるまでは、そのゲーミングディスプレイもかなりの高品質表示ができていると思っていただけに、この差には愕然としてしまったほどだ。
それほどまでのクオリティを備えているCS2740は、とにかく表示品質にこだわったディスプレイを探しているユーザーに自信を持ってお勧めできる製品といえる。なお、直販サイトではCS2740に加えて、遮光フードの「CH2700」とキャリブレーションセンサー「EX4」をセットでおトクに購入できるそうなので、CS2740の購入を考えているなら、そちらも合わせてチェックしてみてもらいたい。
製作協力: EIZO