レビュー
SeagateのハイエンドSSD「FireCuda 510 SSD」を試す
2019年9月2日 06:00
Seagateは、2019年夏より日本市場で一般ユーザー向けSSD製品の販売を開始した。販売されているSSDは、一般的なユーザーをターゲットとするスタンダードモデルの「BarraCuda」、ゲーマーやハイエンドユーザーをターゲットとするハイエンドモデルの「FireCuda」、そしてNASでの利用をターゲットとする「IronWolf」と、同社のHDDと同じ3ブランドで展開している。
今回はそのなかから、ゲーマーやハイエンドユーザーをターゲットとする「FireCuda」シリーズの製品となる「FireCuda 510 SSD」の2TBモデルを取り上げる。
ハイエンドモデルらしい速度と圧倒的な耐久性を備える
「FireCuda 510 SSD」は、冒頭でも紹介しているように、Seagateが販売するSSD製品のなかでも、ゲーマーやハイエンドユーザーをターゲットとしたハイエンドに位置づけられている製品だ。仕様面もハイエンドモデルらしいものとなっている。容量は1TBおよび2TBと、大容量モデルを中心に展開している点も特徴の1つだ。
フォームファクタはM.2 2280を採用し、接続インターフェイスはPCI Express 3.0 x4、プロトコルはNVM Express 1.3に準拠している。コントローラは非公開で、NANDフラッシュメモリにはTLC仕様の3D NANDを採用。また、NANDフラッシュメモリのうち最大28GBをSLCキャッシュとして利用する「ダイナミックSLCキャッシュ」機能を備えることでTLC NANDの書き込み速度の遅さを改善し、ハイエンドモデルらしい高速アクセスを実現している。
おもな仕様は表1にまとめたとおりだが、シーケンシャルリード最大3,450MB/s、シーケンシャルライト最大3,200MB/sと、ハイエンドモデルらしい速度となっており、ランダムアクセス速度も申し分ない速度を実現。競合のハイエンドSSDと比較してもまったく遜色のない性能となっている。
合わせて、総書き込み容量が1TBモデルで1,300TBW、2TBモデルでは2,600TBWに達するとともに、平均故障時間も130万時間と、非常に優れた耐久性を備える点も大きな魅力。保証期間も5年間と長いため、長期間安心して利用できるはずだ。
【表1】FireCuda 510 SSDのおもな仕様 | ||
---|---|---|
容量 | 1TB | 2TB |
フォームファクタ | M.2 2280 | |
インターフェイス | PCI Express 3.0 x4 | |
プロトコル | NVMe 1.3 | |
NANDフラッシュメモリ | 3D NAND TLC | |
コントローラ | 非公開 | |
DRAMキャッシュ容量 | 2GB DDR4 | |
シーケンシャルリード | 3,540MB/s | |
シーケンシャルライト | 3,200MB/s | |
ランダムリード(4KB/QD32/Thread8) | 620,000IOPS | 485,000IOPS |
ランダムライト(4KB/QD32/Thread8) | 600,000IOPS | |
総書き込み容量 | 1,300TBW | 2,600TBW |
平均故障時間(MTBF) | 130万時間 | |
保証期間 | 5年 |
今回は2TBモデルを試用したが、基板表にコントローラとキャッシュ用のDRAMメモリチップ、NANDフラッシュメモリチップを搭載するとともに、裏面にもキャッシュ用DRAMメモリチップチップとNANDフラッシュメモリを搭載する。
基板表に搭載されるコントローラはSeagateロゴが刻印された独自チップで、型番は「STXYP016C031」。キャッシュ用DRAMメモリチップはSKhynixの「H5AN8G8NAFR」で、容量1GB(8Gbit)のDDR4 SDRAMチップとなる。NANDフラッシュメモリチップは型番「TPBHG55AIV」のチップを2個搭載。これは東芝の64層 3D TLC NAND(BiCS3)チップで、1チップあたり512GBの容量を実現している。
また、基板裏にも表と同じSKhynixDRAMメモリチップ「H5AN8G8NAFR」と、NANDフラッシュメモリチップ「TPBHG55AIV」を2個搭載していた。
速度は申し分ないが、比較的早くSLCキャッシュが尽きて速度が低下する
では、簡単にアクセス速度をチェックしていこう。
今回は、「CrystalDiskMark 6.0.2」と、「ATTO Disk Benchmark V4.00.0f2」の2種類のベンチマークソフトを利用した。テスト環境は以下にまとめたとおりだ、
テスト環境 | |
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マザーボード | ASUS TUF Z390-PLUS GAMING |
CPU | Core i5-9600K |
メモリ | DDR4-2666 16GB |
システム用ストレージ | Samsung SSD 840 PRO 256GB |
OS | Windows 10 Pro |
まず、CrystalDiskMark 6.0.2の結果だ。データサイズが1GiBの場合には、シーケンシャルリードが3,435.5MB/s、シーケンシャルライトが3,022.5MB/sと、いずれも公称に近いスコアが得られている。ランダムアクセスも十分に高速で、ハイエンドSSDらしい納得の結果となっている。
ただ、データサイズが32GiBの結果を見ると、シーケンシャルライトが1,113.1MB/sへと大きく低下した。おそらくこれは、ダイナミックSLCキャッシュ容量が最大28GBのため、キャッシュが切れたことで速度が低下したものと考えられる。通常利用時には、28GBを超える連続書き込みが発生する場面は少ないため、速度低下が顕著に表れることはないと思うが、少々気になる部分ではある。
続いてATTO Disk Benchmark V4.00.0f2の結果だ。リード、ライトともに公称にはわずかに届いていないが、こちらもハイエンドSSDとして申し分ない結果となっている。また、キャッシュが尽きて書き込み速度が大きく低下するといった場面も見られなかった。
また、連続書き込み時の速度変化を見るため、HD Tune Pro 5.70を利用して、1500GBのデータを連続で書き込んだ場合の速度変化をチェックしてみた。すると、公称どおり連続書き込みが28GB付近に達したところで書き込み速度が大きく低下し、速度低下後は900MB/s前後で推移していることがわかる。28GBを超えるサイズのデータを書き込む場合には、速度低下時にやや遅いと感じる可能性がある。ただ、それでもSATA SSDの速度を大きく上回っており、体感的にはそれほど気にならないはずだ。
最後に、ATTO Disk Benchmark実行中の温度変化を見てみよう。こちらは、マザーボード付属のSSD用ヒートシンクを外すとともに、空冷ファンの風も当たらないようにした状態で、PCのハードウェア情報を取得するツール「HWINFO64」を利用し、S.M.A.R.T.で得られるSSDの温度情報を記録することで取得している。計測時の室温は26℃ほどだった。
結果を見ると、ベンチマークテスト実行中でも温度上昇は緩やかで、テスト終了時点でも66℃と、ハイエンドSSDとしては比較的低い温度で推移していることがわかる。テストを通して、温度を要因とした速度低下も見られなかった。もちろん、この結果から冷却が不要とは言わないが、ハイエンドモデルながらなかなか扱いやすいSSDと言えそうだ。
高速かつ信頼性に優れるハイエンドSSDとして魅力的な存在
FireCuda 510 SSDは、Seagateが国内にはじめて投入する、一般ユーザー向けハイエンドSSDだ。TLC 3D NANDを利用し、一部をSLCキャッシュとして利用するといった仕様は競合製品と大きく変わらないが、SLCキャッシュ容量が28GBとやや少ない点は少々気になるものの、申し分ないアクセス速度に、優れた耐久性、高負荷時の温度の低さなど、競合製品に負けない製品に仕上がっている。
一部では、PCIe 4.0対応のSSDも登場しつつあるが、まだ利用できる環境もかぎられることもあり、ハイエンドSSDもまだPCIe 3.0対応SSDが主流だ。そのハイエンドSSDの新たな選択肢として、このFireCuda 510 SSDは十分な魅力を備えていると言っていいだろう。