レビュー
Core m3-8100Y搭載版GPD WIN 2で何が変わったのか、分解で確認する
2019年8月23日 11:00
GPD Technologyは、CPUをCore m3-7Y30からCore m3-8100Yに刷新した「GPD WIN 2」を発売した。価格は88,200円だ。
発売前に、代理店の株式会社天空より新モデルのサンプルをお借りして、ベンチマークを実施したのだが、筆者はてっきりCPUだけを載せ替えたものだと思い込んで、分解をせずにすぐにサンプルを返却してしまったのだ。しかしその後、基板の見直しが入ったという連絡があり、俄然興味が湧いてきた。そこで今回、新モデルをもう一度お借りして、旧モデルとともに分解し、中身の変化を比べてみようと思う。
Core m3-7Y30とCore m3-8100Yは、コードネームの違いのみならず、第7世代と第8世代という大きな違いもあるのだが、基本的なダイ設計は大きく変わっておらず、TDPやクロック周波数といった仕様が若干異なる程度にとどまる。そのため、同じ基板を使いまわして、CPUだけ載せ替えれば対応可能のはずだが、わざわざ基板も改変したことになる。
ちなみにGPD WIN 2の内部基板は、メイン基板、M.2 SATA SSDコネクタのドータボード、コントローラ+microSDカードスロット+オーディオ基板を含め、3層構造となっている。力がかかる可能性のある基板をメイン基板と分離させることで、メイン基板をダメージから保護しているほか、フットプリントの削減にも貢献するという、よく考えられた構造だ。
Power ICとSSDの位置をずらすことで熱を分散
改善項目の筆頭に挙げられたのが、「Power ICとSSDの位置をずらすことで熱を分散させ、局所的に高熱になることを抑えることでより安定したゲームプレイを実現」である。
実際に旧モデルでは、SSDの真下にコイルやMOSFETが集中していたのに対し、新モデルではその部分にSuper I/Oチップを寄せ、大きなコイルとMOSFETをSSDの外に追いやっている。コイル数から推定されるフェーズ数も増加しているとみられ、負荷を分散させていると思われる。
CPU用のDC/DCコンバータは、新旧モデルともにMonolithic Power Systemsの「MP2939」を採用している。これはIMVP8に対応した1+2+1フェーズのコントローラである。
microSDカードリーダの性能改善
2つ目が「microSDカードリーダの性能を改善し、アプリケーションパフォーマンスクラス2に対応」だ。
microSDカードはコントローラ基板側についているため確認したところ、従来モデルになかった「RTS5306E」というRealtek製のUSB 3.0接続のSDカードコントローラが確認できた。
従来は、CPUに内蔵される「Intel SD Host Controller」を利用していたが、新モデルではUSB 3.0経由で接続されることになる。
パワーアンプICを搭載することで音質を向上
3つ目は「オーディオ出力に新たにパワーアンプICを搭載し、音質を向上」である。
音声出力もコントローラ基板側についているので、こちらで確認した。そもそもオーディオコントローラがRealtekの「ALC282」から「ALC269」に変更されているのだが、左側にパワーアンプICらしきチップが追加されているのがわかる。なお、従来モデルも空きパターンとなっていたので、当初から搭載予定だったものが実際には省かれたのだろう。
このパワーアンプICが働くのはスピーカー側で、ヘッドフォン側は影響を受けない。ボリュームが100%の状態で比較してみたところ、確かに新モデルのほうがボリュームが大きく、痩せ細っていた音が豊満になった印象を受けた。
もっとも、オーディオコントローラの変更に伴ってヘッドフォン側も改善されており、ホワイトノイズがかなり低減された。従来モデルはホワイトノイズがかなり気になったが、新モデルはほぼ皆無となっている。
Type-C充電の改善
5つ目はUSB Type-C充電の改善である。従来モデルは5VのUSBに接続してもうんともすんとも言わなかったが、新モデルはきちんと充電されていることがわかる。
従来モデルは、USB PD 2.0に対応したEtron製コントローラ「EJ898A」と、USB信号とDisplayPortのスイッチングを行なうブランド不明の「PI3USB」の組み合わせであったが、新モデルでは2つの機能を統合したParadeの「PS8750B」と、3.2V~23.4Vのワイドレンジ電圧入力に対応したIntersil(ルネサス)の電圧変換チップ「ISL9237」を採用している。
その他
初期モデルにあったバイブレータは、後期モデルおよび新モデルで削除されてしまっている。この点やや残念に思われるユーザーも少なくないだろう。
ちなみにBIOSは、従来は横倒しの状態で表示されてしまう問題があったが、新モデルでは正しく表示されるようになった。ただ、旧モデルにあった豊富な設定オプションは一切削除されてしまっており、カスタマイズができなくなっている。また、BIOSこそ向きが直ったものの、Windowsのデスクトップ表示は従来どおりビデオドライバによる回転で、旧ゲームと相性問題を抱えている。
とくに謳われていないが、eDPからMIPI DSI/CSIインターフェイスの液晶に変換するコントローラが、従来のLontium Semiconductor製の「LT7911C」から、東芝の「TC358860XBG」に変更されている。機能こそ同じだが、パッケージサイズは7.5×7.5mmから5×5mmへと縮小し、基板占有面積が削減されている。
また、メモリチップはSamsungの「K4E6E304EC-EGCG」から「K4E6E304EB-EGCF」になった。ちなみに型番末尾のCGが2,133Mbps動作、CFが1,866Mbps動作ということでダウングレードされているが、CoreプロセッサのLPDDR3の動作速度は1,866Mbpsまで、BIOSでも設定できないため、旧モデルに搭載されているチップは過剰スペックであり、調達の問題から選択された可能性がある。
というわけで、GPD WIN 2の新モデルは、筐体に変更がないマイナーチェンジモデルながら、基板はほぼフルスクラッチで設計されたマシンであることがわかる。以前に行なったGPD Wade社長へのインタビューで、同氏は「日本の匠のような会社を目指す」と語っていたが、新モデルからは十分その気合が感じられるものとなっている。