レビュー

「メガドライブ ミニ」分解レポート

メガドライブ ミニ

 セガ・エンタープライゼスが1988年に発売した「メガドライブ」を2分の1のサイズで復刻した「メガドライブ ミニ」が、9月19日に発売された。税別価格は、コントローラが1つ付属したモデルが6,980円、2つ付属したモデルが8,980円となっている。

 今回、前者を入手したので、分解を含めて、ハードウェアを中心にレポートしていきたい。

発売30周年を記念した手のひらサイズの復刻版

 メガドライブは、1988年にセガが発売した5番目の家庭用TVゲーム機にあたる。ソニックやシャイニングシリーズがこのハードの上で誕生し、ファンタシースターやぷよぷよなど、今も有名なタイトルが発売・移植された。

 2016年11月に任天堂が「ニンテンドー クラシックミニ ファミリー コンピュータ」を投入した以降、多くの家庭用ゲーム機のリバイバル版が登場しているが、メガドライブミニの収録タイトル数は42本とダントツに多い(ニンテンドークラシックミニ ファミコン:30本、同スーパーファミコン:21本、プレイステーション クラシック:20本)。筆者的には、ラインナップも満足である。

 さて実物を見ていこう。パッケージには「MD」のロゴが大きくあしらわれており、誇らしげな「16bit」の表記もある。内容物は本体のほかに、コントローラ、HDMIケーブル、USB Type-A→Micro USB変換ケーブルが同梱されている。相変わらず添付にUSB ACアダプタはないが、本誌の読者であれば、何ら困ることはないだろう。

 本体はインターフェイス類を除き、オリジナルをかなり忠実に再現している。たとえばカセットのスロットはちゃんと開閉するし、側面に拡張用スロットのカバーも再現され、取り外せばデコレーション用アクセサリ「メガドラタワーミニ」も装着できる。また、「PHONES VOL」のつまみも機能はしないが、ちゃんとスライドできる。このあたりは、先行する3機種よりも熱が入っている。

 コントローラは後期標準の6ボタンタイプとなっている。十字パッドの部分は軽快な操作感で、あまり力を入れずとも入力される。一方、ボタン部はホームポジションを示す「B」ボタンに1つ、「Y」ボタンに2つの突起があるのだが、こちらはやや引っかかる印象で、押す位置によっては痛く感じられる。とは言え、これも復古を優先させた結果だと言える。

製品パッケージ
パッケージ背面に収録タイトルがずらり
内容物
メガドライブ ミニ本体
背面にはMicro USB(電源用)とHDMI出力を備える
前面にはUSBのポートが2つ
本体底面
拡張スロットカバーも再現されている
カセットスロットのカバーもスプリングで開閉可能
コントローラ

瑞起オリジナルSoC「Z7213」を採用

 本体は底面の6本のネジで止められており、簡単に分解可能だ。分解すると基板の大部分がヒートシンク(金属板)に覆われていることが確認できるが、このヒートシンクもネジ3本で取り外せる。

 気になるSoCだが、日本に会社を構えるファブレス企業である瑞起のSoC「Z7213」が採用されている。瑞起のホームページには、「令和最初の新ゲーム機にも搭載された瑞起オリジナルSoC」という記載があるため、間違いはないだろう。

 Z7213の詳細について瑞起に問い合わせ中だが、同社はArmを専門としており、中国Allwinnerの代理店を務めていることから、Z7213もArmをベースとしている可能性は高い。ちなみに海外グループ会社として「深セン果果慧科技有限公司」が名を連ねているが、果果慧のホームページには、任天堂やセガトイズ、タイトーといった企業名が並んでおり、サービスのページにはスーファミミニの写真もあるのが興味深い。

 DDR3メモリには、西安紫光国芯半導体有限公司の「SCB15H26160 AF-13K」が採用されている。2Gbit(256MB)の容量で、動作クロックは1,600MHz相当(実クロックは800MHz)だ(レイテンシは11-11-11)。ちなみに先述の果果慧は、中国最大の半導体開発グループである清華紫光集団のビルに入っており、同グループから出資を受けている可能性は高い。

 ゲームのROMやシステム一式を格納していると思われるフラッシュには、SamsungのSLC NANDフラッシュ「K9F4G08UPF-SIB0」が採用されている。容量は4Gb=512MBと小さいが、30年前のタイトルを格納するには十分だ。SLCということは、耐久性も十分に考慮されているだろう。

 このほか、マルチコアSoC向けのX-Powers製電源コントローラ「AXP223」、Prolific Technology製のUSB 2.0 Hubコントローラ「MA8601」、Explore Microelectronics製の低電力HDMIトランスミッタ「EP952」が実装されている。全体的に部品は少なく、低コストに製造できるのは明らかだ。

本体はネジ6本で分解できる
基板はシンプルなもの
瑞起のオリジナルSoC「Z7213」。詳細は不明だ
西安紫光国芯半導体有限公司のDDR3メモリ「SCB15H26160 AF-13K」
Samsungの512MB SLC NANDフラッシュ「K9F4G08UPF-SIB0」
マルチコアSoC向けX-Powers製電源コントローラ「AXP223」
Explore Microelectronics製の低電力HDMIトランスミッタ「EP952」
Prolific Technology製のUSB 2.0 Hubコントローラ「MA8601

 本機の設定メニューからアクセスできる「権利表記」のなかで、Linuxカーネルのライセンスに関する記述がある。よって本機もLinuxをベースに、メガドライブのエミュレータを載せ、ROMを動作させているものと予測される。

Linux Kernelに関するライセンスの記述

 コントローラは一般的なUSB接続のもの。PCと接続すれば10ボタンのゲームパッドとして認識される(このうちボタン7と8は認識しない)。基板は1枚のみでシンプルなものだ。ケーブルは根もとが断線しにくいよう補強されているが、プレイステーション クラシックのように交換可能なMicro USBになっているわけではない。

コントローラ基板
「A31419」というコントローラが採用されている
コントローラ基板の背面

軽快なメニュー

 本機の電源を入れると数秒で起動する。メニュー画面はパッケージ表紙からゲームタイトルを選ぶシンプルなもので、Bボタンを押せば背表紙表示となり、42タイトルを見渡せる。動作は非常に軽快で良い。

 標準のゲーム画面は4:3フォーマットのため、余白には壁紙が表示される。この壁紙は3種類のなかから選べる。また、設定でアスペクト比を16:9に引き伸ばすことも可能だ。ちなみに出力解像度は1,280×720ドットとなっている。WQHD(2,560×1,440ドット)表示対応の27型ディスプレイで映し出してみたが、ゲーム画面は比較的くっきりとした印象だった。なお、スクリーン設定メニューで「C」ボタンを押せば、ブラウン管のような表示効果が得られる「CRTフィルター」がオン/オフできる。

 ゲームプレイ中にコントローラの「MODE」ボタンを押すとシステムメニューが呼び出され、任意のタイミングでセーブやロード(4スロット)、リセット、メニューに戻るが選択できる。わざわざ本体に手を伸ばさなくても操作ができるのは評価できるだろう。

 ただ、ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコンにある、保存した自分のプレイ映像がムービーのように再生される「マイプレイデモ」機能や、映像を巻き戻したタイミングからゲームを再開する「リプレイ機能」はない。

ゲームタイトル選択画面
ゲームタイトル選択画面でBボタンを押すと背表紙表示となる
スクリーン設定。この画面でCボタンを押すとCRTフィルターがオン/オフできる
コントローラのMODEボタンを押すと呼び出せるシステムメニュー。1つのゲームにつき4つの中断スロットが用意される
セーブデータのロックにより上書きから保護できる

買うならコントローラ2つの「メガドライブミニ W」

 ゲームタイトルごとの詳細については、僚誌GAME Watchがすべてレビューする予定なので、ここでの詳細は省くことにする。しかし収録される42タイトルは、新規収録の「ダライアス」と「テトリス」を含め、お~ッと思わせるようなラインナップが多く感心させられた。しかも、ハードウェアの再現度も先行製品よりも高いので、コレクションの価値はある。

 本機に収録されているタイトルのうち、「ぷよぷよ通」や「ストリートファイターIIダッシュプラス CHAMPION EDITION」は2人プレイでこそ白熱するものであり、そういう意味では1つしかコントローラが付属しないモデルは、その魅力を十分に引き出せない。いまやネット対戦が当たり前だが、あえて昔の友人を自宅に呼んで、2つのコントローラでゲーム対戦してワイワイ盛り上がるのも一興だろう。

 本機に採用されているSoC「Z7213」については謎が残るかたちとなってしまったが、新たに情報が入り次第お伝えしたい。