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「Claude Cowork」5つの使い方。定型業務を丸ごとAIに任せてみる

Claude Cowork

 Anthropicの「Claude Cowork」に注目が集まっている。Claudeといえば開発者向けの「Claude Code」を思い浮かべる人が多いかもしれないが、Coworkは開発者に限らず、より広い層が日常業務に活用可能なAIエージェントで、Webアプリやファイル操作、PCアプリ操作などを自動化できるツールだ。

 ここでは、従来のチャットAIとの違いや、具体的に何ができるのかなど、ノーコードで実現できる5つの使い方を実例で紹介する。

「AIに教えてもらう」から「AIにやってもらう」への転換

 「手順は単純だが、ただただ時間がかかる……」。「毎日やっているが、意味があるのかが疑問……」。

 そんな日常業務に悩まされている人も少なくないことだろう。大量の領収書整理や定型データの集計、報告メールの下書き作成など、身の回りには数多くの単純作業が存在し、時間と気力が静かに奪われていく。

 こうした状況を解決できる可能性があるのが、Anthropicが開発した「Claude Cowork(クロード・コワーク。以下、Cowork)」だ。

 もちろん、同様に単純な作業を代行するシステムはほかにも存在する。少し前ならRPAだったし、ここ数年で一般化したChatGPTやCopilot、Geminiなどのチャット型生成AIもその1つだ。

 こうした既存のシステムとCoworkの最大の違いは圧倒的な自律性の高さにある。

 Coworkは、PDF操作やユーザー定義操作などのよく使う作業を「スキル」として用意したり、Gmailなどのサービスへの接続やブラウザ(Chrome)操作が可能な「コネクター」を用意したり、Anthropic Shockで話題になったLegalなどの特定業務向けパッケージ「プラグイン」を用意したりと、生成AIが使える道具を豊富に用意し、生成AI自身が、必要なときに必要なツールを自ら選んで駆使することで高度な作業を実現できる。

 たとえば、ユーザーが「社内ポータルから業績データを集めて報告書を作って」と頼んだ場合、Coworkでどこまで自律的に作業ができるのかというと、

  1. Chromeを起動する
  2. 社内ポータルにアクセスする
  3. ページを操作して業績指標を取得する
  4. 報告書を作成する
  5. 選択したフォルダにWordファイルで出力する

というところまでできる。

Coworkは自律的に動作し、さまざまな作業を代わりにやってくれる

 Coworkならではの機能をまとめると、以下のようになる。

  • Scheduled(予定済み)
    タスクの定期実行が可能。たとえば、Webからの情報の取得、メールでの定期報告などが可能
  • プラグイン
    「Legal」「Marketing」「Finance」など専門業務向けのパッケージ化されたスキルを利用可能
  • フォルダ操作
    あらかじめ指定したフォルダに対してファイルのコピーやフォルダ作成などの操作が可能
  • コンピュータ使用
    画面のスクリーンショットを確認しながらマウス、キーボード操作が可能。ローカルアプリの操作、設定変更などができる

 現状、サービスに機能差はあるものの、チャット型AIは基本的に「やり方を聞く」という相談相手的な存在として使われることが多い。これに対して、Coworkは、こうした特徴や機能から、何らかの作業を「やってもらう」という使い方ができる生成AIといえる。

有料プラン+デスクトップアプリで利用可能

 Coworkは、現状、Claudeの有料プラン向けのサービスとして提供されている。

 個人向けでは、月額20ドル(年間サブスクリプションは200ドル/年で月額約17ドル換算)の「Pro」プランから利用可能だ。

Claudeの料金表

 一般的な生成AIと同様のチャットサービスは、ブラウザから「https://claude.ai/」にアクセスすることで利用可能だが、Coworkは、デスクトップアプリ向けの機能となっており、アプリのインストール後、機能の切り替えボタンで「Chat」から「Cowork」に切り替えることで利用可能になる。

 詳細は、4月に新媒体としてスタートしたAI WatchのWindows版「Claude Cowork」の動作環境をチェックする」を参照してほしいが、Coworkの実態は、Windowsの仮想マシンプラットフォームで動作するLinux環境(Ubuntu)となる。このため、環境によっては上記の「Cowork」ボタン切り替え時に必要な機能のインストールが必要になる。

使用例① 毎朝のルーティン報告

 それでは、実際にCoworkで実現できる具体的な例を見ていこう。なお、ここで紹介する機能を利用するには、事前にChromeに「Claude in Chrome」の拡張機能をインストールし、Gmailコネクターも有効化しておく必要がある。

 まずは、定期報告メールの作成だ。前述した「Scheduled(予定済み)」の機能を使って、次のような操作を自動化する。

  1. 09:00に自動的にタスクを起動
  2. 自動的にブラウザ(Chrome)を起動
  3. 社内ポータルのダッシュボードにアクセス
  4. ページを操作し指定した日時(前日)の表示に切り替え
  5. 前日の業績データを取得し、主要指標(総売上や客単価など)を抽出
  6. 取得したデータをまとめ、Gmailの下書きとして自動保存
メール報告の例

 設定は簡単で、Coworkの「Scheduled」で新しいタスクを作成し、以下のように設定するだけでいい。

スケジュールタスクを作成
ポータルサイトにアクセスして情報を取得する
Gmailの下書きを作成する

 もちろん、PCを起動しておく必要があるが、出社後に雑用を済ませている間に、すでに報告を送信する準備ができているわけだ。

使用例② 専門家レベルのリーガルチェック

 続いては、「Anthropic Shock」と話題になった「プラグイン」の使用例を紹介する。今回の例では、業務委託契約書のリーガルチェックを実施するので、あらかじめ「Legal」プラグインをインストールした状態でスタートする。

 なお、従来の生成AIは、法務や医療などの分野に使うべきではないとされていた。Coworkも最終的な判断は専門家に委ねるべきだが、第1段階のチェックや専門家に相談する資料として活用できる。

 この機能は使い方がシンプルで前述したような自動化の流れはない。検証したいファイルをアップロードし、「プラグイン」の「Legal」から「Review-Contract」を選択してレビューを依頼するだけでいい。

業務委託契約書のチェック例

 すると、以下のように文書の内容がチェックされ、いくつか質問が表示される。委託側なのか受託側なのか? 重点的にチェックしたいのはどこなのか(知財権など)? こうした点に回答すると、結果が表示される(社内共有や弁護士相談用のWordファイルも出力される)。

 なお、自社のプレイブック(自社の原則を定めたガイド)がある場合は、それに従ってチェック可能だが、なくても構わない。筆者が検証した際は、「一般的な商慣習と民法改正後(債権法)の標準ポジション」でチェックすると表示された。

ファイルをアップロードしてLegalプラグインの「review-contract」を実行
質問に回答する
プレイブックを指定できる。ない場合は一般的なチェックが実行される
リスクなどの詳細なレポートが生成される

 ちなみに、上記画面とは別に、筆者もインプレスとの間で実際に交わしている書籍の出版契約書を読み込ませてみたが、著者の立場として交渉すべき点がいくつか提示された。うーん。実際に、交渉した方がいいのだろうか……。

使用例③ プロジェクトを利用した複雑なタスクの単純化

 次は、「プロジェクト」を活用することで、決まった操作をあらかじめ登録しておくことで、簡単な命令だけで実行可能にする方法を紹介する。

 具体的には、以下の7つのステップの作業をプロンプトとして、プロジェクトに登録しておく。また、ダウンロードしたファイルにアクセスするために「コンテキスト」に「ダウンロード」フォルダを追加しておく。

  1. ブラウザでオフィスマートの明細ダウンロード画面(https://xxxxxxxxxx)にアクセスする
  2. 月別フィルターを利用してユーザーに指定された年月の領収書を表示する
  3. 一覧に表示されている請求書のPDFボタンをクリックしすべてダウンロードする(ダウンロード許可の確認不要。自動的にダウンロードすること)
  4. 「ダウンロード」フォルダにあるPDFファイルをプロジェクトの「領収書(ユーザーが指定した年月)」フォルダにコピーする
  5. すべての領収書から日付、社名、合計金額、消費税、支払先を抽出する
  6. 日付、社名、合計金額、消費税、支払先をプロジェクトの「領収書(ユーザーが指定した年月)」の「領収書一覧.xlsx」ファイルに記録する
  7. プロジェクトの「領収書(ユーザーが指定した年月)」のPDFファイルのファイル名の末尾に「処理済み」と追記する
領収書処理の作業の流れ

 プロンプトといっても、やってほしいことを箇条書きにするだけなので、休暇に際して作業を別のメンバーに引き継ぐ感覚で書けばいい。

 このようにプロジェクトに定型作業や利用するフォルダ、関連するファイルなどを登録しておくと、最低限の情報をプロンプトで与えるだけで、定型処理を実行できる。この例なら、「2026/05」などと年月を指定すれば、その年月の処理を自動的に実行してくれる。

サンプルで使った通販サイトの例。領収書をダウンロードできる
プロジェクトとして作成しておく
ブラウザを操作している様子
フォルダにアクセス可能なのでファイル名も変更される

使用例④ 外出先からオフィスのPCを操る「Dispatch」

 次は物理的な場所に縛られずにPC作業を完結させる「Dispatch(ディスパッチ)」を紹介する。これはスマホアプリから指示を出すことで、オフィスのPCで稼働するCoworkを遠隔操作する仕組みとなる。

 この機能を使うには、あらかじめスマートフォンにClaudeアプリをインストールし、PCのデスクトップアプリとスマートフォンを関連付けしておく必要がある。

 例としては、「社内ネットワークからしかアクセスできないポータルサイト」の情報を外出先で確認したい場合が挙げられる。たとえば、次のように依頼することで簡単にデータを取得できる。

  1. スマホから「申請ポータル(https://xxxxxxxx)にアクセスして、処理待ちのリストを調べて」と指示
  2. オフィスのPCのCoworkが反応し、ブラウザでポータルサイトにアクセス
  3. 「処理待ち」の申請書を確認し、そのリストをスマホに送信する
作業の流れ

 スマホアプリは音声入力にも対応しているので、わりと複雑な作業依頼をすることも可能だ。Coworkの使い方の幅が広がるだろう。

スマートフォンから命令を実行
PCが自動的に操作される

使用例⑤ コンピュータ使用によるWindows操作

 最後は、Windowsそのものを操作できる「コンピュータ使用」の機能の例を示す。この機能は、前述したようにスクリーンショットで画面を確認しつつマウスやキーボードを操作するという強力な機能で、万能なのだが、それゆえに実用的な事例を示すのが難しい。

 おそらく、企業内に残っているWin32のレガシィアプリを操作するといった使い方が想定されそうだが、今回はシンプルにWindowsの設定アプリを操作して、バージョン情報を取得してみた。

 Coworkのデスクトップアプリの「設定」の「一般」(メニューの下の方にあるデスクトップアプリ下の一般)で「コンピュータ使用」をオンにした状態で、Coworkでシンプルに「Windowsの[設定]で[システム]の[バージョン情報]を開いて、バージョンを確認してください」と依頼してみた。

コンピュータ使用の例

 これで、自動的にCoworkがWindowsを操作し、バージョン情報を表示してくれる。Coworkの画面をよく見ると、自律的に画面をスクロールしている様子や、ユーザーによってウィンドウサイズが途中で変えられても、それを検知して操作したりする様子が見える。

実行時の様子。Coworkが右端に移動し、デスクトップを操作する

 なお、この機能は、Coworkに強い権限が与えられるため、セキュリティやプライバシー保護の目的で操作の度に許可が必要になる。アプリを起動する際、最小化したアプリを最大化する際など、何度も許可が求められるようになっている。このため、自動的にタスクを実行することは難しい。

便利だが注意点も多い

 このように、Claude Coworkは、今までのチャット型生成AIとは異なる、かなりできることの幅が広がったツールといえる。

 しかし、注意点もいくつかある。

 まずは、まだ安定性に欠ける印象がある。特にChromeを自動的に起動できないことがよくある。また、コンピュータ使用も思い通りに操作できない場合があり、まだ発展途上という印象だ。

 次にセキュリティの課題だ。前述した例では、社内ポータルにアクセスするというストーリーを紹介したが、Webアプリにアクセスする際にログインやサインインが求められるケースがある。この際、IDやパスワードをCoworkにプロンプトで渡してサインインすることもできるが、これはセキュリティ上避けた方がいい。

 また、「コンピュータ使用」に関しては、画面キャプチャを撮って状況を判断する仕組み上、機密情報やプライバシーの漏洩に注意する必要がある。

 最後に、コストの問題がある。Coworkは、作業計画を立てたり、実際に作業を実行したり、その結果を出力するのに大量のトークンを消費する。このため、使い方によっては、Proプランでは、すぐに上限に達してしまうことがある。

 特に注意が必要なのは、タスクをお任せし過ぎて、試行錯誤のループが発生するケースだ。たとえば、簡単な例を挙げると、インターネット上のサイトにアクセスしてデータを取得するというケースで、最初にブラウザを操作しようとして、Chromeを起動できずに失敗し、それをカバーするためにWebFetchスキルを使おうとするのだが、標準ではサンドボックスからのWebアクセスが禁止されているため、これにも失敗。このプロセスが何度か繰り返される場合がある。

 同様にブラウザを使ったファイルのダウンロードなども失敗しやすい。ダウンロードボタンでPDFファイルが開いてしまったり、ダウンロードフォルダをコンテキストに登録し忘れてアクセスできなかったりと、試行錯誤が繰り返されることが多い。

 トークン消費を減らすには、こうした動作を人間側が監視し、失敗を減らせるように工夫する必要がある。たとえば、事前にWebFetchでもアクセスできるようにホワイトリストにURLを登録しておく。

 シンプルに上位プランを利用するのもいいが、動作の監視とプロンプトや設定の最適化は必須という印象だ。

 逆にいえば、こうした試行錯誤やループこそ、Claude Coworkの自律性の高さの現れでもあり、おまかせでも最終的には何とかしてくれるということなのだが、実際の運用では注意が必要だ。