特集
HDD技術の変遷。MRから始まりHAMR/MAMR、そしてBPMまで
2025年8月1日 06:26
昨今のHDDに使われている技術の変遷を簡単にまとめてほしい、というお題をいただいた。ちなみにIBMのRAMACまで遡る必要はないと釘を刺されており、比較的最近(?)の話からのスタートとなる。
下敷きとなる話として、2008年にSeagateが都内で行なったワークショップの記事があったので、これをベースにしたい。つまり2008年までの話はそちらの記事を参考にしていただければ、という話である。
現在のHDDの状況
実のところ、HDDの基本的な要素に関しては2000年前半にほぼ完成していると言ってよい。ステッピングモーターを利用してプラッタを駆動し、このプラッタの両面に磁気ヘッドを這わす形にして読み書きを行なうというものだ。プラッタの枚数は多くて11枚程度であり、HDDの容量はこのプラッタに保持できる記憶容量で決まる格好である。
以前はプラッタの回転速度を10,000rpmとか15,000rpmとかにすることでアクセス時間を減らす工夫がされていた。15,000rpmのものについては、3.5インチのままだと遠心力が強すぎてプラッタが壊れかねないというので2.5インチプラッタを採用した製品もあり、容量がそのぶん小さくなるという弊害すらあった。
しかしこのようなものはもう存在しない。そもそも超高回転HDDは大規模なRAIDを組むことを前提にしたものだったが、こうした用途はエンタープライズSSDに置き換えがほぼ済んでしまっている。SSDのアクセス速度はもとより、容量としてもU.2で61TBの製品はすでに出荷されており、122TBの製品のサンプル出荷もスタートしている。
他方HDDは?というと最大でも30TB台でしかない。ただ容量価格比ではHDDはエンタープライズSSDの追従を許さない良好な数字を出しており、これもあって低頻度ながら定期的なアクセスがあるようなウォームストレージ向けに引き続き使われているという格好だ。
ウォームストレージ向けの場合、ランニングコストも重要になってくるため、強制冷却を掛けないと動作温度が上がりすぎてしまう10,000rpm以上のドライブはむしろ不適切であり、その結果、最近はエンタープライズ向けでも7,200rpmに抑えられている。
こういう状況だから、転送速度のほうも推して知るべしである。プラッタ最外周をシーケンシャルアクセスするといった理想的な状況であれば300MB/s近い転送速度が期待できるが、そんな理想的な状況になることはまず考えられない。
であればインターフェイスはSATA 6Gbpsどころか3Gbpsでお釣りが来る計算になる。6Gbpsの定義がされたSerial ATA(SATA) Rev 3.0がリリースされたのは2008年だが、性能的には2004年のSATA Rev 2.0で十分間に合う形だ。SATAの仕様そのものは2021年のRevision 3.5aが最新となるが、HDDとの接続に関しては2008年のRevision 3.0でほぼ網羅した格好となっている。
エンタープライズ向けにはSAS(Serial Attached SCSI)が使われることが多いが、こちらも途中からターゲットがHDDではなくSSDに切り替わりつつあり、SAS HDDに関しては2009年のSAS-2(6Gbps)ないし2013年のSAS-3(12Gbps)でほぼ網羅されており、2017年のSAS-4(22.5Gbps)に対応したHDDというのは見かけたことがない。実際転送速度で考えればSAS-3どころかSAS-2でもお釣りが来る計算だから、これは致し方ないだろう。
ほかの例としては、磁気ヘッドを搭載したアームを2組搭載することで、転送速度を倍増させられる技術もあって、たとえばSeagateは2017年12月にMulti Actuator Technologyを発表、2018年3月にはデモも行なわれたが、今のところ製品が出てくる話にはまったくなっていない。
【8月2日追記】
と書いたのだが、その後読者からのご指摘で実はSeagateが製品をリリースしていたことが発覚した(筆者はまったく気がついていなかった)。2020年のCESでMACH.2 Multi-Actuator technologyと名付けられたこの磁気ヘッドを2組持つ製品がExos 2X14として発表。2022年11月にはExos 2X18も発表された。
Exos 2X14は14TB or 7TB×2、Exos 2X18は16TBまたは8TB×2/18TBまたは9TB×2として利用可能なエンタープライズ向けSAS HDDで投入されており、Exos 2X14では最大524MB/s、Exos 2X18では最大554MB/sのシーケンシャルリードが可能とされている(ちなみにExos 2X18はSATAモデルも用意)。ただこれに続く製品は今のところ存在していない。残念ながら一般的にはなり得なかったようだ。
また2010年頃にはHDDにSSDをキャッシュ用に搭載するSSHD(Solid State Hybrid Drive)あるいはHybrid HDDと呼ばれる製品も登場したが、PC用のBoot DriveがほぼM.2 NVMe SSDに移行し、しかも十分な容量(~4TB)が提供される様になると、こうしたHybrid製品のニーズも次第に減ってきたようで、最近ではあまり見かけなくなった。
MRやGMRといった磁気ヘッドの種類
そんなわけで、HDDに関する技術革新の中心は、ほぼ容量の増加に集中することになる。要するに、1枚のプラッタにどれだけのデータを記録できるかという競争である。
と言ってもプラッタの面積そのものは限界サイズまで大きくなっているから、後は記録密度を向上させるしか容量を増やす方法がないことになる。かくして、記録密度向上に向けての努力が積み重ねられることになる。
記録密度の第1の方法が、磁気ヘッドの改良である。HDDに利用される磁気ヘッドは1990年以降、次の技術が使われてきた。
- 1990年 : MR/AMR(Magneto Resistance/Anisotropic Magneto Resistance)
- 2000年 : GMR(Giant Magneto Resistance)
- 2004年 : TMR(Tunnel Magneto Resistance)
- 2024年 : HAMR/MAMR(Heat Assisted Magnetic Recording/Microwave Assisted Magnetic Recording)
そもそもHDDは、以下の形で動作を行なう。
- 読み出し(リード)
記録媒体(つまりプラッタ)から磁気の方向を読み出して、それをデータとして出力 - 書き込み(ライト)
データに合わせて記録媒体に磁気の方向を変更して書き込み(上書き)
さて、記録密度を上げるということは、1bit分の記録を行なう面積がそれだけ減るということになる。これは書き込みを行なう際にも問題であるが、それよりも読み込みの際に「読み取れる磁荷の量」が減ってしまうという問題が生じることになるのが大問題である。
MR(Magneto Resistance)
これを解決するための方法として最初に採用されたのがMRである。Magneto Resistance(磁気抵抗)という名前の通り、磁場(厳密に言えば磁束密度)に応じて抵抗値が変わるという効果を利用したものだ。
この効果、最初に発見されたのは1856年と古いのだが、当時はまだ材質の問題があり、抵抗値の変化が少なかったこともあって、あまり利用されなかった。ところがその後、InSb(インジウム・アンチモン)などの新材料の発見などもあり、従来の方法(磁場の誘導電流を利用する方法)よりも高い感度で磁場の測定ができるということで、1990年頃からMR素子を磁気ヘッドに利用するようになった。
ちなみに続くGMRとかTMRも括りとしてはMRに入るということで、あえてAMRと呼ぶ場合もある。初期のMRセンサーは、異方性磁気抵抗効果(Anisotropic Magneto Resistance)と呼ばれる性質をそのまま利用したもので、センサーとなる強磁性体と磁場の向きが一致している場合と一致していない場合で、抵抗値が概ね3~5%ほど異なるというもので、抵抗値を測定してこの差を読み取る仕組みとなっていた。
GMR(Giant Magneto Resistance)
続いて2000年頃に採用が始まったのがGMR(Giant Magneto Resistance)である。これは2つの強磁性体の間に非強磁性金属を挟み込むことで、抵抗値の変動がより大きくなる(2~3倍)という特徴を生かしたものだ。抵抗値の変動が大きい(≒感度が高い)というのは、わずかな磁場の変化でも捉えやすくなるということでもあり、これによりプラッタ上の記録面積を削減しても、AMRの場合と同等のレベルでの検出が可能ということになる。
TMR(Tunnel Magneto Resistance)
そのGMRに続いて2004年頃から実用化されたのがTMR(Tunnel Magneto Resistance)である。構造的にはGMR同様に2つの強磁性体の間に非強磁性金属を挟み込む構造だが、電流の掛け方がGMRと異なる方式である。こちらはトンネル効果を利用したものだが、抵抗値の変化率がAMR比で30倍以上と極めて大きいのが特徴であり、これによりGMRと比較しても大幅に感度を上げられることになった。
ということは、それだけ記憶領域の面積を小さくできる≒高密度化が達成できることになる。実際2004年からTMRを利用した磁気ヘッドが登場し始め、そこから20年を経過した現在も普及帯の製品はこのTMR磁気ヘッドが採用されている。今後も小容量なHDD向けには引き続きTMR磁気ヘッドが利用されることになるかと思う。
PMR(Perpendicular Magnetic Recording)
次のHAMR/MAMRについては後で説明することにして、先にヘッド以外の改良技術についても説明しておきたい。まずTMRとほぼ同時期に登場したのがPMR(Perpendicular Magnetic Recording : 垂直記録方式)である。このPMR、2005年にHGST(日立グローバルストレージテクノロジーズ)が行なった記者発表会の様子がこちらの記事に纏まっている。
それまでは面内記録方式あるいは長手記録方式と呼ばれる、つまりプラッタに円周状に設けられたトラックに沿う形で記録していたのだが、垂直記録方式ではこれをプラッタに対して垂直に記録するようにしている。それだけ高密度にできるというわけだ。
PMRを最初に商品化したのは東芝であるが、当初は3.5インチ未満の小型HDD(東芝は当初1.8インチサイズに採用した)の記憶容量増加が主目的であった。ただしすぐに3.5インチHDDにも採用されるようになっている。PMRでは、プラッタ上に占める面積は非常に小さいことになるので、当然ながらTMR磁気ヘッドとの併用で実用化した格好だ。
このPMRの性能を強化したのがWDのePMR(Enhanced Perpendicular Magnetic Recording)と呼ばれる技法である。これは書き込み時に少し大きめの電流を流すことで書き込み信号が安定し、結果的により記録密度を引き上げられる、というものである。
2023年にはこれを採用した28TB品のサンプル出荷が開始されることが報じられ、2024年10月には最大32TB品の出荷が開始された。
ヘリウム充填
次に採用された技術がヘリウム充填である。そもそもHDDの中は真空ではなく(真空だとヘッドがプラッタに張り付いてしまう危険性がある)空気が密閉されている。もちろんごみなどが混入するとクラッシュの要因になるので、ゴミのない綺麗な空気を密閉しているわけだが、記録密度の向上に伴ってヘッドの位置制御が非常に困難になってきた。
空気分子の大半はN2(窒素)で分子量28.0134g/mol、次がO2(酸素)で分子量31.999g/molであるが、7,200rpmでプラッタが回転すると、これに伴いHDD内部の空気も結構な速度で動くことになる。
この空気がHDDのヘッドを支えるアームにぶち当たることで、アームがある程度振動することは避けられない。フラッターと呼ばれるこの現象を完全に抑えるのは非常に難しいので、ある程度許容せざるを得ないのだが、そうなると多少フラッターによってアームが上下してもヘッドがプラッタに接触しないようにマージンを取る必要がある。これが理由で、1台のHDDに搭載できるプラッタの枚数は5枚かその位に制限されていた。
ところがここでHDDの内部にHe(ヘリウム)を充填するというアイデアが生まれた。理由は簡単で、分子量がはるかに小さい(4.003g/mol)ことだ。つまり同じ量のN2やO2分子に比べると、ずっと軽い。軽いということは、それだけアームにフラッターを起こさせる力が小さいということで、この結果接触防止のために必要なマージンとして取るべき高さ方向の幅を大幅に減らすことが可能になった。
この結果、1台のHDDに10枚以上のプラッタを収められるようになる。プラッタの枚数はHDDの容量にそのまま直結するから、このヘリウム充填は容量増加に大きく貢献した。
ちなみにH2(水素)にすればさらに分子量は減る(2.016g/mol)し、ヘリウムに比べるとはるかに安価であるが、以下のような問題があるので、採用にはいたっていない。
- ヘリウムを水素にしても、それほど大きく枚数が増やせるわけではないというか、ヘリウムを利用した時点でもう限界まで枚数を増やしており、これ以上枚数を増やすのはかなり難しい。
- 水素は密閉が非常に困難でさっさと抜けてしまうため、本気で密閉しようとすると現在の3.5インチHDDの大きさではかなり困難が伴う。ヘリウムは従来の密閉技術と同じとまでは言わない(実際IBMが2015年にヘリウム充填HDDを発売するにあたっては、内部構造とか充填技法の確立にかなり苦労した)までも、3.5インチHDDの大きさに収めることが技術的に可能である。
- 水素が漏れてしまい、酸素と結合すると爆発の危険性がある。ヘリウムは不活性ガスなのでこうした危険性がない。
SMR(Shingled Magnetic Recording)
もう一つ忘れてはいけないのが瓦書きことSMR(Shingled Magnetic Recording)である。SMRの技術的な構造はこちらの記事に纏まっているのでご覧いただきたい。ただSMRはシーケンシャルアクセスには適しているが、ランダムアクセス時の性能は悪化するというレベルではないほどに劣化する。ちなみに従来型の記録方式はCMR(Conventional Magnetic Recording)と呼ばれる。
SMR方式では、プラッタの外周にCMR方式の一時記憶領域(これをMedia Cacheと呼ぶ)を確保し、ランダムな書き込みはまずこのMedia Cacheに書き込み、後でSMR方式の領域に書き戻すというWrite Back方式を採用するが、Media Cacheの容量にも限りがあるし、SMRは原理的に先頭からシーケンシャルに書き込む必要があるので、ひたすら書き込むだけという用途(たとえば監視カメラの記録用ストレージ)には適しているが、一般的な利用に適しているか?と言われるとちょっと疑問ではある。
またSMRを採用して増える容量は10%とか20%のオーダーであって、2倍とか3倍には遠く及ばない。このあたりもあってか、HDDメーカーは最近では明確にSMR方式かCMR方式かを明示している。
HAMR(Heat-Assisted Magnetic Recording)
MAMR(Microwave-Assisted Magnetic Recording)
ということで最後に昨今のホットトピックであるHAMR(Heat-Assisted Magnetic Recording)と、MAMR(Microwave-Assisted Magnetic Recording)について紹介したい。
まとめて熱アシストと呼ばれるHAMR/MAMRは再びヘッド側の技術ではあるのだが、これまでのAMR→GMR→TMRが読み取り性能の向上だったのに対し、HAMR/MAMRは書き込み能力の向上のための技術である。
背景にあるのは、TMR+PMRの組み合わせによる記録密度向上に行き詰まりが出て来たことだ。実を言えば、TMR方式そのもので言えば、まだ記録密度向上自体は可能である。つまり読み出しだけで言えば、さらに記録密度が上がっても対応できる。ところが書き込みのほうが追い付かなくなった格好だ。
要するに、記録面積を小さくしても十分な磁束密度を確保すると同時に、熱揺らぎ(温度上昇に伴い、磁気が消えたり反転したりする現象)への対策として、プラッタに高保磁力材料を利用したところ、今度は書き込みが簡単にできなくなってしまった。
この対策として考え出されたのが、「書き込み時のみ熱を加える」という仕組みだ。熱揺らぎは要するに温度が上がると磁気の状態が変化しやすいということであり、これを逆手に取って書き込む瞬間のみ温度を上げてやれば簡単に書き込みが行なえる。
終わった瞬間に加熱をやめればすぐに常温に戻り、書きこんだ状態が堅固に保持される、というわけだ。この「書き込む時に加熱する」という仕組みから、熱アシストと呼ばれるわけだ。この熱アシストにより、記録密度をTMR+PMRと比べて将来的には3倍以上向上できる、とされている。
仕組みは簡単であるが、実装するのは決して楽ではない。実際冒頭で紹介した2008年のSeagateのワークショップでも、この熱アシストについて言及がある。
実際のところ、TMR磁気ヘッドの量産が始まった2004年頃から、すでに熱アシスト方式の研究が始まっており、ただし量産までに20年かかったという代物である。この熱アシスト、大別すると以下のの2種類がある。
- レーザーを当てて加熱する方式(HAMR)
- マイクロ波を当てて加熱する方式(MAMR)
このどちらが良いのか?というと一長一短というか、どちらの方法にも技術的に困難な課題があり、それを克服するのに時間を要した結果が20年という長きに渡ってTMR+PMRが使われ続けた理由である。
HAMRのほうは実装は容易だが、ヘッドも一緒に加熱されてしまう。結果的に、MAMR用のヘッドに比べると寿命が1桁短いなんていう話もあったりする(SeagateはMAMR用ヘッドと同等の寿命を確保したとしている)。
一方でMAMRは?というとまだ現時点でHAMRほどの性能が出ていない。MAMR型で先行しているのは東芝で、元々同社は2021年にFC-MAMR(Flux Control-Microwave Assisted Magnetic Recording: 磁束制御型マイクロ波アシスト磁気記録方式)と呼ばれる方式を利用した18TBのHDDのサンプル出荷を開始している。
ただ、この時の構成はプラッタ9枚で16TB→18TB、つまりプラッタあたりの記憶容量増加は12.5%と非常に限られた記憶容量増加に過ぎない。MAMR方式の本命はMAS-MAMR(Microwave Assisted Switching Microwave Assisted Magnetic Recording 共鳴型マイクロ波アシスト磁気記録方式)と呼ばれる方式を予定しているが、こちらは量産に入るまでまだ時間がかかると見られている。もともとFC-MAMR方式はMAS-MAMR方式の開発の中で生まれた技術である。まずは手堅い技術で実績を積もう、というわけだ。
Seagate
ちなみに実際のところで言うと、SeagateはHAMRを採用。2025年1月に、HAMRベースとなるMozaic 3+を搭載したExos M HDDのサンプル出荷を開始している。プラッタ容量は3.6TBで、10枚構成で最大36TBの容量とされる。
【8月2日追記】
読者からのご指摘で判明したが、最初にHAMRを採用したのは2024年1月25日に発表されたIronWolf Pro 24TBであった。ただしこれ、量産出荷がいつなのかは正直不明である。というのはAKIBA PC Hotline!によればIronWolf Pro 24TBモデルが2024年3月に発売となっているが、この時に発売されたモデルはHAMRを利用しないST24000NT002。HAMRモデルの型番はST24000NT031となっている。
実際Seagateのドライブに搭載されている技術によれば、HAMR対応なのはEXOS MとIronWolf Proの28TB/30TB品のみとなっており、どうもIronWolf Pro 24TBはサンプル出荷だけしたものの量産は取りやめたのではないか?という気がする。サンプルそのものは存在しているらしい、というのは今年5月にセンチュリーマイクロのPCサポートの中の人がSeaagateからST24000NT031を受け取ったという話を書いているからである。しかし、現状HAMRを採用したドライブの量産出荷は今年7月とするのが正確な気がする。
東芝
東芝はHAMRとMAMRの両対応を想定している。先に書いたように、すでにFC-MAMR方式の製品はすでに出荷しているが、MAS-MAMR方式のほうはまだ時間がかかる。
【お詫びと訂正】初出時に、MAS-MAMRの表記を間違えて掲載しておりました。
そこで先行するSeagateに負けじと、まずはHAMR方式の製品を2025年中に最大32TB品をサンプル出荷開始予定である。長期的にはMAS-MAMR方式に切り替えてゆくとするが、この切り替えには数年かかると同社は見ている。
Western Digital
2017年にはMAMR方式の優位性を説いたWDだが、2025年2月に開催されたInvestor Day 2025におけるロードマップを見ると、今年いっぱいは既存のePMRのまま最大36TB程度まで容量を増やし、2026年度にHAMRを利用する予定であると示されている。
そんなわけで2025年で言えば各社HAMR+PMRという格好で30TB超えを達成し、このまま40~50TB位まで容量を増やせることを想定している。途中でHAMR+PMRがMAMR+PMRに切り替わるかもしれないが、これはMAMRの技術開発の進捗次第である。
現在研究中のBPM(Bit-Patterned Media)とは?
ではその先は?という話を最後にご紹介しておくと、現在研究されているのがPatterned MediaあるいはBPM(Bit-Patterned Media)と呼ばれるものである。以下の画像で2030年以降にHDMR(Heat Dot Magnetic Recording)と書かれているのがそれだ。
現在のプラッタは、ガラスあるいはアルミニウムの円盤の上に磁性体の被膜を蒸着させる形で構成されている。なので複数の磁性体粒子で1bit分の記憶領域を構成する形だが、記録密度を上げてゆくと隣接する粒子同士の相互干渉により安定状態を保つのが難しくなる。
そこで1bit分の記録を行なう1つの磁性体粒子を人工的に並べてやることで、相互干渉を防ぎながらもっと記録密度を上げられるというのがPatterned Mediaの基本的な原理である。実はこれも昔から研究されている事柄であり、TMRC 2010(The 21st Magnetic Recording Conference)で東芝がBPMを試作し、2.5Tbit/平方インチの記録密度を達成したことを発表している。
もっともこの時はBPMの試作に成功しただけで、これを自由に読み書きすることはできなかったのだが……。ちなみにこの試作したBPMは、磁性体粒子の直径が17nmだったそうだ。
現時点でもまだ実用に耐えるBPMは完成していない。ロードマップでHDMRの登場時期が明確にされていないのは、いつ実用に耐えるレベルのBPMが完成するかはっきりしないためである。とりあえずはそこまでの間、HAMRないしMAMRにPMRを組み合わせる形でなんとか容量増加に向けて取り組んでゆく、という格好になるかと思われる。





















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