トピック
HDDの書き込み技術が20年ぶりに変わる。Seagateがいち早く製品化した「HAMR」技術とは
~BarraCudaやIronWolfなど、30TB時代の用途別の選び方も解説
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- 日本シーゲイト株式会社
2025年5月30日 06:30
20年ぶりの技術的大転換点となる2025年のHDD
2025年、HDDに大きな技術転換が起きたことはご存じだろうか。約20年前の2004年にHDDで垂直磁気記録方式が採用され、さらなる大容量化が実現された。以降も記録メディアを高密度し、記録できる容量を増やしてきたが、それに伴い隣接するトラック間の狭さの影響が大きくなり、データ化けするリスクが高まってしまった。つまり、これまでのメディアを使っての大容量化に限界が見えてきたのだ。
それを突破するために生まれたのが「HAMR(熱アシスト磁気記録)」だ。簡単に説明すると高密度化してもトラック間の影響が起きにくい素材、裏を返せば“通常の方法ではデータを書き込めないメディア”を用いつつ記録を行なえるようにする技術である。
通常の方法ではデータを書き込めないメディアに対してどのようにして書き込むのかというと、レーザーを使ってメディアの書き込み箇所を瞬間的に加熱し、書き込み可能な状態に遷移させてから記録を行なう。まさに「熱アシスト磁気記録」というわけだ。
HAMRはHDDメーカー各社が開発を行なっているが、いち早く市場に投入したのがSeagateだ。2025年1月21日にHAMRを採用したエンタープライズ向けの「Exos M」を発表、30TB/32TB/36TBをラインナップしている。すでに30TB/32TBモデルはデータセンター向けの出荷をスタート。一般ユーザー向けにも販売が行なわれる見込みだ。
HDDはプラッタ(データを記録する円盤部分)に対しての水平記録から垂直記録へと進化してきたが、2025年はそれがHAMRに変わっていく年だ。これは非常に大きな技術転換と言える。
現在Seagateでは「Mozaic 3+」と呼ばれるHAMR方式の独自技術を展開。36TBまでの容量を実現しているが、50TBまでは開発の目処が立っているという。
なお、HAMRでも書き込み方式にCMRとSMRがあるのは従来と変わらない。HAMRは物理方式で、その中に論理方式としてCMRとSMRも含まれるという関係となる。
Exos Mでも30TBモデルはCMR、32TB/36TBはSMRだ。ただし、Seagateでは個人向けモデルで今後SMRを採用する予定はないとのこと。HAMRを採用する個人向けHDDもこの先登場するだろうが、CMRに統一されるので商品選びの悩みは減ることになりそうだ。
大容量HDDを選ぶメリットとは
生成AIの普及に伴い、その学習や生成で利用されるストレージ容量は増加の一途をたどっており、2023年からの5年でデータ生成量は3倍に達する見込みだ。しかし、データセンターならともかく、個人でそこまで大容量なHDDが必要かという疑問もあるだろう。実は個人でも大容量HDDのメリットは多い。1つは省電力になること。HDDは容量によって消費電力がほとんど変わらないのだ。
自作ユーザーでは、少しずつHDDを買い増していく人も少なくないだろう。しかし、4TBを4台使うよりも、16TBを1台にした方が消費電力は圧倒的に少なくなる。大容量、高速化するほど消費電力も上がっていくSSDとはここが大きく異なる部分と言える。1ドライブの方がデータの管理のしやすいという点もある。
もう1つは、大容量の方が書き込みによる負荷が低くできること。4TBのHDDに1TBの容量を書き込むのと、16TBに1TBを書き込むのでは負荷が全然違う。プラッタの回転や読み書きするためのヘッダの動きは16TBの方が当然少なくなる。1年間に書き込み可能な容量の目安である年間ワークロードが大容量HDDの方が大きくなるのはそのためだ。大容量ほど耐久性は高くなると言ってよい。
実際に個人向けでもSeagateのBarraCudaシリーズの16TB/20TB/24TBモデルはGB単価が安いこともあってトップクラスの人気だ。その売れ行きはメーカーの想定をはるかに超えるほどだという。
個人用途で大容量が必要なものの1つはやはり動画だろう。たとえば、最近では生配信を行ない、後日そこからおもしろいところを切り出して編集する「切り抜き動画」が人気だ。切り抜き動画を作るために、生配信はローカルにも保存しておくわけだが、ビットレートが8,000kbpsだと1時間で4GBほどになる。毎日長時間配信する人だと、10TBのHDDでも、ものの数カ月でいっぱいになる計算だ。
長年PCを使ってきた人や動画編集などで大容量ストレージを必要としている人は、3.5インチHDDを複数持っていることも多いだろう。そして、書き込みきったHDDはPCから取り外してとりあえず保管しているという人も多いと思う。そこで困るのが保管方法だ。筆者も10台以上のHDDを保有しているが、古いものはむき出しの状態で段ボールにまとめている状態が続いていた。
さすがにこの状況で保管し続けるのはどうかと思っていたところで知り合いにオススメされたのが、100円ショップで売っているハガキの収納ケースだ。100~120枚を収納できるプラスチックのケースで、3.5インチHDDが1台ピッタリと入る。汚れから守ることもでき、積み上げての保管もしやすくなる。HDDは湿気に弱いので乾燥剤もセットで入れておきたい。HDDの保管に悩んでいるならぜひとも試してほしい。
用途別に4つのブランドを展開! 選び方を知ろう
SeagateではHDDをBarraCuda、IronWolf、SkyHawk、Exosという4つのブランドを展開している。ブランドによって性能が違う場合もあるが、実はそもそも用途が異なっている。容量や値段だけを見て製品を選ぶと、その製品の性能を最大限に発揮できなかったり、想定以上に早く寿命を迎えてしまうことすらある。
ということで、Seagate製HDDの各ブランドとその用途を解説しよう。
BarraCudaはデスクトップPC、ホームサーバー向けだ。16TB未満のモデルはSMR、16TB以上はCMRとなっている。1日8時間の週5日稼働を目安にしており、年間通電時間は2,400時間。保証期間は2年間で、振動を検知するRV(加速度)センサーは内蔵しない。GB単価が安いので大容量モデルも導入しやすく、個人データのバックアップにも向いている。
ただ、NAS向けではないのでRAID用途には合わない点は覚えておきたい。なぜか?まず、1日8時間の週5日稼働が想定されているため、1日24時間アクセスされるNAS環境で利用すると負荷が高すぎる。
IronWolf/IronWolf Proは、NAS向けだ。24時間365日稼働を前提としており、高い耐久性を備えている。RAIDに最適化されており、ランダムアクセス性能に優れているのも特徴だ。そして、BarraCudaと違ってこちらはRVセンサーも内蔵しているので、NAS用途でも信頼性を確保できる。IronWolfは個人向けNAS、IronWolf ProはビジネスNAS向けと言え、Proのほうがより耐久性に優れ、保証期間も長いという違いがある。
SkyHawk/SkyHawk AIは監視カメラ向け。こちらも24時間365日稼働を前提にしており、年間ワークロードの容量も大きい。長時間録画向けに連続した書き込みに強い作りになっているのが特徴だ。実は複数の監視カメラの映像をコマ落ちしないように管理するという機能を備えているほか、SkyHawk AIではAI分析を行なう監視システムの高負荷ワークロードにも対応するように設計されており、リアルタイムでの映像解析やデータ処理が可能である。連続書き込みに強いのでテレビの全チャンネル録画にも向いている。
Exosはデータセンターや大規模RAID向けだ。当然24時間365日稼働に対応し、電力効率にも優れている。クラウドサービスなどの厳しい要件に対応するように設計されており、耐久性も高い。
信頼性に自信があるからこその無償データ復旧サービス
さて、SeagateはHAMRをベースとしたMosaic 3+技術でHDD容量の壁を打ち破って、30TBクラスの製品をしており、大容量HDDは個人用途でもメリットがあるという話をした。しかし、HDD 1台の容量が大きくなると、故障してしまった時のダメージも大きくなる。
この点に対してSeagateでは、先に述べたRVセンサーのほか、ヘリウム充填や、メディアとヘッドの組み合わせによる書き込み信頼性向上など、HDDのさまざまな場所で改善を行なうことで製品全体の信頼性も向上させてきている。
特に、IronWolf、IronWolf Pro、SkyHawk、SkyHawk AIについては、購入後3年以内なら無償で1回データ復旧を受けられる「Rescueサービス」を付属させている。これは裏返せば、それだけデータが壊れない自信があるという表れである。
ブランド | BarraCuda | IronWolf | IronWolf Pro | SkyHawk | SkyHawk AI | EXOS M |
---|---|---|---|---|---|---|
用途 | デスクトップPC | NAS | NAS | 監視カメラ | 監視カメラ | データセンター |
容量 | 最大24TB | 最大16TB | 最大24TB | 最大8TB | 最大24TB | 最大36TB |
回転数 | 5,400/7,200RPM | 5,400/7,200RPM | 7,200RPM | 5,400rpm | 7,200RPM | 7,200RPM |
CMR | 16TB以上 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 30TBモデル(32/36TBはSMR) |
ヘリウム | 16TB以上 | 10TB以上 | 12TB以上 | - | 12TB以上 | 〇 |
年間通電時間 | 2,400 (1日8時間/週5日) | 8,760 (24時間/365日) | 8,760 (24時間/365日) | 8,760 (24時間/365日) | 8,760 (24時間/365日) | 8,760 (24時間/365日) |
年間ワークロード(TB/年) | 55/120 | 180 | 550 | 180 | 550 | 550 |
限定保証 | 2年 | 3年 | 5年 | 3年 | 5年 | 5年 |
RVセンサー | - | 4TB以上 | 〇 | 4TB以上 | 〇 | - |
Rescue(データ復旧サービス) | - | 3年 | 3年 | 3年 | 3年 | - |
常に最新技術を積極的に取り入れるSeagate
SeagateはHDD専業メーカーだけあって、ハイブリッドHDD、マルチアクチュエータ、コンシューマ向けSMR、NVMe HDDなどさまざまな新技術を業界に先駆けて採用してきた実績がある。
今回もHAMRに対応したHDDをいち早く投入、BarraCudaの20TB/24TBで大容量HDDの低価格化を実現するなど、HDD市場を盛り上げている。ここ数年は6TB/8TBモデルが人気の中心という状況が続いて動きが少なかっただけに、この変化はとても歓迎したい。
2025年はSeagateによる大容量モデルが注目になることだろう。そして本記事が、製品選びの参考になれば幸いだ。
また、Seagateでは7月21日までの期間、大容量HDDの購入者に対し「BIGなプレゼント!」と題したキャンペーンを実施中。詳しくは下記の画像をクリックして確認してほしい。