特集
SSD換装+OS丸ごとデータ移行を無料ソフト「Clonezilla」でやろう
2024年11月7日 06:16
どんなに高級なノートPCであっても長く使い続けているとだんだんと不満を持ってくるようになる。CPUの性能低下はPCそのものを交換するしか手はないが、ストレージの残容量が減ってくると特にストレスが溜まる。それに伴い性能が低下するという問題が発生する場合がある。
このような時の対策としては外付けSSD/HDD、またはmicroSDカードなどへのデータ退避で容量を空けるという手段がある。筆者は、外付けHDDを大量につないだデスクトップPCをファイルサーバーとし、ネットワーク経由で共有して利用しているため、業務上使用する巨大サイズのファイル、たとえばゲームプレイ時の動画ファイルなどは、こうしたネットワーク上のHDDに保存しておき、必要な時に参照して利用している。また、ストレージ容量が減ってきた時には定期的にクラウド上の写真などのデータをこれらに逃がすことで対応してきた。
だが、忙しい時に空き容量が不足して作業が中断される現象が発生するのはかなりのストレスとなる。筆者所有のメインノートPCである「ThinkPad X1 Nano」も、購入してから既に3年以上が経過した。未だにメインの原稿執筆環境として酷使しているが、最近は空き容量が足りないエラーが出る場面が増えるなど、内蔵SSDの容量不足が気になってきた。
ThinkPad X1 Nanoの内蔵SSD容量は256GBで、データ退避しながら使う運用なら必要十分と思っていたのだが、持ち歩いて外出先で使っている時に、もう少しストレージに余裕がほしいと感じる場面に遭遇することが多々あり、容量を増やしたいと検討していたところだった。そこでいっそのことメインストレージを大容量のものにへと換装してしまおうと考えた。
そこで本稿では、SSDの換装の実作業をもってそのやり方を含め、ノートPCのSSD換装に役に立つソフト「Clonezilla」やその作業手順について紹介していきたい。
なお、購入するSSDやSSDケースなどによっては、専用のユーティリティが付属している場合もあるので、こうしたユーティリティが使えるならそちらを使うのがいいかもしれない。この辺りは過去記事でも紹介しているので、そちらも参照してみてほしい。ただ、すべてのSSDにこうしたユーティリティが付属しているとは限らないので、そのような環境で本稿がお役に立てられれば幸いだ。
意外とハードルが高いノートのSSD換装。本体表示の技適マークにご用心
いきなりで申し訳ないのだが、ノートPCのSSD換装については、意外とハードル高い。たとえば、そもそも分解が非常に困難な筐体や、SSD(というかストレージ)が基板実装のタイプの場合、物理的に交換が不可能なため、この段階で試合終了だ。
また、内蔵無線モジュールではなく、筐体丸ごとで技適の認証を取得している場合、分解を行なうだけで電波法違反となってしまう。そのため、事前に技適番号で調べて、それが内蔵モジュールに対して行なわれている(この場合はOK)のか、筐体ごと取得しているのか(この場合はNG)を確認しておこう。ただし近年のノートはほぼ前者である。
次にチェックするのはSSDスロットのサイズやモジュールについてだ。昔ながらの2.5インチSATA接続なのか、M.2モジュールなのか。M.2の場合はM.2 SATAかM.2 NVMeか、さらに多くの製品において幅22mmが一般的だが、イレギュラーなサイズが使われていないか、さらに長さについても2230/2242/2260/2280/22110の5種類があるので、どれに該当するかもチェックする。薄型ノートPCの場合、SSDのチップが片面実装か両面実装かのチェックも重要だ。
たとえば今回のThinkPad X1 Nanoの場合、技適は無線LANモジュール単位で技適を取得しているので、分解についてはクリアだった。背面のネジを外して、スライドさせながら持ち上げることで簡単に開くことができる。薄型モデルながら分解しやすいのはありがたい。
裏蓋を外すと、ぱっと見で比較的簡単にSSDの場所が確認できた。事前の調査でも確認していたが、ThinkPad X1 Nanoに備えるSSDスロットは幅22mmながら長さはややマニアックな2242サイズのNVMeタイプだ。薄型軽量デザインの都合もあり、片面実装タイプのSSDしか対応していないため、SSD選定時はそこを意識する必要があった。
これらの条件を元にAmazonにて検索をかけてみたが、大手メーカーではTranscend(トランセンド)くらいしか選択肢がなかった。ただトランセンドだとやや高価だったこともあり、ここは思い切ってDATOの1TB SSD、「DP342」をチョイスすることにした。容量は512GBだと物足りなさそうなので一気に4倍の1TBとした。価格は1万4,580円とやや高価だが、トランセンドで同じ物を買うと2万円オーバーのため、ここは妥協した。
USBメモリが必須!低容量メモリがあると便利
ではいよいよSSD換装の準備を行なっていこう。
まずは購入したSSDをUSB接続のケースに入れる。今回使用したケースはセンチュリーの「シンプルモバイルSlim M.2 NVMe(CM2NVU32CS)」だ。多くのSSDケースと同様、このケースもSSDの長さに応じてアルミプレートや固定ネジの位置を変更でき、2242/2260/2280タイプのM.2 NVMeタイプのSSDが利用できる。ケースにガッチリSSDをセットしたらWindows上で正常に認識するか動作確認から。今回は正常に容量1TBのSSDが認識できているのを確認した。
続いては、今回使用するストレージクローン作成ソフト「Clonezilla」をダウンロードする。Clonezillaはオープンソースのディスクイメージング/クローニングツールで、企業などのシステム管理者向けにネットワーク経由で複数のPCを一斉にセットアップする用途などでも利用が可能だ。今回のようにノートPC単体で使う場合には、いくつかあるバリエーションのうち「Clonezilla live」を使用するので、こちらをダウンロードする。
Clonezilla liveの利用は、バックアップするシステムとバックアップ先のストレージに加えて、USBメディアやCDメディアなど、単体で起動するメディアも必要となる。
USB起動メディアの場合、uEFIかLegacy BIOSかで手順が異なる。uEFIシステム向けの場合の手順はシンプルでAMD64向けを選択してzipファイルをダウンロード、あとはPCに接続して、FAT16/32ファイルシステムでフォーマットしたUSBメモリにzipファイルから解凍したファイルをそのままコピーするだけだ。なお、FAT32フォーマットを使用するには容量制限があるため、シンプルにWindows上でのみ作業を完結したい場合には、32GB以下のUSBメモリを用意する(それ以上だとexFATになるため)。
Legacy BIOSで利用する場合、たとえば「Rufus」や「Etcher」などのISOイメージファイルをUSBメモリに書き込んで利用できるツールがある場合は、ClonezillaのISOイメージファイルをダウンロードしてこれらで書き込むことでClonezilla Live起動ディスクを作成できる。起動ディスク作成後は、1度実際に起動させて動作を確認した上で作業に挑みたい。
いよいよClonzilla起動
ここまでくれば後は本番作業のみとなる。念のため、消えてしまったら困るデータなどは何かにバックアップしておくといいだろう。また、チェックディスクなど元のシステムを少しでも安心な状態にしておくのも重要だが、この辺りは個人の判断に委ねたい。
USBから起動すると、「Clonezilla Live」のタイトルが起動するので、暫く待機。その後は言語やキーボードレイアウトを選択して先に進める。
今回はデバイスからデバイスへのコピーのため、「device-device」を選択。次に「初心者モード」か「エキスパートモード」かが選択できる。「エキスパートモード」を選択すると、作業時に使用する拡張パラメータを変更できる。
どのようなパラメータがあるのかチェックしてみたが、「MBR(Master Boot Record)の複製を省略」や「複製前に、コピー元NTFSファイルシステム中のNTFSボリューム dirtyフラグを削除」、「セクター毎コピーの使用を強制(全ファイルシステム対応、但し効率が悪い)」など、必要な人にとっては重要そうな項目が並ぶが、普通に使用しているならシンプルなクローニングのみで問題ないので「初心者モード」を選択する方が無難だろう。
どちらを選んだ場合も、コピー元のローカルディスク、コピー先のローカルディスクを選択していく。デバイス情報はGNU/Linuxでのデバイス名となっているが、容量や型番などの情報から元のディスクがどれか、コピー先がどれかを判断してチョイスする。今回の場合は、容量が明記されていたのでそれを元にディスクを選択して進めた。次はディスク丸ごと複製か、パーティション単位での複製かの選択だが、今回は丸ごと複製する想定だったので「disk_to_local_disk」を選択した。
初心者モードの場合も拡張パラメータの選択が表示されるが、その表示内容はかなり簡略化されている。具体的には、ファイルシステムのチェックや修復を行なう/スキップするか、ファイルシステムのチェックと修復を手動/自動で行なうなどの項目が表示されるが、特に触れることなく、そのまま「了解」で次へ進んでしまえばOKだ。
続いて筆者の環境では画面がやや乱れた表示となり、「パーティションテーブルを作成するモードを選択する」画面となる。ここも特に値などを変更せず、デフォルトの「コピー元ディスクのパーティションテーブルを使用」を選んで次に進める。
初心者モードの割に難解なことをいくつか聞いてきたが、最後は作業終了後の動作についての選択だが。「再起動」、「シャットダウン」、「コマンドラインプロンプトに移行します」の3つだが、正常に終了したのを確認するために、「コマンドラインプロンプトに移行します」を選択した。
すると、画面がズレ下部にCUIでメッセージが表示されていく。問題がなさそうであれば、指示通りどんどん「Enter」を押して続行していけばOKだ。なお、途中には慎重なことに警告メッセージが2回表示されるので、ここまでの作業に納得しているなら、これらもガンガンと「y」を押して続行しよう。
コピー時間は容量次第!寝る前や出掛ける際に実行するのが吉
これでこちらの作業はすべて終了となる。後は何かしらのエラーが発生しなければ、数分~数時間の時間経過とともに、システムは無事クローニングされるはずだ。参考までに筆者の環境ではクローニングするのにかかった時間は約5時間前後。しかし編集部の別の環境ではわずか20分程度だった。クローン先のディスクの状態やシステムの状態などにも依存するようだ。
クローニング完了後はSSDを差し替えて起動するかの動作チェックを行なう。今回、筆者のThinkPad X1 Nanoの場合、交換して起動したらSSDが認識せず、めちゃくちゃビビった。冷静になって再度SSDの接続状態を確認してみたところ、SSDが奥まできちんと入っていなかったようで、ちょっと強めに押してみたところ、ガチッとスロットに収まる感触があったので、再度起動し直したところ、問題なく認識し、クローン前と全く変わらないシステムが無事に起動してくれた。
このような緊急事態に備えるため、元のシステムディスク自体は換装後もしばらくはそのまま保管しておき、何らかのトラブルが発生した場合などにはすぐに元に戻せる「最も安心なシステムバックアップ」の1つとして残しておくのがおススメだ。
そのままクローンすると未確保スペースが生じる
無事にシステムも起動したので安心して、エクスプローラーを開いてファイル残量をチェックしてみたが、なんと変化なし!実はこれは想定内で、先ほど完全なクローニングを行なったため、パーティションサイズがそのままだったのだ。後ろには「未割り当て」状態の大容量スペースがあるのが確認できた。
システムパーティションの後ろ(ディスクの管理画面で言う右側)にこれらの未割り当てスペースがある場合は、未割り当てスペース上で右クリックして「ボリュームの拡張」を使うことで簡単に「未割り当て」をシステムパーティションに統合できる。
ただ、システムドライブと未使用領域の間に「回復パーティション」が挟まっていると、ボリュームの拡張は使えない。こちらはWindowsのシステムが回復動作時に使用する領域となっており、通常時であれば削除しても問題のない領域だ。ただ、何らかのトラブルが発生した際には使えるようにしておきたいので、削除するか迷った。ちなみに、もう1つの選択肢としては、膨大な未割り当てスペースを新たなディスクとして割り当てるなら以下の作業は不要だ。
回復パーティションを再構築する方法は
今回はこの「回復パーティション」を1度削除し、膨大な「未割り当て」スペースをシステムに統合してから「回復パーティション」を再構築する手段を試すことにした。
まずは「回復パーティション」の削除から。「回復パーティション」はシステム上で保護された領域のため、そのままだと削除できない。そこでWindowsのメニューから「ターミナル(管理者)」を起動し、DISKPARTを起動。回復パーティションを選択した後、「delete partition override」で強制削除を行なう。
「ディスクの管理」画面でも「回復パーティション」が削除され、すっきりしたパーティション割り当てになっているのが分かる。次いで「ディスクの管理」から「ボリュームの拡張」を使い、「未割り当て」領域を簡単にシステムの拡張エリアに変更する。
「回復パーティション」は不要というのであれば作業はここで完了だ。追加で「回復パーティション」を再構築するなら、以下の手順に従って作業しよう。
まずは再び「ターミナル(管理者)」からDISKPARTを使用して、回復パーティションエリアを確保する。事前にシステムパーティションを含むボリュームを選択してから「select volume 0(これはシステムが入っているボリュームを確認)」→「shrink minimum=1063」で回復パーティションのエリアを確保する。ちなみに1063は容量(MB)だが、前述の削除時に容量をチェックしておき、同じサイズにするのが無難だ。
そして、「create partition primary」でパーティションを作成、最後にフォーマット「format quick fs=ntfs label=Recovery」を実行すれば一段落だ。
続いて、このパーティションが回復パーティションとして認識されるための固有IDを設定する。コマンドとしては、DISKPART上から「set id=de94bba4-06d1-4d40-a16a-bfd50179d6ac」でパーティションIDを設定する。うまくいかない場合は、「set id=de94bba4-06d1-4d40-a16a-bfd50179d6ac override」で強制的に割り当てればOKだ。そして、回復パーティションの固有属性として「gpt attributes=0x8000000000000001」のコマンドで固有属性を付与する。
ここまでの作業で「ディスクの管理」側では、拡張後のシステムパーティションの後ろに「回復パーティション」が作成されているのが分かる。後はこれが正常に動作するようにDISKPARTを「exit」で終了し、ターミナル(管理者)で「reagentc /enable」を使って回復環境を有効にすればよい。
ちなみにreagentc /enableにおいて「Windows REイメージは見つかりませんでした。」といったエラーが発生する場合は、再構築した回復パーティション内には「Windows RE」イメージがないため、正常に動作できていない。Windows REイメージを復元してあげればいいのだが、これがインストール後のWindows内には存在していないファイルとなる。そのため、Windowsのインストールイメージからコピーして再構築する必要がある。
まず、Windowsのインストールイメージを用意する。イメージ内に保存されている「sources」フォルダ内の「install.esd」内にある数字フォルダの中から自身のOSに合ったものを選択する。これについてはフォルダ内の[1].xmlを参照して確認してみたが、Windows 11 Homeが1、Windows 11 Proは3となっていた。2はWindows 11 Educationのようなので自身のOSバージョンをチェックしつつ、どちらかを選択すればいいだろう。
数字フォルダを選択したら、さらに「windowsSystem32Recovery」まで潜るとそこに「Winre.wim」というファイルがあるので、これをローカルの同じ位置(C:WindowsSystem32Recovery)にコピーする。コピーを終えたら再度ターミナル(管理者)に戻り、「reagentc /setreimage /path C:winsowssystem32recovery」と入力すればOKだ。
これで再度「reagentc /enable」を実行すればOK……なのだが、ここでシステムがBitLockerドライブの暗号化を使用している場合、暗号化を解除しないと適用されずエラーになることがある。これについてはWindows 11の設定から「プライバシーとセキュリティ」の「デバイスの暗号化」を開き、いったんオフにすればよい。
ここまで実施し、reagentc /enableが成功すれば、最後に「reagentc /info」コマンドで正常に動作しているのを確認しておこう。問題なければ、この作業は完全に終了となる。
Clonezillaでシステムドライブの換装に挑戦しよう
以上、「Clonezilla」を使用したSSDのシステムクローン手順について簡単に紹介した。後半のパーティション再構築の部分では思わぬ苦戦を強いられたが、システム移行の作業自体は非常にシンプルでスムーズに行なえた。正直、フリーソフトでここまでできるとは思っていなかったので、作業を終えた今、改めてClonezillaのすごさに驚愕しているところだ。
一方でLinuxなどに慣れてない人からすると、やや古い印象を受けるテキストベースのインターフェイスなどは、分かりにくさを感じる面もあると思われる。本稿では詳細に使い方について記載したつもりだが、パッと見て不安を感じた人は市販ソフトを使用するのも一興だ。
ただ、“1回のシステム移行のためだけに、有料ソフトを購入する”というのは逆にハードル高いのもまた事実。あまりPCについて詳しくない人であっても、本稿をガイドにClonezillaでシステム移行に挑戦してもられば幸いだ。