特集
OSはそのままに、Cドライブを大容量SSDにまるっと換装する方法。2パターンで手順解説
2023年10月6日 06:25
1TBや2TB以上のSSDもお手頃な価格になっている今こそ、手狭になってきたメインドライブを大容量化したいな、などと考えている人は多いかもしれない。でも、そう言えば起動用のCドライブって、そんな簡単に換装できるものなんだっけ? なんて疑問もあったり……。
なんとなく難しそうに思えるCドライブの換装。だけれど、今は便利なツールも増えてきて、簡単かつ安全に新しいSSDに移行可能だ。今回はM.2のNVMe SSDを換装するときの詳しい方法と、そのときに使えるツールをいくつか紹介していきたい。
PCタイプごとの移行方法と注意点
現在使用しているSSDのデータを丸ごと新しいSSDに移し替える、いわゆる「クローン」(クローニング)の仕方は、PCのタイプによって大きく2つの方法に分けられる。まずSSDが交換可能な(基板直付けでない)PCであることは大前提。その上で、SSDスロットが2つ以上ある(1つ以上空きがある)PCの場合と、SSDスロットが1つしかない(既存のSSDが装着済みの)場合とで、必要な機材も変わってくるのだ。
前者のスロットが2つ以上あるパターンはデスクトップPCに多く、空いているSSDスロットに新しいSSDを装着して、後ほど紹介するクローンソフトを使用すればOK。後者はノートPCやミニサイズのPCに多く、新しいSSDをUSB接続の外付けSSDケースに入れ、それに対してクローンソフトを使用して移行することになる。
ただし、クローンソフトによっては外付けしたSSDに対応しないものもあるため慎重に選ばなければいけない。その点、マザーボード上のSSDスロットは比較的多くのクローンソフトが対応しているので、ツールの自由度はある程度高いと言える。
また、SSDを購入する前にも注意しておきたいことがある。それは、PCに装着可能なM.2 SSDの種類だ。似たスロット形状でもSATA接続のものとNVMe接続のものがあり、SATA SSDしか対応していないPCではNVMe SSDを物理的に装着できたとしても動作はしない。
SSDの長さにも気を付けたい。現在多く使われているのは「Type 2280」というフォームファクタだが、PCによっては長さの短い「Type 2230」や「Type 2242」が採用されているものもある。あらかじめどのタイプのSSDが装着可能なのか、仕様書や実際の筐体内の構造などを確認した上で新しいSSDを調達しよう。
今回は外付けSSDにも対応した製品を前提に、比較的低コストで利用できる2つのツールをチョイスした。専用クローンソフトが付属するセンチュリーのSSDケース「裸族のM.2 NVMe SSD 引越キット」と、無料体験版もあるクローンソフトの「Reflect Home」だ。早速具体的な使い方などを解説していこう。
移行ツール付きSSDケース「裸族のM.2 NVMe SSD 引越キット」を使った方法
センチュリーの「裸族のM.2 NVMe SSD 引越キット」は、Windows用クローンソフト付属のSSDケース(SSDケースはmacOSなどにも対応する)。USB 3.2 Gen.2(USB 3.1/10Gbps)対応の高速モデルだ。SSDドライブ自体がセットになった製品もラインナップしているので、これさえ買えば大容量のSSDに手っ取り早く移行できる、というものになっている。価格はSSDケース単体で約7,000円。
具体的な手順は下記に示しているが、付属クローンソフトはごくシンプルな作りで、ワンクリックのみでクローンが完了してしまう親切設計だ。
ただし、クローンソフトは本製品での利用のみに制限され、移行元は内蔵ドライブ、移行先は本製品に固定されている。それでも、移行完了後は古いSSDをこのSSDケースに入れて、通常の外付けSSDとして活用できるというメリットもある。
【手順8】新しいSSDで無事起動することを確認して作業完了
クローンソフトが本製品でしか使えないのが残念ではあるものの、煩雑なパーティション設定などを考える必要がなく、ほとんどワンクリックでクローンが完了するお手軽さは特筆もの。初めてSSDを換装する人にも親切で簡単なクローンツールと言えるだろう。
無料体験版もあるクローンソフト「Reflect Home」を使った方法
デスクトップPCのSSDスロットに空きがあるか、すでに外付けSSDケースを所有しているのであれば、Macrium「Reflect Home」というクローンソフトがおすすめ。30日間の無料体験版があり、その体験期間内でも問題なくドライブを丸ごとクローン可能だ。
ダウンロードの際には最初にWebサイト上でユーザー登録を行なう必要がある。インストールできたら下記の手順で移行しよう。
【手順12】新しいSSDで無事起動することを確認して作業完了
多くの機能を持ち、ドライブの詳細な情報が表示されるため、操作が少し分かりにくいところもある「Reflect Home」だが、無料体験版の範囲でクローンできてしまうのはありがたい限り。どちらかというとクローン機能は同ソフトが持つさまざまなバックアップ機能の中の1つ、という位置付けで、日常的なPCデータのバックアップを手間なく確実に実行したい、という人は有償版の購入も検討してみてほしい。
SSDメーカー謹製のクローンソフトもある!
今回はPCのタイプやSSDのメーカーなどを問わず、ある程度汎用的に使えるツールを紹介したわけだけれど、使用するSSDのメーカーによっては独自のクローンツールを用意している場合がある。要件に当てはまるのであれば、こちらの方が低コストかつ簡単にクローンできる可能性があるだろう。ここではSamsungとWDのツールを軽く紹介しよう。
Samsung製SSDに移行するなら「Samsung Magician」
Samsungでは、「Samsung Magician」というドライブ管理ツールを提供しており、それに含まれる「Data Migration」という機能で起動ドライブのクローンが可能だ。要件はやや厳しく、「移行先がSamsung純正SSDであること」と、後述の「BitLockerによる暗号化がされていないこと」が求められる。
ここで言う「Samsung純正」とは、一般に販売しているSamsung SSD 870や970、980といったシリーズ製品のことだ。たとえばノートPCに標準搭載されていることがあるOEMのSamsung製SSDは移行先には指定できない。
対応SSDはユーザーマニュアルに記載されているので、あらかじめ確認しておこう。とは言え、移行元のドライブのメーカーは問わないため、他メーカーからSamsung製SSDに移行するときにはおおいに活躍してくれるはずだ。
なお、ソフトウェア内からアップグレードできる最新版の「Samsung Magician」(8.0系)では、手元にある複数のSSDケースで試した限りだとUSB接続の外部SSDには非対応となっている。
WD製SSDを使っているなら「Acronis True Image WD Edition」
WDがリリースしている「Acronis True Image WD Edition」は、WD製のドライブを使用しているユーザー向けのバックアップツール。クローン機能も含まれており、使用条件としてはWD製のHDD/SSDをPCに内蔵していること、ということで制限はやや緩め。移行先はUSB接続の外部SSDにも対応している。
とにかくWD製品を内蔵していればいいので、実際の移行元や移行先がWD製以外のドライブであってもクローンが可能。
ただ、移行先のSSDに他社製品を選び、将来またアップグレードのためにクローンしようと思ったときには必然的にほかのツールを使わなくてはいけない、という問題が立ちはだかる可能性は高いだろう。そうした点もあわせて考えれば、できれば最初からWD製ドライブへの移行に活用したいところではある。
BitLockerで暗号化したドライブもクローン可
Windows 11 Proには、ドライブ全体を暗号化し、ドライブの盗難・紛失時などにデータ漏洩を防止できる「BitLocker」という仕組みがある。セキュリティに敏感な企業のPCでは、CドライブでこのBitLockerを有効化している場合もあるかもしれない。
Cドライブを換装するとき、BitLockerが有効になっていてもそのままクローンできるのかは気になるところ。
だけれど、今回試した「裸族のM.2 NVMe SSD 引越キット」と「Reflect Home」はどちらとも、BitLockerを有効にしたまま問題なくクローンできた。移行後の新しいSSDではBitLockerが無効化された状態になるので、再度有効化の作業が発生することには注意したい。
大容量化で安心感増のCドライブ換装
パフォーマンスについては、高性能なSSDに換装したのであれば向上する可能性はある。が、メインのSSDをアップグレードしたくなるPCというのは、世代的には少し古いことが多いだろう。たとえばPC本体がPCIe 3.0までの対応であれば、より高速なPCIe 4.0対応SSDに換装しても3.0の性能にとどまる。
なので、そうした環境でのSSD換装は、パフォーマンスアップ狙いではなく、可能な限りの大容量化でアプリケーションやデータの保存スペースに余裕を作る、というメリットを追求したいところだ。
ついでに今回SSDを換装したノートPCについて、古いSSDからWD Black SN850XとSamsung SSD 970 EVOのそれぞれに換装したときのベンチマークテストも実行してみた。
ノートPCの仕様がPCIe 3.0 x4接続であること、元々のSSDがそこそこ高速だったこともあって、書き込み速度に改善が見られたものの他では残念ながら大きな性能アップは果たせなかったようだ。それでも、このようにCドライブを大容量化することで、今後のPC使用における不安感が随分と解消されるのではないだろうか。