特集

若者は知らないかもしれない、おじさんおすすめのフリーソフト

本稿でご紹介するフリーウェアの数々

 文章を書く、グラフを作る、出来上がったファイルを送る。オフィスワーカーの多くが、そうした作業を日々PCで行なっている。だがWindowsのシステムのみですべてが完結するわけではない。そう、そこには必ずソフト(アプリ)が存在する。

 そうしたソフトウェア文化を、影から支えてきたのがフリーウェアだ。多くの場合、個人が開発を手がけており、文字通り無料で配布されている。市販ソフトとはまた異なった開発体制も影響しているのだろう、それぞれが独特の輝きを放っている。

 テキストエディタ、ファイル解凍ソフト、リネームツールなど、Windows黎明期に公開されたフリーウェアの中には、初公開から20年以上が経過し、老舗級の知名度を築いたものある。今回はそんな便利なソフトを紹介していこう。知らなかったという人はぜひ試してみてほしい。

 なお、各項目では初版の公開時期を調べて(可能な限り)記載した。またフリーウェアの利用は自己責任が原則。さらに各種の利用規程が設けられている場合もある。開発者は利用上のトラブルに関知しないのが一般的なのでご注意を。

【テキストエディタ】TeraPad

TeraPad(1999年4月19日公開)

 「TeraPad」は、フリーウェア界でも特に高い知名度を誇るものの1つだろう。テキスト入力に特化した、シンプルなエディタである。とはいえ、Windows標準の「メモ帳」にはない、数々の機能が揃っている。字数の目安となるルーラー、指定字数での自動折り返し、色付きクリッカブルリンク、スペース(空白)の明示、さらに印刷プレビューと、充実の一言。それでいてファイルサイズは1.31MBと軽量だ。

 リリースノートによれば、初公開は1999年4月。つまり今年でリリース25周年を迎えた。思えば、筆者がライター駆け出しだった2000年代前半は、文章入力にはとにかくTeraPadばかり使っていた。2012年11月、Ver.1.09の公開後に長らく改版がストップしていたが、10年後の2022年に再開。なんともうれしいサプライズであった。

【テキストエディタ】Mery

Mery(2008年)

 「Mery」は、前述のTeraPadの改版がストップ状態だった2010年代後半頃は、すでにiOSやAndroidが台頭しており、さらにITセキュリティ意識もかつてとは根本から違っていた。Windowsにおいても、むやみやたらになんでもアプリを入れていい状況ではなくなっていたように思う。しかし、その時代に合わせた新しいテキストエディタも使いたい。そんな時にで出会ったのが、Meryだった。

 開発スタートは約16年前。2008年には「窓の杜」に紹介記事が掲載されている(当時の名称はmEditor)。正式版の最終公開日は一応2018年ということなのだが、作者のWebサイトではベータ版がかなりのペースで公開されており、そちらはWindows 11の新仕様などにも積極的に対応中。

【圧縮・解凍】7-Zip

7-Zip(1999年7月18日)

 「7-Zip」は、ファイルの圧縮・解凍ソフトは、ユーザーの趣味が出やすい分野ではないだろうか。複数のファイルを1つのZip形式ファイルへ単にまとめたり、解凍するだけなら、もはやWindowsの標準機能で不足はない。しかし、圧縮率を高めるためにZip以外の形式も使いたいとか、込み入ったニーズもあるところにはある。

 7-Zipならば、アプリ内のエクスプローラー風インターフェイスを使って、ファイルのステータスを細かく確認しながら、圧縮・解凍を実行できる。そして何より、7z形式を中心にさまざまな書庫ファイルフォーマットをサポートしているのが魅力だ。

【FTPクライアント】FFFTP

FFFTP(1997年頃)

 企業サイトや個人ブログの運営にあたって、今ではCMS(Contents Management System)が使われるのが普通だ。所定の管理サイトにブラウザでログインし、文章や画像を登録すれば、後はボタン1つでページを公開できる。だがCMS普及以前は、素材となるファイルを、FTP方式で専用のサーバーにアップロードしていた。その場面で活躍したのがFTPクライアントソフトである。

 そんな「FFFTP」の初版公開は1997年頃。オリジナル版の開発はすでに終了したが、現在は有志の手によって、バージョンアップ作業が継続している。本稿執筆にあたって、筆者も約15年ぶりにFFFTPを使ってみたが、アップロード先とローカルPC側のフォルダ構成を2ペイン表示する画面構成は、いまだ健在だ。

【画像ビューア】IrfanView

IrfanView(1996年)

 JPG(JPEG)形式のファイルを頻繁に扱うようになったのはいつ頃だったろう?デジタルカメラが普及し出したのは1990年代後半なので、その頃か。では撮影した画像をPCに転送して、どう扱っていたのかと言えば……カメラ同梱のソフトウェアだったように記憶している。

 そんな時代から公開されているのが、こちらの画像ビューア「IrfanView」である。初版公開は1996年。筆者は英語インターフェイスが苦手で、それほど積極的に使った覚えはないのだが、聞くところによれば、とにかく高速に動作するのが魅力という。なるほど、今回試してみたが、その言には激しく同意である。なお日本語化プラグインは別途配布中。また完全な意味でのフリーウェアとは異なり、「Freeware for non-commercial use」(非商業目的でのフリーウェア)であることが明言されている。

【バックアップ】BunBackup

BunBackup(2003年5月23日)

 「BunBackup」は、指定のファイルやフォルダを、別の場所へ簡単にバックアップするためのソフト。今ではWindowsにクラウド(OneDrive)との同期機能があり、ファイル破損対策に一定の効果があるが、やはり本来の意味でのバックアップとは用途がやや違う。無料で使えるBunBackupは大変貴重な存在だ。

 ソフトとしての初公開は2003年5月23日。そして2023年には、公開20周年を記念した記事が作者のホームページで公開された。自分専用だったソフトウェアを、広く万人に使えるよう修正するにあたって、大変な苦労があったようだ。

【メッセンジャー】IP Messenger

IP Messenger(1996年)

 「IP Messenger」は、TCP/IPを利用するメッセンジャーソフト……と聞いて、個人ユーザーはチンプンカンプンかもしれない。このソフトが真価を発揮するのは企業や大学などの組織内利用。IP MessengerをPCにインストールしておけば、それだけで同一LAN内にあるほかのIP Messengerインストール済み端末がリスト化され、メッセージを送れる。

 この仕様のおかげで、サービス登録を行なっていないユーザー間でも簡単に連絡しあえる。たとえば電話番の新入社員が、外出中の部長にかかってきた電話に関する不在メモを送る、といった具合だ。2022年には、コンプライアンス機能を搭載した商用版「IP Messenger Pro」がリリースされた。

【リネーム】お~瑠璃ね~む

お~瑠璃ね~む(2000年7月15日)

 複数のファイルの名前を一度に変更したい、と思ったことはないだろうか? たとえば、たくさん撮影したデジカメ画像の中から必要なものだけを選別し、文書に貼り付ける順に並べかえるといった場合だ。Windowsだけでもある程度できるが、専門のリネームツールの高機能さには到底かなわない。

 「お~瑠璃ね~む」は基本的にインストール不要。ファイルを解凍して、実行ファイルをダブルクリックするだけで使える。特定の文字列を挿入したり、連番化(桁数や初期値も調整可能)は当然として、使用アルファベットをすべて大文字か小文字に統一する機能も便利だ。なお、お~瑠璃ね~むは「All Rename」の語呂合わせだそう。

 なお、この手のソフトとしては「Flexible Renamer」も有名だ。PC Watchの担当編集者は大量の画像をリネームする際などに、今なおこれを使い続けているとのことだった。

【音楽タグ編集】STEP_K

STEP_K(2016年)

 音楽CDのリッピング時によく用いられるMP3ファイル。これをプレーヤーソフトで再生するとき、楽曲名やアルバム名、歌手名を綺麗に表示したいとなると、ID3タグを編集しなければならない。筆者がID3タグの編集によく使っていたのが「SuperTagEditor」。これは2000年頃には公開されていた。

 SuperTagEditorの資産を引き継ぐソフトウェアはこれまでにいくつもリリースされており、「STEP」「STEP_M」、そして「STEP_K」がリリースされた。これまで通り、表計算ソフト風のインターフェイスで、複数の項目を直感的に編集できる。なお開発者のWebサイトでは、さらなる後継版「STEP_J」についても言及されている。

【ブラウザアドオン】Gesturefy

Gesturefy(2017年頃)

 「Gesturefy」は、ここまで紹介してきたいわゆるフリーウェアとは異なり、Firefoxブラウザ向けに公開されているアドオン(拡張機能)にあたる。筆者はこの拡張機能があるからこそFirefoxを使い続けていると断言できるくらい、思い入れがあるので、ちょっとだけご紹介を。

 基本的には、右クリックボタンを押しながらマウスを動かし、ブラウザの「戻る」操作を代替するというような、マウスジェスチャー用のアドオンである。ただ筆者のお目当ては「ロッカージェスチャー」と「ホイールジェスチャー」。マウスの右ボタンを押しながら、左ボタンを押したり、あるいはマウスホイールを回すことで、特殊な操作ができる。これにより、マウスカーソルを一切動かさずとも「(ブラウザの)タブを閉じる」「表示タブを切り替える」が実現するのだ。

【マウスユーティリティ】X-Mouse Button Control

X-Mouse Button Control(2004年)

 特定のブラウザに限らず、広くマウス操作をカスタマイズしたいという方には、こんなソフトもある。それが「X-Mouse Button Control」(通称XMBC)。インストール時は英語表記だが、その後は設定で日本語表記に切り替えられる。

 著名メーカー製のマウスは、専用のカスタマイズソフトが用意されているケースが多いが、XMBCは全メーカー対応版といった趣き。特定アプリ利用時だけ、マウス右クリックをコピー(Ctrl+C)に割り当てたりできる。


 以上、いかがだったろうか。今回は筆者の個人的体験をベースに原稿をまとめた。おそらく「私は○○を使いまくっている」「オレはエディタなら○○一択」など、さまざまな意見があるかと思う。PCに詳しい人たち同士、ワイワイ語り合うきっかけになれば幸いだ。

 若者、というかPC利用歴の浅い人からみると、「なぜこれだけ便利なソフトが無料なんだろう?」と、不思議に思うかもしれない。だが、それこそが開発者の心の広さであり、偉大なるアマチュアリズムではなかろうか。我々一般ユーザーは、その恩恵に浴しつつ、改めて開発者への敬意を示していこう。