イベントレポート

【詳報】Intel、USB Type-Cコネクタを採用し、40GbpsになったThunderbolt 3を発表

 Intelは、COMPUTEX TAIPEIの基調講演に登場し、同社がAppleなどと規格を策定し普及を進めてきたThunderboltの最新版となるThunderbolt 3を発表した。Thunderbolt 3ではコネクタとして従来までのMini DisplayPortに変えて、USB Type-Cコネクタを採用する。また、伝送速度はThunderbolt 2の20Gbpsの倍となる40Gbpsをサポートする。

 Intel Thunderboltマーケティングマネージャのジェーソン・ジラー氏によれば「Thunderbolt 3はUSB Type-CのAltモードを使って実装され、ケーブルはUSB Type-Cのものを流用もできるし、より高速に使いたいならThunderbolt 3用のケーブルを利用することもできる。また、変換アダプタを利用することで従来のThunderboltのデバイスも利用することができる」と述べ、Thunderbolt 3が従来のThunderboltと最新のUSB Type-Cコネクタの互換性を実現する目的で策定され、従来のThunderboltのデバイスを所有するユーザーにも下位互換性を実現するとした。

USB Type-Cコネクタを採用し、伝送速度が40Gbpsに強化されたThunderbolt 3

 ジラー氏によればThunderbolt 3はシンプルにUSB Type-Cコネクタの拡張仕様となるAltモードを利用しているという。USB Type-Cではコントローラの内部で、プロトコルを利用する仕組みが用意されている。USB Type-Cコネクタには、物理的にUSB 3.1が2系統、USB 2.0が1系統のデータ信号線が用意されており、このうちUSB 3.1の2系統を、DisplayPortやMHLなどに切り替えて利用できる(この機能をAltモードと呼んでいる)。Thunderbolt 3でもこの機能を利用しており、USB 3.1の2系統をThunderbolt 3で利用して、最大で20Gbpsで利用することができるのだ。

 この20Gbpsというのは一般的なUSB Type-Cケーブルを使った場合で、Thunderbolt 3用に"アクティブケーブル"として製造されたケーブル(仮にThunderbolt 3用USB Type-Cケーブルと呼ぶ)を使った場合には40Gbpsの転送速度を実現できる仕組みになっている。このThunderbolt 3用USB Type-Cケーブルには、銅線版と光ケーブル版の2つがあり、前者が2mまで、後者が60mまでとなる。

 ジラー氏によればこのThunderbolt 3用USB Type-Cケーブルのコストは「現行のThunderbolt用のケーブルと同じ程度になる」とのことで、引き続きThunderbolt 3用USB Type-Cケーブルも高コストという問題を抱える可能性が高い。これに対して、20Gbpsのケーブルは、普通のUSB Type-Cケーブルがそのまま利用できるため、メインストリーム向けにはこちらが利用される可能性が高いと言える。

 従来のThunderboltユーザー向けの後方互換性も検討されており、USB Type-Cのコネクタを従来のThunderboltのデバイスで使うための変換アダプタ(USB Type-C>Thunderbolt 1/2対応Mini DP)も検討されており、これを利用することで、Thunderbolt 3に対応したPCから従来のThunderbolt周辺機器を使ったり、その逆に従来のThunderboltに対応したPCから、Thunderbolt 3に対応した周辺機器を利用できる。

 もうすこし具体的に言えば、現在MacBook ProなどでThunderbolt 1/2に対応した周辺機器を使っているユーザーは、将来Thunderboltに対応したUSB Type-Cコネクタを持つMacBook Proが発売されれば、そのままThunderbolt 1/2に対応周辺機器が利用できるという意味だ。

Intel Thunderboltマーケティングマネージャのジェーソン・ジラー氏
新しい仕様の名前はThunderbolt 3
Thunderbolt 3では伝送速度が最大40Gbps、DisplayPort 1.2が2系統で、2つの4K/60Hzのディスプレイ、オプションでUSB PDを実装すると100Wまでの給電に対応
基本的な仕組みはUSB Type-CコネクタのAltモードを利用する、USB用に用意されている物理的な信号線に、Thunderboltのプロトコルを流す。AltモードではDisplayPortやMHLの活用は既に明らかになっていたが、そこにThunderboltが追加された形になる
DisplayPort 1.2が2系統流せるので、4K/60Hzが2つないしは5K/60Hzの表示が可能に
USB PDはUSB Type-Cの仕様ではオプションとなっている
Thunderbolt 1/2に対応したPCとディスプレイをデイジーチェーンして、その先をThunderboltで繋ぐという使い方も可能
ケーブルは3種類になる。パッシブと呼ばれるケーブルは、普通のUSB Type-Cケーブルで、それを利用した場合には20Gbpsまでの対応となる。Thunderbolt 3用USB Type-Cケーブルは、従来のThunderboltのケーブルと同様コストは高めで、銅線(2m)と光ケーブル(60m)に対応
Thunderbolt 3から従来のThunderbolt 1/2に変換するアダプタも提供予定。Thunderbolt 3に対応したPCでThunderbolt 1/2に対応した周辺機器を利用したり、その逆にThunderbolt 1/2に対応したPCからThunderbolt 3に対応した周辺機器を活用できる

Thunderbolt 3に対応した新コントローラ"Alpine Ridge"はホスト/デバイス両対応のみ

 IntelはこのThunderbolt 3のために、新しいThunderboltコントローラとなる"Alpine Ridge"(アルパインリッジ)を開発、既にOEMメーカーに出荷開始しており、2015年末までに製品が登場する予定だという。ジラー氏によれば「Alpine RidgeはThunderboltのホストとデバイスのコントローラ、2つのUSB 3.1コントローラ、DisplayPort 1.2、PCI Express Gen3 x4に対応している」とのことなので、OEMメーカーは今後はこのAlpine RidgeをPCに搭載、USB Type-Cコネクタを搭載すればThunderbolt 3対応のPCを製造できるようになる。

 ただし、ジラー氏によれば従来世代ではThunderboltのホスト/デバイス両機能を持つコントローラ以外にも、周辺機器用となるデバイスのみのコントローラが提供されていたが、Alpine Ridgeではホスト/デバイス両機能を持つコントローラしか提供されないという。このため、Thunderbolt 3に対応した周辺機器を製造するには、高価なホスト/デバイス両機能を持つAlpine Ridgeを採用する必要があるので、従来のデバイスのみのコントローラを採用している場合に比べてコストアップに繋がりそうだ。

 新たにThunderbolt3に対応したUSB Type-Cケーブルが必要となること、そしてデバイス側にホスト/デバイス両機能を持つコントローラを搭載しないといけないことを考えると、このThunderbolt 3向けの新たに周辺機器を製造しようというメーカーが沢山出てくるとはなかなか考えにくい。このため、このThunderbolt 3はどちらか言えば、現在Thunderboltに対応した周辺機器を持っているユーザーを"救済"するための色が濃い技術と考えるのが妥当ではないだろうか。

ジラー氏の会見で公開された、Thunderbolt 3に対応したノートPCから、モバイル向けのdGPUが搭載されたドッキングステーションに接続し、DisplayPortのディスプレイに表示している様子。電力もUSB PDの仕組みを利用して、ドッキングステーションから供給されている。
Thunderbolt 3に対応したUSB Type-Cコネクタの例
Thunderbolt 3に対応したドッキングステーションの例。USB PDが利用できるようになるので、USB Type-Cケーブル1本で電力も、PCI Expressも、全てが接続できるのはThunderbolt 3のメリットとなる
こちらはThunderbolt 3に対応したUSB Type-Cで、2つのDisplayPort 1.2出力へ変換するボックスの例。これがあると、USB Type-Cケーブル1本で、5Kディスプレイへ出力することが可能になる。

(笠原 一輝)