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メモリ8GBだともう少ない?16GBと32GBとの差を用途別に徹底比較

 メモリが安くなってきている。今このタイミングを逃さず、増設あるいは換装しようかと考えている人は多いだろう。では現在のWindows 11におけるPC環境では、何GB分を搭載すればより快適になるのだろうか。「現在の売れ筋の容量のメモリを買っておけば大丈夫」と言えなくもないが、実際には使用するアプリケーションによって異なる。

 そこで今回は、 8GB、16GB、32GBのメモリを搭載させたPC上で実際にアプリケーションを動かし、その動作速度やメモリ使用率を映像的に同時に確認してみることとしたい。

  検証用のアプリケーションのジャンルは、Webブラウザ、ビジネス(オフィス系)、クリエイティブ(写真&映像編集)、ゲーム、そしてAI(画像生成)という5種を用意した。 自身の用途に当てはめ、目的のアプリケーションを快適に動作させるためのメモリ容量がどのくらいなのか、比較映像で判断いただきたい。

 なお、使用したPCの主なスペックはCPUがRyzen 7 PRO 4750G、ビデオカードがGeForce RTX 4060、メモリがDDR4(8GB~32GB)、OSがWindows 11 Homeとなる。詳しくは別のページに掲載しているので、知りたい方はそちらを確認されたい。

Webブラウザで動作検証

 まずはブラウジング。自宅PCはもっぱらWebサイト閲覧とネット通販用……という方は多いだろう。現状8GBの環境で不自由を感じていないとしても、16GBにしたら実はもっと快適になるのか、という点で気になるかもしれない。

 では、8GB、16GB、32GBのそれぞれの環境において、どのくらいタブを開いたらどのくらいメモリを消費されるのか、参考にしていただきたい。

 この後に続くほかの検証でもそうだが、ステータス監視映像側にはタスクマネージャーのパフォーマンスページ(メモリ)と、HWiNFO 64のメモリ関連項目+CPUとストレージ関連項目を表示している。

 特にHWiNFO 64のメモリ関連項目は、一定の閾値を超えた際に数値が黒文字から赤文字に変わる機能をオンにしているので、映像中では赤文字に変わる項目にも注目いただきたい。

 さて、 フローでは最終的にタブを30個開いた。ただし映像の通り、8GB、16GB、32GBの3つの環境で処理速度はほとんど変わらなかった。 HWiNFO 64上でも赤文字となった箇所はなく、タブ30個程度であれば8GB環境でも足りると言える。

 とは言え、それ以上のタブ(ウィンドウも同じ)を開いたり、ブラウザ以外になにか別のアプリケーションを同時に開いていたり、8GBのメモリであっても8GB×1枚、シングルチャネルであったりすれば話は別だ。

 最初の検証なので、まず開始直後の映像からいくつかの情報を読み取ってみよう。OSの起動だけで使用されるメモリ量は3.3~3.8GB(※常駐アプリが多い使い込んだPCではもっと消費する)。

 そしてタスクマネージャーの「利用可能」部分を見ると、8GB環境は4.5GB、16GB環境は12.3GB、32GB環境は28GBとなっている。ここは結構重要な点だ。

 また、「コミット済み」欄を見ると、8GB環境は23.9GB、16GB環境は31.9GB、32GB環境は47.9GBとなっている(Windows 11が自動的に割り当てた値)。これは仮想メモリを最大でどれだけ利用可能なのかを示している。PCのメモリ搭載量を増やしたからと言って、仮想メモリの容量を抑えられるわけではない。

 では実際にブラウザを起動した後について見ていこう。

 タブ数が増えるとともに物理メモリも消費していく。タスクマネージャーのグラフでは大容量メモリほど消費が少なく見えるが、それはパーセンテージであって、実際の物理メモリ消費量は8GB、16GB、32GBともほぼ横並びで推移する。

  最終的に30タブ開いた段階(映像の1:33ごろ)を確認しよう。8GB環境は物理メモリを8割近く消費している。これならまだ余裕があると捉えるか、8割も消費するようなら1つ上の容量に増設したほうがよいと捉えるかは人それぞれ。

  1つ上の16GB環境なら4割強の消費で済むため、同時になにか別のアプリケーションを使用する余裕がある。32GB環境については2割強の消費だ。さすがにブラウジングしかしないというニーズで32GBは持て余すことになるだろう。

 なお、先でも触れたがDDR4-3200については4GB×2枚キットはほとんど市場から消滅状態で、8GB×2枚が最小容量と考えたほうがよい。

 そして、すでに4GB×2枚キットと8GB×2枚キットの価格がほぼ同価になってきている。同じ価格で倍の容量が買えるなら、後者を選ぶのが普通だろう。

WordとExcelで動作検証

 次はビジネスアプリのフロー。具体的にはWordとExcelを起動し操作する。同時に、ブラウザに2つのWebサイトを表示、エクスプローラーを開いてファイル管理を行なうシチュエーションをイメージした。

 こちらも検証完了まで動作速度のズレはほぼなしだ。そもそもグラフと写真を除けばテキストデータで、それらデータをもとに整形、グラフ化するにしても負荷がかかるのは主にCPU。メモリ容量はあまり影響しないようだ。

  この検証ではメモリ不足は生じていないため、8GB、16GB、32GBとも、物理メモリの使用量はほぼ同じくらいで推移する。検証の終了時点(映像の2:39ごろ)でタスクマネージャーの「使用中」欄は、8GB環境と16GB環境で4.8GB、32GB環境で5.3GBだった。

  ビジネスアプリケーションは、さすがに4GBではキツいとしても8GBあれば大丈夫と言えるだろう。もちろん、よほど扱うデータが大きくない限りということでだが……。

 ただし、今回の検証環境はどれもデュアルチャネルだ。低コストをウリにするビジネスPCではメモリが1枚、シングルチャネルで8GBという製品も多い。

 その場合、メモリ不足は生じなくてもパフォーマンスはシングルチャネルなりに遅くなる点に注意したい。そしてCPU負荷のほうが高いと指摘したが、そのCPUの性能を引き出すためにもメモリはデュアルチャネルで運用したい。

PhotoshopとDaVinci Resolveで動作検証

 次はクリエイティブのフロー。アプリケーションはPhotoshopとDaVinci Resolveを用いた。また、操作の参考とするイメージでブラウザには2つのWebサイトを表示しているほか、ファイルを操作するためのエクスプローラーも開いている。

 写真データはRAWフォーマットで1ファイルおよそ50MB、解像度は8,280×5,520ドット。DaVinci ResolveのプロジェクトファイルはフルHD/30fpsの6ファイル(トータル5.4GB)を連結したものだ。

 クリエイティブ系のアプリケーションでは大容量メモリが必須と言われる。そして、実際に検証でもこれが正しいと言える結果だった。

  8GB環境ではPhotoshopで1枚目の写真補正の終盤(映像の1:13ごろ)、はやくもHWiNFO 64の物理メモリ使用率が赤文字に変わった。そして注目いただきたいのはその後、「被写体を選択」という操作を行なっている時のこと。8GB環境だけ処理の進捗を表すプログレスバーが表示(映像の1:40ごろ)された。それだけ処理に時間がかかっていることを意味している。

 このように物理メモリの空き容量がひっ迫し始めた環境は、まだ空き容量に余裕がある環境に対して処理の遅れが散見されるようになってくる。

  16GB環境は8GB環境ほどすぐにということはなく、1枚目の写真の補正は問題なかった。ただし、追加で5枚、RAWデータを開き簡単な処理を加えるフローの途中でついに物理メモリの空き容量がひっ迫し、HWiNFO 64の物理メモリ使用率が赤文字に変わった。それは6枚目のRAWデータを開いた時(映像の2:20ごろ)のことだ。

 検証は続く。PhotoshopでRAWデータを開いたまま、今度はDaVinci Resolveのプロジェクトを開いてエンコードを行なった。

  Photoshopの処理の段階で物理メモリがひっ迫した8GB環境と16GB環境は、32GB環境に対してワンテンポ遅れで起動&プロジェクトのロードが始まる(映像の2:30ごろ)。特に8GB環境はDaVinci Resolveの起動時、かなり頻繁にストレージに対する数百MBの書き込みを行なっているのが印象的だ。つまり、メモリ上の(優先度が低い)データを仮想メモリに転送しているわけだ。

  レンダリング出力も、32GB環境、16GB環境、8GB環境の順でスタートする。そこで実際にレンダリングに要した時間を計算すると、32GB環境が4分9秒、16GB環境が4分24秒、8GB環境が4分26秒だった。

 最後まで物理メモリ不足にならなかった32GB環境は、ほか2つの環境よりも15秒以上早かった。一方、16GB環境と8GB環境は意外にも差が小さい。仮想メモリを使うようになったらほぼ同じということだろう。ここが落とし穴になるかもしれない。

 たとえば8GB環境では処理が重いと16GBに増設したとして、この映像の通り仮想メモリを利用する状況が改善していなければ処理時間的には変わらない。メモリは増設したのだから……となればCPUやGPU性能など別のパーツを疑ってしまいがちだ。

 クリエイティブ用途でも扱うデータ量や同時に起動するアプリケーションが異なる。メモリは積めるだけ積んでおくのがベターというのはたやすいが、予算制限があるならばHWiNFO 64のようなハードウェアステータス監視ツールで普段の作業における物理メモリの最大使用量を確認したうえで、必要な容量を見積もり購入するのがおすすめだ。

ゲームで動作検証

 次はゲームでの動作検証。FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークを実行しつつ、その裏でOBS Studioを起動し録画を行なっている。ゲーミングPCで4GB×2枚というのはあまり想定しづらいが、どのようになるか見てみよう。

 まず、ベンチマークプログラム自体が起動するまで(映像の0:20ごろ)はそこまで目立つほどメモリを消費していない。しかしゲームをロードし始めると一気に物理メモリ使用量が増えてくる。

  実際のゲーム映像が表示される頃(映像の0:50ごろ)には、8GB環境の場合すでに90%以上を消費、ベンチマークの途中でHWiNFO 64の物理メモリ使用率欄が赤文字に変わった。また、物理メモリがひっ迫している8GB環境はシーンの切り換わり時、再びテクスチャなどのデータを読み込む際に16GB、32GB環境に対して遅れるようになった。

 このようにゲーミング用途でもそれなりの容量のメモリが必要だ。たとえばオンラインゲームなどで、ほかの人よりもロードに時間がかかっているフシのある方はメモリ搭載量をチェックしてみてもよいかもしれない。

 また、今回はフルHD環境のベンチマーク&録画だが、4Kはまた変わってくると思われる。画質設定でより高画質を求める場合も。

 裏で録画しているという点の影響は分かりづらい。……と言うよりもOBS Studioの録画開始前と後でメモリ使用量に大きな変化はなかった。どちらかと言えばメモリよりもCPU、GPUへの負荷のほうが高いということになるだろう。あるいはソフトウェアエンコードでは結果が変わってくるかもしれない。

Stable Diffusionで動作検証

 最後にAIのフロー。今回はStable Diffusionを用いて画像を生成してみた。

 Stable Diffusionを利用する際、まずWebUIを起動するためのバッチファイルを実行するが、バッチファイルの実行中(映像の0:25ごろ)、メモリ使用量が急激に増加する。

  8GB環境はまずここでHWiNFO 64の物理メモリ使用率が赤文字に変わった。一般的にStable Diffusionではビデオカード上のメモリ(VRAM)の容量のほうが重視されるが、メインメモリも16GB以上あったほうがよさそうだ。

 WebUI上でパラメータを調整し、プロンプトを入力して生成ボタンを押した後は、HWiNFO 64の物理メモリ使用率が赤文字になることもなく推移している。

 ただし、使用中のメモリ量が環境によって異なることに気づいた。

  生成の終盤1:30時点で見ると、8GB環境は5.5GB、16GB環境は9.8GB、32GB環境は10.4GBだ。8GB環境のみほかの約半分。バッチファイル実行時にメモリ容量を確認し、メモリ使用量をセーブしているのかもしれない。

 このようにメモリ使用量は異なるが、生成に要した時間はほぼ同じだ。あえて言えば8GB環境がワンテンポ遅れたように見えるが、コンマ数秒で気になるほどとは言えない。

 メモリ容量がひっ迫するのも主にWebUIのバッチ実行時で、生成時はメモリに余裕もあるため、生成結果あまり影響がないかもしれないが断言はできない。不安要素がある以上、メモリは余裕を持って搭載したほうがよいだろう。

余る分には困らない。安くなった今こそメモリ容量に余裕を持たせるチャンス

 5ジャンルでそれぞれアプリケーションを動かし、メモリの消費具合を見てきたが、まず動作という点ではどれも完走しているという点を挙げたい。

 仮想メモリはもちろんトラブルのもとになることもあるが、通常であれば結構優秀に機能する。この映像のようにメモリ不足でも落ちることなく各アプリケーションを実行できた。

 PCI Express 3.0/4.0世代のM.2 SSDが一般的になった現在、仮想メモリが使われてもHDD時代のもっさり感は解消されている。

 だからこそPC本来のパフォーマンスで動いているのか、実はメモリが足りていないのにSSDの性能でなんとかなっているのか、判断が難しい。多くの方はPCの性能に不満が出た際、まっ先にCPUやGPUに疑いをかけるだろう。

 しかし、原因がメモリにあるかもしれないと疑ってみることも重要だ。今回のように「最大値」を記録できるハードウェア監視ツールで確認するのが有効だ。

 仮想メモリを頼る前提というのはおすすめはしない。なお、明らかに「重い」状態が続くと、作業途中の肝心なタイミングでフリーズし作業データを失うことにつながりかねないからだ。

 メモリが高価なタイミングだったなら、こうしたリスクを負ったとしても仕方がないとあきらめられるが、今はメモリが安い。今こそメモリを増設、換装して余裕を作っておくチャンスと言えるのではないだろうか。

 ゲームやAIをやりたいという方で現在8GB環境の方や、クリエイティブ制作をしているけれど現在16GB環境の方、あるいは新しい分野にチャレンジしてみたい方はチャレンジしてほしい。