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ストリーマーyunocyさんの配信環境改造計画。設定面での高画質化テクなども

 過去何度か行なってきた配信環境改造計画。今回は、ストリーマーのyunocyさん宅の環境を改造した。

 まずは現状の環境と、三脚などの機材が置けるかなどの確認のため、ご自宅に伺った。yunocyさんの配信環境は、マウスコンピューターのゲーミングPC「G-Tune HP-Z」と、iiyamaの144Hz対応「G-MASTER GB2560HSU」を含むディスプレイが2台、カメラは照明つきWebカメラ、マイクはUSB接続のコンデンサ型「HyperX QuadCast」といった具合。

yunocyさんの配信環境周り※こちらの写真は事前に撮影されたもの
それまで利用していたWebカメラ
マイクはアームに取りつけている
マウスコンピューターのゲーミングPC「G-Tune HP-Z」
ディスプレイはiiyamaの144Hz対応製品を含む2台構成

 PC用以外にもう1つそばに机を設置し、そこにゲーム関連のグッズを置いたり、色変更可能な照明で後ろの壁を照らしたりして、ゲーマーっぽい雰囲気をうまく作り上げている。

右側の机にゲーム関連グッズなどを置いて、カメラに入るようにしてある

 現状の不満点は、画質だという。ゲーム画面をフルで表示し、カメラ映像はワイプにしているかぎりは問題ないレベルの画質に見えるが、雑談などでカメラ映像をフルスクリーンにすると、映像の粗が目立つ。

改造前の環境で撮影した映像

 yunocyさんとの相談の結果、今後のストリーマーとしての活動をさらに発展させるため、お金をかけてでも環境を改善したいとのことだったので、ミラーレスカメラを導入する方向で決めた。

選んだ機材

 と言うことで、今回も、過去の記事でも導入実績があるソニーのミラーレスカメラ「α6600」を中心とした機材を選定した。

  • カメラ:ソニー「α6600」(約16万円)
  • レンズ:シグマ「30mm F1.4 DC DN | Contemporary C016」(約3万6千円)
  • キャプチャユニット:Elgato「Cam Link 4K」(約1万5千円)
  • 照明:Yongnuo「YN-600 LEDビデオライト」+ディフューザー(約1万6千円)

 このほか、カメラの三脚や照明のアームなどの小物を含めると、総額は25万円ほどだ。

 α6600は、配信向けにはじゅうぶん過ぎるほどの画質を持つほか、オートフォーカスが速い。自分とカメラとの距離が変化したり、何か手に持ってカメラに見せたりするときに、すばやくフォーカスが合うので動画に使いやすい。また、ディスプレイがフリップ式となっているので、写りを確認しやすいという利点もある。

ソニーの「α6600」

 レンズはシグマの「30mm F1.4 DC DN | Contemporary C016」。比較的安価ながら、F1.4と明るく、背景がボカしやすいので、手軽にプロっぽく見せられる。APS-Cセンサーのα6600と組み合わせると、35mm換算の焦点距離は45mmと中望遠になるが、ゲームのワイプメインの使い方では画角が狭くてもとくに困らない。

 照明は、過去の記事でも選択してきたもので、コンパクトなのでアームなどを使って机に設置しやすく、じゅうぶんな輝度/品位を持つYoungnuoの「YN-600」を今回も選んだ。

 キャプチャユニットはElgatoの「Cam Link 4K」を選択。本製品は4K30p/フルHD60pでキャプチャ可能なUSBデバイス。HDMIのスルー出力がないため、ゲームキャプチャには向かないが、特別なドライバなしで動作し、α6600での動作確認も取れているので、これを選んだ。

キャプチャユニットはElgatoの「Cam Link 4K」

機材のセッティング

 まずはカメラのセッティング。撮影設定については、動画のマニュアル露出モードで、感度をISO100、シャッタースピードを1/120秒、F値を1.4、ホワイトバランスを色温度5500Kに変更し、記録方式はXAVC S HD、記録設定は60p 50M、HDMI解像度は1080p、24p/60p出力切換は60p、HDMI情報表示はオフにする。

 筆者自身の環境は、あえて24p出力にして、色味も含め映画っぽい仕上げにしているが、とくにそういう狙いがなければ今回のようなフルHD/60pでいい。それに合わせて、適度な残像感を出すためにシャッタースピードを1/120に設定している。

 もともとセカンダリディスプレイにWebカメラが取りつけられていたのだが、yunocyさんの座席の右側の卓上に背景オブジェっぽいものが置かれていたので、リニューアル後もそれを画面に入れようと思い、三脚を使ってほぼ同じ位置にカメラをセットした。

カメラは三脚に乗せて、ディスプレイに裏に設置

 ワイプの中心素材は配信者の顔だが、配信を続けている内に、背景も込みで1つのアイデンティティとなる。yunocyさんの場合は、前述の背景オブジェに加え、RGB LEDライトで背面の壁を照らすなど、すでにアイデンティティが確立されていたので、今回はとくに手を入れなかった。

RGB LEDライトで壁面を照らしている。色などはBluetooth経由でスマートフォンで操作可能

 照明は、アームを使ってカメラとは反対サイドの右斜め前に設置。距離は顔から5~60cmほどとなり、この状態だと光量は20%程度でじゅうぶんだ。じつは今回、もう1つ照明をカメラ側にも設置し、影を少し抑えようと思っていたのだが、準備が間に合わず1照明構成となっている。この記事と似たような環境を目指している人は、下記の過去記事を参照して、数千円の安いサブ照明を使って影をほんのり照らすのもありだ。

 キャプチャユニットは、HDMI-Micro HDMIケーブルでカメラと接続し、USB端子をPCに接続する。本体を直接PCに挿してもいいが、10cmくらいのUSB延長ケーブルが付属するので、それを使ったほうがつなぎやすい。つなぐUSBは3.0以上のポートならどれでもいいが、キャプチャユニットは頻繁に抜き差ししないので、yunocyさんが使用しているマウスコンピューターの「G-Tune HP-Z」のようなデスクトップの場合、背面に挿しておけばいいだろう。

機材の設置を終えた状態

配信ソフトの設定

 配信ソフトの環境設定はすでにできあがっているので、今回追加したキャプチャユニットを追加する以外にはあまり変更する点はない。前述のとおり、Cam Link 4Kはドライバ不要で動作するので、OBSのソース欄で「+」を押し、「映像キャプチャデバイス」を選択して、プロパティウインドウの「デバイス」から「Cam Link 4K」を選べばいい。解像度などの詳細設定は初期設定のままで大丈夫だ。これで、α6600の映像が映し出される。これで設定は完了。

 あとは、カメラの角度や、照明の明るさなどの微調整をするだけだが、筆者は配信環境改造計画でいつも、OBSの何カ所かの設定を確認するようにしている。それが、出力周りだ。OBSは、初期設定では画質が低めになっている。ここをきちんと設定しないと、ミラーレスカメラを導入しても、宝の持ち腐れとなる。

 具体的には、「設定」→「映像」で、「基本解像度」が「1920×1080」、出力解像度が「1920×1080」、「FPS共通値」が60になっているかどうか。yunocyさんは、配信プラットフォームとしてTwitchを利用しており、最大の解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)の60fpsなので、それに合わせる。

Twitchでは、解像度とfpsの設定はこのようにする

 もう1つ「設定」→「出力」で、「出力モード」を「詳細」に変更した上で、「配信」タブの「エンコーダ」が「NVIDIA NVENC H.264」、「レート制御」が「CBR」、「ビットレートが「6000Kbps」になっているかも要確認だ。

 yunocyさんの使っているG-Tune HP-Zは、GeForce RTX 2080 Tiを搭載している。このGPUは、ハードウェアエンコーダを搭載しているが、OBSの初期設定はエンコーダがCPUのソフトウェアエンコードである「x264」になっているので、ここを変えないとCPU負荷が高まり、配信がカクツク原因となる。

 ビットレートも初期設定は低めなのでTwitchの最大である6000Kbpsを指定することで、画質を最大限に引き上げられる。これでも、FPS系など動きが速くて画面全体が動くゲームだと、ブロックノイズが発生しがちなのだが、これはどうしようもない。なお、「配信」タブで、それ以外の項目は初期設定のままでいい。

エンコード周りはこの設定に

 そして、もう1つ、おそらく多くの人が見逃している画質向上のための設定がスケールフィルタだ。映像ソースをフルスクリーンで表示する場合は関係ないが、ワイプのように縮小表示する場合、OBSの初期設定ではスケールフィルタがなにも適用されないので、髪の毛の輪郭などのギザギザが目立つようになってしまうのだ。

 これを解決するには、対象のソース(ここでは映像キャプチャデバイス)を右クリックし、「スケールフィルタ」から「ランチョス」あたりを選ぶ。もし、ワイプ以外にも、ロゴなど、じっさいより縮小して表示しているものがあったら、それらも同様にスケールフィルタを適用しよう。これで、輪郭が滑らかになる。

ワイプなど縮小して表示するものにはスケールフィルタを適用する

仕上がりには本人も視聴者も満足

じっさいの配信映像の画面写真

 というわけで、改造後はこのように仕上がった。前述のとおり、照明が1つとなったことで、影となっている側がちょっと暗すぎるのだが、その後サブ照明を設置されたので、直近の配信ではもう少し明るくなっている。

改造後の配信環境の映像

 記事の冒頭に掲載した写真を再度ここにも載せるが、カメラを変え、照明を導入したことで、ノイズが減り、解像度が上がり、肌などの色が生き生きとし、背景のボケ感もあってメリハリのある画となった。改造後の配信を見たところ、視聴者のコメントでも「画質上がりすぎ!」、「目の前にyunocyがいるみたい!」など、かなり好評だった。