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プロゲーマー配信環境改造計画第3弾。ネモ編

ネモ氏の新配信環境

 前回の「ふ~ど&倉持由香さん編」では、何気ないTwitterのやりとりから配信環境改造へと話が発展したのだが、今回もそんな感じで有名プロゲーマー「ネモ」氏の配信環境改造をお手伝いすることとなった。どういった機材を利用し、どのように映像がパワーアップしたのか、1つ1つ紹介していこう。

改造前の環境は2PC+Webカメラ

 ネモ氏は、格闘ゲーム業界でトッププレイヤーとして長く活動を続けるベテランプレイヤーの1人。大会などでの実績に加え、仲の良いベテランライバルとのプロレス的な「舌戦」などでも人気を博しているほか、会社員をしながらプロゲーマーとしても活動を行なう二足のわらじスタイルからも注目を集めている。

 そんなネモ氏からある日、ゲーミングPCの購入相談を受けた。そのPCは氏の知り合いが購入するものだったのだが、そのやり取りをするなかで、ネモ氏自身がぽろっと「自分の配信環境も改善してみようかな」とおっしゃった。そこで「ならばお手伝いしますよ」と、今回の話に発展した次第だ。

 改造にあたり、ネモ氏宅にお邪魔し、現状を確認した。

 改造前までのネモ氏の配信環境は、PCが2台と、Webカメラ、USBコンデンサマイクというものだった。氏は以前まで、デルのゲーミングPCブランドである「ALIENWARE」からスポンサードを受けていた。いまでは、強豪eスポーツチームである「Team Liquid」に所属しているが、Team LiquidもALIENWAREのスポンサードを受けているということで、PCはALIENWAREのものを使っている。1台はゲームプレイ用で、もう1台が配信用だ。

ゲーム用に使っている「ALIENWARE 15」
配信用に使っている「ALIENWARE 13」

 配信PCに別のマシンのゲーム画面を取り込むにはキャプチャユニットが必要になる。これについては、AVerMediaの1080p/60fps対応のUSBキャプチャユニット「Live Gamer EXTREME - GC550」を使っていた。この点についてはなんの問題もなく、そのまま継続利用することにした。

ゲーム用PCの映像を配信PCに取り込むためのAVerMedia製USBキャプチャユニット「Live Gamer EXTREME - GC550」

 音声については、同じくAVerMediaの「AM310」を使用していた。これについても、音質の面でじゅうぶんと判断した。ただ、内見に伺った時点では、標準のスタンドにつけたまま、卓上に置かれていたのだが、マイク用アームも所持されていた。ただ、設置方法がわからずそのままになっていたので、取り急ぎその場でAM310をアームに取りつけておいた。

配信用マイクAVerMedia「AM310」。最初に伺った時はスタンドで机の上に置いてあったが、アームがすでにあったので、それに取りつけた

 アームを使うメリットは、マイクを口元に近づけられること。これにより、壁に反響する声に対して、直接発せられる声がより大きく入力されるので、音声が明瞭になる。

 ちなみに、マイク内部で音を捉えるマイクユニットには、向きがある。カラオケなどで使うハンドマイクの多くは、マイクユニットが内部から先端方向に向かって面しているので、手に持ったとき先端部分に向かって声を出す。一方、AM310を含むコンデンサマイクでは、マイクユニットが側面方向に面しているものも多い。配信で声のボリュームがいまいち小さいという場合は、マイクの向きが合っていない可能性もあるので、確認しよう。

 映像については、一般的なWebカメラを使っていた。映像の品質を高める上で、一番重要なのは照明だと言っても過言ではない。その点ではWebカメラでも照明を併用すれば多少画質を上げられるが、ネモ氏は、今後、また海外大会が再開されたときなどに持っていって、写真や動画を撮りたいとのことだったので、ミラーレスカメラを導入することに決めた。

配信用のWebカメラ
従来の環境でのワイプ部分だけを切り抜いた画面

購入した機材

 ということで、ネモ氏には今回、以下の物を購入していただいた。

  • カメラ: ソニー「α6600」(約16万円)
  • レンズ: SIGMA「30mm F1.4 DC DN」(約3万3千円)
  • キャプチャユニット: AVerMedia「Live Gamer EXTREME 2 GC550 PLUS」(約2万7千円)
  • 照明: Youngnuo「YN-600」+ソフトボックス(約1万5千円)
  • サブ照明: Neewer「卓上ライトキット」(約4,300円)

 カメラはソニーが2019年末に発売したミラーレスαシリーズでAPS-Cフォーマット最上位となる「α6600」だ。α6000シリーズは、オートフォーカスの速度が速く、配信者の間で人気の製品。購入価格は約16万円。

 じつはα6000シリーズは、下位モデルでも撮影性能に大きな差はなく、三脚に固定した配信用途なら下位モデルを選ぶことで5万円くらい費用を抑えられる。そのことは説明したが、ネモ氏は、前述のとおり、配信以外でも写真撮影に使う予定があり、どうせ買うなら良いものを、ということで最上位モデルを選んだ。もちろんα6600は、本体に手ぶれ補正機能を備えるなど、総合的な機能性はほかのモデルを上回る。

ソニーのミラーレスカメラ「α6600」

 SIGMAのレンズ「30mm F1.4 DC DN」は、APS-Cフォーマット機で使うと、35mm換算の焦点距離は45mm相当となる。ディスプレイそばに置いて、1人を撮影するにはちょうどいい画角だ。PCデスクに設置すると、ざっくり、カメラからネモ氏までの顔の距離が50cm程、顔から壁までが2mほどとなる。この距離だと、壁のあたりがいい感じにボケるので、プロっぽい映像となる。

レンズ SIGMA 30mm F1.4 DC DN

 ただし、先にも書いたとおり、いいカメラを使っても、照明を併用しないと、高品質な映像は得られない。今回購入したのは、筆者も利用しているYoungnuoのLED照明「YN-600」だ。

YoungnuoのLED照明「YN-600」

 この照明も、そのまま使うとうまくいかないことがある。具体的には、照明そのままだと「ハードライト」と言われる状態で、影が強くなりすぎてしまう。意図的にハードライトの状態で撮影することもあるが、基本的には人物を照らすには「ソフトライト」にした方がいい。

 と言うことで、専用のソフトボックスも購入して照明に取りつけた。こうすることで、影の縁がなだらかで全体的に柔らかな雰囲気のソフトライトを実現できる。同じカメラで、照明を使ったときと、使わなかったときの比較画像を撮影したので、見比べてもらえば、その効果の程は一目瞭然だ。

照明なしの場合
照明ありの場合

 専門的な照明用ソフトボックスは、直径が1m近く、奥行きが5~60cmほどあったりして、個人の部屋には置きにくいのだが、このソフトボックスは、400×150×300mm(幅×奥行き×高さ)ほどなので、設置しやすい。ネモ氏の場合も、照明用に三脚などは使わず、PCデスクに取りつけられるアームを選択した。

照明にはソフトボックスを取りつけ、アームでPCデスクに設置した

 さて、先ほどの比較写真を見て気づいた人もいるかと思うが、壁が青く照らされている。今回ネモ氏から相談をいただいたとき、ワイプをどういう雰囲気に仕上げようかと考えた。その結果、ネモ氏のクールさ、ゲーム配信、Team Liquidのイメージなどを考慮し、陰影は強めにし、アクセントカラーとしてブルーを使おうと思った。

 そこで、サブ照明としてNeewerの「卓上ライトキット」も購入した。4千円ほどで2個セット、しかも小さな三脚もついている。本体も手のひらサイズのコンパクトさなので、どこにでも設置できる。顔を照らすメインの照明にするには明るさが足りないが、赤、青、黄色のカラーフィルターもついていて、間接照明としての利用に好適だ。これに青のフィルターをセットして壁を照らすことで、雰囲気を作り上げた。

サブ照明に青のフィルターをつけ、壁を青くぼんやりと照らした

 2つあるので、もう1つはカメラのそばに置き、こちらも青いフィルターをセットして、そばの壁からバウンスさせ、メインの照明とは逆の方向から顔を照らすことにした。いわゆる「フィルライト」としての使い方で、メインの照明1つだけだと、影が濃すぎるので、それを少し緩和しつつ、青をうっすら差してある。

 雰囲気を変えたいときは、このフィルターを赤にしたり、市販のカラーフィルムなどを使うこともできる。

もう1台はカメラそばに置き、フィルライトとして使うことに
セッティングを終え、カメラのみの映像を映したところ。ネモ氏のクールな雰囲気をより際立たせることができたと思う
ゲーム+ワイプの状態にするとこのような感じ
従来環境と新環境のワイプ部分のみの比較

 カメラの映像をキャプチャするのには、AVerMediaの「Live Gamer EXTREME 2 GC550 PLUS」を採用した。前述のとおり、ネモ氏はゲームのキャプチャ用にLive Gamer EXTREME - GC550を使っているが、何の問題もなく2つを併用できている。

カメラのキャプチャ用に購入したAVerMediaの「Live Gamer EXTREME 2 GC550 PLUS」

配信環境はビデオ会議にも流用可能

 以上のように、ネモ氏の配信環境をアップグレードした。配信を拝見すると、視聴者からの評判も上々だった。ネモ氏自身にも満足いただいたようで、配信を行なうモチベーションも向上したとのお言葉をいただいた。

 また、ネモ氏は、企業の社員としても勤労しているが、在宅勤務推奨のなか、ビデオ会議に参加する機会も増えた。現在は、そこにも、今回の配信環境を活用しており、「ワンランク上のオンラインコミュニケーションが可能になりました」とツイートされている。高性能なゲーミングPCが業務にも活用できる事例としても参考にしていただければ幸いだ。