Hothotレビュー
着脱式でペン内蔵が魅力のChromebook。今日発売のASUS「Detachable CM3」を使ってみた
2021年3月17日 11:00
「Chromebook Detachable CM3」(以下CM3)は、ASUSが3月17日に国内販売を発表したChromebook最新モデル。10.5型のWUXGA(1,920×1,200ドット)ディスプレイを搭載したキーボード着脱型の2in1モデルだ。販売価格はストレージ容量128GBの一般向けモデル(CM3000DVA-HT0019)が5万800円(初回は台数限定で割引価格で提供)で、教育・法人向けには容量64GBのモデル(CM3000DVA-HT0010)が4万4,980円で販売される。
10型サイズのキーボード着脱型2in1というと、低価格ながら充実した機能で発売当初から完売状態が続いたレノボの人気モデル「IdeaPad Duet Chromebook」(以下Duet)に近いスペックだ。
Duetは3万円を切る価格で販売されることもあり、10型クラスの2in1 Chromebookとして今なお人気だ。本レビューではDuetとスペックを比較しながら、CM3の使用感をお伝えする。Duetについては以下のレビューを参照されたい。
本体スペックはDuetとほぼ同等。画面サイズやバッテリ駆動時間はCM3が勝る
CM3には本体のほか、マグネット着脱型のキーボードとカバーが同梱。また、本体には4,096筆圧感知のペン「ASUS USI Pen」が付属しており、本体上部に収容できるようになっている。
Duetと比べたCM3の差別化要因が、縦置きにも対応したスタンドの「フレックスアングルスタンド」、本体収納可能な付属ペン、3.5mmミニジャックの3点だ。これは個別に詳細をレビューする。
ディスプレイの解像度は1,920×1,200ドットで同じだが、ディスプレイサイズは10.5型のCM3がわずかながら上。そのため本体サイズや重量もCM3が上回っている。ただし、重量については本体のみだとCM3のほうが重いが、キーボード装着時はCM3のほうが若干ながら軽量だ。
プロセッサはMediaTek MT8183、メモリは4GB、ストレージは64GBと128GBの2種類で、Wi-Fi 5(IEEE 802.11ac)の無線LAN、Bluetooth 4.2といった、通信周りの機能もDuetと変わらない。カメラも前面が約200万画素、背面が約800万画素でほぼ同等で、センサー類はGPSに対応しないが、ジャイロセンサーと加速度センサーを搭載する。
細かな違いはバッテリで、Duetの公称約10時間の駆動時間に対して、CM3はキーボード装着時で公称約12時間と2時間多いが、消費電力はDuetが10W(5V/2A)に対してCM3は45W(15V/3A)と大きい。USB Type-C対応のモバイルバッテリやACアダプタを利用するさいは、消費電力に注意が必要だ。
ASUS Chromebook Detachable CM3 | レノボ IdeaPad Duet Chromebook | |
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プロセッサ | MediaTek MT8183(2GHzオクタコア) | MediaTek Helio P60T(2GHzオクタコア) |
メモリ | 4GB | 4GB |
ストレージ | 64GB/128GB | 64GB/128GB |
ディスプレイ | 10.5型TFT | 10.1型IPS |
解像度 | WUXGA(1,920×1,200ドット) | WUXGA(1,920×1,200ドット) |
無線LAN | Wi-Fi 5 | Wi-Fi 5 |
Bluetooth | 4.2 | 4.2 |
センサー | 加速度、角速度 | 加速度、角速度、光 |
GPS | 非対応 | 非対応 |
背面カメラ | 800万画素(オートフォーカス) | 800万画素(オートフォーカス) |
前面カメラ | 192万画素 | 200万画素 |
USB | 2.0 Type-C(充電&ディスプレイ出力) | 2.0 Type-C(充電&ディスプレイ出力) |
オーディオジャック | 3.5mmオーディオジャック | なし(USB Type-C to 3.5mmオーディオジャック変換ケーブルが付属) |
キーボードキーピッチ | 17.5mm | 18mm |
キーボードキーストローク | 1.5mm | 1.3mm |
ディスプレイ出力 | 1,440×900ドット | 1,920×1,080ドット |
バッテリ | 約12時間 | 約10時間 |
電源 | 45W | 10W |
ペン | 内蔵(4,096筆圧検知) | 別売(4,096筆圧検知) |
本体サイズ(幅×奥行き×高さ) | 255.44×167.2×7.9mm | 約239.8×159.8×7.35mm |
本体重量 | 約506g | 約450g |
キーボード装着時重量 | 915g | 920g |
広くて打ちやすいキーボードだが操作面では難点も
スペック面では大きな違いがないように見えるが、細かな使い勝手で違いを感じるのがキーボードだ。横幅がDuetよりも若干広く、キーストロークもDuetの1.3mmと比べて1.5mmと若干深いが、キーピッチはDuetの18mmに比べて17.5mmとわずかに狭い。
また、キーボードをテーブル上に平置きするタイプのDuetに比べて、CM3はマグネットでディスプレイ下部にくっつくことで6度の傾斜がつくようになっている。斜めのほうが文字入力しやすい一方で、キーボードが薄いためキーを叩くたびにキーボードがたわむ。また、キーを平置きしようとしてもキーボードが若干浮いてしまうので文字の入力が難しい。
キー配列はどちらも同じだが、キーの大きさは細かい点で異なり、CM3はスペースキーが小さくなっている分、英数やかななどが大きく取られている。また、タッチパッドはDuetの86×48mm(幅×奥行き)に対してCM3が96×49.5mm(同)と横に広く取られているため、カーソル操作はCM3のほうが快適だ
両方の端末を使った立場からすると、キーそのものはCM3のほうが押しやすいが、キーボードのたわみが気になってしまう。たわみが気にならなければCM3のほうが使いやすいが、このあたりは好みの問題だろう。
また、キーボード上部をディスプレイ下部にマグネットで装着する構造のため、ベゼル部分の一部をキーボードが覆ってしまい、指でタッチするには若干狭くなってしまっている。アプリの起動や切り替えはキーボードショートカットを利用するか、別途マウスを用意したほうがいい。
縦横どちらでも使えるスタンドや本体に収容できるペン。オーディオジャックも搭載
最大の特徴と言えるフレックスアングルスタンドは、「田」のときのように縦と横が分割されており、半分に折り曲げることで横置きと縦置きどちらでも利用できる。マンガや雑誌など縦で読みたいコンテンツには非常に便利だ。
一方、スタンドの角度は縦横とも90度までのため、手元で上から見下ろすような角度で見たいときに画面が見えにくい。20度近くまで倒すことができたDuetのほうが幅広いシチュエーションで利用できる。
ペンは4,096筆圧感知の「ASUS USI Pen」が付属しており、本体上部に収納できる。15秒収納するだけで45分間の利用が可能だ。
ペンを取り出すとペン用のショートカットが表示され、画面のキャプチャやレーザーポインタなどの操作ができるほか、ペン対応のアプリを呼び出すこともできる。ただし、設定できるアプリはかぎられているようで、Google KeepやBamboo Paperはショートカット設定できたが、MetaMoJi Note Liteはペン操作は可能なもののショートカットには設定できなかった。
手書きだけでなく画面操作にも便利。画像のサイズ変更やスプレッドシートの行列編集など、小さな面積の操作を行なう場合は指よりもペンのほうが圧倒的に作業しやすい。マウスを取り出すことなく細かい操作を行なえる点では、手書きを使わないユーザーにもメリットは大きい。
DuetもUSI式のペンに対応しているが、純正ペンの「Lenovo USI Pen」は4,000円程度の別売となるほか、本体に収納することはできない。ペンの利用頻度が高い人に取っては、取り回しやすい収納型ペンは大きなメリットだ。
このほか3.5mm ミニジャックの搭載も、ビデオ会議などの利用ではうれしいポイントだ。長時間のミーティングではワイヤレスだと電池が切れる心配があるし、わずかながらも遅延もあるため、有線のイヤフォンを使いたい場合も多い。わざわざ変換アダプタを使うことなく有線イヤフォンが使えるのも、地味ながら利便性の高いポイントだ。
操作感は一般的なChromebookと同等。Androidアプリは補助的な役割
操作感は一般的なChromebookと変わらない。普段Googleアカウントを使っているユーザーであれば、Googleアカウントでログインするだけで、ブックマークや保存したパスワードなども移行できる。
Google Playを搭載しており、Androidアプリもインストールできるため、Androidタブレット的な使い方も可能だ。ただし、Androidとまったく同じではなく動作に不安定なアプリも多い。
筆者が普段利用しているアプリでは、電子書籍のKindle、BookLive!、ジャンプ+、動画配信のNetflix、Amazon プライム・ビデオは問題なく利用できたが、Huluやtorneは利用できなかった。また、文字入力もATOKはキーボード装着時は利用できず、一度キーボードを接続するとATOKの設定もリセットされてしまうなど実用度は低い。
スリープ解除も指紋認証やパターンなどの機能が用意されていないため、タブレットとして操作する場合はやや手間だ。Androidと連携することで、Androidのロックが解除されていればアイコンをタップするだけでロック解除できる機能も用意されているが、CM3単体で利用したいというときには二度手間になる。
先ほど「タブレット的」と書いたのはこういう意味で、キーボードを装着してChromeブラウザをPC的に利用する分には問題ないが、対応アプリや操作面などで完全なAndroidタブレットとして利用できるわけではない。フリック入力は標準キーボードが非対応で、ATOKなどの外部IMEも前述のとおり実用度が低いため、基本的にはPCスタイルで使うのが前提と言える。
とは言うものの、1,920×1,200ドットのディスプレイは鮮やかで美しく、1W×2のスピーカーも動画や音楽を楽しむには十分。普段はPCスタイルで使いつつ、休憩時間や家で過ごす時間などは動画や電子書籍を楽しむ、という使い分けであれば、PCとタブレットを1つにして持ち歩けるというメリットは大きい。
動作は必要十分。PC感覚で使えるChromeブラウザ
Google Octane 2.0で測定したベンチマークテストの結果は9,887。ChromebookのためAndroidスマートフォンやタブレットとの単純比較はできないが、スペック的にはミドルレンジという動作だ。
実際の使用感も、PCと比べれば多少のもたつきはあるものの十分に快適。通信回線が遅い場合には動作が重くなるが、高速なWi-Fiに接続して利用するとレスポンスもいい。CM3を利用して1日PCで業務をこなしてみたが、外出先で作業する分には問題ない使い勝手だった。
ChromeブラウザはPC相当なため、キーボードショートカットやテキストのコピー&ペーストなども可能だ。アプリで利用する場合、Gmailはキーボードショートカットに対応していないし、Slackはテキストを選択してコピーできないなど使い勝手に課題がある。ブラウザベースであればほぼPCと同じ使い方ができるのがChromebookならではの魅力だろう。
ビデオ会議もZoomは拡張機能をインストールすれば利用でき、Google Meetも当然ながら利用可能。最近話題のビデオ会議サービス「Around」は、スマートフォン用アプリがまだ提供されていないため自分から会議をはじめることはできないが、招待URLからChromeで参加することは可能だった。
USB Type-Cのディスプレイ出力もサポート
カメラ機能は非常にシンプルで、オートフォーカスは対応しているがシャッターを押して撮影までに数秒かかるほど動作は重く、画質もさほど高くはない。書類のメモ用途や、インカメラを使ったビデオ会議用途で使うのがいいだろう。
USB Type-Cはディスプレイ出力にも対応。仕様では最大1,440×900ドットとのことだが、手持ちのディスプレイに接続したところ1,920×1,080ドットでの出力も可能だった。TVに接続して動画配信サービスを楽しんだり、モバイルディスプレイを併用して外出時の作業効率を高めるのにも便利だ。
バッテリはディスプレイの輝度を半分にした状態でYouTubeを連続再生したところ、12時間15分で空になった。ほぼ公称どおりのスペックで、1日外出して作業するにも困らない。
LTEは非対応だが、Chromebook側からAndroidのテザリングをオンにできる「インスタント テザリング」という機能が用意されている。Androidのみの機能ではあるものの、スマートフォンを操作することなくインターネットに接続できるのは便利だ。
縦横対応スタンドやペン、オーディオジャックに魅力を感じるかどうかが決め手
冒頭でも述べたとおり、10型クラスの着脱型2in1としてはDuetと非常にスペックの近いCM3。購入にさいしてもDuetと比較することになるだろう。
スペック比較では、本体収容のペンが一番大きい差別化ポイント。ペン操作の利用頻度が多いユーザーには、ペンが標準で同梱し、本体に収容できるのはうれしい。オーディオジャックが搭載されているのも、ビデオ会議や動画視聴には重宝する。
スタンドとキーボードは、縦置きできる機構が便利な一方で、スタンドの角度やキーボードが斜め固定で平置き利用が難しい点などは人によって使いにくさを感じるかもしれない。
最大の違いは価格だろう。5万円を超えるCM3に対して、Duetは発売時の価格でも4万4,880円(直販モデル)と5万円以下で、最近ではキャンペーン価格で3万円を切ることもある。
Chromebookとしての使い勝手はほとんど変わらないだけに、Duetと比べて実売で2万円近い価格差と、ペン対応や縦横対応スタンド、オーディオジャックといった差別化要因にどれだけ魅力を感じるか、が本機を購入する検討材料になりそうだ。