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猫はどうやって「ゴロゴロ」を鳴らせるのか?研究論文が発表

イメージ画像(Adobe Firefly生成)

 猫は人間になでられたりする際に「ゴロゴロ」と低い声を発して甘えたりするのは誰もが知っている。だが、猫がこの低い声が発せられるメカニズムは、しっかり解明されていなかった。

 ほとんどの哺乳類は筋弾性空気力学論(MEAD)に基づいて発声している。つまり、空気が喉頭組織を通る際にそれを震わせることで声を出す。ところが、猫のゴロゴロのような低い声を発するには、MEADの考えでは本来より長い声帯が必要であり、説明できない。

 このため、猫は能動的筋収縮(AMC)と呼ばれる、MEADと根本的に異なるメカニズムによって低い声を出していると長い間考えられてきた。つまり、神経で筋肉を動かして(20~30Hz)呼吸気流を調整するのではないかという説だ。ところがこのAMCのメカニズムに関する直接的な経験的根拠が乏しかった。

 今回、オーストリアのウィーン大学ら複数の研究者の研究によって、その解明に一歩近づいた。10月3日付けでCurrent Biologyに投稿された論文によれば、猫のゴロゴロの声は、MEADに基づいて発することができたという。

 研究では、末期疾患により安楽死させなければならなかった8匹の家猫から喉頭のサンプルを摘出。37℃に加熱/100%に加湿した空気を供給できる垂直チューブを取り付け、レゴブロックと3Dプリントされたマウントで保持して実験を行なった。

 その結果、猫の喉頭に、異常に長い閉じた時間を持つ低い声を出すための「特別な発声モード」があることが分かった。つまり、ゴロゴロと鳴くのは、AMCのメカニズムに基づく筋肉の収縮や神経入力がなくても実現されており、MEAD原理に支配されていることとなる。

猫の
家猫の喉頭の動作メカニズム
8匹家猫から得られたデータ

 ただし、少なくとも猫が「ゴロゴロ」と「にゃー」、そのほかうなり声といったほかの鳴き方を使い分けていることから、研究では脳の電気刺激によって声を変化させているAMCモデルを完全否定せず、修正が必要だとしている。特に生きている猫のゴロゴロ音は、AMCとMEADの両方によって促進されているのではないかと仮説を立てている。