やじうまPC Watch
【懐パーツ】ナカミチの16倍速5連装CD-ROMドライブ「MJ-5.16」
2019年3月1日 12:37
「MJ-5.16」は、ナカミチ株式会社が1997年6月に発売した、E-IDE(ATAPI)に対応した16倍速5連装CD-ROMドライブだ。発売当初の価格は29,800円であった。
近年はHDDとNANDフラッシュの大容量化と低価格化、そしてインターネットの高速化と普及によって、光学ドライブは絶滅に近い状態となっているが、1990年代後半にとって、CD-ROMはデータを頒布する媒体として重要な役割を果たしていたため、光学ドライブも欠かせない製品となっていた。
その流れのなかでもナカミチのドライブは、ディスクを複数枚入れたままにしておき、必要に応じて切り替えられるというコンセプトを、一般的な光学ドライブと同様のハーフハイトである5インチベイ1基のサイズに収めている点が、他社製品と大きな差別化要素になった。しかも、マガジンやカートリッジを用いず、スロットインでCDをそのまま挿入できる点は非常にユニークだ。
同社はMJ-5.16を投入する以前に、4倍速で4連装の「MJ-4.4」や、8倍速で4連装の「MJ-4.8」シリーズなどをリリースしており、同様の機構を用いていたが、MJ-5.16では高速化を図るとともに、収納できるCDを1枚増やしたのがトピックだ。
ちなみに連装式のCD-ROMドライブはパイオニアやアルプス、三洋電機も手がけていたようだが、残念ながら検索してもほとんど情報が出てこない。PC Watchでも情報があるのはリコーの5連装CD-R/RWドライブ「MC104S」程度である。
筆者がMJ-5.16を知ったのは中学生の頃。ほしいと思ってもなかなか手が出せない価格だったので、想像力を働かせてCDチェンジのメカニズムを考える毎日であったが、分解してみると意外にも単純な機構であった。読み取るCD以外のCDを回転軸の外に追いやって昇降させて退避させるだけで、ターゲットのCDが2枚のCDに挟まれていても、そのままローディングするのである。
単純とはいえ、ディスクの回転(松下製)、ピックアップの移動、ローディング機構、保持部の昇降などに5個ものモーター(マブチモーター製)が使われており、価格に見合うだけの複雑性は備えている。
基板まで分解してみたところ、心臓部には日立製のマイコン「H8/3002」が使われていた。IDE CD-ROMコントローラにはOak Technologyの「OTI-911LP」。このコントローラは最大20倍速までの読み取りに対応し、PIOモードまたはDMAモード2をサポートする。
CDのデジタル信号処理には、ソニーの「CXD3000R」が使われている。なお、このチップはデジタルサーボ制御とDAC機能も内蔵しており、基板の部品数低減に一役買っている。このほか、ソニーのSRAM「CXK581000MB-10LL」や、Mosel Vitelic製のファストページDRAM「V53C8125HK35」、ROHMの3フェーズモータードライバ「BA6849FP」なども見える。