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ホンダの二足歩行ロボット研究は継続中
~ASIMO開発中止報道についてコメント
2018年6月29日 00:00
NHKが「ホンダ アシモの開発をとりやめ 研究開発チームも解散」と報じた。今後は、より実用的なロボット開発に注力するという。
ホンダはこれまでにも、あの白いロボット「ASIMO」だけではなく、ロボット技術を応用した研究開発を行なって来ている。歩行訓練機器「Honda 歩行アシスト」は製品としてリリースもされている。だが、ASIMOはもっとも有名なロボットである。それをやめるという報道は事実なのか。とりあえず本田技研工業株式会社 広報部 企業広報課の建部輝彦氏に質問した。
二足歩行ロボットの研究開発は継続中
ホンダ 建部氏 どういうことかということですよね? 基本的に弊社のほうでASIMOをやめるという話は一切ありません。NHKさんが御取材されたなかで、ある一部の人間が言っていることだけが取り上げられてしまったということです。
ご存知のように、弊社は1986年から二足歩行ロボットの研究開発を行なっておりまして、今でもその開発チームはございます。ですから「チームが解散している」というのは誤りです。
ただ、弊社は2016年の4月に基礎技術研究センターをなくして「R&DセンターX」という新しい組織を新設しました。そのときにもともとASMOの開発だけをやっていたASIMO部隊というのがあったわけではなく、二足歩行技術の研究開発を行なっていた部隊があるんですが、それが色んな部門に分かれたんですね。一部の人間は引き続き二足歩行ロボットをやるチームにいるし、別の一部の人間はUNI-CUBなどほかのものに移っています。
つまりなにが言いたいかといいますと、チームそのものが解散したわけではなく、組織変更したときに人間も異動しているということです。
――二足歩行ロボットの研究開発は引き続き継続しているのでしょうか?
ホンダ 建部氏 はい、継続して行なっています。二足歩行ロボットは引き続き研究開発しております。
――ASIMOの研究開発は続けているんでしょうか?
ホンダ 建部氏 そのご質問ですが、現在開発しているものが最終的に「ASIMO」と呼ぶにふさわしいかどうか、議論されるレベルにまだいたってないんです。なので開発を続けていって「ASIMO」と呼ぶにふさわしいということになれば「ASIMO」という名前を使うでしょうし、そうでなければ違う名前を使うでしょう。いずれにしても、そのステージまで、まだいたっていないんです。いずれにしても、「アシモの開発が終わった」という言い方には、弊社としてはかなり違和感があります。
――継続して開発している二足歩行ロボットというのは、すでに公になっているものですが、たとえば、災害対応用ロボットの「E2-DR」などのことでしょうか?
ホンダ 建部氏 あれも1つのかたちではあります。「E2-DR」は学会に出したものがYouTubeなどを通して世間を騒がせてしまったようなもので、あまりオフィシャルなものではないんですが、1つは、ああいうかたちのものです。広報のほうですべてを関知しているわけではないんですが、ほかにもいくつかあるようです。
――NHKさんが報じたのは誤報という理解でいいですか?
ホンダ 建部氏 誤報とは言いませんが、弊社としては「そうなんですか?」と言われると「そうではありません」という言い方になるかと思います。
「ASIMO」という名前の行方
――「二足歩行ロボットの開発は続ける」とのお話ですが、それに「ASIMO」という名前を使わない理由はなんでしょうか。御社ではもともと「ASIMO」というのは「脚式モビリティ」を使ったロボット全体の総称だとされていたと思います。ただ、その後ASIMOの知名度が上がるにしたがって、一般的には白いあのロボットが「ASIMO」ということになってるかもしれませんが、御社として「ASIMOという名前を使うかどうかわからない」と仰る理由はなんですか。
ホンダ 建部氏 そこに明確なロジックはないのかもしれません。1つは、今までの二足歩行ロボットの想起させるイメージとして、ASIMOがあるとして、はたしてその延長上にあるものとしてふさわしいのかどうかといったことが今後議論されていくんだろうと思います。たとえば、ものすごく実用的なロボットが出て来たとして、それをASIMOと呼ぶのかというと、そこは議論があるところだろうと思います。
――実用的なロボットというと、どういうものでしょうか。たとえば福島第一原発の事故後には、御社でもASIMOの部品をバラして組み直すことで「作業アームロボット」をお作りになって発表されていました。ああいったロボットのことでしょうか?
ホンダ 建部氏 そうですね、ああいうものが「ASIMO」と呼ばれるかどうかですね。
ホンダ 建部氏 ASIMOの大きな資産は、スペック上のものだけではないと思います。以前はありました、ですが今なら、たとえばBoston Dynamics社のロボットと比べてどうなのかといった話も当然あると思います。
ただ一方で、もう1つ、ASIMOの持つ大きな資産は、エモーショナルな部分だと思います。人と交わるときの感情のような部分です。弊社が目指すロボットは「3E(Empower、Experience、Empathy)」と申しまして、人に寄り添うロボットを目指しています。人からこわがられたりするのではなく、つねに人によりそうものを目指しています。そういったときに福島のアームロボットはスペックを重視したロボットですね。そういったものにASIMOという名前を使うのかどうかは議論になってくると思います。最終的にどうなるかは決まっていません。
――2011年当時、御社はアシスト機器やバイク制御のセンサー類など、ロボティクス技術とその応用製品について「Honda Robotics」という総称をつけて、ロゴも発表されていました。ASIMOの横顔がついていたものです。あれはどうなるのでしょうか?
ホンダ 建部氏 そこは今後、整理していかなくてはならないところだと思っています。
――「R&DセンターX」と「Honda Research Institute(HRI)」の関係はどうなっているんでしょうか?
ホンダ 建部氏 HRIのほうがよりアカデミックな部分です。「R&DセンターX」のほうはより完成品に近いほうです。R&Dでいえば、HRIがR、「R&DセンターX」がDというふうに大まかに思っていただければ結構です。「R&DセンターX」はロボティクスをやる組織ですので、どちらも強化しております。
――いま、ASIMOと呼ばれているあのロボットはどうなるんでしょうか?
ホンダ 建部氏 バージョンアップするかどうかはわかりませんが、基本的に活動は従来どおり継続していきます。
ホンダは今後、どのようなロボットを社会に送り出してくれるのか。期待している。最後に、2018年5月、「ICRA 2018」で公開された動画をご紹介しておく。