イベントレポート
Supermicro、AI向け液冷設備を包括提供へ。Windows版DGXも展示
2026年6月8日 06:13
Supermicroは、6月2日より台湾・台北市で開催されたCOMPUTEX 2026に出展し、AIファクトリー(AIデータセンターのこと)向けソリューションなどを展示した。今回のCOMPUTEXでは、NVIDIAがVera Rubinの大量生産の開始を明らかにしたことで、各社Vera Rubin向けのソリューションを展示したが、Supermicroもその1社で、NVIDIAの「Vera Rubin NVL72」、AMDの「Helios」などAIデータセンター向けのラックを展示した。
また、Vera Rubin NVL72を始め最新のラックは、消費電力の増大により液冷(水ないしは液による冷却)が必須になってきており、Supermicroも液冷ソリューションを展示した。
Vera Rubin NVL72やHeliosのラックを展示
Supermicroは、台湾にとってユニークな位置づけの企業となっている。というのも、同社の創業者であり現在でも社長 兼 CEOを務めているチャールズ・リアン氏は台湾出身だが、Supermicroを創業したのは米国・シリコンバレー(サンノゼ市)で、今も本社は米国に置かれており、同時に主力工場も米国に置かれている。
このため、台湾出身者と米国などのほかの地域の出身者などで経営されており、台湾系米国企業というのが正しい表現になる(同じようなグローバル企業としては、台湾の経営者により米国で創業されたが日本の東京証券取引所・プライム市場に上場しているトレンドマイクロがある)。
Supermicroは、かつてはチャネル向けのマザーボード事業なども行なっていたが、現在はサーバー事業に特化しており、NVIDIAのソリューションを提供する企業の1つとして注目を集めている。COMPUTEXにも例年出展しており、今年(2026年)も南港ホール4階にブースを出展しており、各種のAIファクトリーソリューションの提供を行なった。
場所は一般ブースにあるのだが、基本的には招待者のみに公開していた。COMPUTEXでは、近年はSupermicroだけでなく、FoxconnやPegatronといったEMSやODMなどがサーバーソリューションを展示しており、PCのイベントからAIのイベントへと脱皮したCOMPUTEXの今を象徴した展示になっている。
今回Supermicroは、同社のブースに同社が提供しているVera Rubin NVL72のラック、AMDのInstinct MI455Xを搭載したHeliosのラックサーバー、さらにはワークステーションPCとして、NVIDIA DGX Station for Windowsや最近発表された4つのスロットGPUカードが入るXeon 600搭載のワークステーションなどを展示した。
AIファクトリーにはサーバーやラックではなく、データセンター全体を提供する方向へ
もう1つ今回Supermicroが力を入れていたのが、水冷/液冷のソリューションに関する展示だ。既にGB200/300 NVL72などの前世代のGPU世代でも多くのAIファクトリーでは水冷/液冷のソリューションが使われているが、Supermicroが公開している資料によれば、同社のGB300 NVL72のラックでは、最大140kWの消費電力を必要とするという。
Vera Rubinではさらにそれを超える消費電力(同社のWebサイトによればラック1つあたり227 kW)になるため、供給できる電力量も増やさなければならず、そしてそうした電力を消費することによる発生する熱を放熱するために、従来の空冷では排熱処理が追い付かない可能性が高い。そこで、水冷ないしは液冷が必須だと考えられている。
今AIデータセンターの建設が世界各地で進んでいるが、AIデータセンターを構築するには早くても2年がかかるという。というのも、そもそもGPUのオーダーを出してから納品されるまでに半年以上の時間がかかっているうえに、何よりも水冷のための施設(たとえば水交換機やポンプなど)を持つ建屋を建設しなければならないからだ。
従来データセンターの建設に関わったことがある建設業者だったとしても、水冷は初めてで、そのノウハウもない可能性がある。また、仮に水冷装置を持っている業者にお願いしても、水冷装置が設置された後のメンテナンスや、仮に水漏れなどの事故が起こったときの責任の所在などが曖昧になりかねない。実際、AIデータセンターを検討している事業者からはそうした声が大きかったという。
そこで、Supermicroではそうした水冷の装置も、ラック装置と一緒に納品し、同時に設置までを担当するという。それにより、建屋の建設を担当する建設事業者は、Supermicro側の仕様通りに建屋を建てる、それによりそうしたノウハウがない建設事業者でも短期間にAIデータセンターを建設することが可能になり、AIファクトリーを建設するクラウドサービス事業者やIT事業者にとっても、稼働までのリードタイムを短くすることができるという。
こうしたトレンドは別にSupermicroだけがそうしているわけではなく、今回NVIDIAが発表した「NVIDIA DSX AI Factory Platform」も同じような考え方で、ラックサーバーだけでなく水冷の設備や施設の設計データなども含めてNVIDIAから提供することで、AIファクトリーまでの稼働開始までのリードタイムを短くするのがその狙いになる。
3つの方式の液冷、水冷を提供するSupermicro
今回Supermicroはそうした水冷/液冷システムの模型を展示し、「Dry Cooling Tower」、「Water Cooling Tower」、「Chiller」の3つのソリューションが提供可能であると説明した。
Dry Cooling Tower(ドライ冷却塔)は、空気と液体の間で熱交換を行なう仕組み。パイプを通じて熱交換器までお湯を送り、大型のラジエーターになる熱交換で冷やされて、再びサーバー機器に戻される。この時液体は空気と直接接触しないため、ずっと同じ液体や水が循環する形になり、水の供給量が十分ではない地域に適した方式となる。砂漠などに建設されるデータセンターなどに適している。
Water Cooling Tower(ウェット冷却塔)は、蒸発冷却方式のことで、水の一部を蒸発させることで、残りの水を冷却する形になる。このため、常に水を供給することが可能で、日本のような水資源が十分な地域のデータセンターに適している。
Chiller(チラー)は、冷凍機などを利用して冷却する方式で、非常に簡単に言えば電気により冷却している冷凍庫の中に液体を通すことで液体を冷却する。天候などに左右されず確実に冷却できるが、その反面電気代はかかるため、そのコストが問題になる。このため、Chillerで冷やす場合でもWater Cooling Towerと組み合わせて、冬場はWater Cooling Tower側で多めに冷却し、夏場はChillerでの冷却を増やして対応するというハイブリッド方式を採用することが多い。
Supermicroでは、これから販売を開始するVera Rubin NVL72のラックの裏側ドアに、液体が内部を通過するヒートシンクを取り付けており、それによりCPUやGPUを通過する液体と接しているヒートシンクによって冷却するだけでなく、ラック全体を冷やすような工夫をしている。そうした設計になっているのも、Vera Rubinになって消費電力が増えていることに対応するためだと説明した。




































