イベントレポート
競合比40%高速で消費電力は半分。Intel新GPU「Arc G3」が示す圧倒的な自信
2026年6月3日 10:17
Intelは、6月2日(台湾時間)に開幕したCOMPUTEX 2026に参加し、CEOのリップ・ブー・タン氏が午後に行なわれた基調講演に登壇した。
この基調講演にはタン氏のほかにも、5月に着任したばかりのIntel上席副社長兼クライアントコンピューティング・フィジカルAI事業本部事業本部長のアレックス・カトージアン氏、昨年(2025年)の9月に着任したIntel上席副社長兼データセンター事業本部事業本部長ケボーク・ケシシアン氏が登壇し、Intelの新方針などについて説明した。
この中で「Core Ultraシリーズ3」や、先日発表されたばかりの「Arc G」シリーズなどのクライアント向け半導体について再説明し、搭載デバイスなどを公開した。また、日立、Foxconn、Siemensなどと協業して新しいAIのユースケースに対応するソリューションを提供していくほか、推論に適したAIアクセラレータ「RDU」を提供するSambaNovaとの提携強化を明らかにし、Xeon 6と組み合わせて分散型推論システムを構築し、実働する様子を公開した。
若かりし頃に台湾半導体産業の立ち上げに協力したIntelタンCEO、台湾の「里帰り」を喜ぶ
昨年の3月にIntel CEOに就任したリップ・ブー・タン氏は、マレーシア出身だが、家系としては中国系で、「初めて北京語を話すIntel CEOだ」と言うと、詰めかけた台湾の聴衆やPC業界関係者から大きな拍手を受けた。
タン氏は「自分がまだキャリア初期の頃、台湾政府の大臣だったKT・リー氏に呼ばれてベンチャーキャピタルの基盤を台湾に築くことに協力してほしいと言われ、それに取り組んだ。利益の20%は配分するが、損失の20%は分担しないというユニークなモデルで、我々はそれを実現することに成功した。その後TIで働いていたモーリス・チャン氏がITRI(筆者注: 台湾工業技術研究院)に戻り、TSMCが設立された」と述べ、タン氏が若かりし頃、台湾で半導体産業が確立されることを支援したベンチャーキャピタルの設立に関わっていたことを明らかにした。
KT・リー氏は「台湾経済成長軌跡の父」と表現される政治家・経済学者で、TSMCが設立された経緯にも大いに関わったとされている。タン氏は「台湾がシリコンアイランドになっていく立ち上げの時期に深く関わることができた」と述べ、台湾の半導体産業の勃興に関われたことを誇りに思っていると述べた。
タン氏は昨年、台湾におけるIntelが40周年を迎えたことを祝うイベントに参加するためにCOMPUTEX期間に訪台していたものの、COMPUTEX基調講演などには参加しておらず、今回がIntel CEOとしては初めての登壇になる。IntelのCEOになってから14カ月の間に「私は、Intelはエンジニアの会社に立ち戻るべきだと決意した。すべてのエンジニアリング部門のレポートラインを自分に届くようにして、エンジニアリング主導で成功を勝ち取る体制に変えてきた」と述べ、就任してからのIntelは大きく会社の形を変えてきたことを強調し、顧客やパートナーになる台湾のOEMメーカーやODMメーカーなどに、変化したIntelと一緒に新しい未来を作っていこうと呼びかけた。
その上でタン氏率いる新生Intelは「顧客が必要とする半導体製品を提供していく。それは人間のための半導体だけでなく、これからはAIエージェントのための半導体でも。それぞれの領域でCPU、GPU、ASICなどを用途別に最適化していく必要がある」と述べ、業界が必要としている半導体製品を供給していくことが、重要だと表明した。
性能や低消費電力だけでなく、ポートの充実などでプレミアムなノートPC設計に貢献するCore Ultraシリーズ3
続いて、アレックス・カトージアン氏とケボーク・ケシシアン氏の2人の製品事業部のリーダーがIntelの最新製品を説明した。
カトージアン氏は、長年Qualcommの上席副社長としてスマートフォン、PC、XRなどSnapdragonブランドの事業本部長だったが、今年(2026年)4月にQualcommを退社し、5月2日にIntelに加入した。今度はPC向けのCore Ultra、組み込み向けのCore Ultraを推進していくことになり、立場が180度変わることになったため、そのデビュー戦となる今回の登壇は大きな注目を集めた。
カトージアン氏は、Core Ultraシリーズ3、Coreシリーズ3、新しいArc G3などを紹介し、Core Ultraでは300以上のデザインウインを獲得しており、その廉価版で4月に発表したばかりのCoreシリーズ3では70を超えるデザインウインを既に獲得していると説明した。
「ユーザーにとっての理想は、終日バッテリで使えることだし、多くのUSB Type-Cポートが実装されているノートPCだろう。我々のCore Ultraシリーズ3はそれを実現している。我々のゴールは、驚くほど薄く軽くプレミアムな質感と体験を提供していくことだ」と述べ、実際にCore Ultraシリーズ3を搭載したOEMメーカーのノートPC製品を紹介した。
さらに、Arc G3に関しては「競合他社比で40%以上高速で、同じ性能なら消費電力は半分だ。ほぼすべてのAAAタイトルを1080pの解像度で動作させることができ、すべてのタイトルで120fpsを超えるフレームレートを実現している」と、競合他社製品(具体的にはAMDのRyzen Z2 Extremeのことだと考えられる)と比べてArc G3が高い性能を実現すると強調した。
データセンター事業本部長のケシシアン氏は、今回のCOMPUTEXにあわせてIntelが発表したEコアベースで288コアを実現した「Xeon 6+」(開発コードネーム: Clearwater Forest)やPコアベースの「Xeon 6」(開発コードネーム: Granite Rapids)などを紹介し、AI推論環境の実現には優れた性能を持ち、かつ既にデータセンターなどで多数利用されているx86アーキテクチャのCPUが優れた選択だと紹介した。
Foxconn、SambaNova、日立などとの協業に関しての説明が行なわれる
このほかにもタン氏はAI推論向けのラックスケールサーバーの標準デザイン、SambaNovaとの協業で作られたAI推論のための分散型システム、用途別シリコン(Purpose-Built Silicon)、さらに日立との協業などに関して説明した。
AI向け半導体の世界では、もはや半導体を提供するだけでなく、そのサーバー機器やラックなども含めてデータセンターを建設する事業者に提供する必要がある時代だ。
AIモデルを開発するような企業が典型例だが、自社でデータセンターを構築する場合、Dell Technologies、HPE、Lenovo、Foxconnのような機器ベンダーから提供してもらう必要がある。
つまり、ラックが構成済みの状態で機器ベンダーから提供される必要があり、ラックレベルでのデザインを提供することが重要になっている。NVIDIAやAMDといったIntelの競合もそうしたラックデザインを提供しており、Intelもそれに続いた形になる。
Intelのラックスケールデザインは「Rack Scale Blueprints」と呼ばれており、PコアXeon 6ベースの性能重視のエージェント実行環境向け、EコアXeon 6+ベースの密度重視のエージェント実行環境向けという2つのデザインが用意される。
今年に入って発表されたIntelとSambaNovaの協業に基づくソリューションの進化も明らかにされた。AI学習では、いかに速く終わらせるかだけが重視されるため、スループットのみが重視され、基本的にはGPUを利用した処理が行なわれる。それに対してAI推論ではスループットも大事だが、同時に低遅延であることも求められる。
また、推論ではエンドユーザーに提供するという性格上、費用対効果も重視され、現在ではAI推論処理の単位であるトークンの処理を、いかに少ないコストで行なえるかが重視されつつある。そのため、GPUだけでなく、CPU、そしてAIアクセラレーターと呼ばれるAI推論に特化したASICを組み合わせて異種混合なプロセッサで実行されるのが一般的だ。
そうしたAI推論向けアクセラレータの選択として、NVIDIAはGroqを選択し、IntelはSambaNovaを選んだという形になる。今回SambaNova創業者兼CEOのロドリゴ・リアン氏により、IntelとSambaNovaのサーバーがそれぞれ別のデータセンターにある状態で分散的にAI推論処理を行なう様子が公開された。
用途別半導体(Purpose-Built Silicon)では、Googleが採用しているIPU、Ericssonが次世代システムに採用する半導体製品をIntelが開発していることが説明された。
また、日立との協業ではファウンドリツールや量子コンピューティングを含む幅広いソリューションで協業する意向であることが明らかにされ、日立製作所代表執行役執行役社長兼CEOの德永俊昭氏がビデオ出演した。








































