イベントレポート
VLSI回路シンポジウム、低消費AIチップや超高速通信回路などの開発成果を披露
2021年6月15日 09:46
半導体の研究開発コミュティにおける初夏の恒例イベント、「VLSIシンポジウム(VLSI Symposia)」が今年(2020年)も始まった。
「VLSIシンポジウム」は、半導体技術に関する2つの国際学会で構成される。1つはデバイス・プロセス技術の研究成果に関する国際学会「Symposium on VLSI Technology」(「VLSI Technology」あるいは「VLSI技術シンポジウム」とも呼ばれる)、もう1つは回路技術の研究成果に関する国際学会「Symposium on VLSI Circuits」(「VLSI Circuits」あるいは「VLSI回路シンポジウム」とも呼ばれる)である。
すでにVLSIシンポジウムのプレビューの記事で述べたように、今年のVLSIシンポジウムは昨年(2020年)に続き、バーチャルカンファレンスとなった。またVLSIシンポジウムを構成する2つの国際学会の中で「VLSI技術シンポジウム」の概要は、すでにレポートした。本レポートでは「VLSI回路シンポジウム」の概要を紹介する。なお以降はVLSI回路シンポジウムを「回路シンポジウム」と表記するのでご了承願いたい。
日本の投稿件数は2006年以降で最小に凋落
回路シンポジウムの発表講演を目指して投稿された論文の数は、300件である。今年は本来であれば日本開催の年となる。過去の京都開催年を見ていくと、2019年が299件、2017年が320件、2015年が348件、2013年が392件、2011年が409件となっていた。最近は減少傾向が見える。
発表講演に選ばれた論文の数は102件である。採択率は34%で、前年の34%と変わらず、2019年の36%からは2ポイント低下した。
投稿論文の件数を国/地域別に見ると、米国(およびカナダ)が78件で最も多い。前年でも米国がトップだった。ただしこのとき投稿件数は116件で、件数そのものは減少傾向にある。
米国の次は韓国が72件と多い。韓国は前年も74件と高い水準を維持した。3位は台湾で42件を数える。4位は欧州が36件、5位は中国が31件と続く。日本はわずか12件である。2006年以降では最も少ない投稿件数となった。なお2006年の時点では日本の投稿件数は67件で、米国に次ぐ2位の件数を誇っていた。
国/地域別の採択論文数では日本は5位
発表講演に選ばれた論文の数を国/地域別に見ると、投稿論文の件数と同様に米国がトップ、韓国が2位を占めた。米国の採択件数は35件、韓国の採択件数は28件である。その後は6件で台湾と中国が並ぶ。日本は5件にとどまり、5位となった。
なお採択件数の統計は欧州をまとめておらず、国別で表記している。公表されているベルギー(4件)、スイス(3件)、アイルランド(3件)を合計すると10件となり、投稿件数と同じカウント方法だと欧州は3位以上になることが分かる。
発表機関別の採択件数はトップがKAIST、2位はSamsungと韓国勢がトップ2を占める
採択論文の数を発表機関別に見ていくと、トップはKAIST(韓国科学技術院)で14件に達する。2位は8件のSamsungで、韓国勢がトップ2を占めた。3位はIntelとミシガン大学(University of Michigan)が7件で並ぶ。5位はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)と清華大学(Tsinghua University)である。採択件数はいずれも4件。
日本からは東京大学が2件、東京工業大学が2件、早稲田大学が1件の発表を予定する。残念ながら、日本企業からの採択論文はゼロ件となった
技術分野別の投稿件数は「プロセッサ関連」がトップ、「バイオ」と「電力変換」が続く
技術分野別の投稿件数を見ると、「(1)プロセッサ、SoC、量子コンピューティング、機械学習」が48件で最も多い。それから「(4)バイオメディカルとシステム」と「(6)電力変換回路」が35件で続く。その後は「(3)メモリの回路とアーキテクチャ、インタフェース」が34件となっている。
近年の目立った動向としては、データ変換回路の投稿が漸減してきたことがある。一方、メモリは2019年に18件まで落ち込んだものの、その後は回復傾向にある。
技術分野別の採択件数は「プロセッサ」がトップ、「センサ」が2位
同じく技術分野別の採択件数を見ると、「プロセッサ・アーキテクチャ」が18件で昨年と同様に最も多い。次いで多いのは「センサ、ディスプレイ」で12件、それから「バイオメディカル」が11件と続く。その後は「メモリ」が10件、「有線通信」が9件となっている。
日本の採択論文を技術分野別に見ると、「無線通信」で東京工業大学が2件の発表を予定しているのが目立つ。
企業対大学の投稿件数では大学の投稿が大半を占める
企業および研究機関と大学の投稿件数を比較すると、回路シンポジウムは過去からずっと、大学からの投稿が多い。企業および研究機関の比率が少ない。それでも企業側の投稿は2015年までは30%を超えていたものの、2016年以降は30%を割り込み、2021年は22.7%と2006年以降では最も少ない比率となっている。