イベントレポート

視野角と解像度が2倍に、SoCがSnapdragon 850になったHoloLens 2

MicrosoftのHoloLens 2

 Microsoftは、2月25日(現地時間)からスペイン王国バルセロナ市で開催されるMWC 19 Barcelonaに先立って、2月24日の夕刻からMWC 19の会場に設置された同社ブースで記者会見を行ない、同社が2016年に発表したMRデバイスHoloLensの後継となるHoloLens 2を発表した。

 HoloLens 2は視野角および解像度が倍になり、SoCがSnapdragon 850に変更され、筐体もカーボンになるなどして軽量化が図られており、Microsoftによれば快適性は3倍になっているという。

レンズとSoCが強化され、表示性能と処理能力が向上しているHoloLens 2

HoloLens 2

 初代HoloLensは2016年に行なわれたBuild 16で発表された、MicrosoftのMR(Mixed Reality)デバイスで、HoloLens 2はその後継製品となる。

全景
背面にはバンドの長さを調節するダイヤルが
【表1】初代HoloLensとHoloLens 2の違い(Microsoftの資料より筆者作成)
HoloLensHoloLens 2
レンズシースルーシースルー
解像度(アスペクト比)2xHD(16:9)2x2K(3:2)
視野角23ピクセル/1度あたり47ピクセル/1度あたり
SoCIntel 32ビットプロセッサSnapdragon 850
HPUHPU 1.0第2世代HPU
メモリ2GB非公開
ストレージ64GB(フラッシュ)非公開
深度センサー1Azure Kinect sensor
IMU1加速度計、ジャイロスコープ、磁気センサー
カメラ1200万画素(静止画)/HD(動画)800万画素(静止画)/1080p-30fps(動画)
マイク4チャネル5チャネル
スピーカー内蔵内蔵
人間の動き検出Spatial sound2つの手認識
Gaze Tracking10本の指認識
ジェスチャーインプットリアルタイム瞳追従
ボイスサポート自然言語によるボイスコントロール
Wi-FiIEEE802.11acIEEE802.11ac
BluetoothBluetooth 4.1 LEBluetooth 5
バッテリ駆動時間(アクティブ時)2~3時間2~3時間
USBMicroUSBUSB TypeーC/PD対応

 HoloLens 2のスペックで最も大きな違いは、ディスプレイとなる2枚のレンズの解像度と視野角が2倍になり、SoCが初代ではIntelの32bitプロセッサ(公式には言及されていないがAtomプロセッサ)が採用されていたのに対し、QualcommのSnapdragon 850に変更されていることだ。

解像度と視野角が2倍に
従来モデルでは1度あたり23ピクセル、HoloLens 2では1度あたり47ピクセルに
従来モデルでのARの見え方
HoloLens 2でのARの見え方

 初代HoloLensでは両方のレンズがそれぞれ16:9アスペクト比のHD(具体的な解像度は未公開)になっていたが、HoloLens 2では両方のレンズが3:2アスペクト比の2Kディスプレイとなっており、高精細化されている。

 さらに視野角が、従来のHoloLensでは1度あたり23ピクセルだったのに対して、HoloLens 2では1度あたり47ピクセルになっていて、表示できるARがより大きくなっている。

 そうした表示周りと併せて、SoCはQualcommのSnapdragon 850へと変更されている。Snapdragon 850は、スマートフォン用の2018年モデル向けのハイエンドSoCとしてQualcommが投入したSnapdragon 845のPC向けバージョンとなる。Arm版のWindows 10を搭載したPC向けに、845に比べてCPUやGPU、キャッシュメモリなどが強化されている。

 なお、メモリやストレージの容量は現時点では明らかになっていない。初代と同じように、HPU(Holographic Processing Unit)を搭載しており、ホログラフィックの表示時にアクセラレータとして利用することができる。HoloLens 2ではこのHPUも第2世代へと進化しているが、具体的にどの程度性能が上がっているのかなどは公表されていない。

快適さは3倍に
Windows Helloの虹彩認証に対応しており、被るだけで認証が完了

 筐体はカーボン製に素材が変更されており、SoCの変更と併せて軽量化が実現されているとMicrosoftは説明しているが、こちらもどの位軽くなったのかは明らかになっていない。

 また、細かなところでは、初代ではUSBポートはMicro USBになっていたが、HoloLens 2ではUSB Type-Cに変更され、かつUSB PD(Power Delivery)にも対応したため、USB PDの急速充電の機能などを利用できる。

HoloLens 2は10本の指の動きを検出可能ピアノの演奏もできる、Azureとの連携も強化

指の動きを検出できる

 HoloLens 2で人間の動きを検出する機能も強化されている。具体的には2つの手、そして10本の指の動きを検出することができる。また、自然言語を利用した音声制御も用意されている。

ピアノを弾く様子。左上のMRをマージしていた画面を見ずにやってる本人を見るとかなり面白い人にしか見えないが……
手の動きも検出しているので、バーチャルな鳥を手の上になども可能
音声コントロールにより、メールクライアントを操作してメールを送っているところ

 これにより、たとえばピアノのような10本の指の動きを検出しないと弾けないようなアプリケーションを作ることが可能になっている。発表会ではARとして表示されているピアノを演奏したり、音声認識によりメールアプリを起動して、メールを作成し、送信まで音声だけで操作することが可能になっていた。また、仮想空間にある物体を持ち上げて移動したり、元の場所に戻ったりなどが可能になっている。

Dynamics 365 Guideと連携して動作する
マニュアルをDynamics 365 Guideと連携して表示させてエンジンをメンテナンス

 Microsoftがパブリッククラウドサービスとして提供しているAzureとの連携も強調された。具体的にはMicrosoft Dynamics 365 Guideというクラウドサービスと連携して動作することが可能で、デモではDynamics 365 Guideとの連携によりAR空間の表示されるマニュアルのような画面を参照しながら、飛行機のエンジンをメンテナンスする動画が公開された。今回MicrosoftはこのDynamics 365 GuideとHoloLens 2をセットで利用するサブスクリプション契約を用意しており、月額125ドル(税別)で利用することができる。

Azure Remote Rendering
Azureでレンダリングしている3DデータをHoloLens 2で表示しているところ

 このほかにもAzureとの連携サービスとしては、Azure Remote Renderingなどが紹介された。前者はAzureのクラウド側でコンテンツをレンダリングして、HoloLens 2に動画ストリーミングで表示するサービス。強力なGPUを持たないHoloLens 2でもストリーミングであれば高精細なモデルも表示可能でCADで作成した3Dデータを、Azure側でレンダリングして、HoloLens 2で見るなどのアプリケーションが考えられる。今回はCADで作成したエンジンのデータをAzure側でレンダリングして、HoloLens 2で再生するというデモが行なわれた。たとえば自動車メーカーのMBD(モデルベース開発)で作成したパーツを、Azureでレンダリングしながら遠隔地にいるエンジニアと共有しながら議論したり、そうした用途に使えるだろう。

HoloLensのMRエコシステムはオープン化を目指すとMicrosoft

HoloLens 2

 今回はMicrosoftのデモだけでなく、パートナーとの共同デモに時間を割いた。AR/VRのソリューション企業であるSpatialとのデモでは、Spatialが作成したアプリケーションが利用してデモが行なわれた。これは遠隔地にいるHoloLens 2を利用しているユーザーのホログラムを仮想空間に登場させるというもので、遠隔地で同じようにHoloLensを利用しているユーザーと共同作業を行なうことができる。

Spatialの遠隔地の相手をホログラフィックで表示して協業するデモ
Trimble Connect for HoloLens、HoloLens 2をヘルメットにカスタマイズ。

 また、HoloLensのカスタマイズプログラム(HoloLens Customization Program)も用意されており、Trimbleが建設現場向けのヘルメット一体型のHoloLens 2となるTrimble Connect for HoloLensを発表したと明らかにした。今後同じように、特定業務向けのカスタマイズされたHoloLens 2をパートナーと協力して取り組んで行くと、Microsoft 技術フェロー アレックス・キップマン氏は説明した。

Microsoft 技術フェロー アレックス・キップマン氏
MRはオープンなプラットフォームを目指す

 キップマン氏は「我々はMRをオープンなプラットフォームにしたいと考えている。そのオープン化に向けて3つのオープン化を実現する。1つはストアのオープン化、2つめはWebブラウザのオープン化、3つめは開発ツールのオープン化だ」と述べ、HoloLensを中心としたMRプラットフォームを開かれたアーキテクチャにしていくと強調した。

サードパーティのストアが許可される

 1つめのストアのオープン化では、サードパーティのアプリストアが認められることを明らかにした。これまではMicrosoft StoreがHoloLens向けの唯一のアプリストアだったが、今後はMicrosoft以外のベンダーであってもHoloLens向けにアプリストアを開設してアプリを配布することができるようになる。

ブラウザのオープン化と開発環境のオープン化を実現

 2つめのWebブラウザのオープン化に関してはMozillaがFirefox RealityというWebブラウザをHoloLens 2に提供していくと明らかにした。これまでHoloLensではMicrosoft Edgeが唯一のブラウザになっていたが、今後はFirefox Realityを代わりに使うことができる。Mozillaは12月にハワイで行なわれたSnapdragon SummitにおいてArmネイティブに対応したFirefoxの提供をすでに明らかにしており、今回の発表はその延長線上にある話だと考えられる。

Epic Games CEO ティム・スイーニー氏(右)、Epic GamesはUnreal Engine 4をHoloLensに提供

 3つめの開発ツールのオープン化ではEpic GamesのCEO ティム・スイーニー氏がステージによれば、Epic GamesのUnreal Engine 4をHoloLens 2向けに提供することを明らかにしている。これにより、Unreal Engine 4を利用して開発している3DゲームなどをHoloLens 2に移植しやすくなると考えられる。

HoloLens 2のキット

 価格に関してはすでに述べたとおり、Dynamics 365 Guideとセットでのサブスクリプション契約では月額125ドル(税別)、企業向けのHoloLens 2の売り切りに関しては3,500ドル(税別)という価格が明らかにされ、日本を含むグローバルに今年中に出荷が開始される計画で、すでに米国では予約が開始されている。