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HoloLens 2を体験。10本指ジェスチャと視線追跡で現実さながらの操作性に一歩前進

HoloLens 2

 日本マイクロソフト株式会社は、ザ・プリンス パークタワー東京にて5月29日から30日までの期間で開発者向けイベント「de:code 2019」を開催し、各種展示や基調講演を実施した。29日に行なわれたMicrosoft自身の基調講演については別記事(MRヘッドセット「HoloLens 2」は月額99ドルから購入可能に)を参照されたい。ここでは2019年中に提供予定とされているHoloLens 2を実際に体験してきたので、その内容をお伝えする。

初代HoloLensから大きく進化。HoloLens 2はより“現場”寄りの設計に

HoloLens 2を操作している様子。手のひらを上に見せると手首部分に設定を呼び出すためのWindowsボタンが表示される
後ろにある円形部分を時計回りに回すとバンドが締まる
バンドの出来や重量バランスがよいためか、使用中にずれることはなかった
横から見た状態
バイザーを上げた状態

 日本マイクロソフトは今回のde:code 2019で、HoloLens 2体験用ブースを設置。参加希望者が詰めかけ、抽選が行なわれるほど活況を呈していたようだ。初代HoloLensでは視野角の狭さがユーザーからの大きな不満となっていたが、今回のHoloLens 2では視野角が2倍に広がり、解像度もHDから2Kサイズに拡張。画面比は16:9から3:2へと変更されている。

 また、動作検出機能として、左右合わせて10本の指を検出するジェスチャ機能を備え、レンズ状に投映された仮想的な物体を両手でつかんで運んだり、回転させたりといった現実的な操作が可能になったほか、アイトラッキング(視線追跡)機能も実装され、ユーザーが物体を注視しているときとそうでないときで、それぞれ違った挙動を見せるといったこともでき、直感的でインタラクティブなユーザー体験を演出できるようになっている。

 HoloLens 2のスペックについて知りたい方はMWC 19の記事(視野角と解像度が2倍に、SoCがSnapdragon 850になったHoloLens 2)をご覧いただきたい。


 HoloLens 2の体験デモは約10分ほどと短いものであったが、初代HoloLensからの改善具合を十分に感じられるものだった。まず装着からだが、全体的な重量バランスが見直されたためか、装着感はかなりいい。HoloLens 2を付けたまま下を向いたり上を向いたりといった動作をしても、重量でずり下がってくるといったことはなかった。

 初回の装着時にはキャリブレーションのセットアップが行なわれ、このさいにアイトラッキングの調整が行なわれる。といっても画面上の上下左右に表示される宝石のようなものを首を動かさずに目で追うだけですみ、おそらく30秒もかかっていなかった。

 セットアップではダイアログが表示され、WindowsのUIのように「進む」ボタンを押して進めていくかたちだが、空中に浮いているダイアログのボタンは指先で押し込めるようになっており、非常に直感的である。この指を使った操作方法は最大で10本の指を認識できるようになったため、初代HoloLensとは様変わりしている。デモでは仮想的に表示されたタービンのようなものをさわることができたが、両手もしくは片手でつかんで位置を変えたり、回転させるなど、まさに実際に物体にさわるように操作が行なえる。

 また、仮想空間ならではの表現として、物体上で両手を握り込んで、ピンチアウト操作のように外に広げて拡大表示することも可能だ。拡大/縮小は片手でも行なうことができ、そのさいは物体の端に表示される枠をつかんで広げたりすればよく、片手に道具を持っている状態でも操作を継続できるようになっている。

筆者が使っているところ。目の前に表示されているタービンを両手で持って動かそうとしている
表示されているボタンを押し込んでいる
設定メニューを呼び出しているところ

 アイトラッキング機能のデモでは、表示されている4つの宝石のいずれかを見つめることで、その宝石が強調表示され、次に「POP」と言葉を発することでその宝石がはじけるという内容を体験できた。このデモにはなかったが、眼球を動かすことでスクロール動作をさせるといった使い方もできるようで、利便性はかなり高そうだ。手だけでなく、目と声を組み合わせた操作が行なえることで、汎用性が大きく向上していると言えるだろう。

 このほか、バイザーを上部に上げられるようになり、HoloLens 2を装着したままでの肉眼視が容易になっていることも大きな改善点だ。さらにHoloLens 2本体は前後で分割できる構造なため、初代で要望が多かったというヘルメットへの組み込みも可能になっており、以前のようにヘルメットを被った状態ではHoloLensが使えないといった現場での使い勝手を損なっていた部分が改良されている。

 今回のデモでは残念ながらディスプレイ部分が試作段階だったとのことで、表示されている映像の色味が乏しく、立体感に欠けてしまっていたが、改修された製品版を使えば大きく印象が変わっていたに違いない。ただどちらかと言えば、表示面の改善よりも、表示物に対するアプローチの仕方が現実に近いものになったことで、HoloLensの使い勝手は大きく向上したと言えるだろう。

 日本マイクロソフトの担当者によれば、HoloLens 2の開発は順調に進んでおり、2019年中に世界同時にリリースできるとのこと。製品版でまたどれだけ品質を上げられるのか期待して待ちたい。

初代HoloLens(左)と、HoloLens 2
HoloLens 2の額当て部分は柔らかめの生地になっており、圧迫感はない
後頭部はゴム製と思われるサポーターがあり、しっかりと頭を受け止める
右側面に音量調節ボタン
左側面は輝度の調整ボタン
背面部に電源ボタンと、充電用のUSB Type-Cポートがある
バイザーを上げられるようになり、HoloLensを外さずに肉眼視ができる
バイザーを支えるヒンジが見える
左右のバンド部分にスピーカーが埋め込まれている
額当ては取り外し可能