イベントレポート

AMD、7nmプロセスルールで製造されたVegaのデモとEPYCを参考展示

~7nm VegaはRadeon Instinctとして今年後半に、EPYCは2019年にリリース予定

AMDの7nmプロセスルールで製造されるVega

 AMDは、台湾・台北で開催されているCOMPUTEX TAIPEIの2日目にあたる6月6日(現地時間)に、台北市内の会場で記者会見を開催し、同社の新製品などに関して説明した。

 このなかでAMDは32コア/64スレッドの第2世代Ryzen Threadripperを発表した(詳細は別記事:【詳報】AMD、32コア/64スレッドの第2世代Ryzen Treadripperを第3四半期に投入参照)が、その記者会見の後半では同社が開発中の7nmプロセスルールで製造される製品についての発表を行なった。

 1月に行なわれたCESで今年(2018年)の後半にRadeon Instinct投入することを明らかにした(別記事:AMD、HBM2搭載のモバイルGPU「Radeon Vega Mobile」参照)7nmプロセスルールで製造されるVegaを初めて公開し、3Dレンダリングソフトウェアによりリアルタイムに動作している様子をデモした。

 また、7nmで製造されるEPYCに関しても初めて言及し、すでに7nmで製造されたEPYCが同社のラボで動作しており、来年(2019年)には出荷できる見通しであると明らかにした。パッケージに入った状態でのサンプルが公開されたのも初だ。

AI開発に新しい選択肢をもたらす7nmで製造されるVega、すでにサンプル出荷を開始

 AMD 上席副社長 兼 Radeon Technology事業本部 エンジニアリング担当 デビッド・ワン氏は、同社がRadeon Instinctとして今年後半に製品発表を予定している、7nmプロセスルールで製造されるVegaに関してのアップデートを行なった。

 同社のRadeon Instinctは、プロフェッショナル用ないしは深層学習向けとされるGPU。現時点で同社は深層学習用のソリューションを持ち得ていないが、これはソフトウェアの開発環境が整っていないためだ。

AMD 上席副社長 兼 Radeon Technology事業本部 エンジニアリング担当 デビッド・ワン氏
AMDのGPUロードマップ、1月のCESで発表されたものと同じだ
7nmプロセスルールのメリット、密度が倍になり、性能も倍になる
7nmで製造されるVega

 しかし、AMDはすでにRadeon Open Ecosystem(ROCm)と呼ばれる深層学習/機械学習向けの開発ツールを発表しており、これを利用することで、TensorFlowやCaffeなどの一般的な深層学習/機械学習向けフレームワークとセットで利用して、深層学習/機械学習の学習や推論を行なうさいに利用できる。有り体に言えばAMDのGPUを利用して、NVIDIAのGPUの代わりに同じような高い処理能力で深層学習/機械学習を行なえるようになるわけだ。

Radeon Open Ecosystem(ROCm)
Radeon ProRender

 また、Radeon Instinctではそうした深層学習/機械学習での演算だけでなく、Radeon ProRenderと呼ばれるレンダリングツールを利用して、Cinema 4DやMODOなどのレンダリングソフトウェアでレンダリングできるほか、プラグインを利用することで、MAYA、3DS MAX、Solidworksなどでもレンダリングできる。こちらも現状ではNVIDIAのQuadroが非常に強い市場になっており、その市場を立て直すという意味でもAMDにとって戦略製品となる。

世界初の7nmで製造されるGPUのデモ
CINEMA 4Dでのレンダリング

 今回AMDが公開したのは、現在は14nmプロセスで製造されているVegaを7nmプロセスに微細化した製品で、Radeon Instinctとして今年(2018年)後半にリリースされる予定になっている。CINEMA 4Dを利用したデモでは、オートバイのモデルをリアルタイムにレンダリングする様子を問題なく確認することができた。

7nm Vegaを手に持つAMD 社長 兼 CEOのリサ・スー氏
サンプル出荷はすでに開始されており、今年後半に発表

 AMD 社長 兼 CEOのリサ・スー氏によれば7nmのVegaはすでにサンプル出荷を開始しており、予定どおり今年の後半に発表する予定だと述べた。

Intelに先駆けて7nmプロセスルールで製造されるEPYCを2019年に投入

AMDが公開した7nmで製造されたEPYC、ヒートスプレッダがついていたためダイは確認できず

 AMDはもう1つの7nm製品に関しても言及した。それが7nmのZen2ベースの次世代EPYCだ。AMDのEPYCはじょじょに顧客を増やしており、先週はネットワーク機器最大手のCiscoがEPYCベースの「Cisco USC(Cisco Unified Computing System)」を先週発表したほか、COMPUTEX TAIPEIのタイミングに合わせてHPE(Hewlett Packard Enterprise)が「HPE Proliant DL325 Gen10」という1Pサーバーを発表しているし、中国のTencentも自社のクラウドサービス向けにEPYCを扱うことを発表した。

CiscoがEPYCベースのCisco USC (Cisco Unified Computing System)を先週発表
HPE(Hewlett Packard Enterprise)がHPE Proliant DL325 Gen10を発表
Tencentがクラウド向けのEPYCを提供

 そのEPYCの成功を次につなげる製品が、7nmプロセスルールで製造される次世代EPYC。スー氏によれば、7nmプロセスルールのEPYCはすでに同社の開発ラボで動作しており、今年の後半にはサンプル出荷が可能になる。そして2019年には製品を投入する計画になっている。

 x86サーバー市場で競合しているIntelは、次世代のサーバー向けCPUとなるCascade Lake-SPも14nm世代にとどまることが明らかになっており、この予定でいくと、歴史上初めてAMDがサーバープロセッサの製造プロセスルールでIntelに先行することになり、競争の構図が変わってくる可能性があると言えるだろう。

7nmで製造されたEPYCを手に持つAMD 社長 兼 CEOのリサ・スー氏
すでに開発ラボでは動作しており、今年後半にサンプル出荷、来年製品発表予定