キングソフト株式会社の子会社であるMobile In Style株式会社は、Androidベースの7型タブレット端末「eden TAB」を2月17日よりオンライン直販で予約開始し、2月25日に出荷する。価格は29,800円。また、量販店でも25日より同時発売する。
eden TABは2011年12月に発表された、Androidをベースとした7型のタブレット端末。2012年1月より順次発売とされていたが、今回、Wi-Fiモデルの正式発売日が決定した。
主な仕様はCPUがSamsung S5PC210(1.2GHzデュアルコア)、メモリ1GB、ストレージ16GB、1,280×800ドット(WXGA)表示対応7型液晶、Android 2.3.3を搭載。OSは、4.0へのアップデートが予定されている。
ただし一般的なAndroidタブレットとは異なり、Googleから正式認証が下りていないためAndroid Marketは用意されず、関連会社であるACCESSPORTが提供する独自のマーケット「Tapnow Market」を利用してソフトウェアのインストールを行なう。搭載するコンテンツやアプリなどから広告収入を得て、本体の価格を抑えた。
発売日の決定に伴い、Mobile In Styleは都内で製品発表会を開催し、製品の特徴を説明したとともに、低価格で実現した理由や開発秘話などを語った。
●製造はXiaomiと提携、広告収入モデルで低価格を実現
下浩子氏 |
発表会の冒頭では、同社代表取締役社長の下浩子氏が、Mobile In Styleの概要を説明。同社はキングソフトの子会社として、2012年1月5日に設立。中国で最も注目されているAndroidスマートフォン企業である、北京小米科技有限公司(Xiaomi)と資本/事業提携を行ない、今回のeden TABを開発した。
そのXiaomiであるが、2010年3月に設立された新興企業で、2011年にリリースしたスマートフォン「M1」で、中国のAndroid市場に旋風を巻き起こした。M1の特徴は、ハイスペックでありながら、Androidをベースとした独自OS「MIUI」を採用、そして1,999元(約24,000円)という破壊的な低価格を実現した点。合計4回の予約販売を行なったが、74時間で100万台完売したという。
今回、Mobile In Styleは、Xiaomiと技術の相互供与、OSやソフトウェア面での連携や支援、一部部品の共同調達、同じOEM工場の生産による品質管理/ノウハウ共有を行なった。今後は、日本発のeden TABの中国市場投入と、中国初のM1の日本市場投入も目論むとしている。
2012年1月5日に設立したMobile In Style | Xiaomiとの連携 | Xiaomiの概要 |
Xiaomiがリリースし、中国で大ヒットしたM1 | Xiaomiの端末投入により、中国国内シェア4位を獲得 |
日本発のeden TABの中国投入、中国発のMIの日本投入も図る | キングソフトの強み |
沈海寅氏 |
続いて、同社取締役の沈海寅氏が、eden TABの誕生秘話や、製品特徴について説明した。
キングソフトは広告収益モデルを採用することで、“無料”を実現したウイルス対策ソフトウェア「Kingsoft Antivirus」を、2006年に日本に投入した。今回同社は“無料”のハードウェアのビジネスモデルを確立することができないかと討論した結果、開発に踏み切ったという。
なお、本製品は本体価格を抑えた代わりに、広告による収益モデルを築くが、プリインストールのアプリケーションによる広告アフィリエイト(一例としてDHCやニッセンの通販アプリ)、および今後展開予定のソフトのレベニューシェアによって実現。沈氏は「ユーザーが普段使っているだけで自然に弊社に利益があがるようになっている」とした。
検討当初は、スマートフォンも考慮したが、スマートフォンの分野では既にアップルやサムスンなどの強豪がおり、投入は難しいと考えた。しかしながらその一方でタブレット分野においては、iPadのみが独走している状態であり、Samsungなど各社からAndroid搭載端末が出ているものの、成功を収めているとは言いがたい現状だという。そこで同社はこの分野に向けて、eden TABを投入することを決めたという。
企画の段階で、「タブレットを作るなら、自分も使いたいタブレットを実現したいと思った」という。核心的な要素としては、速いこと、品質が良いこと、デザインが良いこと、携帯しやすいこと、軽いこと、スタイリッシュであること、カッコイイこと、そして低価格であることなどを挙げ、実現に向けて製品を開発した。
デザイン面では、「iPadのような“芸術品”の域と、市場にありふれている“工業品”の間」を目指したという。世界トップクラスのデザイナーと協業しながら、さまざまなフォルムを検討し、最終的にはシルクや真珠、そして金属を彷彿とさせるようなデザインを採用した。
キングソフトからタブレット端末をリリースする理由とは | 無料のハードウェアビジネスモデルの実現 |
使いたいタブレットの企画 | “芸術品”と“工業品”の間を目指した |
さまざまなデザインを検討 | 決定したデザイン | デザインのコンセプト |
そのため、背面は比較的すっきりしているほか、本体左側面にはボタンやインターフェイス類は一切設けなかった。よく使う電源/音量/回転ロックボタンは本体右側に、そしてmicroSDカードスロットやMicroUSB端子、Mini HDMI端子などのインターフェイスを本体底面に集中させ、シンプルなデザインにしたという。
また、幅は118.8mm、重量は330gと小型軽量で、女性ユーザーでも片手で持てるサイズ、重さに抑えたのも特徴。この横幅は、男性のスーツの内ポケットにも入るサイズだという。
本体背面はシンプルなデザイン | 本体右側面にボタン類を集中 | 本体上面はイヤフォン端子のみ |
本体底面にインターフェイスを集中 | 軽量と薄型化の実現 | 女性でも使いやすいサイズと軽さ |
スーツの内ポケットに収まる横幅 | パッケージもこだわってデザインしたという |
続いてスペック面についても、性能、表示、カメラ、センサー、バッテリ、ソフトの6つの面でこだわった。
CPUについては、SamsungのS5PC210を採用し。1.2GHzのデュアルコアCPUにより、Samsungの比較的新しい端末「Galaxy Note」に肩を並べる速度を実現したという。また、1GBのLPDDR2、16GBのeMMC、最大32GBまでサポートするmicroSDHCカードスロットなど、ほぼ最新のスペックとなっている。発表会では、「AnTuTu Benchmark」の結果が引用され、6,340という高スコアをマークしたことをアピールした。
表示面においては、CHIMEI製の1,280×800ドット(WXGA)表示対応7型ワイド液晶を採用。現時点においてCHIMEIの中では最高解像度のモデルに位置し、動画やゲーム、電子書籍などの表示に好適としている。
センサーや通信面においては、Wi-Fi、Bluetooth、HDMI出力、GPS、三次元加速度センサー、光量センサー、接近センサー、電子コンパス、ジャイロセンサーなど、Androidで必要とされる全てのものを内蔵。「ゲームや地図アプリなど、使えないアプリが出ないよう配慮した」という。
バッテリ面においては、容量3,850mAhのリチウムポリマー電池を採用。ゲームで10時間、動画で20時間、音楽再生で85時間、待機で1,080時間を実現し、通常使用では2~7日間利用できるという。また、安全面にも配慮し、アップルも採用しているサプライヤーであるATL製を採用したという。
カメラは、800万画素でAFに対応し、LEDフラッシュも備える。また、サブカメラは200万画素となっている。一方ソフト面では、独自のランチャーを採用。将来的にAndroid 4.0にアップデートした時でもUIを維持できるとしている。また、キングソフトのアンチウイルスソフトや、Office互換ソフト、オンラインストレージサービスソフト「KDrive」などを搭載し、使い勝手を高めた。
スペックのこだわりは6つ | 高速CPUの採用 | 1GBのLPDDR2、16GBのeMMCなどを搭載 |
AnTuTu Benchmarkの結果も公開した | CHIMEI製液晶パネルの採用 | 高品質でゲームや動画、電子書籍に好適という |
センサー類も充実させた | バッテリの使用時間も配慮した | バッテリはアップルと同じサプライヤーのATL製 |
メインカメラとサブカメラの仕様 | 独自のランチャーを搭載 | クラウドサービスへの対応 |
最後に品質面へのこだわりだが、CPUやセンサーなどは、Samsungやヤマハ、東芝、Broadcom、Cirrus Logic、LITEONといった、PCでもお馴染みのメーカーを採用し、信頼性を高めた。
品質テストも、落下テストやディスプレイ加圧テスト、振動テスト、曲げテスト、キー押下テスト、水没テストなどを行なっているが、「タブレット端末でありながら、より厳しい携帯電話と同じレベルのテスト」を行なった。小型の携帯電話では、落とした時の衝撃など、タブレットと比較して小さいため壊れにくいが、大きさや重量面で不利とされるeden TABはそのテストをもクリアしたとアピールした。
一例として、-20℃~70℃環境において72時間耐えるテストをはじめ、70cmからの落下テスト、5~500Hzの振動テスト、110g/10cmの高さからのボール落下テスト、10kgfの液晶面加圧テスト、8時間粉塵テスト、45秒間水没テストなどを実施。インターフェイス部においても、イヤフォン抜き差し5,000回、USB抜き差し10,000回、HDMI抜き差し5,000回、SDカード抜き差し3,000回、SIM抜き差し3,000回、キー押下10万回などをクリアしたという。
有名メーカーのパーツを採用 | さまざまな試験を行なった |
システムテストの一例 | インターフェイス類のテストも行なっている | 他製品との仕様/価格比較 |
最後に、下浩子氏が再び壇上に登り販売戦略を説明した。今回はオンライン上で販売を開始し、Wi-Fiバージョンを29,800円(送料無料)で販売を行なうとした。予約は17日(本日)より開始し、2月25日より先行予約したユーザーを優先に配送する。また、一部量販店でも販売を開始する。
また、14日間に限り、返品できる「お試しサービス」を実施。返品にかかる送料はMobile In Styleが負担し、完全無料を実現したという。サポート面においいても、メールと電話窓口の両方を用意し、対応していく。
Wi-Fiバージョンを29,800円で販売 | 2月17日より予約販売を開始 | 14日間返品対応のお試しサービスを開始 |
電話やメールサポート体制も整えた | 量販店での販売も行なう |
今後に関しては、コンシューマ向けには電子書籍や映像コンテンツ配信サービス業者と提携し、端末をセットで提供することを目論む。また、企業向けにもキングソフトの企業向けサービスと組み合わせながら製品提案を行なっていくとした。
3G付きバージョンについても検討しており、4月下旬より展開する予定という。通信回線とのセット販売により、端末0円のプランを用意する予定としている。なお、SIMフリー版での提供も考えているとのことだが、キャリアによってはSIMロック付きで提供する可能性もあるとした。
OEM提供も目論む | 通信回線とのセット販売も予定 | 3Gモデルは4月下旬発売予定 |
(2012年 2月 17日)
[Reported by 劉 尭]