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TSMCが語るAIの波及効果、1兆5,000億ドルの半導体が150兆ドルのGDPへ
2026年7月8日 06:12
2022年に利用が本格化した生成AIはやがてエージェント型AIに変化し、さらにフィジカルAIへの進化を遂げ、半導体産業の構造を根本から変え、今なお成長を続けている。過去10年間モバイルが担ってきた半導体産業は、今後AIがその原動力になっていく。「TSMC 2026 Japan Technology Symposium」で、同社シニア・バイス・プレジデント兼副共同最高業務執行責任者のケビン・ジャン氏がこのように語った。
TSMC Technology Symposiumは、製品技術のロードマップやビジョンをパートナー向けに示す趣旨のイベント。毎年春季から夏季にかけて米国、台湾、中国、日本などを巡回して開催している。本記事では、午前中に行なわれたケビン・ジャン氏による基調講演の内容をお伝えする。
「私たちは『半導体の世界市場規模は今世紀末までに1兆ドルの大台を超えるだろう』と言い続けてきました。それが早くも今年実現しようとしています。今年のうちには余裕をもって1兆ドルの大台を突破する見込みです」(ジャン氏)。
半導体製造に関しては、ファブレスを含むファウンドリベースの企業がIDM(Integrated Device Manufacturer、垂直統合型製造メーカー)を上回るペースで成長していると話した。とりわけファブレス企業は、複雑で高コストな技術開発や製造をファウンドリに委ね、製品開発に専念できることが技術革新のスピードを加速している。
ジャン氏はまた、半導体市場の規模は2030年までに1.5兆ドルを超えると予測している。その内訳は、HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)とAIが55%、モバイルが20%、自動車とIoTがそれぞれ10%、その他が5%。今後ますます複雑かつ強力になるAIが要求する計算資源を支えるべく、多くの企業や団体がAIインフラの構築に集中しており、AIの軸足も「学習(Training)」から「推論(Inference)」に移行しつつある。ユーザーがトークンを使って生み出す価値がさらなるユーザーや投資を呼び込む「フライホイール効果」が半導体需要の成長を牽引し続けているという。
「いずれ数十万、数百万単位のAIアクセラレータ、GPU、TPU、CPU、XPUを総動員して、計算能力を提供することになるでしょう。今後はよりエネルギー効率の高い計算能力を実現する、先進的なソリューションが必要です」(ジャン氏)。
この"先進的なソリューション"の一例として、TSMCが開発に取り組んでいるオンダイSRAMの例を挙げた。ここでは高帯域幅と低遅延の両立を念頭に、オンダイSRAMの弱点でもある回路密度の限界を解決すべく、ロジックチップ上にDRAMを直接積層する技術の開発をパートナーとともに進めている。
ジャン氏は講演の中で、NVIDIAのジェンスン・フアン氏が1月に世界経済フォーラムで語った「5層のケーキ(Five-Layer Cake)」を引き合いに出した。5層のケーキは「エネルギー」「インフラ」「チップ(プロセッサ)」「AIモデル」「アプリケーション」からなるAI基盤を表現した言葉。ジャン氏はこのうち「チップ」と「アプリケーション」に注目して発言した。
チップに関しては、プロセスの微細化や3D積層を含むメモリの高速化と並んで、チップ同士の接続を銅線から光ファイバーへと置き換える技術の重要性に触れている。データセンター規模の計算では数百万個のチップを接続するが、伝送するデータの量や転送速度が上がるにつれて、従来の銅線では消費電力や発熱、信号の劣化に対処するコストが増大していた。TSMCではこの問題への解決策として電気回路ダイと光回路ダイを積層した光電融合パッケージ「COUPE」を提供しており、これによって消費電力を抑えつつデータセンターの規模拡大を継続できるとした。
AIが活躍するアプリケーションとしては、「スマートフォン」「スマートグラス」「自動車」「ヒューマノイドロボット」の4つに注目しているという。
スマートフォンは、より高い計算能力が常に求められる先進的コンピュータとして「今後も依然として重要な個人向けデバイス」と位置づけている。中でも電力効率、無線通信、カメラは特に重要な3要素であり、2026年の後半には2nmのSoCや12nmのFinFETを搭載した機種が登場する見込みだとした。
スマートグラスについては、視覚をデータセンターに接続することで「瞬時に賢くなれるかもしれない」新しいデバイスとして強い期待感を表明していた。フォームファクタや性能/機能面で発展途上ではあるが、TSMCとしては16nm FinFETなどの搭載によって高性能化と省電力化を積み重ねている最中だと話した。
自動車については特に自動運転の文脈で、将来の自動車を「シリコン・デファインド・ビークル」と表現した。現行の車種にも搭載しているSoCの演算性能は数百TOPSにとどまっているが、いずれ数千TOPS規模のAI性能をもって「ハンズオフ(ハンドルから手を離す)」「アイズオフ(前方から目を離す)」「マインドオフ(運転に向ける操作を手放す)」の自動運転実現を目指す。
ヒューマノイドロボットについては、その実現に「物理世界とデジタル世界をシームレスに統合することが求められる」とした。ローカライズされた計算能力だけでなく、視覚/圧力/モーションをはじめとしたあらゆる種類のセンシング能力をロボットに統合し、電力管理を含む多くの半導体技術を組み合わせる必要があるとした。
また、人間のようなロボットを作ることは簡単ではないが「半導体アプリケーションとして新しくエキサイティングなフロンティアであることに疑う余地はない」と語る。自動車を「作るのが最も簡単なロボット」とするならば、ヒューマノイドは「究極のロボット」と位置づけ、自動車メーカーによるロボット分野への進出についても言及した。
技術ロードマップに関しては、2nm世代の半導体量産計画の現況や2nmより先の次世代技術を中心に解説した。
2nm世代の「N2」は2025年第4四半期より量産を開始しており、続く「N2P」は2026年下半期に量産が始まる予定。2027年以降には、PPA(電力/性能/面積)の向上を図った「N2X」の量産も計画中。性能と電力効率を向上した改良版の「N2U」は2028年の量産開始を目標としている。
このほか直近では、2026年中に1.6nmプロセス「A16」の量産体制を整える見込み。A16は裏面電源供給技術(Super Power Rail、SPR)を採用した最初の世代となる。
1.4nm世代の「A14」は、N2プロセスと比較して最大15%の電力性能向上、同一速度の動作時に最大30%の消費電力削減、約1.23倍のロジック密度と約1.2倍のチップ密度を実現したプロセス技術。量産開始は2028年の予定だ。「A14ファミリー」として、回路の物理サイズ縮小を図った「A13」とSPR採用の「A12」も2029年の量産開始を計画している。
今後の展望としては「トランジスタのアーキテクチャ刷新」と「新素材活用」の2点に焦点を当てるという。ここでは具体例として、nチャネルFETとpチャネルFETを積層した「CFET(相補型FET)」と、2次元材料(グラフェンなど)の活用が紹介された。先述のCOUPEや2.5次元パッケージング技術の「CoWoS」、さらなる微細化を進めるプロセス技術と合わせて、将来のAIアプリケーションを支えるうえで不可欠な要素と位置づけている。
ジャン氏は最後に、今後の半導体市場が経済界に及ぼすインパクトについて触れた。
「2030年には1.5兆ドル規模になるとの予想を立てていますが、半導体が本当に社会に与える影響を理解するには、そこから波及する経済効果を考える必要があるでしょう。1.5兆ドル規模の半導体市場は4兆ドル規模のエレクトロニクス産業の基盤となり、さらに15兆ドル規模のIT関連市場を生み出し、150兆ドルを超えるGDPに貢献することになります。
すでに起きたAI革命のことを考慮すれば、半導体はあらゆるAIアプリケーションを支える力となり、私たちが今日行なっているすべてのことを根本から変え、人類のあらゆる側面に影響を及ぼすことになるでしょう。これは私たち全員にとって、素晴らしい機会になりえます」(ジャン氏)




















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