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「AI使っても評価されない」の壁を崩せるか?日本マイクロソフトが描くAI協働の未来

 日本マイクロソフトは7月27日、日経225企業のうち、87%はAIエージェントを活用しており、そのうち社内でAIエージェントを市民開発して活用している企業の割合は100%に達しているという独自調査の結果を報告した。

 また、同社が公開した「Microsoft AI Diffusion Report 2026」によれば、日本のAI利用率は世界平均の3倍を超えるペースで伸びており、これに伴い業務プロセスを自律的に実行するAIエージェントの導入も急速に進んでいるという。

 この背景には、AIモデルの能力向上だけでなく、日本語品質の向上と「AIエージェント」の躍進があるという。同社は、都内の本社で記者説明会を開催し、業務執行役員モダンワークプレイスGTM本部本部長の山田恭平氏が、この背景について解説した。

日本マイクロソフト業務執行役員モダンワークプレイスGTM本部本部長の山田恭平氏

【21時55分訂正】日経225のAI利用率データはMicrosoft AI Diffusion Report 2026に基づくものではなかったため、記述を変更しました。お詫びして訂正します。

最大の強みはビジネスの文脈を理解する「Microsoft IQ」

 従来のAIアシスタントは、チャットを介した一問一答形式が主流だった。これに対し、現在の「Microsoft 365 Copilot」は、指示に沿って複数のステップを自律的に実行するAIエージェントへと進化している。利用できるAIモデルも拡張され、OpenAIのGPT-5.6やGPT-5.5、AnthropicのFable 5(プレビュー提供中)やSonnet 5といった複数の最先端モデルを用途に応じて選択できるようになっている。

 また、2026年6月からはクラウドホスト型の自律型エージェント「Copilot Cowork」の一般提供を開始したほか、ユーザーの業務プロセスを理解して常時稼働し、自律的に業務を進めるAutopilotのAIエージェント「Microsoft Scout」を、現在Frontierプログラムを通じてプレビュー提供している。

Microsoft 365 Copilotの進化
使用可能なモデル
Excel内で駆動するCopilot。データの可視化と、可視化したデータの洞察を提供できる

 AIが自律作業するCoworkの機能は、AnthropicやOpenAIが先行している。これに対してMicrosoftは、OpenAIやAnthropicといった複数のモデルを用途に合わせて選択できることに加え、AIが組織の知識やビジネスの文脈を理解できるインテリジェンス基盤の「Microsoft IQ」を用意していることが最大の強みとなる。

 Microsoft IQには、メールや会議の内容を読み解く「Work IQ」、構造化データを扱う「Fabric IQ」、最適な問い合わせ先をファシリテートする「Foundry IQ」、Web上の情報を参照する「Web IQ」などが含まれる。AIエージェントはユーザーが普段行なっている業務の内容や、ビジネスの文脈をあらかじめ理解し、その上で支援や自律実行を行なうことができる。

AIにビジネスの文脈を理解させるMicrosoft IQ
Work IQの仕組み

 たとえば、企業内でまったく同じデータを参照していても、求めている答えや結果は営業部門と技術部門とでは異なる可能性がある。Microsoft 365 CopilotではMicrosoft IQを利用することで、ユーザーが普段こなしている仕事のフローを個別に理解し、それを踏まえた上で回答。さらにCoworkにシームレスに切り替えて資料作成を依頼すると、それぞれの部門に合った資料を仕上げるといったことが可能だ。

Microsoft Build 2026まとめ記事の作成をCoworkに依頼し完成したドキュメント

 これは、すでにOutlookやTeamsといった複数のプラットフォームを企業に提供しているMicrosoftならではの差別化要素だといえる。

Copilot CoworkおよびScoutが組み込まれた業務プロセスの例
Copilot Coworkで実現する業務の短縮
AIが実行すべきスキルを記述すれば、専門的な仕事や複雑な仕事の作業ステップを再現できる
Microsoft 365 Copilotは、すでにあるMicrosoftの複数のソリューションの基盤上で構築されているのが強み
人間の代わりに仕事を完了させるエージェント「Microsoft Scout」
たとえばIDやパスワードを使ったWebサイトのログインや登録作業なども行なえる
Copilot CoworkやMicrosoft Scoutの違い

1億円のコスト削減や業務効率化を果たす導入事例

 実務にAIエージェントを組み込み、具体的な成果を上げる事例も増加している。

 りそなグループでも、業務部門の担当者がCopilot Studioで市民開発したAIエージェントを導入。融資や住宅ローン、企業年金、iDeCoの4領域において照会業務を代行させることで、担当者がより高付加価値な業務に集中できる環境を構築した。

 INPEXでは、Microsoft 365 Copilotを全社的なAI活用基盤として導入。社員自らが「Copilot Studio」や「Copilot Agent」を用いて業務支援AIエージェントを開発した。情報収集や調査などの定型業務に組み込むことで、年間約20億円以上の効果を見込んでいる。

りそなグループでの導入事例
INPEXでの導入事例

 日本マイクロソフト自身も「カスタマーゼロ」として自社製品を徹底活用している。社内の「Copilotエージェントコンテスト」で、Copilot Studioを経由して開発された、技術的な問い合わせ対応を担うAIエージェントは、ナレッジをもとにした一次回答や専門チームへの引継ぎを自動化。これにより、人間が対応する問い合わせ件数が約半年間の試行期間で12分の1に減少した。

 また、サポート窓口業務を数十のプロセスに分解し、AIを効果的に組み込んだ3つの独立したエージェントを導入した顧客環境では、半年間で約1億円の問い合わせ対応費用削減を達成している。

日本マイクロソフト社内の「Copilotエージェントコンテスト」
属人化している知識を組織の資産として運用できる
AIエージェントの活用
AIエージェントによる問い合わせ対応の効率化

AI活用の成否を左右する「組織の力」

 同社の調査「Work Trend Index 2026」によると、日本ではAI利用者の43%が「1年前にはできなかった成果を出せている」と能力拡張を実感しているという。しかし、「AIを活用して迅速に適応しなければ取り残される」と不安を感じる割合は66%に上り、AI導入は必至の課題であるにもかかわらず、30%のユーザーが「仕事のやり方を変えるより、現在の目標を守るほうが安全」と回答し、「AIで仕事を再設計すること」が評価されていると感じているユーザーはわずか8%に留まった。

これはWork Trend Index 2025の結果。経営陣の多くはAI導入に前向きだ
AI導入は必至課題だが、一方で導入済みの企業ではAI活用が評価されないことが課題に

 つまり、「仕事にAIを導入しなければならないのは理解しているが、AIを導入したところで会社から評価されるわけではない」という、大きなギャップが生じていることが浮き彫りとなった。

 山田氏は、このギャップの解消には組織としてAI活用を評価する制度などが必要だと指摘する。個人にAI活用を委ねるのではなく、組織全体でAIを活用するカルチャーや仕組みづくりが必要であると訴えた。そのために、まずはアシスタントとしての導入を始め、続いてAIをチームメイトとして迎え業務プロセスの一部を任せ、最後に人が監督となって、複数のAIエージェント同士を編成して育成し、AIを前提としたプロセスを設計するフェーズに切り替えるといった段階的な導入・展開が有用だとした。

AI活用の課題は組織にあると指摘
人が監督となりAIエージェントと協働する将来像

 一方で日本マイクロソフト自身にも課題は残されている。Copilot Coworkは6月に一般提供が始まったばかりで、「従量課金制になると」明言したものの具体的な料金体系は明らかにされていないからだ。プロンプトによっても結果を導き出すのに必要なトークン数が異なるため定量化が難しい。生成AIのカルチャーのみならず、「コスト」を気にする企業にとって、1つのハードルになることは間違いないだろう。