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大阪府初のeスポーツイベント「ジェンスク」開催。協賛するマウスコンピューターの狙い

大阪府主催としては初となるeスポーツイベント「Osaka GeN Scramble(通称ジェンスク)」のビジネスデイはグラングリーン大阪北館にて行なわれた

 大阪府は1月30日~2月1日までの3日間、同府の主催としては初となるeスポーツイベント「Osaka GeN Scramble(通称ジェンスク)」を開催した。会場はグランフロント大阪を中心としたエリア内に複数のイベントエリアを展開して行なわれ、入場料は無料。

 1月30日はビジネスデイ、1月31日~2月1日はパブリックデイとして各エリアでトークショーのほか、「ストリートファイター6」「Fortnite」「VALORANT」といった、eスポーツ競技定番タイトルの対戦会などのイベントが実施された。

 大阪府は、eスポーツの取り組みの場として、eスポーツ認知拡大と関連産業の育成を推進するべく、企業同士の横のつながりを作る場として「大阪eスポーツラウンドテーブル(Osaka eSports Growth Guild/OeGG)」を2024年11月に設立。2025年に行なわれた大阪・関西万博会場では、8月15~17日に開催された全国高校対抗eスポーツ大会「STAGE:0 eSPORTS High-School Championship」において、舞台裏でOeGG参画メンバーらが運営協力した実績などもある。

 マウスコンピューターも2025年よりOeGGに参画した企業の1社だ。参画の経緯については、2025年に開催された「東京ゲームショウ2025(TGS2025)」のマウスコンピューターのブースでのイベントにおいて触れているとおりで、大阪には「大阪ダイレクトショップ」と「G-Tune:Garage大阪店」という2店の直営店があり、自治体と協力して地域を盛り上げたいという想いがあったようだ。

大阪府が立ち上げたeスポーツ関連企業等の交流の場「大阪eスポーツラウンドテーブル(Osaka eSports Growth Guild/OeGG)」の看板

 1月30日に行なわれたビジネスデイでは、eスポーツのビジネスに関するトークセッションが中心となっていたこともあり、会場はカンファレンス用スペースで行なわれた。来場者たちの多くは、eスポーツに関連する企業やビジネスに携わる、またはこれから参画する人たちが中心で、登壇者たちのトークに真剣に耳を傾けていた。

 扱われるテーマについても「地域密着型イベントにおける企業の期待と役割」といった、社会とのつながりや影響といった単なるビジネスの話以上に重みのある内容となっており、eスポーツ事業に携わる人たちにとって、ためになる貴重な体験談といえる。

 内容自体は真面目であっても、登壇者たちのトークは面白く、たまに交えるジョークなどで会場から笑いがこぼれる場面も見られ、終始和やかな雰囲気でイベントは進行していた印象だ。

ビジネスデイはトークセッションが中心のため、こちらのカンファレンスルームですべてのトークセッションが行なわれた
トークセッションは12時から17時まで行なわれた。筆者はすべてのトークセッションを拝聴していないが、就労継続支援 B 型事業所「でじるみ」のような社会とのつながりが感じられる事業内容の紹介から、人気eスポーツチーム「ZETA DIVISION」の岩田氏によるトークなど、eスポーツに馴染みのあるチームのトークまで、幅広い内容となっていた

 マウスコンピューターも「OeGGトークショー」として、同社の第一営業本部営業推進部の大久保政紀副部長が登壇し「eスポーツの普及を目指して 関西圏におけるマウスコンピューターの取り組み」というテーマでトークを行なった。大久保氏のほかには、実際にマウスコンピューターとともにeスポーツ施設への機材導入や運用を行なっているNEICS合同会社の有江俊治代表もゲストとして登壇した。

 最初に大久保氏から、マウスコンピューターの企業背景が紹介された。今年で創業33年目を迎えたマウスコンピューターは、同社の提供するPCの開発からサポートまでを国内で行なっている点を強みとアピール。2025年には同社の展開するゲーミングPCブランド「G TUNE」のリブランディングや、東京ゲームショウへの出展、高校生eスポーツ大会「STAGE:0」への機材提供など、積極的な活動をアピールしたほか「OeGG」に加入して、地域との連携も強化しているとした。

 NEICS合同会社は、今年で創業15年を迎え、OA機器販売やネットワークインフラの整備などを手掛けている。eスポーツについては、2023年9月から「e-sports cafe ZERO」という施設の運営を開始。この施設で同社独自のeスポーツイベントを実施したり、会場として場所の貸出なども手掛けている。有江氏自身は当初、eスポーツの知識がほとんどなかったが、業界経験のある人材を確保することで、教育機関向けの施設構築や販売も行なえる体制を整えたという。現在は堺市を中心に、学生のキャリア支援や地域コミュニティの活性化にも取り組んでいるという。

マウスコンピューターの第一営業本部 営業推進部、大久保政紀副部長
NEICS合同会社の有江俊治代表

 両社による導入事例として、兵庫県尼崎市の園田学園について紹介があった。同校へのeスポーツ施設の導入をNEICSが請け負い、マウスコンピューターが機材として、ゲーミングデスクトップ「G TUNE DG-I7G60」と、24型モニター「GB2470HSU-B6」を導入した。

 園田学園への導入の経緯は、2023年末に施設を見学に来た学園側から相談があり、2024年から導入に向けての調査などを開始。学園は「校内にeスポーツ部を作りたいがノウハウがない」とのことだったので、NEICSは、PCの選定以外にもネットワーク環境の整備や、さらに教育とeスポーツを掛け合わせた授業の提案まで包括的にサポートしているという。

 マウスコンピューターのPCを選定した理由について、有江氏は「ゲーミングPCはその性質上、1日12~13時間フルパワーで連続稼働させるなど、かなり過酷に使用することになる」とeスポーツ施設における過酷なゲーミングPCの稼動状況を解説。

 同社では以前から、ほかの施設でもマウスコンピューターの製品を導入していたが、こうした過酷な稼動状況であっても、故障率が低く、安定している実績があったことから、今回も「G TUNE」を選定したと説明した。稼働後の状況は好調で、PCも使いやすいことから、追加導入が行なわれる予定という。

 今後の展望として有江氏は、今後も大阪府内の学校など、身近な場所でeスポーツができる環境を広め、地域密着のICT支援を続けていくとした。大久保氏は、マウスコンピューターが地域社会と学びを支える「ものづくりICTパートナー」として、eスポーツを通じて若者が成長できる場を提供し、パートナー企業とともに地域社会に貢献していくことを目指すとして、トークセッションは終了となった。

両社の取り組みとして、兵庫県の園田学園への導入事例を紹介
マウスコンピューターとNEICSの今後の展望について
会場に出展されていたマウスコンピューターのブース
ブースでは、トークセッションで導入されたデスクトップPC「G TUNE DG-I7G60」が展示されており、実際に使ったり実物のサイズなどがチェックできた
こちらのブースではeスポーツ施設へのゲーミングPC導入事例について、相談や質問への対応を中心に行なっていた

 大阪府政策企画部成長戦略局の成長戦略推進監である井上慎一氏と、マウスコンピューターの代表取締役社長の軣秀樹氏に、OeGG参画の経緯や「Osaka GeN Scramble(通称ジェンスク)」開催についても話を伺った。

左が大阪府政策企画部成長戦略局の成長戦略推進監 井上慎一氏、右がマウスコンピューターの代表取締役社長 軣秀樹氏

 井上氏に、大阪府として初めてのeスポーツイベントを開催することになった経緯や背景を尋ねてみたところ、「大阪・関西万博を見据えて、何かできないかと検討する中で、若者に非常に人気のあるeスポーツを新しいコンテンツとして取り上げたいと考えた」という。

 一方で、行政(大阪府)の力だけでは限界があるため、万博においてeスポーツに注力している企業や学校と力を合わせることで盛り上げに成功し、今回のイベントが実現できたと語った。

 ジェンスクのテーマとして「世代や性別を超えたつながり・混ざり合い」が掲げられている点については、「通常のスポーツでは身体的なハンディキャップや性別、世代によっても差が出やすいが、eスポーツは同じ画面の中で対等に競い合えるという特性がある」と紹介。続けて「この、誰もが関係なく参加できるという点は、行政としても非常に取り組みやすい」と、テーマについての想いを示した。

 行政と民間の連携については「行政が旗を振るだけでは、できることが限られる。だが、マウスコンピューターのような専門企業のほか、学校や鉄道会社などが、それぞれの得意分野や専門知識を持ち寄ることで、若者をはじめ多くの人が面白そうだと感じ、実際に体験したり応援したりできる場を作ることができる。こうした取り組みにより、結果として大阪を元気にすることを目指している」と語った。

 大阪府が展開する「OeGG」ではアンバサダーとして、高橋名人こと高橋利幸氏や西川貴教氏ほか、VTuberなど豪華なアンバサダーを起用している。その成果については「行政の発信だけでは声が届かない層に対しても、影響力のある方々の力を借りることで、こんなイベントがあるんだと興味を持ってもらうことができた。明日からのパブリックデイの2日間も、多くの方に楽しんでもらえるきっかけになると確信している」とした。

 今後の大阪府としての展望について井上氏は「今回のイベントは1つの区切りで、大阪でeスポーツに力を入れていくためのリスタートでもある。今後は海外から大きな大会の誘致や、地域密着型のイベントの応援など、ターゲットや規模を変えながら多様な取り組みに挑戦していきたいと考えている」と、さらにeスポーツを盛り上げていく方向性を示唆した。

 一方、マウスコンピューターの軣秀樹氏は、OeGG参画のきっかけについて、昨年開催されたJeSU主催のeスポーツイベントがきっかけだったと回答。大阪府(OeGG)がブースを出展しているのに加えて、府知事による「eスポーツは大阪から」というメッセージに感銘を受けて参画を決めたと説明。

 また、大阪・関西万博内で行なわれた全国高校対抗eスポーツ大会「STAGE:0 eSPORTS High-School Championship」で使用する機材についても、当時まだ何も決まっていないという話を聞いた軣氏は「ぜひマウスのPCを使ってください」と提案したという。ちょうど関西万博においてマウスコンピューターがJeSU主催のイベントに機材を貸出することになっていたため、それらの機材を引き続き利用することで、スムーズな運営が行なえると判断し、その場で即決したのだと軣氏は笑う。

 eスポーツを通じた地域貢献についての考えを伺うと、「eスポーツを日本全国で盛り上げるためには、東京のような都市部だけでなく、地方から盛り上げていくことが不可欠。大阪を非常にパワーのある、良いモデルケースとし、そこから日本各地の活性化やコミュニティ形成につなげていきたい」と、大阪での盛り上がりに期待を見せた。

 OeGG参画後の、大阪のマウスコンピューターの直営店での影響については「本当はジェンスクに向けて店舗でキャンペーンのようなことをやりたかったが、2025年末、一時的なPCの受注調整などがあり、何もできなかったので、むしろここからスタートとして、イベント終了後も継続的に盛り上げていきたい」とした。

 受注調整とは下記の記事の件だ。

 販売停止という判断に対して軣氏は「批判も覚悟していたが、実際にはネガティブなコメントは少なく、品質管理を優先した姿勢を理解していただけた。年始にしっかりと準備を整えてから販売を再開したが、今回の経験を経て、改めてPCを求めているお客様の多さを実感した」と振り返った。

 大阪府との今後の連携については「今回は、無事に機材等の準備も間に合い、イベントを迎えられたことをうれしく思っている。大阪には当社の直営店が2店舗あるので、このイベントを1つの成功事例として、今後も大阪府や参加企業の皆様と連携を深め、共にeスポーツを盛り上げていきたい」と答えた。