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今年6月開催のVLSIシンポジウム、関係者がIEDM 2023に続きISSCC 2024にも乱入

2024年6月に開催予定のVLSIシンポジウムを説明するスライドの表紙。説明会は現地時間(米国太平洋時間)2024年2月19日の午後0時45分に始まった

 半導体の研究開発コミュニティでは、冬と夏に大きな国際学会が開催される。冬は12月の国際電子デバイス会議(IEDM)と2月の国際固体回路会議(ISSCC)であり、前者はデバイス・プロセス技術、後者は回路技術をカバーする。夏は6月にVLSIシンポジウム(VLSI)が開催される。

 VLSIシンポジウムはデバイス・プロセス技術をカバーする「テクノロジー」と回路技術をカバーする「サーキット」で構成されている。開催規模は冬の二大学会におよばないものの、カバー範囲が広い。デバイス/プロセス技術と回路技術の最新状況を同時に把握できる学会として貴重な機会を研究者と技術者に提供している。

 VLSIシンポジウムは西暦の偶数年に米国ハワイ州のホノルル(「ハワイ開催」とも呼ぶ)、西暦の奇数年に京都府京都市(「京都開催」とも呼ぶ)で交互に開催することを通例としてきた。同シンポジウムの実行委員会には米国側と日本側のメンバーがおり、開催地に合わせて地元のメンバーがさまざまな事柄を差配してきた。今年(2024年)はハワイ開催の年である。

VLSIシンポジウムの広報にISSCC取材のプレスを活用

 VLSIシンポジウムの知名度は、IEDMやISSCCに比べると高くはない。そこで最近は、米国で開催される冬の国際学会を通じてVLSIシンポジウムの概要を半導体専門の報道関係者に説明している。前年(2023年)12月のIEDMでも、来るVLSIシンポジウムの予告となる記者説明会が12月11日(米国太平洋時間)に開催された。その内容は本誌でご報告した。

 そして筆者が取材に訪れているISSCCの会場ホテルでも、VLSIシンポジウムの概要説明会が2月19日昼に実施された。前回で説明された概要からはかなり具体的になり、詳細が見えてきた。ただし当日は投稿論文の締め切りである2月5日の直後であり、発表論文はまだ決まっていない。

6月16日~17日にプレイベント、18日~20日にメインイベントを予定

 ここからは、昨年12月11にもたらされたVLSIシンポジウムの開催予定概要と比べ、変更になった項目や詳細が決まった項目などを主に説明していこう。始めは基本日程である。

「2024 VLSI」の基本日程(変更の可能性あり)。プレイベントを16日と17日、メインイベント(技術講演会)を18日~20日に予定する。2024年2月19日にISSCC委員会が配布した資料から(以下同じ)

 開催日程は変わらず、2024年6月16日~20日を予定する。16日~17日がプレイベント、18日~20日がメインイベント(技術講演会)と区分けされる。プレイベントは16日がワークショップ、17日がショートコース(共通のテーマに基づく複数の技術講座)である。

 17日の夕方から夜はメインイベントに先行して「デモセッション」を予定する。技術講演会で発表予定の研究成果から、一部をテーブルトップ形式で論文著者が展示するセッションである。デモセッションと隣接した小会場ではレセプション(歓迎会)を実施する。デモセッションとレセプションは技術講演会の一部として扱われる。言い換えると、技術講演会の参加登録料金に含まれる。

ワークショップ(テーマ別の講演と討論)の概要。金曜フォーラムを取りやめた代わりと位置づける。タイムスロット(時間割)では単独進行のテーマ(Standing Workshop)と同時並列進行(Parallel Workshop)のテーマがある。並列進行のテーマ候補は昨年12月11日時点では7つあったが、2月19日時点では4つに絞られた。また単独進行のワークショップは4時間、並列進行のワークショップは2時間と時間枠が決まった
ショートコース(共通テーマによる1日間の技術講座)の概要。昨年12月11日時点では回路技術のショートコースが未定だった。2月19日時点ではデバイス・プロセス技術のショートコース(SC1)が「次世代コンピューティング向け先進VLSI」、回路技術のショートコース(SC2)が「ヘテロジニアス集積に向けた回路とシステム」を共通テーマとする

ハイブリッド開催の講演録画配信は6月24日を予定

 メインイベントである技術講演会は前述の通り18日~20日に実施する。恒例の基調講演セッション(プレナリーセッション)は、18日と19日の始めに予定する。両日とも2件の基調講演(招待講演)がある。

基調講演セッションの講演者と講演タイトル。講演テーマは左から「センシング技術」、「移動体通信技術の将来」、「フォトニクスとエレクトロニクスの融合」、「モビリティ革命」である

 18日の夜にはパネル討論会が開催される。テーマは「生成AIが半導体産業(技術、回路、自動設計)に与える影響」である。パネリストは6名~8名を想定している。生成AIを利用した「ゲームショウ」の試みが新しい。

パネル討論会の概要。「生成AI」が半導体産業に与える影響をパネリストと参加者が議論するとともに、生成AIを利用した「ゲームショウ」を実施する

 なおVLSIシンポジウムは前年と同様、リアルとバーチャルのハイブリッド開催となる。バーチャルでは講演録画をインターネット経由でオンデマンド配信する。配信の開始はリアルイベントが完了した後、2024年6月24日を予定する。バーチャルでは質疑応答の枠が設けられていないので、あらかじめ留意されたい。

VLSIシンポジウムに関連する予定表。採択論文(レイトニュース論文を除く)は2024年3月末に決定する

 肝心の一般講演に関する情報はこれからだ。今年4月中旬と思われる正式な事前説明会を楽しみに待ちたい。