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自作PCの楽しさ、多くの人に届け!「インテルPCマイスター認定」カリキュラム

初級カリキュラムの様子

 インテル株式会社は、自作PCに関する技能と知識を認定する「インテルPCマイスター」の認定カリキュラムイベントを14日から15日にかけて開催した。

 インテルPCマイスターは、PCを構成するパーツの選定や組み立て技術、トラブルシューティングなどの知識を認定するインテルの独自制度。9月の東京ゲームショウ(TGS)で発表したもので、「初級」、「中級」、「上級」、「TOP」の4段階で階級を設定している。

 今回のカリキュラムイベントは、制度の発表後初めての開催となる。ここでは14日に実施された初級および上級カリキュラムの模様をお伝えする。

初級マイスター

 初級マイスターは、90分のオンライン講習もしくは関連イベントや体験会への参加で取得できる。初級は「PCの仕組みや組み立て方を大まかに理解している」レベルを想定。イベントでは各PCパーツの役割を把握したうえで、実際にPCを組む実習を通して理解を深める内容の講習が実施された。

 受講者はおよそ20名ほど。親子で来場する受講者もみられた。講習ではまずPCのフォームファクタについて、デスクトップやノートPC、NUCなどを例に挙げ、クイズ形式でPCに対する参加者の認識を確認。CPU、メモリ、GPU、ストレージ、マザーボード、電源の役割を人体にたとえて説明した。HDDとSSDの違いや冷却ファンなど個別のパーツ分類にも言及し、例えばディスクリートGPUについてはゲームや生成AI、動画配信など具体的な用途を紹介していた。

 受講者の机には組み立て用のPCパーツが置かれており、「端子部に触れない」、「パーツを無理に押し込まない」などの説明を聞いた後は、講師の指示で順番に組み立て/取り外しを行なって、初級のカリキュラムは終了。最後に「インテルPCマイスター初級」の認定カードを受け取って解散となった。

 初級マイスターのカリキュラム受講者に感想を聞いてみた。

 「カリキュラムのことはTGSで知りました。私自身はPCを使う仕事をしているので、知識の確認とアップデートができたらと思って参加しました。初級の内容は思ったよりも簡単だったので、今後は中級、上級と順に受けていきたいと思っています」。

受講者席には組み立て講習用のパーツが置かれていた
組み立て講習の様子。親子で参加している受講者もみられた
PC各パーツの役割を人体に例えて説明
組み立ての前にパーツの基本的な扱い方をレクチャーした
初級カリキュラム終了時に中級の案内も行なった
初級マイスターの認定カード

上級マイスター認定

 上級マイスターの認定には、PC全般について精通していることを前提として、ショップやコミュニティにおいて接客や相談ができるだけのコミュニケーション能力が求められる。カリキュラムの開始に先立って説明された「マイスターの心構え」の中では上級マイスターを「カスタムPCの面白さや奥深さを伝える伝道師」と位置づけており、本制度の目的は、PCやパーツの持つ機能や性能を初心者にも分かりやすく伝えられる人物の育成にあるとしている。

 上級認定取得の条件は、座学(3日分)と実技(1日分)からなる講習の受講および別途実施する認定テストに合格すること。この日の受講者は座学3日分にあたる動画講習を事前にオンラインで受けており、14日分のカリキュラムは実技講習にあたる。認定テストは翌15日に実施する流れとなっている。

 実技の内容は「PC組み立て」と「ワークショップ」。PC組み立ては用意されたパーツを自分でピックアップして組み上げ、所定のモニターに接続してBIOS画面の表示まで確認することで完了となる。これは腕に覚えのある受講者が多かったためか、ほぼ全員が1時間の持ち時間を割る形で組み立てを完了させていた。

 ワークショップは、PCショップ店員として顧客のニーズに合わせた具体的な構成の提案と、その根拠を説明する能力が問われる内容。今回のカリキュラムでは、受講者が4~5人のグループに分けられ、配布された顧客のペルソナシートに合わせて提案する構成やその根拠を議論し、最後に代表者1人を立てて壇上で説明する形式を採っていた。

 顧客ペルソナシートには顧客の職業やPC購入の動機、用途、予算などが記載されており、ここから必要なニーズを汲み取って、構成を含む具体的な提案内容にまとめ上げていく。ペルソナシートは店頭で顧客から聞いた情報のメモを読みやすい形にまとめたような内容となっている。たとえばニーズに関わる情報がどこか曖昧だったり、提示している予算が明らかに低すぎたり、現在使っているPCのスペックがうろ覚えであるとの但し書きがついていたりするため、顧客が本当に必要としているものを見抜く能力も試される。

 本記事ではペルソナシートの具体的な内容に触れることはできないが、各グループともシートに記載している内容から顧客のニーズを正確に読み取り、最適と考えられる構成をパーツのメーカーや型番まで挙げる具体性でもって説明していた。この日は最後に翌日の試験についての説明を行なってお開きとなった。

 上級カリキュラムに参加した受講者にも感想を伺った。

 「ショップ店員の知人から誘われて受講しました。私自身も業界の人間なので、いま、自分とは違う世代の人たちがどんな考えをもってPCを作っているのかに興味があります。参加した動機には、そういうリサーチ的な側面もありました」。

 「まだ試験を受ける前の段階ではありますが、この時点までの感想を素直に述べるならば、改善の余地は多々あると思います。たとえば受講者がPCを組む、までで終わってしまったところは気になりましたし、『店員の立場で』というのも現場の実情を考えれば踏み込みが足りないようにも感じました。ただ同時にとても面白い試みでもあると思うので、一過性にせず、メーカーやショップ、ユーザーや代理店まで広く巻き込んでいけば、結果的に自作PCの裾野も広がっていくのではないかと思います」。

PC組み立て用に準備されたインテル製CPUとビデオカード
上級カリキュラムのPC組み立てでは、受講者の判断でパーツを選択する
ケースへの組付けも行なう
通電してBIOSの画面を確認すれば完了
ワークショップでは受講者同士で即席のグループを作って顧客向けの提案をまとめる
ペルソナシートに基づいてまとめた提案内容を代表者がプレゼン

自作PCに対する垣根を低くする

 イベントにはインテル株式会社 マーケティング本部長の上野晶子氏も来場していたので、PCマイスター制度の成り立ちや今後の展開についてお話を伺った。

――PCマイスター制度を企画した意図について教えてください。

上野氏:世間一般の「自作PC」に対する垣根を低くしたいと思ったからです。「難解すぎてわからない」ので「自分には関係ないもの」と思われてしまっているように感じました。

 自作PCの世界では、もちろんその世界でだけ通じる深い話があっていいと思うのですが、まずはそこに至る1つ前の段階のユーザーを育てていく必要性を感じました。でないと一般人には遠すぎて、「PC」といえばメーカーの既製品が目に入るばかりで、自作PCまでたどり着かないと思ったんですね。

 自作PCを「カスタムPC」と呼ぶようにしたのは、PCには「自転車」や「釣り」のように、必要や好みに応じて組み替える道具としての楽しさがあると思ったからです。ゼロから「自作」するのではなく、今あるものを「カスタム」するイメージですね。「思っていたよりは難しくないな」という認識を広げていきたいです。

 それを実現するために、まずは店舗に「専門家がいる」ことを示せるシンボルがあるといいのではないかと考えました。たとえばビールメーカーが運営する店舗にも「マイスター」がいますよね。「この人に聞けば安心」な店員さんと、それを保証するシンボルのセットが増えていく。すると、興味があっても「よくわからない」で止まっていたお客様が「やってみようかな」と一歩を踏み出せるかもしれない。

 そうした目標を前提として考えると、PCマイスターという制度の認知と「マイスター」本人に向けたカリキュラムの整備を二面的に展開していく必要があると思っています。

 私たちがいくら「カスタムPC」と言ったところですぐに状況は変わらないかもしれませんが、地道にPCへの接点を増やしていければ、PCの中身にも興味を持ってもらえるようになるかもしれないですよね。私たちはその「中身」の会社ですから。

インテル株式会社 マーケティング本部長の上野晶子氏
インテルPCマイスターは4つの階級に分けられている

――制度や試験の内容についてはどのように決めたのでしょうか?

上野氏:カリキュラムについては、REDEE株式会社さんと組んで作成しました。マザーボードメーカー4社に監修をお願いしています。ここにインテルの技術者をまじえて、現在の4階級についてはどのような能力が必要なのか、どのくらいの知識が必要とされるのかを話し合いました。イメージ的には「フォトマスター検定」が近いかもしれません。

――「TOPマイスター」とはどのような人たちなのでしょうか?

上野氏:上級以上のPCマイスターについては、「卓越した知識」というのは大前提としても、それ以上にコミュニケーション能力が大事だと思っています。TOPマイスターはそれに加えて発信力があり、インフルエンサーになりうる人ですね。

――初級と中級は講習を受けることで取得できますが、上級に試験があるのはなぜでしょうか?

上野氏:PCマイスターの概要にも記載していますが、中級までと上級には明確な違いがあって、上級からは他者に伝える能力が問われるからですね。ただ知識があることよりも、知識や提案を人に伝えられることの方が大事だと思うので、今後の試験には講習の範囲から外れたこともことを盛り込むことを検討しています。

 いずれは職業として必要な能力を保証するようなものにしたいですし、もっと言えば、上級を持っていたらお給料が上がるということもあっていいと思います。

――今後の認定カリキュラム実施について決まっている予定はありますか?

上野氏:現在のところ、頻度としては四半期に1度を考えています。ただ、業界の環境が変化する中で継続的な教育はどうするのかなど、固まっていない部分はありますね。

 まだ始めたばかりの制度なので、今の形が最終形というわけではもちろんなくて、私たちとしてもより良い形に変えていきながら、細々とでも続けていけたらいいなと思っています。