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AIフル活用の「Microsoft 365 Copilot」。文書もプレゼン作成もAIとの対話で完結

 米Microsoftは16日(現地時間)、LinkedInにおいてプライベートイベント「The Future of Work with AI」を開催。この中でAI機能を統合したオフィススイート「Microsoft 365 Copilot」を発表した。

 このところChatGPTのように自然言語処理を使ったAI技術が飛躍的に進歩しているが、ついにこの技術を一般的なビジネスでも使われるMicrosoft 365にも取り込んだ。

 製品名にある「Copilot」、つまり「副操縦士」が示すように、ユーザーはCopilotに自然言語で要望や指示を出すだけで、非常に高度で複雑な処理を簡単にできるようになる。ユーザーは最小限の時間で生産性を最大限にまで引き出すことが可能になり、ビジネスにとって新しい時代の幕開けとなる。

 そもそもMicrosoft 365(旧Office)は非常に豊富な機能を備えていたが、ほとんどのユーザーはそのうちの10%の機能しか使っていなかった。Copilotを使うことで残り90%の機能の潜在能力を引き出すことができるとしている。

 Copilotの特徴はユーザーがアクセスできるデータを縦断し、フルに活かす点であり、イベントでは以下のことがデモされた。

Outlook

 メール文面も、相手に伝えたい大まかな内容をCopilotに伝えるだけで適宜作成してくれる。文面の長さも数クリックで調整が可能。

 なお、スマートフォン版でも同様にメール文面が作成でき、返信にかかる時間を大幅に短縮できる。

長文の文面はCopilotに概要を伝えるだけで作成可能
もちろんスマートフォン版でも利用可能

PowerPoint

 プレゼンテーションで述べたい内容、ページ数をCopilotに指示するだけで、ユーザーが持つ関連データや写真などを参照し、見栄えが非常に良いプレゼンテーションをほぼ自動で作成できる。アニメーションの追加もCopilotに指示するだけ行なえる。

 デモでは「娘の卒業を祝うプレゼンテーション」の作成をしていたが、娘の写真アルバムから適宜写真をピックアップしていた。

 ビジネス向けのデモでは、既存のWord文書からPowerPointプレゼンテーションを生成する様子が示された。また、スライド中のテキストを減らし、スピーカーノートの自動生成を行なえる様子が示された。

PowerPointのCopilot(画面上部)。ここで指示を出す
ほんの数秒で20枚のPowerPointが完成。写真の貼り込みも自動で行なう
ビデオクリップがあれば、それも自動的に埋め込まれ、見栄えがいいプレゼンテーションが完成する
Word文書から……
PowerPointへの変換も一瞬。スピーカーノートも自動的に作成

Word

 書きたいことを1段落Copilotに伝えるだけで文書を代筆。すでに持っているメモ書き等がある場合はそれを挿入できる。

 デモでは「娘の卒業を祝うスピーチ」を作成していたが、スピーチする時間に合わせた長さに自動的に文面の長さを調節したりする様子が示された。

 またビジネス向けのデモでは、長い文章の要約を自動で行なっていた。

娘の卒業を祝うスピーチの作成。スピーチの時間と、娘の趣味などを伝えると……
即座に代筆。ノートの挿入も簡単
冒頭に要約を追加するときも瞬時にまとめてくれる

Excel

 Excelでは、詳細の売上データのシートを、Copilotに指示をちょっと出すだけで即座に四半期ごとのサマリーにまとめる機能がデモされた。また、成長シナリオの生成も行なえる。

詳細な売上データから……
即座に四半期売上データを生成
成長シナリオも

Teams

 先日、日本マイクロソフトの発表会でもTeamsへGPT-3.5の統合が発表されていたが、会議中にこれまでの会話の概要を自動的にまとめる議事録的な機能がデモされた。

 また、カレンダーの予定からのタスクの作成、チャットスレッドのこれまでの会話の要約、ファイルからのデータを抽出してチャットに貼り付けるといった操作がCopilotへの指示だけで行なえる様子が示された。

 さらに、予定している会議で役立つ資料を自動検索し、例えばExcelファイルから必要なデータの抽出、そして抽出したデータをPowerPointに貼り込むといった作業もCopilot経由で行なっていた。

チャットスレッド内の概要を提示
Teams会議の音声を認識し、会話の概要を表示する
会議に必要なファイルの提案
Excelファイルから必要なデータだけ抽出する

Copilotはセキュリティにも重視

 このように、Microsoft 365が本来備えている豊富機能を簡単に指示するだけで実現するCopilotだが、その実現にはやはり大規模言語モデル(LLM)の存在が欠かせなかった。Copilotでは、Microsoft 365アプリからのプロンプトを直接LLMに渡しているのではなく、いったんMicrosoft Graphに投げて、ユーザーのメール/ファイル/会議/チャット/カレンダー/連絡先といったデータを根拠付けして処理。

 これを編集されたプロンプトとしてLLMに投げている。そしてLLMのレスポンスをもとに再度Microsoft Graphに戻して根拠付けを行ない、LLMの応答ともにユーザーに渡しているという。

Microsoft 365 Copilotの挙動

 Copilotの登場により大きく変化するMicorosft 365。新しいPCの活用法、新しいオフィススイートの使い方は、もうすぐそこまで来ている。

イベントの冒頭で挨拶したサティア・ナデラCEO