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Cortana後継の「Windows Copilot」は、大規模言語モデル利用のAIアシスタント

Windows Copilot(提供:Microsoft)

 米Microsoftは3日(現地時間、日本時間24日)から同社の開発者向けフラッグシップイベント「Microsoft Build」を米国ワシントン州シアトルの会場での対面と、オンライン開催のハイブリッド形式で開催している。23日午前から、基調講演が始まっており、Microsoft CEO サティヤ・ナデラ氏などの同社幹部が登壇し、同社の製品戦略などに関して説明を行なっている。

 Microsoft Buildに先立って同社は、新製品やサービスなどに関する発表を行なった。Windowsに関しては、LLM(大規模自然言語モデル)を利用したAIアシスタント機能となる「Windows Copilot」がWindows 11に実装される計画であることが明らかにされた。6月からプレビュー提供が開始され、今後標準でLLMを活用したAI機能を利用可能になる。

WindowsにLLMを活用したAIアシスタント機能を統合するWindows Copilot

 Microsoftは2023年に入ってから矢継ぎ早に生成AIに対応したサービスや製品の発表や展開を進めている。OpenAIのGPT-3/4を利用したLLMのチャットボットとなる「Bingチャット」(通称)はその代表例だが、そのほかにも同じようなAIアシスタント機能となる「Microsoft Copilot」ブランドの生成AI機能を、Microsoft 365に統合したMicrosoft 365 Copilotなどの製品を発表し、プレビュー提供を進めている。

 そうしたMicrosoftが今回のMicrosoft Buildで発表したのが、Windows 11にLLMを利用したAIアシスタント機能「Windows Copilot」を統合していくことだ。

 Microsoftがこうした取り組みをするのは初めてではない。既に「Cortana」の名称で、Windows 10世代に実装することをトライしてきたが、Apple SiriやGoogleアシスタントなど、他社のサービス同様に投入当初は話題になったものの、実際にはさほど使われず、結局フェードアウトしていった。

 今回投入される「Windows Copilot」における、従来のパーソナルアシスタントとの大きな違いは、ChatGPTなどで大きな話題を呼んでいるLLMをエンジンとして利用していることにあり、それにより、より自然な対応が可能になる。

 また、Microsoftは今回のBuildでChatGPTプラグインを、同社のCopilotシリーズで利用できるようにすることを明らかにしているが、Windows CopilotでもChatGPTプラグインを組み込むことが可能になる予定で、ChatGPTプラグインを利用して機能を拡張できる。

 たとえばChatGPTに対応した航空会社のプラグインを入れておけば、Windows Copilotに休暇の予定を指示すると自動でフライトを予約するといった機能を実現することが可能になる。

 MicrosoftによればWindows Copilotは6月からプレビュー提供する予定で、Microsoftが用意するWebサイトから申し込むことで、プレビューに参加可能になる予定だ。

Windows 11の新機能は明日から提供開始

ライブキャプション機能が日本語に対応

 Microsoftは、今後Windows 11に追加されるそのほかの新しい機能に関してもBuildで発表した。

タスクバー上に見えるVPN

タスクバーの通知領域にあるネットワークアイコンにVPNに接続していることを示す鍵マークが追加される

 Windowsには標準機能としてPPTP、L2TP、SSTPなどのVPN機能が実装されており、それらのVPNサーバーにソフトウエアを追加することなく接続可能になっている。しかし、Windows 10/11ではVPN機能が設定アプリに統合されており、接続するには結構深い階層をたどっていく必要がある。

 そのため、Windows 11では通知センターにVPNのアイコンを追加し、そこから既にWindowsに設定されている接続先に、少ないアクションで接続可能になっている。しかし、VPNにつながっているかどうかは、いちいち通知センターからVPNの接続先を表示しないと確認できなかった。

 しかし、新バージョンでは、通知領域のネットワークアイコンにVPNで接続していることが分かる「鍵マーク」が追加され、それによりVPNに接続しているのか否かを一目で確認可能になる。

 このタスクバー上に見えるVPNは米国時間の明日に提供開始されるアップデートで利用可能になる。

ライブキャプション機能が日本語など10言語に対応

 Windows 11 22H2(Windows 11 2022 Update)ではライブキャプションの機能が追加されており、Windowsが再生されている動画の音声にAIを活用したキャプションをつけて表示してくれる機能が用意されている。このライブキャプション機能は、これまで英語(北米)などの限られた言語だけでしか利用できなかった。

 しかし、米国時間の明日から提供されるアップデートからは、21地域の10言語に対応する。この中には日本語も含まれている。聴覚障害のあるユーザーなどがこうした機能を利用することで、サービス側にキャプション機能が用意されていないような動画であっても、WindowsがAI文字起こしの機能を応用してライブキャプションをつけてくれるので、これまで楽しめなかったような動画を楽しんだりできる。

Bluetooth LE Audioに対応

 Microsoftは3月に提供した「May 2023 optional non-security preview release」において、Bluetooth LEへの対応を開始している。利用するにはBluetooth LE Audioに対応しているハードウエア(BTコントローラ)が必要になる。

 Intelは第13世代Coreプロセッサにおいて、Bluetooth LE Audioに対応することを既に明らかにしており、OEMメーカーがBluetooth LE Audioをサポートするのに必要なハードウエアを選択している場合には、Bluetooth LE Audioを利用できる。

 今回Microsoftが発表したのはIntel SoCとSamsung ElectronicsのGalaxy Buds2 Proの組み合わせで、Bluetooth LE AudioがWindows PC上で利用可能になったということになる。なお、Galaxy Buds2 Pro は初期バージョンではBluetooth LE audioには対応しておらず、本年中にアップデートで対応する予定とSamsungは公表している。。

Windows 365 Boot

Windowsのローカルデバイスから直接Windows 365にログインして利用することが可能になるWindows 365 Boot

 Windows 365はMicrosoftが、クラウドPCやVDI(Virtual Desktop Infrastructure、仮想デスクトップ基盤)と呼ばれるクラウドベースで提供される仮想PCのサービスだ。Windows 365は、PCであろうが、iOS/Androidのタブレットであろうが、どんなデバイスからでもWebブラウザさえあれば利用できる。

 今回発表されたWindows 365 Bootは、ローカルにWindows 11搭載PCを用意しておくと、そこでWindows 365に直接ログインすることが可能になり、ログインすると自動でクラウドのWindows 365に接続され画面などはWindows 365の画面にシームレスに切り替わって利用することが可能になるのもの。

 これにより、たとえば支店にある共有PCから自分のWindows 365にログインしていつもの環境で仕事を始めるという使い方が可能になる。なお、現時点ではサービス開始時期などに関しては触れられていない。