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すべてがノーマルに戻ったMWC 2023、最新の第13世代Core搭載ノートPCやスマートフォンなどが多数展示

MWC 2023で展示されていた第13世代Coreを搭載したSamsung電子のGalaxy Book3シリーズ

 2月27日~3月2日(現地時間)にスペイン王国バルセロナ市の「Fira Gran Via」において、ワイヤレス通信系として世界最大の展示会となるMWC 2023(以下MWC)が開催された。MWC、もともとは「Mobile World Congress」(現在はこの元の長い名称は廃止され、単にMWCと3レターだけが利用される)の略称だったことからも分かるように、ワイヤレス通信系の通信キャリア向けのイベントだったが、現在ではそこにSamsungなどの端末メーカー、EricssonやNokiaなどのインフラメーカー、そして今や通信のアプリケーションの1つといえるIoT(Internet of Things)や自動車などさまざまな産業が合流して巨大なイベントに成長している。

 今回のMWCでもさまざまな展示が行なわれており、既に紹介したWi-Fi 7関連製品を除くような各種の展示についてリポートしていきたい。

3年前には直前に開催をキャンセルせざるをえなかったMWC、本年は完全にノーマル状態に戻って開催

スペインのフィリペ六世国王陛下が会場を訪れた時の様子

 3年前(2020年)の2月、日本は横浜に寄港したダイヤモンド・プリンセス号で発生したCOVID-19の集団感染に関する話題で持ちきりだったことを覚えている読者の方も多いだろう。そうした騒ぎは、そうした船の中だけの話ではなくなり、世界的なパンデミックにつながっていったことは、いまさら筆者が説明するまでもないだろう。

 その3年前の2月の終わり、MWC 2020は開催するのかしないのかと瀬戸際にあった。しかし、大企業を中心に出展を自粛する動きが続いたため、開幕の直前になって主催者のGSMAは中止を決断し、結局MWC 2020は開催されないことになった。翌年の2021年も冬の間は開催されず夏に小規模で開催されたのだが、正直あまり話題にもならずに終わってしまったというのが実態だった。

夕方の様子だが、奥には人がいっぱいいることが分かる

 そのMWCが本格的に復活したのは、2022年2月に行なわれた「MWC 2022」で、ほぼ通常と同じ規模で開催された。ほぼと表現したのは、例年使っている8つのホールのうち、ホール8は閉鎖したまま行なわれたためで、規模は通常よりもやや小さくなっていたからだ。

 今年(2023年)2月27日に開幕したのMWC 2023はそのホール8の利用も復活し、例年並みの規模となって、ほぼ通常通りのイベントとなって開催された。昨年(2022年)はホール6に移動していた4YFN(4 Years After Nowの略称で、「今から4年後」という意味)と名前がつけられたスタートアップ向けのコーナーも例年通りホール8で開催され、昨年は会場内でマスクをつけることを強いられていた参加者も、本年はマスクの制限は一切なく通常通りの参加が可能になっていた。

ホール8の4FYNが復活

 基調講演や参加企業が行なう記者会見も例年並みに戻ってきており、もはや完全に“オールドノーマル”が“ニューニューノーマル”になって、“ニューノーマル”が“オールドノーマル”に追いやられた形だ。最終的な来場者に関してはまだ主催者から発表されていないため、来場者が従来並みに戻ったのかは分からないが、会場を歩いていると、2019年の時並に「人多すぎでまっすぐ歩けない」という状況に戻ってきており、従来並みの来場者に戻ったのではないかと感じている。

 このパラグラフの冒頭写真はスペイン王国の国王であらせられるフィリペ6世陛下がMWCをご訪問された時の様子で、多くの人が列をなして国王陛下を歓迎している様子が分かる。こうした王族の皆さまも参加されるなど、VIPのレベルでも通常のイベントに戻りつつある印象だ。

 既に欧米では「コロナ禍」なる言葉は過去の言葉になっており、誰もそんなことを気にしなくなっているのが現状だ。1月のCESもそうだったが、既にそうした“ニューニューノーマル”が普通になっている。さらに今回のMWCには、旅行解禁タイミングの問題でCESにはほとんど参加していなかった中国企業や中国からの参加者も多数参加しており、その意味でも当たり前の展示会の姿形が戻ってきた。今後PC産業にとっては5月末のCOMPUTEX TAIPEI、9月上旬のIFAなどが予定されているが、それらも何の制限もなく開催されていくことになるだろう。

Samsungは1月末のUnpacked 2023で発表した第13世代Core搭載Galaxy Book3シリーズを展示

Galaxyのロゴが入ったSamsungブース

 元々通信キャリアのイベントとして発展してきた歴史的な経緯もあってMWCの花形はスマートフォンというのは今も昔も変わらないのだが、近年はそうしたMWCでもノートPCの新製品が発表されて展示されると言うことも増えている。

 例えば、HuaweiのノートPCのブランドである「Matebook」ブランドの製品は、このMWCで行なわれた発表会で初めて公開されるなどしている。

 ただし、今回のMWCの期間中に行なわれた発表会で発表されたノートPCは、このMWCの約1カ月前に行なわれたSamsungの発表会(Unpacked 2023)で発表された第13世代Core搭載のGalaxy Book3シリーズが展示された程度となる。なお、中国のHuaweiとXiaomiは、いずれもノートPCを展示してはいたが、展示されていたのは第12世代Coreを搭載した昨年モデルになる。

 Samsungが展示していたのはGalaxy Book 3シリーズは、16型クラムシェルの「Galaxy Book3 Ultra」、16型2in1の「Galaxy Book3 Pro 360」、14/16型クラムシェルの「Galaxy Book3 Pro」、14型2in1の「Galaxy Book3 360」の4つのラインアップが用意されている。いずれもCPUは第13世代Coreプロセッサーとなっている。

Galaxy Book3 Ultra

 Galaxy Book3 Ultraは16型ディスプレイ(2,880×1,800ドット、AMOLED)を採用したクラムシェル型ノートPCで、第13世代Coreプロセッサ Hシリーズ(TDP45W、Core i9-13900HないしはCore i7-13700H)とGeForce RTX 40シリーズ(4070ないしは4050)を選択することが可能になっている。

 重量は5Gなしが1.66kg、5Gありが1.7kgとなっており、Hシリーズ+外付GPUという強力なプロセッサの組み合わせを選択できるのに比較的軽量になっている。

Galaxy Book3 Proの14型

 Galaxy Book3 Proは14型ないしは16型ディスプレイを搭載しているクラムシェル型ノートPC。CPUは第13世代Core(TDP28W、Core i7-1360P)で、ディスプレイはAMOLEDで、解像度はいずれも3K(2,880×1,800ドット)。メモリとストレージは14型が16GB+512GB、16型が16GB+1TB。重量は14型が1.17kg、16型が1.56kg。

Huaweiブースでは昨年発表された第12世代Core搭載のノートPCを展示
日本には未導入のMateBook X Pro
日本では未導入のXiaomi Book S 12.4は、Surface型の脱着式2in1型デバイス、デジタイザペンを左側にバッテリで吸着できる

OPPOは液冷スマホのコンセプトを、Unihertzはアレによく似た特徴的なLEDを活用した背面を持つスマホを展示

OPPOが公開した液冷スマートフォン「OnePlus 11 Concept」を展示

 スマートフォンも、別記事で紹介しているXiaomiのXiaomi 13シリーズをはじめとして、多くの新製品が発表されている。

 中国のスマートフォンメーカーOPPOは、液冷(Liquid Cooling)スマートフォンになる「OnePlus 11 Concept」を展示して注目を集めた。こちらは「OnePlus 11 5G」をベースにして、液冷仕様に改造したものになる。

 ただし、その内部構造は公開されていないため、どのように液冷で冷やしているかは不明だが、従来のスマートフォンに比べて高い排熱性能を持ち、SoCの性能を発揮できるとOPPOでは説明している。何を持って液冷というべきなのかは難しいところで、ヒートパイプの中に液体が流れているのをもって液冷と言っているのかは現時点では明確ではない。

OnePlus 11 Concept

 背面は青く光っており、それが流れるように表現されているのは別に液体が流れてそうなっているのではなく、LEDによるデザイン的な意匠になる。なお、OPPOによればこの液冷のOnePlus 11 Conceptはコンセプトという名前がついていることからも分かるように、あくまでPoCのために作ってみたコンセプト機で、これがこのまま製品として登場する予定はないということだった。

Galaxy S23 Ultra、Sペンを利用できる
Galaxy S23+
Galaxy S23

 また、Samsungは1月の末に発表した新しいスマートフォンGalaxy S23シリーズを展示した。ここスペインでは既にGalaxy S23シリーズが販売されており、既に購入することが可能になっている。

 また、中国のUnihertz(Shanghai Unihertz E-Commerce)は、「Luna」という新しいスマートフォンを発表して同社ブースに展示した。その特徴は背面にあり、背面にLEDが入っていてLEDの光り方などを設定から変更することが可能なほか、音楽再生に同期してLEDを点滅させたりなどの機能が用意されている。この機能が別のスマートフォンメーカーの製品に似ていると話題を呼んでいた。

 なお、同社が現地で配布していた資料によれば、ディスプレイは6.81型、SoCはMediaTekのMT6789、メモリ8GB(LPDDR4)、ストレージは256GB、デュアルSIMカードスロット(Nano SIM)、2G/3G/4G対応などとなっている。

UnihertzのLuna、設定ツールでLEDの表示パターンなどをカスタマイズできる

 このほか、ノキアブランドのスマートフォンを展開するHMD GlobalはMWCの開幕前週に発表していた「Nokia G22」を展示した。Nokia G22はバックカバーが再生プラスチックで製造されるなど持続的成長を意識した設計になっているほか、修理などが容易になるように意識されて設計されていることが特徴となっている。また、フル充電で3日間使えるなどの長時間バッテリ駆動も1つの特徴だ。

Nokia G22

Qualcommは新しいSnapdragon X75 5G modem-RFを発表、来年のスマホやノートPCなどに採用される見通し

Snapdragon X75 5G modem-RF

 Qualcommは、MWCの前に報道発表を行ない、同社の新しい5Gモデムを公開した。発表されたのは「Snapdragon X75 5G modem-RF」と「Snapdragon X35 5G modem-RF」の2つで、前者がコンピューティングデバイス(スマートフォンやPCなど)向けで、後者が「低消費電力IoT向けとなる」。

Snapdragon X35 5G modem-RF

 Snapdragon X75 5G modem-RFの特徴は、無線部分のトランシーバーが最初からミリ波に対応したことだ。従来の世代ではトランシーバーはミリ波、Sub6のものをそれぞれ用意する必要があった。しかし、X75ではその必要がなくなり、1つのトランシーバでミリ波もサブ6もサポートすることが可能になる。

 また、前世代から導入された電波の指向性などをAIが調整する機能が第2世代になり、AIの処理能力が2.5倍になりミリ波のビーム管理などが25%強力になるとQualcommは説明している。また、通信速度に影響を与える部分はミリ波では10の帯域を束ねて、サブ6は五つの帯域を束ねてキャリアアグリゲーションを構成が可能で、最大で下りは10Gbps、上りは3.5Gbpsというスペックになっている。

Sub5で5xCAが可能になっている

 こうしたSnapdragonの単体モデムは、発表された翌年に出荷されて製品に搭載されるほか、年末に発表されることになるであろう、順当に行けば「Snapdragon 8 Gen 3」になる次世代Snapdragonに統合されて出荷されていくことになる可能性が高い。

 また、PC用の5GモジュールとしてM.2カードの形で提供される可能性もあり、来年に販売されるようなPCの5Gモジュールとして搭載されていく可能性が高い。

QualcommはオフラインのSnapdragon 8 Gen 2搭載スマホで、Stable Diffusionを動かすデモを行なう

Snapdragon 8 Gen 2を搭載したデバイス上で、オフライン動作しているStable Diffusionのデモ

 また、Qualcommは、Snapdragon 8 Gen 2を利用して生成AIのアプリケーション「Stable Diffusion」のデモを、エッジデバイス上で行なった。PCでCPUやGPUを利用してもそれなりに処理時間がかかるStable Diffusionだが、今回のSnapdragon 8 Gen 2のデモでは、内蔵しているDSPの「Hexagon」を利用して演算を行なっている。

 あらかじめ学習しておいた推論用のデータをローカルにダウンロードしておき、その後機内モードにしてネットワークから切り離された端末上で行なわれ、例えば「F1, car, course」などの指示を与えると、十数秒程度でレーストラック上のF1カーを書き出した。

Stable Diffusionが画像を生成していく様子

 今回行なわれたのはあくまでもデモであって、これが現在発売されているSnapdragon 8 Gen 2上のデバイスで動くというものではないが、スマートフォンでもそうした生成AIが利用できる可能性を示唆しているデモとして注目してよいだろう。