ニュース
東北大学、バイオマス素材から半導体特性を発見。木材の電子素子実現へ
2023年1月11日 12:05
東北大学は10日、セルロースナノファイバー(CNF)に半導体特性を発見したと発表した。バイオ素材による半導体作製の可能性が期待される。東北大学未来科学技術共同研究センターの福原幹夫リサーチフェロー、同大学大学院工学研究科附属先端材料強度科学研究センターの橋田俊之教授らの研究グループによる成果。
研究グループでは、CNFの蓄電体機能に関する先行研究をもとに、絶縁体である紙やセルロースを微細構造体として組織化することによって、電荷分布や電子移動を発現できる可能性があるとの予想から、さまざまな条件でCNFの電荷分布や電子移動を電圧制御により検討していた。その結果、一年草のケナフから作製したアモルファスケナフセルロースナノファイバー(AKCF)シートに、n型半導体の特性を見出したという。
ちなみにn型半導体は、真性半導体(シリコン結晶のみで構成された半導体)にリンやヒ素、アンチモンを添加することで自由電子を持たせた半導体のこと。
実験では繊維径10~30nmのAKCFシートを作製し、I-V特性、ACインピーダンス、周波数解析、蓄電性について測定したところ、半導体的特性が出現したとしている。I-V特性の測定結果としては負電圧領域において電流の電圧依存性が反転するn型半導体特性の挙動が観察されたという。また、直流通電時の並列回路(低伝導帯)から交流通電時の並列回路(高伝導帯)に変化するN型負性抵抗の挙動も示した。
植物由来の半導体が開発できれば、その特性からシリコンやレアメタルを用いた化合物半導体よりも低環境負荷で廉価な半導体が実現できることになる。また日本に豊富に存在する森林資源の活用によって、紙の特性を利用したペーパーエレクトロニクスの実用化が期待されるとしている。