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カニの殻が半導体や蓄電池に利用できる可能性。東北大らが発見

-210Vから+80Vまでの電圧間を1.24V/sの上下速度で掃引した時のI-V特性

 東北大学未来科学技術共同研究センターと東京大学による研究グループは25日、カニの殻が半導体や蓄電池に利用できる可能性があるとの研究結果を発表した。

 グループでは以前、植物性ケナフを原料としたセルロースナノファイバー(CNF)が、高蓄電特性やn型半導体の特性などを持つことを発見。今回の研究では、植物性セルロースに分子構造が類似している動物性キトサンに着目した。

 キトサンは、カニの殻やイカの骨、菌類の細胞壁などを構成するキチンから容易に生成できるバイオマス化合物。バイオマス化合物としてはセルロースに次いで地球上で2番目に多いとされるが、大きな用途が見つかっておらず、廃棄物として扱われてきた。

 研究では、紅ズワイガニの殻から作ったキトサンナノファイバー(ChNF)を原料としたChNFシートを使ったデバイスを作製。I-V(電流-電圧)特性や蓄電性などを解析・測定したところ、直流/交流変換、スイッチング効果、整流作用といった半導体特性と蓄電効果が発現することが分かった。

 現在幅広い分野の必須素材として利用される半導体だが、その多くは鉱物から金属錬成したものや人工化合物で、生産工程での所要エネルギーや環境負荷が大きいことが指摘されている。研究グループでは今回の結果により、半導体や蓄電の分野において、通常は廃棄される天然由来のバイオ素材の利用が期待でき、循環型社会の構築にもつながるとしている。