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Qualcomm、Cortex-X3とHWレイトレで性能を強化したSnapdragon 8 Gen 2

Qualcommが発表したSnapdragon 8 Gen 2(写真提供:Qualcomm)

 Qualcommは、例年年末に行なっている「Qualcomm Snapdragon Summit」を、11月15日~11月17日(日本時間11月16日~11月18日)の3日間に渡って、米国ハワイ州マウイ島にあるホテルにおいて開催している。

 初日の基調講演に先立って報道発表が行なわれ、同社のスマートフォン向けハイエンドSoCとなるSnapdragon 8シリーズの最新製品となる「Snapdragon 8 Gen 2」が発表された。

 Snapdragon 8 Gen 2は、CPU、GPU、そして主に同社AIエンジンの演算に利用されるDSPも強化され、ゲーミング時の性能やAI推論時の性能が引き上げられている。

Cortex-X3で強化されたCPUと、HWレイトレーシングエンジンを搭載したGPUで性能強化

ハイエンドスマートフォン向けのSnapdragon 8 Gen 2はCortex-X3でCPUを強化、GPUはハードウェア・レイトレーシング・エンジンを採用(写真提供:Qualcomm)

 Snapdragon 8 Gen 2は、昨年(2021年)Qualcommが発表し、今年(2022年)のAndroidベースのハイエンドスマートフォンに採用されているSnapdragon 8 Gen 1の後継となる製品だ。Snapdragon 8 Gen 1が5nmのプロセスノードで製造されていたのに対して、同じ5nm世代でも少し微細化が進んだ4nmに変更されている。

 CPUのKryoには、プライムコアと呼ばれるレイテンシ削減に最適化されたハイパフォーマンスコアを1つ備えており、Arm Cortex-X3に強化されている。このほか、現時点では詳細は明らかにされていないが、パフォーマンスコアが4コア、電力効率重視のコアが3コアあるという構成になっている。

 GPUのAdrenoも強化されており、ハードウェア・レイトレーシング・エンジンを内蔵した。こちらも現時点では詳細は明らかにされていないが、ゲームソフトウェアがこのエンジンを利用すると、写真品質のゲーム画面を汎用GPUの部分に負荷をかけずに行なうことができるようになる。

 こうした改良により、GPUでは25%の性能向上、CPUは40%の電力効率の改善が行なわれ、バッテリ駆動時間を犠牲にすることなく性能を向上できるという。

ハードウェア・レイトレーシングに対応するなどしてGPUが強化されているSnapdragon 8 Gen 2(写真提供:Qualcomm)

 また、CPU、GPUと一緒にQualcomm AI Engineを構成しているDSPのHexagonも強化されており、従来世代に比べてAI推論時の性能が4.35倍になっている。INT4と低精度の演算を利用して正確性を犠牲にせずにAI推論が行なえるようになったことも特徴の1つで、従来モデルと比較して60%電力効率が改善される。

 写真や動画の処理を行なうISP(Image Signal Processor)も強化されており、18bitのトリプルISPという構成は同様だが、Sony Semiconductorが開発した新しいイメージセンサーに最適化。クアッド・デジタル・オーバーラップHDRに対応したカメラを実現可能になっているほか、Samsungのイメージセンサー「ISOCELL HP3」と組み合わせると2億画素のカメラが実現可能で、プロフェッショナル用のカメラやビデオカメラとして利用できる見通しだ。

 そのほか、AV1のハードウェアデコーダが搭載され、AV1の8K/60fpsの動画をCPUやGPUに負荷をかけずに再生可能になる。

10Gbpsの5GやWi-Fi 7に対応可能なワイヤレス、最初の搭載製品は2022年の終わりまでに登場する見通し

FastConnect 7800 Systemと組み合わせると5.8GbpsのWi-Fi 7を利用可能に(写真提供:Qualcomm)

 演算系だけでなく、無線周りやオーディオ系も改良され、無線関連では、セルラーモデムは「Snapdragon X70 5G Modem RF System」へと強化されている。

 Snapdragon X70 5G Modem RF Systemは今年の春に単体モデムとして発表された製品で、NSA/SAのどちらにも対応しており、Sub-6、ミリ波の両方をカバーする。ミリ波の8CAなどを活用すると最大で下り10Gbps、上り3.5Gbpsという通信速度を実現可能だ(ただし、通信キャリア側がCAをサポートしている必要がある)。

 5G Dual-SIM Dual-Active(5G DSDA)に対応しており、5G+5G、5G+4Gの組み合わせで同時に2つのSIMカードを有効にして着信待ちと、どちらかでのデータ通信が可能になる。

 また、単体のWi-Fiの通信チップとして提供される「FastConnect 7800 System」と組み合わせると、Wi-Fiをいち早くWi-Fi 7に対応させることが可能になる。

 Wi-Fi 7では5.8Gbpsでの通信ができるため、10Gbpsの光インターネット回線などを引いている家庭や事務所などでは回線性能の限界まで利用可能になる。BluetoothはBluetooth 5.3に対応しており、LE Audioに対応しているほか、aptxX/aptX Losless/aptX Adaptive/aptX Voiceなどの追加コーデックをサポートしている。

Snapdragon 8 Gen 2を搭載したデバイスを発売するスマートフォンベンダ(写真提供:Qualcomm)

 Qualcommによれば、Snapdragon 8 Gen 2はASUS Republic of Gamers、HONOR、iQOO、Motorola、nubia、OnePlus、OPPO、REDMAGIC、Redmi、シャープ、ソニー、vivo、Xiaomi、XINGJI/MEIZU、ZTEなどのOEMメーカー採用する予定になっており、最初の商用ベースの製品は今年の終わりまでに登場する見通しだ。

Snapdragon 8 Gen 2を搭載したスマートフォンのイメージ(写真提供:Qualcomm)