ニュース
Qualcomm、スマホ向けハイエンドSoC「Snapdragon 8 Gen 1」。AI性能4倍、GPU性能30%増
2021年12月1日 08:00
Qualcommは、11月30日~12月1日(現地時間、日本時間12月1日)に、米国ハワイ州において同社のプライベートイベント「Snapdragon Tech Summit 2021」を開催しており、同社の新しいSoC(System on a Chip)の発表などを行っている。それに先だって報道発表を行ない、新しいプレミアムセグメントのスマートフォン向けSoCとして「Snapdragon 8 Gen 1」を発表した。
Snapdragon 8 Gen 1は新Kryo CPU(Cortex-X2搭載)、30%性能が向上し25%消費電力が低下した新Adreno GPU、さらにはそれらのCPU/GPUと組み合わせてAIの推論機能を実現する新Hexagon DSPなどを搭載しており、AIの性能は従来世代に比較して4倍になっている。
そのほか、3つの18bit ISPを内蔵する新Spectra ISPにより写真や動画撮影の画質を引き上げることを可能に、Snapdragon X65 5G Modem-RFを採用することで3GPP Release 16に対応し、下り最大10Gbpsの伝送速度を世界で初めて実現している。
新しい「1桁数字+世代」のブランド名が導入。世代を示す数字は廃止
今回Qualcommが発表したのはSnapdragon 8 Gen 1で、昨年(2020年)Qualcommが発表し、今年(2021年)販売開始されたプレミアムスマートフォンに採用されている「Snapdragon 888」の後継となる製品。
Snapdragon 888までQualcommは「Snapdragon+3桁の数字」というブランド名の仕組みを採用していた。3桁の数字のうち、最初の桁がどのセグメント向けの製品であることを示しており、8はプレミアム向け、7はプレミアムとミッドレンジの中間、6はミッドレンジ、4はバリュー向けなどとなっていた。このスキームで様々な製品が登場し、昨年このスキームの中での最高峰となる888という数字を使ったことで、今年は889や899とかぐらいしか数字がなくなりつつあった。
そこでというわけではないが、今回導入するプレミアムセグメント向けの製品から一新された新しいブランドスキームが導入されることになった。Snapdragon+数字一桁+世代(Gen *)の組み合わせになっており、その最初製品が今回発表されたSnapdragon 8 Gen 1となる。Qualcommはまだミッドレンジやバリュー向けの製品名に関しては発表していないが、これまでの慣例でいけば今後Snapdragon 6 Gen 1やSnapdragon 4 Gen 1などがおいおい発表されることになるだろう。
なお、Qualcommの日本法人によれば、Snapdragon 8 Gen 1は、日本でもSnapdragon 8 Gen 1という表記が採用され、「第1世代Snapdragon 8」のように日本語で世代を示す文字に変換されることはないという。
また、従来Qualcommは例えばCPUは「Kryo 680」、GPUは「Adreno 660」、DSPは「Hexagon 780」、ISPは「Spectra 580」といずれもSoCに内蔵されているプロセッサーにはブランド名がつけられてきた。このブランド名には3桁の数字が加えられており、古い世代よりも数字が大きくなることで新世代であることが一目瞭然となっていた。し
かし、今回からこの3桁の数字が廃止され、CPUは「Kryo」、GPUは「Adreno」のようにプロセッサは単にブランド名だけで呼ばれるようになる。これは、SoC全体のブランド名を強調するための措置だと考えられる。
CPUはCortex-X2に対応し、GPUは30%性能向上、電力効率は25%削減
CPUの新Kyroは、Armの最新ハイエンドCPUであるCortex-X2が採用されていることが明らかにされている。Snapdragon 888に採用されていたKryo 680は、Cortex-X1が1コア、Cortex-A78が3コア、Cortex-A55が4コアという構造になっていたが、今回Cortex-X2を採用した以外の詳細はまだ明らかになっていない。
GPUの新Adrenoも詳細は明らかになっていないが、従来のAdreno 660に比較して30%描画性能が向上しており、同時に電力効率は25%改善している。
また、Snapdragonでは、CPU、GPUそしてDSPとなるHexagonが搭載されており、それらをソフトウエアのレイヤーで異種混合(ヘテロジニアス)に利用して高い推論性能を行なうことを可能にしていた。今回に新Hexagonに内蔵されているTensor Acceleratorが従来製品の2倍高速になり、同時にシェアードメモリが2倍になったことや、CPU/GPUが高速になったことを合わせて、従来製品に比べて4倍のAI性能を実現している。
ISP(Image Signal Processor)の強化がこの世代の大きなポイントで、新SpectraはCCDからのデータ入力が18bitに対応したISPを3つ内蔵している。これにより従来の14bitのISPに比べて4,000倍多くのデータを処理することが可能になる。そうしたISPの機能を利用して3.2Gピクセル/秒までキャプチャ速度を向上させることができ(Snapdragon 888では2.7Gピクセル/秒)、8K HDRの動画撮影が可能になるほか、それぞれ3,600万画素/30fpsの3カメラ、6,400画素/30fps+3,600万画素/30fpsの2カメラ、1億800万画素/30fpsの1カメラという構成が可能になる。
なお、これらの詳しい詳細は、現在行われているSnapdragon Tech Summit 2021の中で明らかにされるものと思われる。詳細がわかり次第別途レポートしたい。
下り10Gbpsに対応。ソニー、シャープ、Xiaomiなどが採用予定
無線周りの強化もSnapdragon 8 Gen 1の大きな特徴になる。従来のSnapdragon 888では、Snapdragon X60 5G Modem-RFがモデムとして採用されていたが、Snapdragon 8 Gen 1ではSnapdragon X65 5G Modem-RFへと強化されている。
Snapdragon X65 5G Modem-RFは3GPP Release 16に世界で初めて対応し、下り最大10Gbpsの通信速度を世界で初めて実現している。従来のSnapdragon X60 5G Modem-RFではミリ波時に800MHzの帯域を8キャリア/2x2MIMO、サブ6時には200MHzの帯域を4X4MIMOで通信することが可能だった。
Snapdragon X60 5G Modem-RFではミリ波が1,000MHzの帯域を8キャリア/2x2MIMO、サブ6時には300MHzの帯域を4X4MIMOで通信することが可能になっており、最大10Gbpsで通信することが可能になる(ただし、通信キャリアがその速度を実現するCAに対応することが条件になる)。
Wi-FiとBluetoothに関してはFastConnect 6900を搭載しており、基本的にはSnapdragon 888と同じように、Wi-Fi 6およびWi-Fi 6E、Bluetooth 5.2に対応し、Bluetooth LE Audioにも対応している。
Qualcommによれば、Snapdragon 8 Gen 1は、4nmプロセスルールで製造され、既にBlack Shark、Honor、iQOO、Motorola、Nubia、OnePlus、OPPO、Realme、Redmi、シャープ、ソニー、vivo、Xiaomi、ZTEといったスマートフォンメーカーの製品に採用され事が決まっており、搭載製品は2021年終わりから登場する見通しだ。