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KDDI研究所、光ファイバーの信号成分を9倍に向上させ、伝送容量を3倍にする技術

新しい伝送方式

 株式会社KDDI総合研究所は、光ファイバーの中で生じる四光波混合現象を利用し、入力した光信号成分を伝送後に9倍に向上させる方式を発明し、実証に成功したと発表した。これにより、将来的には光ファイバーの伝送容量を3倍にできることが見込まれる。

 この技術は、「信号光1(周波数f1)」と「信号光1の複素共役(ある位相変調信号の位相の増加と減少の様子が反転した信号を指す、周波数f2)」を光ファイバーに入れて伝送すると、f1の2倍からf2を引いた周波数と、f2の2倍からf1を引いた周波数に、信号光の成分(SN比)が9倍大きくなった光が出現する「非線形光学効果(四光波混合)」を応用した。

 そして光ファイバーの波長分散がゼロとなる周波数を、ちょうどf1とf2の間になる条件に設定し、信号光としてラジオのFM信号のような角度変調を施すことにより、光信号成分が約9倍大きくなった光の出現を確認した。

 SN比が大きく改善することにより、例えば変調方式を1シンボルあたり2bitの情報が送れるQPSK(四位相偏移)信号から、1シンボルあたり6bitの情報を送れる64QAM(64値直交振幅変調)信号への変更が可能になり、これにより伝送容量を約3倍にできるとしている。

 この研究結果は、光通信分野の世界最大規模の国際学術会議「OFC2021」で採択された。Beyond 5G/6G時代に向けて、データ通信需要の増加を支える基礎技術として活用が期待される。

非線形光学効果の応用