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産総研、1秒でBD 60万枚分のデータを転送する光スイッチ技術。光ファイバーで1.25億Gbpsの伝送容量を達成可能に

光スイッチを活用した次世代大規模データセンター・スーパーコンピューター構成のイメージ(出典:産総研)

 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下、産総研)のプラットフォームフォトニクス研究センターは4日、シリコンフォトニクス光スイッチを用いた大規模光ファイバーネットワークにおいて、1.25億Gbpsの伝送容量を達成可能であることを発表した。

 光スイッチは、光ファイバー通信において入力ファイバーの光を、出力ファイバーへ繋ぎ替える回線交換機の役割を担う装置。現在主流の電気スイッチよりも高いエネルギー効率を持ち、信頼性・量産性に優れる。多段に接続することで高速な大規模光ネットワークを構築できるが、接続時のクロストーク(ノイズの混入によるデータの変質)が制限要因となって、大規模化/省電力化/低遅延化の障壁となっていた。

 産総研が今回発表した成果は、光スイッチのポート(経路)間で生じるクロストークを統計的に解析し、その影響を正確に予測することで、少ない誤差でクロストークの影響を推定でき、結果として良好な信号品質の基準値を予測する方法論を確立したこと。ネットワークの設計や運営時に達成が見込めるポート数(ネットワーク規模)や伝送容量が高い精度で予測可能になった。

 検証実験では32×32ポートの光スイッチネットワークを6~9周伝送させて、9段伝送後のクロストークの影響値を予測。誤り訂正技術を適用する前でも誤り訂正限界(誤り訂正技術によりエラーのない伝送が実現できるビット誤り率の上限値)を下回る結果が得られたとしている。

 冒頭の1.25億Gpsという伝送容量の数値は、13万1,072ポート規模の光ファイバー通信ネットワークにおいて達成できるとされたもので、産総研によれば次世代データセンターやスーパーコンピューターに応用できる規模であるとのこと。Blu-ray Disc 60万枚以上の情報を1秒で転送できることになる。

 今後は光スイッチを用いたネットワークの実用化および量産化に向けた技術開発を継続するとともに、さらなるポート数/総容量の拡大を目指すという。

送信波形 (上段図)、9段通過後の受信波形 (下段図)、それぞれスペクトル (左段図)、信号点配置 (右段図)を示す(出典:産総研)
ビット誤り率(6~9段伝送後)の推定値と実測値(出典:産総研)
関連するスイッチの容量、エネルギー効率、ポート数の比較(出典:産総研)

【お詫びと訂正】初出時のタイトルで、「1.25億Gbps」の「G」が抜けておりました。お詫びして訂正させていただきます。