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ビデオカード高騰中の今だから気になる内蔵GPU性能。第11世代Core&Ryzen Gでどこまで戦える!?

 ビデオカードが品薄&高騰でなかなか手が出ない。一方で、内蔵GPUは低スペックと言われるが、少しずつ進化を続けている。価格が落ち着くまでCPUの内蔵GPUでがんばりたいけど、実際のところ、どれくらいゲームがプレイできるのだろう?

 ここでは、IntelとAMDから四つのCPUをチョイスして人気ゲームがどこまでプレイできるか挑戦。目指せ平均60fps!(TEXT:芹澤正芳)


 Bitcoin高騰による爆発的なマイニングブームや世界的な半導体不足、コロナによる物流の停滞など、複数の要因によってビデオカードが品薄になり、その結果、価格が大幅に上昇してしまったのはご存じのとおり。ビデオカードの流通量が増えて価格が落ち着くのを待ちたいけど、ゲームもプレイしたいと考えているゲーマーは多いハズ。今回はCPU内蔵のGPUでどこまでゲームが楽しめるのかチェックしてみたい。

 IntelのCPUからエントリーしたのは、Core i7-11700KとCore i5-11400。第11世代Coreから内蔵GPUはXeアーキテクチャに変更され、性能が大幅に向上した。となれば、ゲームもそれなりにプレイできると期待したいところだ。AMDからは、Ryzen 7 PRO 4750GとRyzen 3 3200Gをチョイス。内蔵GPUはRadeonの技術が使われているだけに、Intelに比べて高性能なのは有名だ。3200Gは2019年発売で、アーキテクチャはZen+と古い。これである程度ゲームが遊べたら、価格も安めなので結構オイシイCPUと言える。

参戦したCPUたち

Intel
Core i7-11700K
実売価格:48,000円前後
Xeアーキテクチャ採用のUHD Graphics 750を内蔵。従来のUHD Graphics 630に比べ1.6倍をうたう性能に期待が高まる
Intel
Core i5-11400
実売価格:24,000円前後
同じくXeアーキテクチャだが、スペックは若干落ちるUHD Graphics 730を内蔵。6コアで2万円台半ばの実力はどうか
Advanced Micro Devices
Ryzen 7 PRO 4750G
実売価格:47,000円前後
Vegaアーキテクチャを採用、GPUが高クロック動作と今回もっとも注目すべきCPU。バルク版しか販売されていないのが難点
Advanced Micro Devices
Ryzen 3 3200G
実売価格:20,000円前後
Vega 8 Graphicsを内蔵と2万円のCPUとしては高いグラフィックス性能を持つ。これでゲームができれば御の字だが
スペック比較表
Core i7-11700KCore i5-11400Ryzen 7 PRO 4750GRyzen 3 3200G
製造プロセス14nm14nm7nm12nm
コア/スレッド数8/166/128/164/4
対応メモリDDR4-3200DDR4-3200DDR4-3200DDR4-2933
内蔵GPUUHD Graphics 750UHD Graphics 730Radeon GraphicsRadeon Vega 8 Graphics
演算ユニット32基24基8基8基
SP256基192基512基512基
GPUクロック1,300MHz1,300MHz2,100MHz1,250MHz
TDP125W65W65W65W

比較用ビデオカード

ASUSTeK Computer
GTX1650-O4G-LP-BRK
NVIDIAのエントリーGPU「GeForce GTX 1650」を搭載するLow Profile対応のビデオカード。ビデオメモリはGDDR5の4GB
ZOTAC Technology
GeForce GTX 1060 6GB AMP Edition
2016年7月に発売されたミドルレンジGPU「GeForce GTX 1060」搭載カード。現在でも通用するか気になるところだろう

軽いゲームならフルHDで遊べる?

 軽めの人気ゲームから試してみよう。フルHD解像度で快適なプレイの目安と言える平均60fpsを出せるかに注目だ。まずは、2015年発売ながらいまだ人気のリアル系FPSの「レインボーシックス シージ」から。検証の結果、AMDのCPUならフルHDでもプレイ可能。Intel系は快適なプレイは厳しい結果だ。

 次は低スペックのPCでも楽しめることから、学生にも人気のFPS「VALORANT」。軽いFPSの代表格だけあって、どのCPUでも中程度の画質まで平均60fpsを達成。画質を最低まで下げれば、144Hzなど高リフレッシュレート液晶も活かせるフレームレートが出せる。ただ、最低画質だとかなりグラフィックスは省略され、見た目はちょっと貧相に。

 2016年発売の人気格闘ゲーム「STREET FIGHTER V」は、フレームレートの上限が基本60fpsだ。それをいかにキープできるかがポイントだが、画質を「低」にすればどのCPUでもイケるのはうれしいところ。

レインボーシックス シージ

Steamからの起動時に「Vulkan」を選択。グラフィックの「総合品質」から画質を設定している。画質を「高」にするとテクスチャの品質が一気に向上し、リアルな描画となるのが分かる
(c) 2015 Ubisoft Entertainment. All Rights Reserved.

VALORANT

画質「最高」に対して、「中程度」は細かな葉っぱが省略されているのに加え、全体的にちょっとボヤッとした画面になる。壁の描画も簡略化するなどゲームの雰囲気こそ変わっていないが、細かな表現には大きな差がある
(c) 2021 RIOT GAMES, INC.

STREET FIGHTER V

低画質設定ほどスケーリング解像度が低くなり、ボヤッとした画面に。影やエフェクトの効果も弱くなる。もちろん画質がプレイに影響することはないが、画質「低」だとキャラクターの輪郭もザラっとしてしまう
(c)CAPCOM U.S.A., INC. 2016, 2021 ALL RIGHTS RESERVED.

中量級ゲームも設定しだいではイケる?

 人気のバトルロイヤル系ゲーム「Apex Legends」と「フォートナイト」をフルHDで遊ぶことは可能なのか。どちらも、そこそこ高いスペックを要求する“中量級”と言うべきゲーム。Apex Legendsは、必要動作環境にCPUの内蔵GPUは含まれていない。そのため、画質設定をすべて一番下に設定しても、Ryzen 7 PRO 4750Gでようやく平均60fpsに到達とやや重めのゲームと言える。ある程度の画質でプレイしたいなら、やはりビデオカードが欲しいところだ。

 フォートナイトは必要動作環境に内蔵GPUのIntel HD Graphics 4000が含まれている上に、まだテスト段階だが描画を簡潔にして負荷を下げるパフォーマンスモードも用意。これを利用すればフルHDかつ3D解像度を100%に設定してもCore i5-11400で約67fpsと十分快適にプレイできるフレームレートを出せる。これは「フォートナイトなら内蔵GPUでも楽しめる」と言ってよいだろう。

Apex Legend

画質「最低」では、テクスチャが表現が大幅に簡略化され、ボヤッとしてしまう。キャラクターの腕周辺を見ると分かりやすい。見栄えをよくするならテクスチャーストリーミング割り当てを「最低(2GB)」以上にしたい
(c) 2021 Electronic Arts Inc.

フォートナイト

画質「低」(画面左)だと3D解像度は44%とかなり粗い。見栄えを考えるとパフォーマンスモードを有効にしたり、画質設定は下げつつ、3D解像度を100%にするのがポイント。右の画面を見れば、その効果がよく分かる
(c) 2021, Epic Games, Inc.

高クロックメモリで性能は伸びる?

 CPUの内蔵GPUは、専用のビデオメモリが搭載されておらず、グラフィックスの描画にはメインメモリの一部を使用するのが一般的だ。そのため、メインメモリの動作クロックが描画性能に影響する。たとえばDDR4-2666の帯域幅は21.3GB/sだが、DDR4-3200なら25.6GB/sまで上昇する。3Dゲームは大量の描画データをやり取りするため、メモリの帯域が狭いと、そこがボトルネックになってフレームレートが伸びないことがある。

 実際、ベンチマーク結果を見て分かるとおり、高クロックのメモリほど良好な結果が出ている。レインボーシックス シージではどの設定でも15%前後のフレームレート向上が見られた。内蔵GPUの性能を少しでも引き出したいなら、高クロックメモリを選んだほうがよい。ただし、どこまで高いクロックのメモリが動くかはCPUやマザーボードの組み合わせによって大きく変わる。事前にマザーボードがサポートするメモリの一覧をメーカーのWebサイトなどで確認しておこう。

 また、OCメモリを使う際は、UEFIメニューで「XMP」を有効にしないと、最大クロックで動作しない。チェックを忘れずに。

OCメモリはUEFIメニューでOCで動作するためのプロファイル「XMP」を有効にしないと定格で動作してしまう。たとえばDDR4-3600対応のOCメモリでも、定格ではDDR4-2666などになっていることがほとんどだ
【検証環境】

[Intel環境]マザーボード:ASRock H570 Steel Legend(Intel H570)、[AMD環境]マザーボード:MSI MPG X570 GAMING EDGE WIFI(AMD X570)、[共通]メモリ:センチュリーマイクロ CB8G-D4U3200H(PC4-25600 DDR4 SDRAM 8GB ※各CPUの定格で動作)×2、SSD:Micron Crucial MX500 CT1000MX500SSD1/JP(Serial ATA 3.0、1TB)、CPUクーラー:Corsair iCUE H115i RGB PRO XT(簡易水冷、28cmクラス)、電源:Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)、OS:Windows 10 Pro 64bit版、比較用ビデオカード:Intel環境にCore i7-11700Kを搭載してテスト、レインボーシックス シージ:内蔵ベンチマーク機能で測定、VALORANT:「最低」はすべての設定を一番下またはOFF、「中程度」は3段階に設定できるものは「中」、アンチエイリアスはMSAA 2x、異方性フィルタリングは4x、そのほかはOFF。「最高」はすべての設定を一番上またはONとし、射撃場の一定のコースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で計測、STREET FIGHTER V:STREET FIGHTER V ベンチマークで測定、Apex Legends:画質「最低」はすべての設定を一番下または無効、「低程度」はアンチエイリアスをTSAAに、テクスチャーストリーミング割り当てを最低に、テクスチャフィルタリングを異方性2X、モデルディテールを中とし、トレーニングモードの一定のコースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で計測、フォートナイト:パフォーマンスモードに切り換えて3D解像度を100%に設定、DirectX 12モードで画質「低」に設定、その画質「低」の3D解像度を100%に設定、という3パターンでソロプレイのリプレイデータを再生した際のフレームレートを「CapFrameX」で計測

DOS/V POWER REPORT 2021年夏号では「最新CPU 7番勝負」と題した特集を掲載している。IntelとAMDの主な現行ラインナップのベンチマーク比較や対応マザーボード、OC耐性など、さまざま観点から最新CPUについて掘り下げている。このほか750W&1,000W電源の徹底比較、冷却重視タイプのATXケース検証など、この夏買うべきパーツがバッチリ分かる1冊に仕上がっている。