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早稲田大、次世代ディスプレイ設計に寄与する色鮮やかな発光デバイスを開発
~従来と異なる高彩度なフレキシブルディスプレイの実現にも期待
2020年9月4日 21:01
早稲田大学の研究チームは4日、液体材料ベースで極めて色鮮やかな発光を示すデバイスの開発に成功したと発表。曲げ耐性の強さと色鮮やかな発光が必要なフレキシブルディスプレイや、多彩な色再現や低電力を実現する量子ドットを用いたディスプレイの設計に寄与できるとしている。
早稲田大学では、微細な流路構造により液体を制御するマイクロ流体技術を組み合わせた「マイクロ流体有機EL」を開発し、強い曲げ耐性を持ったフレキシブルデバイスや、劣化した液体発光層を入れ替えて発光を再生するデバイスを展開していた。しかし、従来の液体有機半導体を用いた発光デバイスは、発光色が鮮やかではないという欠点があり、ディスプレイへの応用の課題となっていた。
今回の研究では、従来の液体発光材料に加えて量子ドット水溶液を組み合わせることで、フレキシブルディスプレイに不可欠な「曲げへの強い耐性」はそのままに、課題となっていた発光色の彩度を強めることに成功した。
実証実験では、ガラス基板とITO(酸化インジウムスズ)透明電極で構成されるバックライト上に、シリコーンゴムを用いて作製した流路構造を積層し、青色の液体発光材料をバックライト部に、緑と赤色の量子ドット水溶液をシリコーンゴム製の流路にそれぞれ注入したデバイスを作成。
流路の深さを制御し、デバイスに電圧を印加することにより、従来よりも彩度を高めた青色、緑色、赤色の発光をそれぞれ得ることに成功した。
緑と赤の発光は、色を示す波長の値であるスペクトル値において、波長が狭く(色が強い)、かつ強度のある緑と赤の発光であることを示したほか、色度図においても極めて色鮮やかな発光と測定された。
また、同実験で流路の深さを増大させることで量子ドットの発光層を厚くしたところ、緑色/赤色ともにさらにスペクトルの波長が狭くなる変化が起きた。
これは、量子ドットが粒子サイズによって光学特性が変化する特徴が表れたもので、流路の深さを増大させることにより、粒子サイズの小さなものから大きなものへとエネルギー移動が起きるもう一つの特徴の影響も受け、粒子サイズの大きなものからの発光が支配的になることを示している。
研究チームはこの結果について、量子ドットを用いたディスプレイの作製に大いに貢献すると考えられるとしており、今回の研究成果をフレキシブルディスプレイへ応用するため、実際にフレキシブル基盤を用いたデバイスの作製を進めるとともに、色鮮やかな青色発光の実現と各発光色の最適化に向け、液体有機半導体に添加する固体有機半導体ゲスト分子の検討を行なうとしている。