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テレワーク特需で沸く個人向けPC市場。好調はいつまで続く?

PC市場の販売台数指数

 BCNの調べによると、大手量販店などにおける2020年6月のPCの販売台数が、前年同月比19.1%増となり、4月以降、3カ月連続で、2桁成長を遂げた。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴って増加したテレワーク需要に支えられたものだといえる。

4月以降2桁増が続くPC市場

 BCNは、ビックカメラやエディオンをはじめとする全国の家電量販店や、AmazonなどのECサイトなど、24社の提供店から収集したPOSデータをもとに販売実績を集計している。

 これによると、2020年3月のPCの販売台数は前年比5.8%減と前年実績を下回ったが、4月は前年同月比29.0%増、5月は43.4%増となったのに続き、6月も19.1%増となった。

 法人向けPCの販売は、5月から低迷しており、業界団体である一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の国内PC出荷統計によると、4月には前年同月比5.3%増とプラスになったが、5月は21.7%減と大幅に減少。その理由として、法人向けPCの販売が大きく落ち込んだことをあげている。だが、その一方で、個人向けPCは具体的な数値は明らかにしていないが、5月も前年実績を上回った模様だ。

 主要PCメーカーによると、6月は引き続き、法人向けPCの需要は停滞した様子だが、個人向けPCは好調を持続しているとの声があがる。今回のBCNの調査データでも、個人向けPCの好調ぶりが裏付けられた格好だ。

 個人向けPCが好調な背景には、在宅勤務などにおいて、個人向けPCが利用されていることがあげられる。

 量販店では、「在宅勤務用に個人向けPCを購入する動きが見られている。同じPCをまとめて購入する例が見られる」とする声があがっているほか、PCメーカーからも、「在宅勤務用として個人向けPCを仕入れる動きが目立つ」との声もあがる。

 法人向けルートでは、PCの品薄状態が続いており、納品に時間がかかることから、商品をすぐに持ち帰ることができる量販店で購入することで、すぐに在宅勤務を開始したいという動きもあるようだ。

 とくに中小企業などでは、個人が所有するPCをそのまま仕事に利用するといった「BYOD」が進んでいたり、セキュリティポリシーが大手企業ほど厳格でないことから個人向けPCを社内システムに接続して利用するといった例が多く、PCメーカーの調査によると、約45%の企業で個人購入のPCが利用されていることがわかっている。また、共働きの夫婦がそれぞれのPCを用意したり、子供のオンライン学習用にPCを調達したりといったように、一家に複数台の環境が増えていることも影響しているようだ。

ノートPCが好調、平均単価も上昇へ

PCの平均単価推移

 BCNのデータでは、ノートPCの好調ぶりも明らかになっている。

 ノートPCの販売台数は、4月は前年同月比46.4%増、5月は51.1%増となり、6月も23.5%増という高い伸びを見せている。これもテレワーク需要に支えられたものとなっている。在宅勤務では場所を取らないノートPCを導入する傾向が強く、子供や家族がいる場所から離れて作業をするために、リビングやダイニング、寝室を移動するといった場合にも、持ち運べるノートPCが重宝するとの声もあがっている。

 それに対して、デスクトップPCは、Windows 7のサポート終了の特需があった2020年1月は前年同月比45.4%となったが、2月以降は前年割れで推移しており、6月も8.8%減となり、5カ月連続でのマイナス成長となっている。

 もう1つ注目しておきたいのが平均単価の推移だ。

 2020年3月までは10万円台だった平均単価は、テレワーク需要によって販売台数が前年実績を上回り始めた4月以降、11万円台に突入。5月は113,600円、6月には112,300円となっている。買い替え需要が集中した2020年1月のWindows 7のサポート終了時には、平均単価が103,900円だったことと比較すると、約1万円も上昇していることがわかる。

 また、ノートPCの平均単価も、2月以降、上昇傾向にあり、5月には111,800円、6月には110,600円と、やはり11万円台に突入した。

 「4月までは、特別定額給付金の10万円以内で購入したいという声も多かったが、在宅勤務でオンライン会議システムを利用するケースが多くなり、一定のスペックを持ったノートPCを選ぶ購入者が増加している」という。

 たとえばZoomの場合には、推奨スペックがCore i3以上、メモリが4GB以上となっており、これをベースとして、より最適なノートPCを選択するということが多くなり、その結果、平均単価が高くなっているようだ。

この勢いはいつまで続くのか

 一方で、この勢いがどこまで続くのかという点については、業界内では厳しい見方が出ている。

 Intel製CPUの供給不足が依然として続いていること、中国やアジアの部品の生産拠点が再開しているものの、フル稼働状態ではなく、サプライチェーンに不安があること、さらに、GIGAスクール構想による教育分野へのPC導入が7月以降、本格化すると見られており、それに伴い、個人向けPCの生産量が影響を受ける可能性を指摘する声もある。

 また、2019年9月には、消費増税前の駆け込み需要があり、個人向けPCの販売が成長。2020年度第2四半期(2020年7~9月)は、前年実績の反動でマイナスになる可能性が高い。

 いまは好調な個人向けPCの販売だが、7月以降は厳しい局面に入ることになりそうだ。