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インテル、AI機能を強化した第3世代Xeon SPやFPGAを投入
2020年6月23日 16:40
株式会社インテルは、2020年第2四半期の同社の取り組みを紹介するプレスセミナーをオンラインにて開催した。
まず、同社代表取締役社長の鈴木国正氏が登壇し、取り組みに関する説明を行なった。
同社では、世界を変革するテクノロジーによって人々の生活を豊かにすることをパーパスとして設定。あわせて、2030年に向けた目標について、Responsible(社会的責任)、Inclusive(受容性)、Sustainable(持続可能性)、Enabling(実現能力)の頭文字をとったRISE戦略として、さまざまな分野や企業の相互協力し課題解決へ取り組んでいくとした。CSRの一環としては、米国と欧州地域では再生可能エネルギー使用率100%。グローバルでも71%を達成したとする。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けて、コンピューティング技術を利用した診断や治療、ワクチン開発などに加え、オンライン学習のサポートなどを進めるほか、基金の設立などの取り組みも実施。社内では、95%がリモートワークを実施しているほか、年内の対外イベントを基本的にすべてバーチャル化するなどといった施策を行なっていくという。
近年、さまざまな分野においてデジタルデータの量は急速に増加しており、これにともなってコンピューティングやストレージ、ネットワーク需要についても拡大している。データ増加と半導体需要の増加がお互いに作用しているという。
同社では、新たな課題としてデータ活用の格差「データ・デバイド」への対策が必要だとし、デジタル・トランスフォーメーション(DX)だけでなく、高い技術力と中立性をいかし、データをより中心的に考えたデータ・セントリック・トランスフォーメーション(DcX)を推し進めていくとした。
AI機能を強化したデータセンター向け製品
続いて、同社執行役員常務 技術本部 本部長の土岐英秋氏から、データセンター向け新製品について説明が行なわれた。
5Gによるネットワーク変革、新たなワークロードの処理や解析に向けたAI機能、出力されたデータをエッジ側で処理するインテリジェント・エッジなどといった業界の変化に対して、同社のデータセンター向け製品群とソフトウェアを組みあわせたソリューションを提供していくという。
とくにAIについては、ハードウェアレベルでは学習および推論のどちらにも利用できるアクセラレーション機構をCPUに内蔵。さらにCPUだけでは足りない部分に関してはGPUやFPGAなどによるアクセラレーションが利用できるデバイスを用意し、これらを1つのプラットフォームとして統合するといったサポートも行なう。
これに加えて、ソフトウェアレベルでは、コミュニティなどへの強力なサポートに加え、oneAPIなどのフレームワークも提供する。さらにエコシステムパートナーとの協業により、新たなソリューションの展開や、検証済みソリューションをIntel Selectソリューションとして提供も行なっていく。AIの変化にあわせたイノベーションへのサポート環境も揃えているという。
データセンター向けのCPU製品としては、第3世代となるXeonスケーラブル・プロセッサ(Xeon SP)を投入。5年前のシステムと比べて平均的な性能が1.9倍、データベース向けアプリケーション性能では最大1.98倍を達成した。
また、新たにディープラーニング・ブーストを拡張し、新命令の「bfloat16」に対応した。bfloat16は、演算速度が非常に高速なINT8と、精度の高い単精度浮動小数のFP32の間をとったようなものにあたり、AI処理において十分な精度の結果が比較的高速に得られるとしている。TensorFlowやPytorchなどの主要なフレームワークをサポートし、学習と推論のどちらも実行可能で、前世代のFP32を比べて前者で最大1.93倍、後者で最大1.9倍の性能向上を達成したという。
今回提供が開始されるのは4~8ソケットに対応するCooper Lakeシリーズで、2020年後半には1~2ソケットのIce Lakeシリーズも登場する見込み。2021年には1~8ソケットをサポートするSapphire Rapidsシリーズを展開予定で、次世代のディープラーニング・ブーストとしてAMX(Advanced Matrix Extensions)が拡張される見込み。
あわせて、HDDなどと演算ユニットの間のギャップを埋めるメモリ製品も展開。Optaneパーシステント・メモリ 200シリーズは、前世代と比べて平均25%メモリの帯域幅が広がり、1ソケットあたり最大4.5TBのメモリを実装可能とする。データストレージとして活用した場合、一般的なNAND SSDと比べて最低でも225倍の高速アクセスが可能だとする。
3D NAND SSDには、D7-P5500およびP5600を新たに用意。同社製の3D TLC NANDを採用し、従来製品と比べてレイテンシを最大40%低減、性能を最大33%向上させた。
FPGAとしては「Stratix 10 NX FPGA」が登場。広帯域なHBMメモリの内蔵やネットワークの強化などに加え、AI機能を拡張。従来製品では乗算器とアキュムレーターが2基ずつだったが、今回どちらも30基ずつに拡張。INT8での処理であれば最大15倍の性能向上が見込めるとしている。
また、同社ではAIおよびアナリティクス向けにはさまざまなアーキテクチャを展開しており、これらを組みあわせて使うため、ソフトウェアの開発が非常に困難だという。これをサポートするべく、クラウド系ソフトの開発環境oneAPIやエッジ側ソフトのOpenVINOをあわせて提供。また、さまざまな用途における検証済みソリューションを提案し、プラットフォームの開発から実際の導入までの時間を大きく短縮するIntel Selectソリューションも提供する。
引き続き、コンシューマ向け製品として、ハイブリッド・テクノロジーを採用したCoreシリーズについて説明が行なわれた。
これは新カテゴリのデバイスによるフルPC体験の実現を目指した製品。Foveros 3Dスタッキング・テクノロジーを採用し、メモリやCPU、IOダイなどを縦積みした構造となっているのが特徴となっている。12×12×1mm(幅×奥行き×厚み)と非常に小さなパッケージに収められ、液晶サイズが8型のクラスの製品から搭載が可能だとする。スタッキング構造のSoCパッケージはスマートフォン向け製品で前例があるものの、フルPC向けの性能をもつ製品としては初だとしている。
プロセッサ部は、Atom系のTremontコア4基とCore系のSunny Coveコア1基を組みあわせたハイブリッド設計で、前者がバックグラウンド処理、後者がフォアグランド処理をおもに担う。これらを適切に制御するために、OSがCPUのスケジューリングをするさい、CPU側から情報を渡すことでタスクの割り当てを最適化する機能を内蔵。Web性能が最大33%、電力効率が最大17%向上したという。