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AMD、16コアの「Ryzen 9 3950X」を9月に投入

~Vega統合型のRyzen 3400Gと3200Gも追加

AMDが発表したRyzen 9 3950Xを手に持つAMD CEO リサ・スー氏。同CPUは9月から提供開始予定

 AMDは、6月10日(現地時間)にゲーム業界の業界イベントE3 2019が開催されている会場近くで製品発表をイベントを開催し、第3世代Ryzenデスクトップ・プロセッサー(以下第3世代Ryzenと、次世代GPUアーキテクチャRDNAを採用したRadeon RX 5700シリーズの詳細を明らかにした。

7nmのZen2アーキテクチャを採用してIPCは15%向上、浮動小数点性能は2倍に

Zen2アーキテクチャの概要(CPUマイクロアーキテクチャ)(出典 : AMD)

 AMDの第3世代Ryzenは、「Zen2」というアーキテクチャがベースになっている。Zen2はTSMCの7nmプロセスルールに最適化されており、従来の第1世代、第2世代Ryzenに採用されていた「Zen」と比較して2倍の密度を持ち、同じ性能なら消費電力は2分の1に、同じ消費電力なら1.25倍の性能を実現している。

 改善点は多岐にわたっており、分岐予測やスケジューラなどのフロントエンド、整数演算エンジンもAGUが従来世代の2つから3つに増えている。また、浮動小数点演算エンジンも大きく強化されており、256bit幅の乗算と加算が可能になり、AVX256(Intel的な呼び方をすればAVX2)命令に対応している。

キャッシュ構成(出典 : AMD)

 キャッシュはL1キャッシュが命令32KB、データ32KBと、従来のZenアーキテクチャのL1キャッシュ(命令キャッシュ64KB、データ32KB)に比べて減っている。しかし、L2キャッシュはCPUあたり512KB、L3キャッシュはCPUあたり4MBとなっており、Zenの2MBから倍増している。このため、キャッシュ階層全体では性能が向上しており、AMDはゲーム実行時などに大きな効果があると説明している。

IPCは15%向上、浮動小数点演算性能は2倍に(出典 : AMD)

 これらの改良により、前世代のZenと比較してIPC(1クロックサイクルあたりに実行できる命令数、高ければ高いほど高速に処理を実行できる)は15%向上し、浮動小数点演算性能は2倍になっているという。

パッケージのなかで2つのCCD+cIODの構成が可能で、最大16コア構成が実現可能

AMDの第3世代Ryzenは1つのパッケージに2つのCCDとcIODという3つのチップが封入されている(写真はCOMPUTEX TAIPEIの基調講演時)

 もう1つの大きな強化点は、AMDが「チップレット・アーキテクチャ」と呼んでいる、製造プロセスルールの異なるCPUと、I/Oダイを1つのパッケージのなかで統合していることだ。

 Zen2プロセッサは、4つのコアと16MB L3が実装されているCCXが2つあり、Infinity Fabricと呼ばれるダイとダイを接続するインターコネクトで1つのダイが構成されている。ダイはCCDと呼ばれ、CCXが2つ内蔵されているので、CCD全体としては8コア+32MB L3キャッシュというかたちになる。

CCDが1つの時の構成(出典 : AMD)
CCDが2つの時の構成(出典 : AMD)

 第3世代Ryzenでは、この1つのCCDに、cIODと呼ばれるメモリコントローラ、PCI Express Gen 4などに対応するI/Oダイを接続するか、2つのCCDにcIODを接続するかたちとなる。前者は最大8コアまでの構成が可能で、後者は16コアまでの構成が可能になる。

 メモリコントローラはCPUパッケージとしては内蔵されているが、ダイとしては独立しているため、メモリコントローラの設定はCPUから独立して行なうことができる。このため、DDR4-3733を超えるメモリクロックに設定することも比較的容易で、メモリのオーバークロックのやりやすさも特徴としている。

X570チップセット利用時にはPCI Express Gen 4に対応。X570とCPU内蔵のcIODは同じダイが活用されている(出典 : AMD)

 なお、CPUソケットは従来からのAM4のままで、チップセットにはすでに発表されているとおり、PCI Express Gen 4に対応しているX570が利用できるほか、それ以前のチップセットを搭載したマザーボードでもBIOSアップデートなどにより利用可能だ。

 AMDによれば、X570のダイは、14nmプロセスルールで製造されるcIODそのもので、まったく同じチップが利用されているという(つまりチップセット側には必要のないメモリコントローラなどをオフにして利用されている)。製造の観点からは非常に効率の良い方法で、このあたりも第3世代Ryzenのコストパフォーマンスの高さに貢献していると言えるだろう。

COMPUTEXでは発表されなかった16コアのRyzen 9 3950Xが追加、統合GPUのSKUも

16コアCPUに32スレッドと表示されているRyzen 9 3950X

 AMDは今回行なわれたE3の記者会見では、第3世代Ryzenのこれまで発表していなかった残りのSKUについても発表した。COMPUTEX TAIPEI 2019の時点で発表されていたのは3900X、3800X、3700X、3600X、3600の5製品で、CPU 12コアの3900Xが最上位SKUとされてきた(AMD、12コアの「Ryzen 9 3900X」など第3世代Ryzenを7月7日発売参照)。

Ryzen 9 3950Xを説明するスライド、9月に投入(出典 : AMD)

 しかし、今回の記者会見ではそれに加え、Ryzen 9 3950Xという16コアの製品があることが新たに発表された。Ryzen 9 3950XはCPUが16コア/32スレッド、ベースクロックが3.5GHz、ブースト時が4.7GHz、CPU全体のキャッシュサイズが72MB、TDP 105Wというスペックで発売時期は9月を予定。価格は749ドルだ。

Ryzen 9 3950Xの価格
Ryzen 9 3950Xを搭載しているPC

 AMDは3900X、3800Xなどの7月7日に販売する予定の製品と同クラスのIntelプロセッサとの比較データを公開した。たとえば、Ryzen 9 3900XとIntelのCore i9-9900Kの比較では1080pでのゲーム性能はほぼ一緒かAMD側が若干上回る性能を発揮しており、DaVinci Resolve、Adobe Premiere、CineBench R20などのコンテンツクリエーション系アプリではAMD側が35%、32%、47%など大幅な性能向上を示している。ほかのSKUでも同じような傾向が示されている。

Intelの同価格帯の製品と比較(出典 : AMD)
Ryzen 9 3900XとCore i9-9900Kとの比較(出典 : AMD)
Ryzen 7 3800XとCore i7-9700Kとの比較(出典 : AMD)
Ryzen 5 3600XとCore i5-9600Kとの比較(出典 : AMD)

 また、AMDは同時に第3世代Ryzenとしては初のGPU統合型製品となるRyzen 5 3400GとRyzen 3 3200Gを追加したことも明らかにした。いずれの製品もRadeon RX Vega 11という、AMDの従来のGPUとなるVegaアーキテクチャのGPUを統合しており、TDPは65W。

Ryzen 5 3400GとRyzen 3 3200G(出典 : AMD)
Ryzen 5 3400GとIntel Core i5-9400との比較(出典 : AMD)

 第3世代Ryzenのブランドが冠されているが、製造プロセスルールは従来の12nmプロセスルールベースのダイが利用さており、CPUはZen+となる。このため、チップレットアーキテクチャに基づいて7nmで製造されるCCD+cIODから構成される上位製品とは異なり、PCI Express Gen4などは利用できないので注意したい。

【表】AMDが発表した第3世代RyzenのSKU構成(AMDの発表資料より筆者作成)
モデルナンバープロセスルールコア/スレッド数TDP周波数(ブースト時/ベース)合計キャッシュサイズ(MB)GPUPCIe 4.0 レーン(X570利用時)市場想定価格提供開始時期
Ryzen 9 3950X7nm16/32105W4.7/3.5GHz72MB-40-9月
Ryzen 9 3900X7nm12/24105W4.6/3.8GHz70MB-40$4997月7日
Ryzen 7 3800X7nm8/16105W4.5/3.9GHz36MB-40$3997月7日
Ryzen 7 3700X7nm8/1665W4.4/3.6GHz36MB-40$3297月7日
Ryzen 5 3600X7nm6/1295W4.4/3.8GHz35MB-40$2497月7日
Ryzen 5 36007nm6/1265W4.2/3.6GHz35MB-40$1997月7日
Ryzen 5 3400G12nm4/865W4.2/3.7GHz6MBRadeon RX Vega 11-$1497月7日
Ryzen 3 3200G12nm4/465W4/3.6GHz6MBRadeon RX Vega 9-$997月7日