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AMD、16コアの「Ryzen 9 3950X」を9月に投入
~Vega統合型のRyzen 3400Gと3200Gも追加
2019年6月11日 09:00
AMDは、6月10日(現地時間)にゲーム業界の業界イベントE3 2019が開催されている会場近くで製品発表をイベントを開催し、第3世代Ryzenデスクトップ・プロセッサー(以下第3世代Ryzenと、次世代GPUアーキテクチャRDNAを採用したRadeon RX 5700シリーズの詳細を明らかにした。
7nmのZen2アーキテクチャを採用してIPCは15%向上、浮動小数点性能は2倍に
AMDの第3世代Ryzenは、「Zen2」というアーキテクチャがベースになっている。Zen2はTSMCの7nmプロセスルールに最適化されており、従来の第1世代、第2世代Ryzenに採用されていた「Zen」と比較して2倍の密度を持ち、同じ性能なら消費電力は2分の1に、同じ消費電力なら1.25倍の性能を実現している。
改善点は多岐にわたっており、分岐予測やスケジューラなどのフロントエンド、整数演算エンジンもAGUが従来世代の2つから3つに増えている。また、浮動小数点演算エンジンも大きく強化されており、256bit幅の乗算と加算が可能になり、AVX256(Intel的な呼び方をすればAVX2)命令に対応している。
キャッシュはL1キャッシュが命令32KB、データ32KBと、従来のZenアーキテクチャのL1キャッシュ(命令キャッシュ64KB、データ32KB)に比べて減っている。しかし、L2キャッシュはCPUあたり512KB、L3キャッシュはCPUあたり4MBとなっており、Zenの2MBから倍増している。このため、キャッシュ階層全体では性能が向上しており、AMDはゲーム実行時などに大きな効果があると説明している。
これらの改良により、前世代のZenと比較してIPC(1クロックサイクルあたりに実行できる命令数、高ければ高いほど高速に処理を実行できる)は15%向上し、浮動小数点演算性能は2倍になっているという。
パッケージのなかで2つのCCD+cIODの構成が可能で、最大16コア構成が実現可能
もう1つの大きな強化点は、AMDが「チップレット・アーキテクチャ」と呼んでいる、製造プロセスルールの異なるCPUと、I/Oダイを1つのパッケージのなかで統合していることだ。
Zen2プロセッサは、4つのコアと16MB L3が実装されているCCXが2つあり、Infinity Fabricと呼ばれるダイとダイを接続するインターコネクトで1つのダイが構成されている。ダイはCCDと呼ばれ、CCXが2つ内蔵されているので、CCD全体としては8コア+32MB L3キャッシュというかたちになる。
第3世代Ryzenでは、この1つのCCDに、cIODと呼ばれるメモリコントローラ、PCI Express Gen 4などに対応するI/Oダイを接続するか、2つのCCDにcIODを接続するかたちとなる。前者は最大8コアまでの構成が可能で、後者は16コアまでの構成が可能になる。
メモリコントローラはCPUパッケージとしては内蔵されているが、ダイとしては独立しているため、メモリコントローラの設定はCPUから独立して行なうことができる。このため、DDR4-3733を超えるメモリクロックに設定することも比較的容易で、メモリのオーバークロックのやりやすさも特徴としている。
なお、CPUソケットは従来からのAM4のままで、チップセットにはすでに発表されているとおり、PCI Express Gen 4に対応しているX570が利用できるほか、それ以前のチップセットを搭載したマザーボードでもBIOSアップデートなどにより利用可能だ。
AMDによれば、X570のダイは、14nmプロセスルールで製造されるcIODそのもので、まったく同じチップが利用されているという(つまりチップセット側には必要のないメモリコントローラなどをオフにして利用されている)。製造の観点からは非常に効率の良い方法で、このあたりも第3世代Ryzenのコストパフォーマンスの高さに貢献していると言えるだろう。
COMPUTEXでは発表されなかった16コアのRyzen 9 3950Xが追加、統合GPUのSKUも
AMDは今回行なわれたE3の記者会見では、第3世代Ryzenのこれまで発表していなかった残りのSKUについても発表した。COMPUTEX TAIPEI 2019の時点で発表されていたのは3900X、3800X、3700X、3600X、3600の5製品で、CPU 12コアの3900Xが最上位SKUとされてきた(AMD、12コアの「Ryzen 9 3900X」など第3世代Ryzenを7月7日発売参照)。
しかし、今回の記者会見ではそれに加え、Ryzen 9 3950Xという16コアの製品があることが新たに発表された。Ryzen 9 3950XはCPUが16コア/32スレッド、ベースクロックが3.5GHz、ブースト時が4.7GHz、CPU全体のキャッシュサイズが72MB、TDP 105Wというスペックで発売時期は9月を予定。価格は749ドルだ。
AMDは3900X、3800Xなどの7月7日に販売する予定の製品と同クラスのIntelプロセッサとの比較データを公開した。たとえば、Ryzen 9 3900XとIntelのCore i9-9900Kの比較では1080pでのゲーム性能はほぼ一緒かAMD側が若干上回る性能を発揮しており、DaVinci Resolve、Adobe Premiere、CineBench R20などのコンテンツクリエーション系アプリではAMD側が35%、32%、47%など大幅な性能向上を示している。ほかのSKUでも同じような傾向が示されている。
また、AMDは同時に第3世代Ryzenとしては初のGPU統合型製品となるRyzen 5 3400GとRyzen 3 3200Gを追加したことも明らかにした。いずれの製品もRadeon RX Vega 11という、AMDの従来のGPUとなるVegaアーキテクチャのGPUを統合しており、TDPは65W。
第3世代Ryzenのブランドが冠されているが、製造プロセスルールは従来の12nmプロセスルールベースのダイが利用さており、CPUはZen+となる。このため、チップレットアーキテクチャに基づいて7nmで製造されるCCD+cIODから構成される上位製品とは異なり、PCI Express Gen4などは利用できないので注意したい。
モデルナンバー | プロセスルール | コア/スレッド数 | TDP | 周波数(ブースト時/ベース) | 合計キャッシュサイズ(MB) | GPU | PCIe 4.0 レーン(X570利用時) | 市場想定価格 | 提供開始時期 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Ryzen 9 3950X | 7nm | 16/32 | 105W | 4.7/3.5GHz | 72MB | - | 40 | - | 9月 |
Ryzen 9 3900X | 7nm | 12/24 | 105W | 4.6/3.8GHz | 70MB | - | 40 | $499 | 7月7日 |
Ryzen 7 3800X | 7nm | 8/16 | 105W | 4.5/3.9GHz | 36MB | - | 40 | $399 | 7月7日 |
Ryzen 7 3700X | 7nm | 8/16 | 65W | 4.4/3.6GHz | 36MB | - | 40 | $329 | 7月7日 |
Ryzen 5 3600X | 7nm | 6/12 | 95W | 4.4/3.8GHz | 35MB | - | 40 | $249 | 7月7日 |
Ryzen 5 3600 | 7nm | 6/12 | 65W | 4.2/3.6GHz | 35MB | - | 40 | $199 | 7月7日 |
Ryzen 5 3400G | 12nm | 4/8 | 65W | 4.2/3.7GHz | 6MB | Radeon RX Vega 11 | - | $149 | 7月7日 |
Ryzen 3 3200G | 12nm | 4/4 | 65W | 4/3.6GHz | 6MB | Radeon RX Vega 9 | - | $99 | 7月7日 |